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文献名1大地の母
文献名2第6巻「天雷の声」
文献名3合縁奇縁
著者出口和明
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
OBC B138906c06
本文の文字数30370
本文のヒット件数全 2 件/稚姫君命=2
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本文  人々の心は落ち着いた。気がついて周囲を見廻すと、もう秋の農繁期はすぐそこであった。役員信者はそれぞれ現実に戻り、野良着をつけて黄金色に揺れる田に出て行く。福島寅之助も八木に残した妻子を思い出し、綾部に心を残しながら立ち去った。
「こんな筆先が出ましたのやで。先生、読んでおくれなはれ」
 珍しく直自身、喜三郎を奥の間に招じ入れて、一枚の和紙を押しやった。日付は旧九月十六日(新十月二十日)。何日か直の手元にあったことになる。読みとりにくい平仮名をたどりたどり声を上げて読む。
 ――出口の神と日の出の神とが、三千世界の元になるのざぞよ。出口澄と上田どのが、かわりをいたすのざぞよ。お世継と相定まりたぞよ。
「先生、この筆先をどう思いなさる」
「はあて……」
 直は一人うなずき、言葉を続ける。
「艮の金神さまが先生とお澄を結婚させるように命じてなさる。違いますやろか」
「何ともわしには分かりまへん。それでも勝手な話やなあ」
 喜三郎は筆先を押し返し、複雑な表情で考えこんだ。
「前にもときどき、それらしい筆先が出たことがあります。神さまにうかがうと『澄の婿は定まっておる、上田どのである』と言いなさる。神さまのお決めなさることですさかい、人間心で逆らえるものやござりまへん。それでも今まで迷っていました。先生とお澄が……」
 絶句した。出口直とおよそ対照的な上田喜三郎。今まで喜三郎の人もなげな行動にいやな顔一つ見せなかったのは、因縁ある身魂という神の言を信じてであろう。しかし最愛の娘の婿、それも世継とあれば、改めて心さわぐ思いがするのであろう。
 直は言葉を継いだ。
「お澄には、昨日わたしから言いました。神さまの言いなさることやさかい、お前は上田先生の嫁になるのやで、と。そうしたら『ふーん』と別に驚いたふうでもなく、うれしそうでも悲しそうでもなく……」
 直は寂しげな微笑を口元に刻んだ。
「女の結婚いうたら、そんなものでしょうな。お澄は何事にも無頓着な娘ですさかい……先生、どうぞよう考えてみておくれなされ」
 広前は、急に静かになった。喜三郎は、神の経綸の地綾部の山野を眺めて考えたかった。自分の一生を託し、ここに骨をうずめるべきか、否か。
 木枯しが冷たく打裂羽織の裾を吹き抜けていく。熊野神社に詣でた足は、転じて本宮山(九十一メートル)への杣道にかかっていた。
 戦国時代の綾部城の位置については、定説がないという。東は山家・八田、南は京街道へ通ずる須知山峠・長宮峠を押え、氷上、多紀を背に若狭・舞鶴への街道を制圧し得るこの山は、絶好の築城地といえよう。昔、山上には底知れぬ井戸があり、土塁と思われる遺跡や、麓には抜け穴などもあったと聞く。
 喜三郎は中腹の松原に折れ入って、ふと枯松葉と笹に覆われた一点に近寄り、とんと踏んだ。地底からかすかに冴えた響きが返った。まるで伏せた桶の底を叩いたように。全山に潜む神霊の強い息吹きが、地の底をゆり動かして立ちのぼるのを、喜三郎は感じた。
