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霊界物語あらすじ

説明を読む
ここに掲載している霊界物語のあらすじは、東京の望月氏が作成したものです。
まだ作成されていない巻もあります(55~66巻のあたり)
第51巻 真善美愛 寅の巻 を表示しています。
篇題 章題 〔通し章〕 あらすじ 本文
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この物語はすべて心理描写的に口述しているので、読者の中には普通一般的の著者に比べて非常に露骨だとか在りえないことを書いていると批評する人がいるようです。
しかし霊的、内的意志を基として述べたものだから、一片の虚偽も虚飾もなく、人心の奥底に入ってその真相を究め尽くし、これを神助の下に編纂したものである。
書中の高姫の物語についても、実に非常識に見える部分があるかもしれない。しかしこれもまた、その心底深く別け入って憑依する精霊や本人の至誠心の情態や、時々の変転のありさまを描き出したものである。
すべての人の心理状態もまた、高姫のごときものであることを思考して、自らを戒め省み、愛善の徳を養い、信真の光明を照らし、地獄的境域を脱出して天国の住民として永遠無窮に人生の本分を守り、神明の御心に和合し、もって神性成就の太柱となって現幽神三界のために十分の努力を励まれることを希望する。
口述者も目下のところ、ある事情に制せられて実に悲境に陥った身ながらも、一分の時間も空費せず、心骨を苦しめつつ三界一般の万霊救済のために奉仕の誠を尽くし、この物語の編纂に努力しつつある次第である。読者よろしく瑞月の至誠を御諒承あって、御研究あらんことを願うものである。
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人間はその内分において、至聖至美至善の天界すなわち高天原に向かい、その外分においては地獄界に向かっているものであることは、すでに述べた。ゆえに人間は、常に神の光に背いては、決してその人格を保つことはできない。
本巻物語の主人公たる高姫は、小北山の聖場に至って自己に憑依する兇霊のために誤られ、また兇霊界の妖魅である妖幻坊のためにたぶらかされて熱狂的暴動を敢行する。しかし神威に当てられて逃れ、妖幻坊と共に怪志の森に落ち延びる。そして妖幻坊が紛失した曲輪の玉を、小北山の役員初公と徳公に命じて奪還させようとする。
また浮木の森において妖幻坊の魔法に欺かれて種々の狂態を演じるところ、いったん三五教に帰順した元バラモン軍のランチ、片彦が、高姫が化相した初花姫に誘惑されて苦悶の淵に沈むところ、ケース、初公、徳公が狸のために裸体となって相撲を取らされる悪夢等、波乱重畳の面白き物語である。
読者は一片の滑稽的小説と見ることなく、意をひそめて通読あらんことを願う。
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01 01 〔1316〕
妖幻坊の杢助と高姫の両人は、小北山の大門にやってきた。高姫は、桃の木の下にお菊とお千代が蝶を追って遊んでいるのを見て声をかけた。
お菊は、参拝者だと思って案内しようとするが、高姫は、自分はここのことはわかっている、お前が誰の娘か、ここの役員は誰なのか知りたいだけだと頭ごなしに言い返した。お菊はむっとして憎まれ口を返す。
お千代の口から魔我彦の名を聞いた高姫は、妖幻坊の杢助を連れて受付に赴き、ここの責任者に会いたいと呼ばわった。高姫は、受付にいた旧知の文助と挨拶を交わした。文助は、高姫が斎苑の館で出世したと聞いていたので、その祝を述べた。
文助から、かつての自分の弟子であった松姫が小北山の教主をしていると聞いて、居丈高に昔のことを話しだした。文助は、杢助ともども教主館に案内することになった。
教主館にやってきた三人は、お菊に出くわした。お菊は会うなり、やかましいおばさんを連れてくるのは嫌だ、エライ四つ足の霊が憑いてるようだから大広間で鎮魂してください、と高姫たちにつっかかる。
文助から、これがかつて皆があこがれていたウラナイ教教主の高姫その人だと聞かされたお菊は、聞くと見るとは大違いだとまた憎まれ口をたたき、蠑螈別は若い女と駆け落ちしたと高姫に知らせた。高姫は昔の愛人が若い女と駆け落ちしたと聞いて思わず悋気を出したが、杢助がいることに気づいてごまかそうとした。
時すでに遅く、杢助は、蠑螈別とやらの男振りを自分に見せつけようとしてわざわざここに連れて来たのかと駄々をこねだした。杢助は縁切りをほのめかし、その場を立ち去ろうとする。高姫は杢助の足にしがみついて、泣き声で杢助を留めようとする。
お菊はこの愁嘆場を手を打って笑いからかう。杢助はお菊の様子に、子供は正直だと近寄り、蠑螈別と高姫の関係を聞き出そうとする。お菊は無邪気に、自分の母と蠑螈別が喧嘩をしてその話を聞いたばかりだと杢助に語ると、面白い活劇を松姫やお千代にも見せるのだと、逃げるように石段を登って行った。
文助は、お菊はとんでもないお転婆で自分もいつもからかわれたりいたずらされたりしているから、言うことをいちいち気に留めないように、と杢助・高姫をなだめた。妖幻坊は、悪の見どころがあると喜んでいる。高姫は、改悪というのは悪を改めることだと杢助に理屈でごまかされ、やはり改善を勧める三五教は悪の教えだったと一人勝手に納得している。
