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文献名１惟神の道
文献名２よみ（新仮名遣い）
文献名３満蒙出征の辞よみ（新仮名遣い）
著者出口王仁三郎
概要
備考大正十三年二月一二日、祥雲閣で十数人の熱心な信者を前に行なった演説であるが、入蒙記第六章の抜萃と思われる
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目次メモ
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本文
私は日本肇国の大精神を天下に明らかにし、万世一系の皇室の尊厳無比なることを、あまねく天下に示し、かつ日本肇国の精神は征伐に非ず、侵略に非ず、善言美詞の言霊を以て万国の民を神の大道に言向和すにある事を堅く信じます。すべて世界の人民を治むるは、武力や智力では到底駄目です、結局は精神的結合の要素たる、すべての旧慣に囚はれざる新宗教の力によるより外はないと信じます。
つらつら現今の我が国情を考へて見まするに、我が国の人口は年々七十万づつの増加を以て進みつつあると統計学者は云つてをります。この割合で進んで行けば大正三十一年には七千七百万の同胞となり、同じく五十一年には一億余万人に達すると云ふ計算になります。とにかく我が国人口の増加は年々の事実の証明するところであつて、これに要する食糧品たる米麦が現に年々七八十万石の不足を告げつつある事もまた事実である以上、この人口と食糧との不均衡は我が国存立の上において一問題たらねばなりませぬ。殊に我が国家将来の存立及び発展については、単に米麦が満足に得らるるのみではすまされませぬ。日進月歩の世界の前途には鋼鉄や綿類や毛布、皮革等を主として幾多の物資が無限に需要さるることは今日においても明らかなる題目であるのに、我が国においてはこれを将来に充実せしむべき安全なる政策が立つてをりますか。実に思うて見れば心細い次第であります。一朝有事の時は海外からその供給を断たれたならば、我が国は如何なる方法を以てその需要を充たす事が出来ようか。思うてここに至れば実に慄然たらざるを得ないのであります。
歴代の我が国為政の局に当る人々は国家の前途を焦慮した結果、植民政策なるものを立て、過剰の人口を他に移してその移住者の生活の安定を得せしめむとして居ります。先づ第一に合衆国の如き異人種憎悪に富んでゐる国土のほか、メキシコや南米や南洋諸島を目的としてゐるやうですが、国家万年の長計からすれば、これらの遠隔の諸地方へ農耕移民を送つたばかりでは済みますまい。我が接境の比隣には国家としての支那や露西亜があり、相互の関係が善にもあれ悪にもあれ、到底離るべからざるものがあるのであります。また我が領土内には朝鮮あり、その将来についてはいはゆる識者と云はるる人々が不断に頭をなやましてゐるやうであります。
我が皇国がその永遠存立を安全ならしめ、関係諸国と共に共存共栄の福利を楽しまむとすれば、是非ともこれに添ふべき一大国策を樹立せなくてはなりませぬ。いはゆる皇国の満蒙政策は即ちこの目的精神から樹てられたものであります。けだし満蒙の地はその位置が支那本部と露領シベリヤとの中間にはさまり、我が朝鮮とは鴨緑の水を隔てて相連つてゐるのみならず、あらゆる産業の資源備はらざるはなく、開発の前途は実に春風洋々の感があり、しかも近世の歴史的関係は必然的に、我が皇国がその開発任務を負はねばならぬやうになつたのであります。
故に今我が国が上下一致努力して、既定の開発策を徹底せしむるには、我が対支政策全部の基調を満蒙におくこと、行き詰つた日支関係の現状を相互的に善導し得ると共に、将来永遠の円満策を樹立することが出来るでせう。またロシアとの交渉の中継点とする事が出来るでせう。朝鮮人多数に生活の安定を得せしめて、朝鮮統治上の有力なる補助とすることも出来るでせう。人口食糧調節の上にも実に偉大なる効験をなし得らるるでありませう。また我が重要物資の供給地たらしむる事も出来るでせう。我が皇国国防の第一線の要地たらしむることも出来るでせう。
しかしながら満蒙の経営は議論と実地は大変に径庭がある。いかなる有識者の徹底せる立策といへども、肝腎要のその人を得ざれば到底完成するものではない。渺々として天に連る満蒙の大沙漠、ここには無限の富源が天地開闢の当初より委棄されてある。この蒙古の大平原こそ天が我が国に与へたる唯一の賜物でなければならぬ。
我が国の為政者が満蒙開発策として満鉄を敷設し、鄭家屯や、洮南府や、パインタラの東蒙古の一部に少しばかり手をつけてゐるくらゐでは、到底この開発策はものにはならないであらう。どうしても我が皇国存立のため、東亜安全のため、世界平和のために、我が国が率先して天与の大蒙古を開拓せなくてはならない位置にあることを私は堅く信じます。そしてその目的を達するには旧慣に囚はれざる新宗教の宣伝を以て第一の手段方法と考へるのであります。
我が国における既成宗教の現状を見れば、宗教の発展どころか現状維持に汲々たる有様ではありませぬか。気息奄々として瀕死の境にある我が国の既成宗教が、いかにしてこの大事業に着手するの余裕がありませう。また一人の英雄的宗教家の輩出せむとする気配もなき我が国の瀕死的宗教に頼るの愚なることは言をまたないでありませう。