 山頂の槌の音に誘われて、松林を後にさらに登る。足立らに退綾をせまられた山小屋の傍で、痩せた老人が一人、よれよれの単衣をはだけ、肋骨を風にさらして家造りの最中であった。
「おっさん、何してるねん」
 老人は手を休め、不機嫌な目を向けた。
「見た通りやろ。こっちの小屋が潰れそうなさかい、新築しとる」
「山の持ち主、知っとるこ」
「知らいでかいな。この本宮山は改森六左衛門(五十七歳)の持ち山や。裾から頂上まで丸ごとや」
「おっさんはなんぼで地所借りとるのや」
「阿呆、わしの山やでよ。改森六左衛門はこのわしじゃさかい」
「へーえ、改森はん、この山、水が出るけ」
「井戸さえ掘ったら、なんぼでも水が出るでよ。あんた、この山のどこなっと貸したげるさかい、家造りなはれ」
「家造る金なんかあるかいな」
「そんなことはないない。あんた、金神さんとこにおってん先生じゃろ。あんたみたいに汚ない恰好しとったら、お賽銭上がっても出て行き場がないさかい、金はたまる一方じゃろかいや」
 なるほど、そんな考え方もあるのか。喜三郎は、山持ち長者のこの老人と自分の姿を見較べて感心した。どっちもどっちである。
 改森は手槌を投げ出し、熱心に言い始めた。
「家造る金を持たぬと言うてんなら、わしが金貸してあげるで。お直婆さんもこの山はお気に入りや。貸してくれ言うて、さいさい来ちゃったわな」
「おっさん、金も貸すんかいな」
「おう、本職はそれじゃい」
 欲深げな改森爺さんに調子を合わせて、茶目の虫が動く。
「一山全部の借り賃はいくらや」
「一年で大まけにまけて千円――」
「そら高い。無茶や。いっそ売らんかい」
「よっしゃ、一万円、金神さんの因縁ある山やそうなが、一万円では安い、安い」
「おっさんがこの山手に入れた時は、何ぼやった」
「そうやな。わしが九鬼の殿さまから買うた時は、一万八千二百十二坪で六百円……」
 口すべらして、あわててごまかす。
「いや、六千円……なんせ昔のことやさかい。山の樹いうたらほとんど桧ばかり……買物やでよ」
「よし、買うか」
 改森は目の色を変え、
「一万円なら、なんぼも買手があるのや。どうしても欲しかったら、やっぱり二万円出してもらわな……」
「しゃあない、二万円出すか」
「いやいや、置いといたらまだ値の出る山や。四万円からびた一文かけても売れんでよ」
 急いで真黒な土瓶の茶を汲み、盆に湿った煎餅を出してきて、改森は真剣にせまった。
「とにかく、手つけ千円出しなはれ」
「今はこの通り、千円どころか一円もない。さっぱりしたもんや」
 喜三郎は、内懐をひろげてばたばたさせた。
「二十年後には千円の手つけ出したろ。それまで売らんと待っとれや」
 改森は目をしょぼつかせた。
「二十年も寿命が持たん」
「爺さんは死んでも、本宮山は残るわい。息子はんが喜ぶやろ」
 出された煎餅を全部食い、土瓶の茶をすっかり空にして、喜三郎は立ち上がった。
「明日また遊びに来てくれや」
 親父は、未練たっぷりに背後から叫んだ。
 広前に帰って、本宮山の改森爺さんの話をすると、直は微笑んだ。
「二十年は、わたしも生きられまへんなあ。けど本宮山は、御三体の神さまの鎮まります聖場ですさかい、いずれ大本のものとなりますで」