お菊は戻ってきて、松姫が高姫の来訪を聞いてたいへんに喜び、丁重にもてなすように言いつけたと、言付けを文助に伝えた。文助は、ご飯やお酒の準備をさせるために受付に帰って行った。高姫は、ここの教主の松姫は自分の弟子だからと得意になり、自分が酌をすると妖幻坊の機嫌を取った。
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01 02 〔1317〕
初と徳は文助に言いつけられて、妖幻坊と高姫のために御馳走をこしらえ、酒に燗をして二人の前に並べた。妖幻坊はお菊に酌を所望したが、お菊は二人をからかうと飛び出して逃げてしまった。
高姫と妖幻坊は、松姫もあまり信用がならず、お菊も簡単には手なずけられそうにないとして、初と徳に酒を飲ませてこちらの手に引き込もうと計画した。
高姫と妖幻坊は、初と徳に酒を飲ませながら、二人をウラナイ教に引き込もうと話を持って行っている。お菊はその様子をそっと窓からのぞいていたが、宣伝歌を歌いだした。お菊は高姫の企みを歌に歌い込み、また杢助と名乗る男は悪魔が化けているのだろうと歌い終わると、さっと逃げてしまった。
妖幻坊と高姫はお菊の歌に懸念を抱くが、また初と徳を取り込みにかかった。高姫は二人を口でちょろまかしている。
妖幻坊の体はにわかにふるえだした。窓の外をちょっと覗いてみると、猛犬が矢のように階段を上り、松姫館の法にすがたを隠した。高姫はアッと驚いて腰を下ろし、妖幻坊も冷や汗をかいて震えおののいていた。
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01 03 〔1318〕
松姫は神社拝礼のお勤めを終えると、今に帰って神書を調べていた。そこにお千代があわただしく帰ってきて、門口の戸をぴしゃりと閉めると中からつっぱりをかった。松姫が不審に思って尋ねると、お千代はとんでもな化け物が、高姫と杢助と名乗ってやってきたという。
松姫はてっきり、本部から二人がやってきたと思ったが、お千代は二人の面相は化け物のようでとても本部の役員とは思えなかったと報告した。
そこへ文助がやってきて、本部から杢助と高姫がやってきて、松姫の教主職を今日かぎり解いて、代わりに二人が小北山を監督することになった、と伝えに来た。松姫は、かねてから松彦と協力して御神業の活動を外でやりたいと思っていたので願いがかなったと喜んだ。
しかしお千代は高姫と杢助と名乗る二人組は化け物だと言い張り、斎苑の館からの御沙汰が来ていないのにおかしいと指摘した。文助は二人は斎苑の館の幹部だから、その他に辞令は必要ないだろうと答えたが、お千代は自分が確認すると言ってきかない。
そこへお菊が戻ってきた。お菊は三人の話を聞くと、自分もあの高姫と杢助は怪しいと思うと報告した。松姫は、文助とお菊に二人をともかくもてなすよう言いつけ、自分は後で行くと伝えるように託した。
後にお千代は、エンゼルが耳元でささやいたと、高姫は本物だが杢助は妖幻坊という兇党界の幹部の化け物だと松姫に伝えた。松姫は高姫の身の上を心配したが、お千代は悪事を企む者にはここの神様を拝ませて驚かしてやりたいと息巻いている。
二人が話しているところへ、大きな猛犬が尾を振りながら入ってきた。スマートが初稚姫からの手紙を送ってよこしたのであった。松姫は手紙に初稚姫の名を認めると、手紙を改めるためにお千代に門口を閉めさせた。
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01 04 〔1319〕
松姫は封を切って手紙を読み始めた。おいおい顔色が変わり両手はふるえだし、容易ならない内容のように見えたが、読み終わるとほっと溜息をついた。
お千代は、悪魔が上のお宮の扉を開いたらきっとびっくりして逃げるだろうとエンゼルが仰ったので心配はいらないと松姫を励ました。松姫は、二人に会って高姫を説得するのにお千代がいては都合が悪いと、しばらくスマートと一緒に遊んでくるようにいいつけた。
お千代がスマートと外に出かけた後、松姫は高姫が曲津の入れ物になり、妖幻坊にたぶらかされているという事態を憂いながらも、今は自分がしっかり小北山を守らなければならないと思い直し、神に祈りを捧げていた。
そこへ酔った初と徳がやってきて、松姫がなかなかやってこないので高姫が立腹していると伝えた。そして、今日から高姫が小北山の教主で杢助が監督するのだ、と松姫に伝えた。
松姫は、たとえ高姫が教主だろうと、事務を引き継がないうちはまだ自分がここの教主であり、その間は自分の裁量で事を進めると言い返し、こちらから会うと言ったがそれはできなくなったので、向こうから挨拶に来るように、と申し渡した。
初と徳は、自分たちは斎苑の館の総務・杢助の家来になったのだ、と権威をかさに着て松姫を脅しにかかった。しかし松姫はここの教主は自分だと言ってきかず、初と徳が威張り散らす姿をからかった。
初と徳は怒り、杢助の命令だと松姫に打ってかかろうとした。初と徳は、松姫の体から光が出ているような気がして、その場に霊縛されてしまった。
松姫は泰然自若として心静かに歌を歌い、杢助の正体を暴き二人に改心を促す歌を歌っている。松姫が歌い終わると、初と徳は涙を流して改心の意を表した。松姫が霊縛を解くと、二人はぱたぱたと表へ駆け出して行ってしまった。