故に私は日本人口の増加に伴ひ発生する生活の不安定を憂慮し、朝鮮における同胞の安危を憂ひ、次いで東亜の動乱の発生せむ事を恐るるのあまり、いよいよ神勅を奉じて徒手空拳、二三の同志と共に長途の旅に上らむとするのであります。大胆と云はうか無謀と云はうか、ほとんど夢に等しい経綸を胸に描いて出て行く私としては、実に名状すべからざる感慨に打たれるのであります。しかしながら私は天地創造の神を信じます。天下万民のために十字架を負ひ、あらゆる艱難を嘗め、生死の境に出入することをむしろ本懐とするものであります。今の時において、満蒙開発の実行に着手せなくては、金甌無欠の我が皇国も前途はなはだ心細いことになるであらうと憂慮に堪へないのであります。（大正十三年二月）
つらつら現今の我が国情を考へて見まするに、我が国の人口は年々七十万づつの増加を以て進みつつあると統計学者は云つてをります。この割合で進んで行けば大正三十一年には七千七百万の同胞となり、同じく五十一年には一億余万人に達すると云ふ計算になります。とにかく我が国人口の増加は年々の事実の証明するところであつて、これに要する食糧品たる米麦が現に年々七八十万石の不足を告げつつある事もまた事実である以上、この人口と食糧との不均衡は我が国存立の上において一問題たらねばなりませぬ。殊に我が国家将来の存立及び発展については、単に米麦が満足に得らるるのみではすまされませぬ。日進月歩の世界の前途には鋼鉄や綿類や毛布、皮革等を主として幾多の物資が無限に需要さるることは今日においても明らかなる題目であるのに、我が国においてはこれを将来に充実せしむべき安全なる政策が立つてをりますか。実に思うて見れば心細い次第であります。一朝有事の時は海外からその供給を断たれたならば、我が国は如何なる方法を以てその需要を充たす事が出来ようか。思うてここに至れば実に慄然たらざるを得ないのであります。
歴代の我が国為政の局に当る人々は国家の前途を焦慮した結果、植民政策なるものを立て、過剰の人口を他に移してその移住者の生活の安定を得せしめむとして居ります。先づ第一に合衆国の如き異人種憎悪に富んでゐる国土のほか、メキシコや南米や南洋諸島を目的としてゐるやうですが、国家万年の長計からすれば、これらの遠隔の諸地方へ農耕移民を送つたばかりでは済みますまい。我が接境の比隣には国家としての支那や露西亜があり、相互の関係が善にもあれ悪にもあれ、到底離るべからざるものがあるのであります。また我が領土内には朝鮮あり、その将来についてはいはゆる識者と云はるる人々が不断に頭をなやましてゐるやうであります。
我が皇国がその永遠存立を安全ならしめ、関係諸国と共に共存共栄の福利を楽しまむとすれば、是非ともこれに添ふべき一大国策を樹立せなくてはなりませぬ。いはゆる皇国の満蒙政策は即ちこの目的精神から樹てられたものであります。けだし満蒙の地はその位置が支那本部と露領シベリヤとの中間にはさまり、我が朝鮮とは鴨緑の水を隔てて相連つてゐるのみならず、あらゆる産業の資源備はらざるはなく、開発の前途は実に春風洋々の感があり、しかも近世の歴史的関係は必然的に、我が皇国がその開発任務を負はねばならぬやうになつたのであります。
故に今我が国が上下一致努力して、既定の開発策を徹底せしむるには、我が対支政策全部の基調を満蒙におくこと、行き詰つた日支関係の現状を相互的に善導し得ると共に、将来永遠の円満策を樹立することが出来るでせう。またロシアとの交渉の中継点とする事が出来るでせう。朝鮮人多数に生活の安定を得せしめて、朝鮮統治上の有力なる補助とすることも出来るでせう。人口食糧調節の上にも実に偉大なる効験をなし得らるるでありませう。また我が重要物資の供給地たらしむる事も出来るでせう。我が皇国国防の第一線の要地たらしむることも出来るでせう。
しかしながら満蒙の経営は議論と実地は大変に径庭がある。いかなる有識者の徹底せる立策といへども、肝腎要のその人を得ざれば到底完成するものではない。渺々として天に連る満蒙の大沙漠、ここには無限の富源が天地開闢の当初より委棄されてある。この蒙古の大平原こそ天が我が国に与へたる唯一の賜物でなければならぬ。
我が国の為政者が満蒙開発策として満鉄を敷設し、鄭家屯や、洮南府や、パインタラの東蒙古の一部に少しばかり手をつけてゐるくらゐでは、到底この開発策はものにはならないであらう。どうしても我が皇国存立のため、東亜安全のため、世界平和のために、我が国が率先して天与の大蒙古を開拓せなくてはならない位置にあることを私は堅く信じます。そしてその目的を達するには旧慣に囚はれざる新宗教の宣伝を以て第一の手段方法と考へるのであります。
我が国における既成宗教の現状を見れば、宗教の発展どころか現状維持に汲々たる有様ではありませぬか。気息奄々として瀕死の境にある我が国の既成宗教が、いかにしてこの大事業に着手するの余裕がありませう。また一人の英雄的宗教家の輩出せむとする気配もなき我が国の瀕死的宗教に頼るの愚なることは言をまたないでありませう。
故に私は日本人口の増加に伴ひ発生する生活の不安定を憂慮し、朝鮮における同胞の安危を憂ひ、次いで東亜の動乱の発生せむ事を恐るるのあまり、いよいよ神勅を奉じて徒手空拳、二三の同志と共に長途の旅に上らむとするのであります。大胆と云はうか無謀と云はうか、ほとんど夢に等しい経綸を胸に描いて出て行く私としては、実に名状すべからざる感慨に打たれるのであります。しかしながら私は天地創造の神を信じます。天下万民のために十字架を負ひ、あらゆる艱難を嘗め、生死の境に出入することをむしろ本懐とするものであります。今の時において、満蒙開発の実行に着手せなくては、金甌無欠の我が皇国も前途はなはだ心細いことになるであらうと憂慮に堪へないのであります。（大正十三年二月）
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