 大本――この言葉は耳新しくはない。いつからかお筆先にも出、直が言い、信者たちが口にしていた。たしかに団体名は金光教の広前から金明会へと変わったが、依然として大本。「ここが世界の大本であるから、そのあかしに万年青を植えたぞよ」と明治二十五年に神が宣して以来かも知れぬ。
 喜三郎は本宮山の西方、町の南を壁のように区切って立つ四尾山(二百八十七・六メートル)に足をのばした。朝霧が湧き上がる裾野から四つの頭を寄せ合った頂の稜線。綾部の象徴でもあった。
 尾上に立って国見した。金峰山・御岳・大江の山なみが錦をまとうてめぐる底に、ひっそりと綾部があった。由良川の上流和知川がゆったりと白銀の帯を流すあたりに点在する集落も、ちまちまとごく僅か。野の果てに郡是製糸の煙突の煙が一筋細くなびいている。
 金明会の所在を捜したが、目に入らぬ。「末で都にいたすぞよ」と筆先のいう綾部は、山と川の清らかな里、あまりにも鄙びた町であった。末にもせよ、この田舎が都となるなぞ、まともに思いみるさえ笑止である。
 帝のおわす都東京は雲居はるか、喜三郎のまだ踏みもみぬ彼方である。
 いま人気もない山頂にあって、喜三郎は、己れの出生の秘密を思う。古い新聞を丹念にめくって、喜三郎は名のみを知る父の実像を探ったことがあった。
 十年前の明治二十二(一八八九)年二月二十一日、大日本帝国憲法発布の日、皇族列次が定められている。
 ――皇族列次ハ実系ノ遠近ニ従ヒ、皇位継承ノ順序ニ依ル。但シ親王叙品宣下アリシ者ニ限リ特殊ノ席次ヲ以テシ一般ノ列次左ノ通リ定ム。
 熾仁親王・晃親王・彰仁親王・貞愛親王・朝彦親王・能久親王・威仁親王……名を連ねる二十二名の皇族中、筆頭に位する有栖川宮の御名に、喜三郎は息をのんだ。
 御病弱な第三皇子明宮嘉仁親王はこの時わずかに十一歳で、他に皇子はいない。いかに重大かつ微妙なるお立場であったろうか。しかもいったん皇統が移れば、子から孫へ、曽孫へと一筋につながる。
 有栖川宮の御子は男なら殺される――母世祢を怯えさせ、故郷に逃げ帰らせた巷の噂を笑ってよいだろうか。よしんば宮がわが子の出生を悟っていたとしても、その幸せを願えばこそ、やはり野に捨てておかれたのではあるまいか。
 とすれば、宮の血を享けた喜三郎の異母兄弟が、まだどこぞに人知れず育っているかも……孤独のうちに逝かれた父宮……一人の実子をも抱くことなく……。
 手さぐりの想像は果て知れず広がる。想いは胸をこがし、圧しつぶしつつ、一方、空しさにのたうった。
 ――嘘だ、何でわしなどが……途方もない夢を見とるのや……母さんの一人合点や。止めてくれい。わしはわし、百姓の伜でたくさんやわい。
 信じ、疑い、いつもの結論に落ちると、喜三郎は四つの尾根を端から走った。四尾山は世継王山ともいうらしい。
 ――世継王か、ははは……皇統の世継を恐れ捨てられた子が、今、神から三千世界の世継を強いられる。妙なこっちゃで。
 峰吹く木枯しに、紅葉が舞い散る。
 出生の謎だけではなかった。いま喜三郎を惑乱させるもの。出口直と筆先、その筆先で決めつけられる世継、澄との結婚、艮の金神と小松林命……正か邪か、嘘か真実か、何もかも何故にこうも迷い、からみ合い、入り組み、わが行手に立ちふさがってくるのか。卑小非力なる己れの姿、貧しい生い立ち。
 そのくせ、故郷の穴太の山に立って神への憧れをこめ、鳴り鳴りて鳴り止まざる天地の五大父音に言霊を合わせた少年の日。その夢は今も失せず、血潮となってたぎっている。
 卑小と己れを観ずるのも真実。一転して神と共にある自分を観る時、天地を動かす力の内在を信ずるのも、いつわりない喜三郎の心であった。