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01 05 〔1320〕
高姫と妖幻坊はいちゃいちゃしながら酒を飲んでいた。そこへ初と徳の両人が青い顔をして帰ってきた。高姫が首尾を尋ねると、初と徳は松姫が言うことを聞かず、杢助を兇党界の化け物だと言っていると報告した。
高姫と妖幻坊は、初と徳が松姫にしてやられたことを悟った。妖幻坊は二人に、今度はしっかり武装していくように言いつけ、松姫を倒した方が上役になるとけしかけた。初と徳は喧嘩装束に棍棒を携え、松姫館に進んで行った。
お千代はスマートと共につつじの花をちぎりながら、向こうの谷の森林で遊んでいた。スマートはにわかに体をふるわせて、お千代の袖をくわえて引っ張り始めた。そこへお菊が走ってやってきた。お千代とお菊はスマートの様子がただならないので、もしや松姫の身に何かあったのではないかと松姫館に急いで戻り始めた。
松姫はただ一人、神殿に向かって神示を伺っていた。そこへ戸を押し破って初と徳がやってきた。二人は樫の棒を持って松姫に打ってかかる。松姫はそこにあった机を取って、神助を祈りながらしばらく防戦に努めていた。
松姫は数十合も戦ってもはや体力尽き、二人の棍棒に打ち殺されようかというとき、宙を飛んで駆けてきたスマートは、初と徳の足をくわえて引き倒し、唸りながら睨みつけた。
二人は起き上がり、ほうほうの態で杢助と高姫のところに逃げて行った。初と徳の報告を聞いた杢助と高姫は、なかなか松姫をやっつけるのが容易でないと悟ると、初と徳が勝手に松姫に乱暴を働いたということにして、松姫を懐柔する策に出た。
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01 06 〔1321〕
松姫の館には、お千代とお菊と三人が集まって何事かささやいていた。勇敢なスマートが松姫の危難をすくったことなどが話題に上った。
するとどやどやと表に人の足音が聞こえてきた。妖幻坊と高姫は、初と徳が酒の勢いで杢助と高姫の名をかたり、勝手に乱暴を働いたことにして、見せしめに二人の尻を三百叩くという芝居をしにやってきたのであった。妖幻坊と高姫は、数を数えながら二人の尻を叩くふりをして、地面をたたいた。
そのうちに、妖幻坊と高姫の手が狂って、棍棒が初と徳の尻に当たりだした。二人は悲鳴を上げ文句を言ったが、妖幻坊と高姫は辛抱するようにと言うだけで芝居を続けた。
お菊とお千代は何事かと思って外に出てみれば、右のとおりの様子であった。二人は手を叩いて面白がり、八百長だとはやし立てて、面白い芝居だと言って松姫を呼んだ。松姫は気がかりで外に出てきた。
妖幻坊と高姫は、八百長だと思われないように力を込めて二人の尻を叩きだした。たちまち二人の尻は腫れ上がり、身動きできずに目を回してしまった。松姫は驚いて妖幻坊と杢助を押しとどめた。
高姫と松姫は再会の挨拶を交わし、妖幻坊も杢助のふりをして松姫に挨拶した。初と徳は、ようやく松姫の仲裁によって制裁を免除された。松姫はお千代とお菊に二人の介抱を命じると、高姫と妖幻坊を館に招き入れた。
高姫はさっそく、神様の命令で、小北山は自分が教主になることになり、松姫は自転倒島の生田の森の司に任じられたのだ、と松姫に迫った。松姫はいったんは斎苑の館の教主・八島主の辞令を見せるように求めたが、高姫が押すと、あっさり奉告祭をしてここの事務を高姫に引き継ぐと引き下がった。
松姫は早速、文助をはじめ小北山の役員に引き継ぎの奉告祭の準備をさせ、松姫、高姫、妖幻坊は新しい衣装に身を包んで上段の石の宮に上ってきた。
たちまち神饌は踊りだし、宙に舞い狂い始めた。高姫は、神徳が高い者が御用をするとこのような規制が起こるのだ、と得意がっている。妖幻坊は渋い顔をして、神前に出て頭痛がするのをこらえている。
松姫は高姫の言葉に乗り、これほど神様がお勇みになっているから、神様の御社の扉を開けさせていただこうと提案した。高姫は得意になって松姫に扉の開帳を命じた。
松姫はすっと神前に進み、中の社の扉をぱっと開いた。妖幻坊と高姫はその霊光に打たれ、アット叫んでよろよろと七歩八歩後ずさりをした。とたんに、断崖絶壁から逆さまにギザギザの岩の上に転落した。
妖幻坊は怪しい悲鳴を上げると、痛さをこらえて高姫を呼び、坂道を逃げ出した。初と徳は尻の痛さも忘れて、二人の後を追って逃げ出した。妖幻坊は、ヨボヨボと階段を上がってくる文助に突き当たり、顔を引っ掻いて飛ぶように駆けて行ってしまった。その後を高姫、また初と徳が追いかける。
逃げる妖幻坊の耳に、スマートの唸り声が聞こえてきた。こうして、スマートは松姫の返書を首にくくりつけられ、初稚姫に事の顛末を報告すべく祠の森に帰って行った。
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02 07 〔1322〕
文助は階段を十二三階上がったところで妖幻坊とぶつかり、顔を引っ掻かれて引き倒されてしばらく気が遠くなっていた。気が付くと、懐に何か蜂の巣のような音がする、丸い塊が入っていた。
目の悪い文助は、てっきり妖幻坊の杢助がいたずらに蜂の巣を懐に入れたのだろうと思い、受付に戻って傍らにあった板箱に入れてしまった。箱がかたかたいって飛び上がったり唸りがひどくなっても、八のせいだと思っていた。
一方、妖幻坊は自分の変相術に必須の曲輪の玉を落としたことに気が付いた。妖幻坊は体の具合が悪くなってきた。この曲輪の玉は、肌を離れてから一昼夜経つと、変相が解けて本性が現れてしまう。またスマートが雷のような声で唸ったので、路傍の芝生の上に倒れてしまった。
高姫が追いついてきたので、妖幻坊は自分は斎苑の館から奪ってきた如意宝珠を小北山に落としてきたようだ、とごまかした。妖幻坊は文助と衝突したときに思い当り、初と徳がやってくると、二人に小北山に戻って玉を取ってくるように命じた。
初と徳は仕方なく小北山の受付に戻り、文助が事情を知らないのをいいことに玉を奪おうとしたが、文助は二人の態度に頑なになってしまった。徳が文助と格闘している間に、初は音をたよりに玉の入った箱を探りだし、箱ごと懐に入れた。
二人は小北山を逃れると、ようやく命からがら怪志の森の妖幻坊と高姫のところに戻ってきた。妖幻坊は二人が玉の箱を持ってきたので満足したが、高姫は如意宝珠の玉だと聞いていたので、また執着心を出して玉を欲しがった。
妖幻坊は、後で必ず見せるとその場をごまかして逃れた。妖幻坊は先を急ごうとしたが、初と徳がへばってこれ以上進むことができなかった。一同は野宿をすることにしたが、初と徳が寝込んでしまうと、高姫は妖幻坊を促し、森を抜けて浮木の里を指して走り出した。
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02 08 〔1323〕
高姫は妖幻坊を促し、浮木の里の入り口にある水音高い玉滝に立ち寄った。そこで曲輪の玉を漱ぎ洗ってみれば、玉はこうこうと輝きだした。高姫は眼を射られて目まいを起こし、その場にどっと倒れてしまった。
妖幻坊は高姫が失神した隙を伺い、妖術を使ってここに蜃気楼を現した。エルサレムの壮観に比べてもいく十倍とも知れないような驚くばかりの建築を、数多の魔神を使役して現出した。
いかに魔法を仕えても、神の形に造られた人間を使わなければ自分の計画は遂行できないとほくそ笑み、滝の清水をすくって高姫の口に含ませ、正気を取り戻させた。
妖幻坊は、杢助神司たる自分が瑞の御魂の宝を手に入れたからには、神の力を現してたちまち城郭を現すこともできると高姫に語りかけた。
高姫は感激し、これからは杢助と力を合わせて活動し、瑞の御霊や東野別らを驚かせ、アフンとさせてやろうとにわかに元気を盛り返し、楼閣の表門をくぐって奥殿指して進んで行った。
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02 09 〔1324〕
高姫は妖幻坊を杢助だと固く信じていた。そして金剛不壊の如意宝珠の力によって、このような広大な楼閣ができたのだと思っている。
高姫は、これほど神力がある男であれば、他の美人に取られて自分がお払い箱になる可能性があると心配し、如意宝珠の玉を奪ってふたたび飲み込み、杢助の喉首を抑えてしまおうと思いながら妖幻坊についていく。
妖幻坊は高姫を大きな鏡の前に導いた。そこには十七八才の妙齢の美人が、立派な錦の衣服を着流して立っていた。高姫はその美人に嫉妬するが、妖幻坊は、これは如意宝珠の神力で若返らせた高姫自身の姿だと高姫に取り入った。
高姫は若いころの名前・高宮姫に改名し、妖幻坊は高宮彦と名乗ることになった。そして高姫に豪華な一室をあてがうと、後で腰元を付けると言い残して奥殿へ消えて行った。
妖魅は変相するときは非常に苦しいので、ときどき人に見られないところで体を休める必要があるのであった。高姫の居室と見えたのは、その実、浮木の森の大きな狸穴であった。妖幻坊は奥の楠の根元の大洞穴の中に身を隠し、寝てしまった。
妖幻坊は自分の眷属・幻相坊と幻魔坊を美しい少女に変装させて、高子・宮子として高姫の侍女としてあてがった。高姫は二人の美しさに嫉妬を覚えたが、高子と宮子が自分たちは如意宝珠の玉から生まれた火と水の霊だと説明し、人間ではないことがわかると機嫌を直した。
高姫は二人を呼び入れた。高子と宮子はぱっと室内に入って左右から高姫に飛びついた。高子は火のように熱く、宮子は水のように冷たかった。高姫は寒熱に苦しんで、たちまちその場に倒れてしまった。
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02 10 〔1325〕
妖幻坊は萱草の茂る森林に高姫をいざない、妖術を使って豪華な宮殿や宝物を見せてたぶらかした。高姫は、侍女の高子と宮子の寒熱に当てられて失神したが、目を覚ますと高子と宮子がいそいそと自分を介抱していた。
高姫は二人を玉の精だと信じ、それが自分の侍女として仕えて居ることに図に乗って、自分の身魂がどれほど尊いものかをとうとうと説いている。
高子と宮子は高姫の歌に答えて、妖幻坊と高姫を賛美する歌を歌った。高姫は笑壺に入り、うれしくなって自分の腹中の眷属たちとこの境遇を祝い合った。
高姫は高子と宮子と打ち解けて、立派な今の中で歌ったり舞ったり、美しい果実を味わい一日を過ごしていた。その実は萱野原の狸穴で夢を見ているのみであった。
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03 11 〔1326〕