 峰続きに藤山(俗称寺山、二百メートル)へ渡った。立木のない山頂に一つ、扇松と名のある巨松がそびえ立っている。芝居の触れ太鼓打ちの爺さんが、扇松の根方に坐って、渋茶を飲んでいた。
「たたかせてくれへんこ」
「おう、やってみな」
 爺さんは気さくに茶をすすめ、打ち方まで教える。
「トコトントン、トコトントン……」
 浮かれ調子は野山を越え、稲田を渡って、青空遠くこだましていく。両腕に力をこめ、次第に熱っぽく、果ては乱調子に、喜三郎は心をこめて打ち続けた。
 ――見ていてくれい。綾部は末で都にしたる。神の聖都に。この触れ太鼓の音の届く限りは……。
 藤山の南稜を下って若宮神社に詣でた。苔むした老杉の立ち並ぶ小暗い森に、仁徳天皇の霊が鎮まっている。
 数知れぬ烏の群が夕空に立ち舞った。百の石段を下り、旧士族の家がまばらな上野を通り、広前に着くと、直が庭先に立っていた。銀色の髪が夕陽に映えてまぶしい。
「四尾山から国見していました……」
 帰着の挨拶をする。
「それは結構でした。一度は登ってもらいたいと思っておりました」
 直の瞳がなごんで、藤山の尾上を遠く見た。
「懐かしい音がしてましたなあ。国替え(死去)しましたわたしの夫は、芝居が好きで、あの触れ太鼓の音さえ聞いたら、どこにいても、とんで出ましたのや……」
 珍しい思い出話のあと、直の目は喜三郎に戻った。
「けど、あの調子は、打つ人が違うようや。先生のいたずらですなあ」
 喜三郎は、赤くなってうなずいた。やがて祐助が、続いて澄が、四方平蔵の手を引いて帰ってきた。
「先生、どこ行ってなはった。無断で姿かくしてもろたら、どもならん」
 祐助が目に角を立てて言った。額から汗がこぼれている。
「また足立はんやらにつかまって迷惑かけられとってやないかとお澄はんが心配してじゃさかい、位田の方を捜してましたんやで」
 平蔵がいうと、澄が笑った。
「母さんの言うちゃった通り、心配なかったなあ。薄暗うなったら、先生捜しに行ったのやら、平蔵はんの手を引いて散歩に出たのやら分からへん」
「先生は、神さまの御用を継ぎなさる大切なお体ですさかい、どうぞ一人歩きはせんように……」と、直が静かに言いそえた。
「すみまへん。これから気いつけます」
 子供のように頭を下げる喜三郎。
 この平和な人里で、一人歩きもできぬ境遇が悲しかった。

 杞憂は現実となる日がきた。
 農繁期も過ぎて、上谷はまた春蔵らを中心に修行者のたまりとなっていた。
 足立正信らのすすめで、喜三郎は上谷まで修行者の様子を見に出かけた。春蔵が愛想よく出迎えて、修行場を案内する。福島寅之助がいないせいか、比較的秩序立っており、愁眉を開く。夕暮れ近く四方家を辞そうとすると、「綾部に用事があるさかい送らしてほしい」と春蔵が申し出た。
 寒かった。初雪の白を見るのも近かろう。喜三郎が先に立って、懸崖の細い渓道を伝い歩く。俗にいう地獄谷にさしかかった。何故か羽織の紐が解けてすっと肩から落ちる。異様な気配が、夕霧にまじって立ちのぼった。喜三郎は羽織を拾うふりして、ひそかに心を整える。
 千仭の谷間をひかえる近くの茂みに、殺気をこめて伏した人影を霊視する。いる、いる、それも十人。喜三郎を谷間に投げ捨てる魂胆まで見え透いた。
 羽織を拾いつつ、傍の太い割木をつかんで崖を背に体を開く。
「春蔵、わしはうしろに目がない。先を歩け」
「先生、何してんです」
 立ちすくむ春蔵の面には、血の気もない。
「百姓と車力で鍛えたこの腕っ節が恐かったら、言うことを聞け」
 春蔵は震え出し、喜三郎の面前をようやく渡って綾部の方へ逃げ出した。喜三郎は素早くねじり鉢巻し、腕をまくって夕闇に叫ぶ。
「出てこい、暗殺隊。命限りの勝負や。お前らに殺されるような、安い命やないわい」
 がさごそと逃げ出す何人かの足音。まだ二、三人、松の木陰に息をひそませる男たちの姿が映る。
「こら、まだ隠れてけつかる奴、出てこなんだら、こっちから行くぞ」
「先生、夜道は危ないさかい、お迎えに来ました」
 機先を制せられて、ふてぶてしく現われたのは谷口熊吉。その後から竹原房太郎(二十三歳)・四方藤太郎・村上房之助が立ち上がった。
「ど阿呆、そんな出迎えがあるけい。わしが見えんと思うか藤太郎、お前まで審神でけんのか」
 思わず悲痛な叫びになった。
 四方藤太郎が大地に手をついて泣き声を上げた。
「先生、こらえとくれなはれ。悪神につかれて、途方もない考えを起こしました」
 竹原も村上も跪いた。熊吉一人、腕組みして横をむく。
「ともかく先に行け。谷口、お前が先頭や」
 熊吉がしぶしぶ先に立ち、夕闇せまる谷道に出る。
 根は善良で、純真な可愛い男たちなのだ。それでも喜三郎抹殺の企てに乗って出る、ただお道のために。宗教の毒性を痛感しなければならなかった。目の見えぬ者が、目の見えぬ者の手を引いて堕ちて行くのだ。血みどろの地獄界に苦悶する人の多くが、意外にも宗教家・教育家・思想家・政治家・軍人・医者などであるように。
 金明会の門前にすえられた龍神岩に、赤い真綿と白い真綿を重ねかけ、縮緬の紐で縛ってあった。
 四方祐助が待ちかねて迎えた。
「先生ご無事でしたかい。教祖さまが大変にご心配で、『先生の命が危いさかい、お呪いする』言うちゃって、龍神岩にあんな飾りをつけちゃったんですわな。赤白の真綿を重ねたのは、艮の金神と坤の金神さま。結んだ赤い紐は龍宮さまじゃげな。春蔵はんが蒼い顔して先に帰ってきて黙って考えこんどってやが、途中、何かござしたかい」
「いや、別に」
「へえ、教祖さまのお力はなした大したものじゃいな。大難を小難どころか、無難にすまさせちゃったんやなあ。ともかく教祖はんがお呼びじゃで」
 同行の四人を従えて直の部屋に入る。足立正信・中村竹吉・四方春蔵がかしこまっていた。
「あなた方が何ほど狙うても、天地の神さまが先生を守ってござる。及ばぬ望みを捨てて、今日から先生の教えに従っておくれなされ」
 娘のように澄んだ直の声がびりびりと響き渡って、聞く者は恐怖に震える。
 谷口熊吉が狂ったように訴えた。
「足立はんが悪いのや。わしらは、足立はんの命令に従っただけどす。わしかて初めはいろいろ意見したんどすけど、足立はんに言い負かされてしもて、上田先生を殺すことが神さまのお考えじゃと信じたんどす」
 足立の巨体が動いて、谷口の頭をなぐりつけた。
「なにぬかす。お前と春蔵と中村が発頭人やないか。わしは相談こそ受けたが、まさかそんな……本気でするなど……」
 中村竹吉は泰然としていた。
「わしは、先生の日頃の行動を、お筆先に照らして審神しとる。お道の妨害ばかりしてん先生なら、去んでん方がましじゃ……今度の計画を、わしは知らんとは言わん。それでもこんな腑抜けばかりで成功するとも思うとらんわな。今度のことは神さまの深いお気づけじゃさかい、かぼうて下さる教祖さまに甘えとらんと、先生もよい加減改心しなはれ。どうしても改心でけん人やと分かったら、わしは一人でも先生のお命をいただきますわいな」