高姫は二人の侍女と共に楽しく時を過ごし満悦の折から、立派な衣装に身を包んだ高宮彦が愉快気にやってきた。高宮彦は絹座布団の上にどっかと腰を下ろした。
高姫は、高宮彦の神力によって如意宝珠の分霊である高子と宮子をしたがえて素晴らしい御殿に住むことを得、また自分の姿が若返ったことにお礼を述べた。高宮彦は天極紫微宮の御殿を地上に引き写し、竜宮のもっとも美しいところを海底から引き揚げたのだ、と法螺を吹いている。
高宮彦は、自分たちの栄華を保つためには、三五教やウラナイ教のやつらを一人残らず常駐に引き込み、霊肉ともに亡ぼさなければならないと高姫に持ちかけた。そしてもっとも恐ろしい敵として、三五教の主管・素盞嗚尊を挙げ、その配下である東野別命、八島主命、日の出別命、言依別命、天之目一箇命、初稚姫命らの名を挙げた。
高姫は、自ら高子と宮子を引き連れて城門の外で往来の人々を待ち伏せ、若返った美貌と弁舌で残らず城中に引き入れて見せようと悪計を練り、実行すべく場外へ出て行った。
高姫は二人の侍女とともに場外の野に出て、すみれやタンポポを余念なく摘んでいるようにみせかけていた。そこへ旅装束の二人の男が、三五教の宣伝歌を歌いながらやってきた。二人は元バラモン教軍の将軍であり、三五教に改心したランチと片彦であった。
二人はかつて自分たちの軍隊が駐屯していた浮木の森に、いつの間にか立派な都会ができていることを見て驚き、いぶかしんだ。二人は高姫たち三人の乙女を認め、城内の様子を聞き取るべく近づいて行った。
本文
03 12 〔1327〕
片彦とランチは三人の乙女に声をかけた。三人は花摘みに夢中のふりをして驚いて見せ、二人の姓名を問うた。片彦は、二人は元バラモン軍の将軍であったが、今は軍服を脱いで三五教の宣伝使となっていることを語った。
高姫は、自分は月の国のコーラン国の王女・初花姫だと名乗った。そして、コーラン国はにわかに国替えを行い、昼夜兼行で四か月ほどにてようやく城郭が出来上がったのだと説明した。さらに高姫は、自分の父王は斎苑の館の宣伝使・初稚姫によってにわかに三五教に改心し、初稚姫も今城内に逗留していると偽って、二人を城内に誘い込んだ。
ランチは、忽然としてこのような立派な城郭が、噂も立たずにできるのは魔神の仕業ではないかとなおも疑いの目を向けていた。高子と宮子は芝居を打って、ランチがコーラン国の王家を魔神だと決めつけたかのような流れにしてしまった。
高姫は、侍女がこのように恐れをなしたのはランチのせいだと言い立て、責任をもって城内に自分たちを送るようにと二人を促した。ランチと片彦は、城内にいるというコーラン国王や初稚姫が本物かどうか調査するのも無駄ではないと決心し、一同は連れだって城の奥に進んで行った。
一同は麗しい門をいくつもくぐり、ようやく玄関口にたどり着いた。
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03 13 〔1328〕
ランチと片彦は館の立派なのに感心している。高姫は侍女二人に命じて、父王に来客を告げに行かせた。初花姫を騙る高姫は、ランチと片彦を案内して奥の間に進ん出で行く。
観音開きの部屋の前に着いた。扉が開いて、さらに侍女たちが出てきて三人を迎えた。高姫は侍女にランチと片彦の案内を命じると、自分は父母に会ってくると言って姿を隠した。ランチと片彦は観音開きの扉をくぐって中の間に入り、侍女に勧められるままに椅子に腰を下ろした。これは実は高姫に与えられた狸穴であった。
二人は何ともいえない心地よい気分になり、コクリコクリと夢路に入った。ドアはいつの間にか固く閉ざされてしまった。
しばらくすると、二人の肩を叩く者がある。目を覚ますと、机の上には美しい器に盛られた酒や寿司や果物が並べられていた。見ると、美しい着物を着た妙齢の婦人が三人、二人に向かい合っている。
ランチは驚いてうたた寝をしてしまった不調法を詫びた。三人の中に中央の美人は、自分は三五教の宣伝使・初稚姫だと名乗り、両脇の二人は秋子姫、豊子姫というコーラン国の侍女だと紹介した。そして、ハルナの都を目指す宣伝の旅の途上、ここでコーラン国の如意王に出会い、しばらく足を止めることにしたのだ、と語った。
ランチと片彦は、思わぬところで高名な宣伝使・初稚姫に面会を得たと、それぞれ挨拶と自己紹介を行った。初稚姫は、秋子と豊子に命じて、さかんに両人に酒を進めさせた。二人は酒と女の美貌に酔いつぶれてしまった。
二人は秋子と豊子に手をひかれて一室に導かれ、寝に就いた。しばらくして二人が気が付くと、石に囲まれた一室に横たわっていた。一枚板を立てたような大理石で包まれていて、どこにも出入り口がない。
二人は慌てて、難事に当たって天津祝詞を奏上しようとしたが、どうしたことか一言も祝詞の言葉が出てこない。アオウエイの言霊を繰り返したが、何の効能もなかった。
しばらくすると、足許や壁からカツカツと音がして、タケノコのように鋭利な槍が石畳を通して突き出してきた。二人は槍を避けて、槍に包まれながらまっすぐに立っているのがやっとだった。
すると槍の穂先が蛇に変じて鎌首をもたげ、火を吐くやつ、水を吐くやつ、黒煙を吐くやつがいる。次第に蛇の首は伸びてきて、両人の体をがんじ絡みにしてしまった。するとどこからともなく太鼓のような声が聞こえてきて、二人に三五教を棄てるように迫った。
二人はいかに脅されても屈せずに声に言霊で言いかえし、抵抗した。槍は林のごとく立ち、火は炎々とt燃えてきた。蛇とムカデはが体一面にたかってくるが、なぜか痛くもかゆくもなかった。ランチと片彦はこれぞまったく神様のご守護と大神を念じ、一時も早く天国に上らんことのみを念じつつあった。
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03 14 〔1329〕
妖幻坊の高宮彦は、侍女の五月に命じて高姫を呼びにやらせた。高姫は鏡台の前に座って、若返った自分の姿に見とれている。高子と宮子は高姫の自惚れ姿を見て笑い、我に返った高姫は二人を連れて妖幻坊の居間に進んで行った。
部屋に入ると、四方の壁は鏡のように光って互いに反射し、高姫の姿を幾十ともなく映している。高姫は、妖幻坊が美人に取り巻かれていると勘違いして、悋気を起こして食って掛かった。高姫は鏡の女たちが自分と同じ動作をするのに怒って、こぶしを固めて突貫し、壁に鼻を打って倒れてしまった。
妖幻坊は豆狸に水を汲んで持ってこさせ、高姫の顔に吹きかけて正気に返させた。高姫はまだ疑っているので、妖幻坊は鏡を壁土で塗ってしまった。
高宮彦は、ランチと片彦をまんまと罠にはめて閉じ込めることができたことを喜び、高姫と共にさらなる悪計の相談に入った。妖幻坊の高宮彦は上機嫌で、高姫をからかってちょっとした夫婦喧嘩を演じ、高子と宮子は高姫の自惚れ姿を明かしてからかい笑った。
高姫が部屋を引き取ろうとすると、妖幻坊は高子か宮子の一人を置いていくように頼んだ。高姫は、高子に妖幻坊を見張って、他の女を引き入れたらそっと自分に知らせるように言い含めると、宮子を連れて自分の部屋に帰って行った。
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03 15 〔1330〕
高姫は宮子を外に出すと、鏡の前で自分を映して悦に入っていた。着物を脱いで鏡に映していると、侍女の少女たちに化けていた豆狸が戸の開いたところから侵入し、飛びついた。高姫は驚いてひっくり返ってしまった。
あわただしく着物を直し、なおも鏡に向かってうぬぼれていると、戸の隙間から宮子が半ば狸の正体を現し、どんぐりのような目でにらんでいる。高姫は思わずコラッと叫んだ。宮子はおどろいてその場を立ち去った。
高姫がなおも鏡の前で自惚れながら独り言で蠑螈別を懐かしんでいると、宮子が戸を外から叩いた。宮子は言われるままに庭園を散歩してきたのだ、と高姫に答え、どんぐりの目の怪物を自分も見たと報告した。
高姫は、宮子と共にパンと葡萄酒の食事をとり、宮子の耳をはばかって、それとわからないように蠑螈別を思う恋の歌を歌った。宮子は高姫の様子を見て、蠑螈別の名前を出して探りを入れた。高姫は、蠑螈別は自分と妖幻坊を付け狙う三五教の仇だとごまかした。
すると戸の外から、妖幻坊の高宮彦がやってくると五月が知らせる声がした。高姫は宮子に命じて部屋を片付けさせた。
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04 00 - 本文
04 16 〔1331〕
小北山では、初と徳の両人が文助に乱暴して、杢助が落としたブンブン玉を奪って行ったことでちょっとした騒ぎになっていた。お菊は文助からその話を聞いて怒り、お千代に文助の介抱を任せると、初と徳を追いかけて飛び出した。
怪志の森に来てみると日が暮れてあたりは闇に包まれた。お菊は森の入り口にたたずんで思案にくれていると、ほど遠くない暗がりにウンウンとうめき声が聞こえる。
初と徳は、眼が覚めてみると玉を奪って逃げてきたときの動悸はまだ止まず、痛みも軽減していない。あたりを見れば、高姫と杢助は、自分たちを置いてどこかへ立ち去ってしまった様子である。
お菊は二人の話をすっかり聞いて、高姫と杢助が、曲輪の玉を持って逃げてしまったことを悟った。お菊は文助の声色を使い、幽霊のふりをして二人をおどかしにかかった。
初と徳は、高姫がまだその辺にいて、おどかしているのだと勘違いした。お菊は今度は高姫と杢助の声色を使い、高姫と杢助が二人を使い捨てにしたことをなぞって二人をたきつけた。そして高姫のふりをして、暗闇の中から杖で二人を殴りつけた。
二人は、高姫が暗がりから叩いているのだと思って怒り散らしながら右往左往している。お菊は杖を打ち振って手当たり次第に殴り倒し、笑い声を残すと森を立ち出で、息を殺して二人の様子を考えていた。
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04 17 〔1332〕
お菊は夜明け近くになってきたので、小北山へ帰ることにした。そして暗がりに落ちていた石をニ三十拾うと、初と徳がいると思われるところに投げつけた。そして、文助の仕返しをしてやったとすばしこく帰ってしまった。
初と徳は、さらにお菊が投げた石つぶてに額や鼻を打たれて、三日ばかりウンウン唸り続け、懐のパン切れをかじって飢えをしのぐ有様であった。
ようやく手足が動くようになった二人は、暗闇から二人を馬鹿にして殴りつけ、石つぶてを打ち付けたのは高姫と杢助だと思い込み、仇を打たねば置かないと杖を突いて進んで行った。