 昂然と宣言する中村には、罪の暗さどころか、狂信的な情熱の輝きすらあった。
 四方春蔵が呟いた。
「谷口はんが言うちゃったことはみんな嘘や。一番悪いのは谷口はんや。わしらはみんな躍らされて……」
 小声であったが、誰の耳にもはっきり聞こえた。
 村上房之助が春蔵を押しのけ、蒼ざめきった声で言った。
「白状します。首謀者は谷口はん。地獄谷に突き落として先生を殺したら、自首して懲役に行く役はわしでした。『中ではお前が一番若いさけ、お前がせい』と谷口さんが言うちゃった。大本がよくなることならそれでもかまへんと思うていたのや……」
 谷口が立ち上がり、室外に飛び出した。誰も後を追わなかった。
 直が厳しい目を向けて、きっぱりと言う。
「どのような理由であれ、人の命を狙うなど、神さまの目から許されることではございまへん。そのような恐ろしい企みをする人は、只今限りこの広前に出入りすることは許しませぬ」
 六人の男たちは首うなだれて動かぬ。彼らにとって、直から絶縁を申し渡されることは死ぬ程つらかろう。喜三郎は、すでに彼らを心で許していた。笑ってとりなした。
「命に別条なかったのやさけ、もうよいがな。教祖はん、わしに免じて許したっとくれやす」
 直の頬にほっとした色が浮かんだ。喜三郎への義理から、心にもなく言ったのであろう。
 信者たちと直の心の交流に、ふと羨望を感じた。直は喜三郎をかばい、喜三郎もまた直を尊敬している。しかしどことなく双方、他人行儀の気の使いようを感ずる。他の信者たちのように、直のすべて、筆先のすべてに浸りきって無心になれぬ己れのせいであることを、喜三郎は知っている。審神の心を捨てきれない自分が寂しくもあった。
 谷口熊吉はさすがに綾部にいたたまれず、京都へ逃げ帰った。噂によると、綾部からはいて帰った泥草鞋を金明会京都支部に集まる信者に示し、
「綾の聖地の土を踏んだこの草鞋や。これをいただいてみい、万病が治るのやで」
 迷信家たちの頭にのせ、悦に入っているという。
 後日談になるが、一年後に谷口は一つ年上の妻を教祖とし、「綾部の出口直より偉い」と宣言、京都に艮教会を開き、大成教の管下に入って一時、泡のような信者たちを寄せ集めた。しかし金明会を離れたとたん、習い覚えた霊術がさっぱり効かなくなり、日向に氷と融けてしまった。

 役員信者たちの関心は、出口澄と上田喜三郎の結婚を暗示する筆先に集まった。
「お澄はんと上田が世継という筆先は確かに出とる。が、お澄はんと結婚せいとはどこにも出とらんやないか」
 十八歳という若年にも似ず、霊能力において一派を成す勢いの四方春蔵は、役員たちを集めて力説した。
「上田の行状を見てみや。今でさえ好き放題やのに、お澄はんを手に入れでもしたら、のぼせ上がって何しでかすか分からん。この大本を稲荷講社に横奪りされちまうわな」
 筆先一本槍、教祖一筋の中村竹吉も、この件に関しては春蔵と同調した。
「ほんまにあいつ、何しでかすか分らん気味悪いとこあるでよ。教祖さまは上田に騙されとってじゃ。お澄はんが気の毒なさかい、二人の結婚は命かけても防がんなん」
 足立正信が中心となり、同じ志を持つ役員間で謀議を重ねた。

 十二月一日、元屋敷の隣、元何鹿郡長大島景僕の土地家屋が大本の所有になった。宅地五畝二十八坪、木造瓦葺き二階建て本家一棟十九坪、附属建物一棟五坪で百円。戦死したとされる直の次男清吉の一時賜金二百五十円の中から購入した。