二人は足をチガチガさせながら浮木の森にやってきた。見れば、椿の根元に高姫が泥まぶれになり、羽織を裏向けに来て、大きな狸が二匹付き添い、椿の花をおとしてうまそうに密を吸っている。高姫は一生けん命にブツブツ言いながら、腐った竹筒に草をむしっては入れ、馬糞を掴んではねじ込んでいる。
初と徳は、高姫が大きな古狸に化かされているのを見ていると、狸は椿の葉を口にくわえ、花を頭にかぶり、三つ四つ体をゆさぶると、十四五の美しい乙女になってしまった。高姫は二人の狸が化けた乙女に手をひかれ、目をつぶったまま首を振って、立派な火の見やぐらの中に引っ張られていった。
二人は抜き足差し足で火の見やぐらの側に立ち、高姫と狸の様子を覗いてみた。見れば狸たちは正体を現し、高姫に泥をかけたり木の葉を引っ付けたりしている。しまいに刈った萱をどっさり抱えてきて、高姫の体を包んで火をつけた。高姫は火焔に包まれて苦しそうに助けを呼んでいる。
何ほど憎い高姫でも、こうなると初と徳は人情にほだされて、高姫を救い出して狸を捕えようと戸をけやぶって飛び込んだ。すると二人は糞壺の中に落ち込んでしまった。
初と徳は狸に化かされたことを悔しがり、椿の木の根元の泉で着物を洗い、乾くまで寒いから相撲を取って暖を取ろうと決めた。しかし二人は依然狸に化かされており、今度は小便壺へ飛び込んで、着物を洗ったと思っている。
着物を傍らの木の枝にひっかけると、四股をふんで相撲を取りだした。妖幻坊の眷属・幻相坊、幻魔坊をはじめとしてたくさんの古狸や豆狸が幾百千ともあたりを取り巻いて、二人の相撲見物をやっている。
そこへ宣伝歌を歌いながらやってきたのは、ランチ将軍に仕えていて今は三五教改心したケースであった。ケースには、たいへんな大相撲が広い馬場で始まっているように見えた。実際は入れ替わり立ち代わり、狸が初公と徳公相手に相撲を取っていたのだが、初、徳、ケースには人間のように見えていた。
ケースは相撲の取り口が下手なのに業を煮やし、着物を脱いで四股を踏み鳴らした。数多の見物はどっと沸いた。ケースが東の土俵に腰を下ろした。ケースが取り組みを見ていると、初と徳が尻を紫色に晴らせたまま代わる代わる土俵に上がっている。
ケースは、あまり強くないくせに何度も土俵に上がる二人の男について行事に尋ねた。行事は、相撲気違いで力強く、この土地の顔役だから、特別に何度も上げているのだと答えた。ケースは取り組みを申し出て土俵に上がった。
ケースは初と取り組んだが、なんだか相手の体がヌルヌルして臭くてたまらない。初の糞まみれの体がすべり、ケースはすかしを食って土俵の真ん中へ倒れてしまった。ケースはむかついて、四本柱を引き抜いて初と徳に打ちかかった。二人も柱を抜いて荒れ狂った。ついに三人は力尽きてその場に倒れてしまった。狸たちは腹つづみを打って笑いながらおのおのの巣へ帰って行った。
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04 18 〔1333〕
救世主の詠んだ詩を吟じながら旅装束に身を固めて月夜にやってきたのは、ランチ将軍の副官であったガリヤであった。ガリヤは浮木の森の陣中で、村の美人マリーに慕われ密会を続けていたが、マリーはほどなくして亡くなってしまった。
ガリヤはひそかにマリーの死骸を浮木の森の墓所に葬り、墓の石を目印に立てていつか時を見て立派に祀ってやろうと思っていた。治国別に帰順して三五教の使徒となり、治国別の添書を持ってケースと共に斎苑の館に修業に行く途中、一人で墓所に参るためにケースを先に行かせたのであった。
ガリヤはマリーの墓にて慨嘆久しうし、涙をそそいだ。そしてまた宣伝歌を歌いながら月夜を進んで行った。ガリヤは椿の木蔭までやってくると、石に腰かけて煙草をくすべながら、浮木の森をながめて自分たちの身の上の移り変わりに想いを馳せていた。
ガリヤはいつの間にか大きな城郭が立っていることをいぶかしんでいる。すると人声がするので探り寄ってみれば、三人の男が真っ裸となって萱の茂みに何やら言い合っている。
ガリヤが様子を見れば、初、徳、ケースの三人が狸に化かされたことに気が付き、互いに名乗りあっていた。ガリヤは狸にだまされた三人の目を覚まそうと臍下丹田に息をつめ、ウーと発生した。三人は椿の根元に集まってきた。
一同が確認してみれば、初と徳が泉だと思っていたのは肥壺であった。枝にかけられた糞まみれの着物は異様の臭気を放っている。四人はこれはたまらぬと北へ北へと逃げて行った。
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04 19 〔1334〕
ケースが脱いだ着物も見当たらなくなっていた。北へ進んで行くと、川があったので三人は横たわって体を洗い、川端の草をちぎって手ぬぐい代わりにこすり、ようやく臭気を洗い落とした。
一同がこれからどうするか思案していると、どこともなく笠、蓑、衣類が降ってきた。よくよく見れば自分の着物で、臭気はなく乾いている。初と徳は、狸が神様に叱られて洗濯をしたのだ、これも信仰のおかげだと感謝している。
実際は、半ば腐った菰が立派な衣服に見えていたのであった。三人は嬉しそうに着かえた。ガリヤとケースは斎苑の館に急ごうとしたが、初と徳は、三五教の敵である杢助と高姫がこのあたりに隠れているに違いないから、そいつらをやっつけて行こうと引き留めた。
初と徳は、小北山で杢助と高姫が明かした企みをガリヤとケースに説明し、自分たちも使い捨てのひどい目にあったことを語った。ガリヤとケースもこれは聞き捨てならないと、萱の草原に二人が潜んでいないか探し始めた。
すると四人を呼び止める者がある。初と徳は、お千代とお菊が四人を呼んでいるのを認めた。お千代は、高姫と杢助が魔法を使って浮木の森に城郭を構え、三五教の信者を引っ張り込むのみか、説得に向かった松姫も捕えて牢にぶち込んでしまったのだ、と助けを求めた。
初と徳は、松姫と助けて自分たちの裏切りを許してもらおうと思い直し、ガリヤとケースは松姫が松彦の女房だと知って、どうしても助けなければと、お千代とお菊に案内されて曲輪城の表門を指して進んで行った。
すると向こうから綾錦をまとった美人が七八人、手に駕籠を持ち花を摘みながらやってきた。その華やかさとしとやかさに、四人の男は魂を奪われて見とれている。
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04 20 〔1335〕
四人は城の大門をくぐった。八人の天女のような美人の中で、一番年かさと思しき女が進み出て、自分はコーラン国如意王の王女・初花姫だと名乗った。そして、コーラン国はにわかにここに国替えをして、初稚姫によって三五教に変わったところだと四人を城に招いた。
初は、初花姫に杢助・高姫という二人組が来なかったかと尋ねた。初花姫は、杢助と高姫も教えを説いており、初稚姫よりも細かく教えてくれるのでとてもお世話になっていると答えた。
そして、松姫がここにやってきて高姫、杢助と大変な争論が起こったことは事実だが、松姫がその後どうなったかは自分は知らないと答えた。
お千代は、自分の母は確かに牢にぶちこまれたと抗弁した。初花姫は妖幻坊の眷属が化けているのだ、そして自分もこの通り、と言うと、お千代とお菊は大きな古狸となって城の奥に這いこんでしまった。
四人は不審に堪えず、初花姫の正体を見届けてくれようとにらんでいる。初花姫は、四人の神力によってあの女たちの正体が割れたのだと答えた。そして城には悪い狸がたくさんいるから神力の強い方々に退治してほしいと四人を招き入れた。
初花姫は、以前ランチと片彦を招き入れた部屋に四人を案内し、おのおの椅子につかせた。初花姫は父に報告してくると言って、侍女を伴って立ち去った。四人は初花姫と侍女たちの美しさを涎を垂らして語り合っている。
すると光ったものを衣服一面にちりばめた妙齢の美人が入ってきて、自分は初稚姫だと名乗った。そして杢助と高姫という三五教の裏切り者がこの館に入り込み、自分の説を攻撃し、ランチと片彦を捕え、松姫をどこかに隠してしまったという。初稚姫は四人に、杢助と高姫の魔法を打ち破るために力を貸してほしいと頼み込んだ。
一同が杢助と高姫の調伏と、ランチ・片彦・松姫救出の相談をしていると、杢助と高姫がドアを押しあけて入ってきた。杢助と高姫は、初稚姫に打ってかかる。初稚姫は椅子を取って渡り合っている。四人も椅子を取って杢助と高姫に打ってかかった。
杢助と高姫は棍棒を投げつけてこの場を逃げ出した。初稚姫は、急場をすくわれたことを四人に感謝した。
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04 21 〔1336〕
四人が座っていた椅子は、いつの間にか膨張して角を生やし、毛が生え、牛のような動物になってしまった。怪獣は声をそろえて笑い出した。そして四人を背中に乗せ、廊下をドスドスと駆け出し、広場に出た。
初稚姫も同じ怪獣にまたがり、四人を呼ばわりながら追いかけてくる。怪獣は空の上高く上ったり下りたりするようになり、四人は振り落とされないよう背中にくらいついていた。
ケースは、飛び下りなければどこまで連れて行かれるかわからないと、他の三人に思い切って飛び下りようと呼び掛けた。四人がいっせいに飛び降りたとみるや、元のところにテーブルの脚をつかまえて汗をかいて気張っているだけであった。
初稚姫は以前のまま椅子に腰かけてニタニタと笑っている。四人が奇怪な夢について話し合っていると、丸いテーブルが狸のような顔をだし、毛を生やしてドアの外へ這って行った。
初稚姫はみるみるうちにいやらしい鬼女となって、耳まで裂けた口を開き、牛のような舌を出して四人に向かって噛みつきにきた。四人は肝をつぶして駆けだした。
向こうから初花姫が七人の美女を連れてやってきた。四人はあせってそこまで逃げようとしたが、同じところに足をバタバタとやっている。後ろから初稚姫の妖怪が暑い火のような息を吹きかける。初花姫たちも怪しい化け物に変わって噛みつきに来た。
たちまち家は前後左右に回転した。見れば傍に泉水がある。四人は勾玉型の泉水に身をおどらせて飛び込んだ。四人の体は沈んで行き、水のない岩窟についた。四人は悲鳴を上げて助けを呼んだ。どこともなしに桃の花びらが四人の顔に落ちかかった。
よくよく見れば、四人は浮木の森の火の見やぐらの傍にある勾玉型の泉水のかたわらで、桃の木の根元に阿呆のような顔をして眠っていたのである。東の空は茜さしはじめ、古狸が一匹、頭に桃の花びらを付着させながら這っている。
ガリヤは神に油断の慢心の罪の赦しを乞うた。
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(C) 2016-2017 Iizuka Hiroaki