 大島は士族であり銀行に関係していたが、ある芸者に金をつぎこんで破産、家を売る羽目になったのである。
 明治二十五(一八九二)年の開教当時、帰神の直は、「この村は人民の住まいいたす村ではないぞよ。神の住まいいたす村、宮屋敷であるぞよ」と叫び続けた。赤貧の直が「大島殿、家売りて下されよ。四方殿、家持って立ち退いて下されよ」などと近所の家々に迫って失笑を買ったが、その実現の第一歩を踏み出したのだ。
 購入当時、この家屋は洗濯屋が借り受けて住んでいたが、家明け渡しについてはかなり紛糾した。交渉に行った世話役の横柄な言い種に怒って意地になった洗濯屋が居坐りを宣言し、実行したのだ。最後に喜三郎が乗り出して解決するまで、一年近くかかる。

 山姫の織り成す錦も散り果て、綾部の里に冬が早足で訪れた。
 田中新助の家に足立正信・四方春蔵らが集まって何か謀議しているとの福林安之助の内報で、喜三郎は黄昏の雪道を行く。田中新助の家は位田橋を渡った所、四方与平・四方純・黒田清などの家の近所にある。
 田中家の軒下に佇み、窓から洩れる彼らの密談を盗み聞く。察する通り、出口直と喜三郎を退隠させる相談だ。
 肩に積もった粉雪をはたき、喜三郎は玄関の戸を開ける。足立正信・四方春蔵・田中新助・塩見じゅん・四方純・黒田清の六人が、ぎょっとした顔で、土間に立つ喜三郎を見た。
「御苦労はん、話の筋は先程から聞かせてもろたで」
 喜三郎はのこのこ上がって、彼らの座に加わる。
 首謀者の足立正信が、開き直って口辺に嘲笑を浮かべる。
「金明会の会長はんともあろうお人が、他人の話を立ち聞きしやはるのどすか。こうなりゃはっきり申しましょ。お直さんと先生には、この際、すっぱりと隠退してほしいんどすわ」
「わしが邪魔なら、いつでも出て行ったる」
「口先だけではあかんのや。執着の強い先生やさかい、いざとなったら実行できまへんやろ」
「正直言うて、つくづくお前たちには愛想が尽きた。綾部に未練はあらへん」
「そらよかった。会長はんさえその気になってくれはったら、この悶着はすぐに治まる」
「お前らのわしを追い出したい気持ちは分かる。けど教祖はんの隠退まで、なんで望むのや」
「お直はんが先生をすぐかばいなさるさかい、お仕組みが成就せん。だいたい、お直はんは教祖じゃとお高く止まっとってやが、元はと言えば金光教が支持したお陰や。それでも先生が去んでんなら話は別でっせ。お直はんかて頼る者がないさかい、わしらの言うこともちっとは聞いてじゃろ。こうなれば、この足立正信がお直さんを立てて、立派に神さまにお仕えする」
「それで安心じゃ。そうと決まったら、綾部へ寄らずにこのまま園部へ行く。荷物は後で送ってくれ」
 激しく抵抗すると思った喜三郎の、案に相違した態度に彼らはとまどい、しばし沈黙が続く。
 足立正信の子を胎内に宿した四方純が、大きな腹を押えて、ためらい勝ちに口をはさむ。
「ちょっと待っとくれなはれ。いくら何でもこのまま去んじゃったら、信者として教祖はんに合わす顔がござへんでなあ」
「ほんまやなあ。一度綾部に寄って、教祖はんに得心してもろてから去んでくれちゃったらよいんじゃが。けどなあ、うちらが追ん出したちゅうことは、口が裂けても言うたらあかんでよ。教祖はんにいらぬ御心配かけることになるさかい……」
 塩見じゅんが虫の良い提案をする。喜三郎への不信から謀議に加わっているが、じゅんにとって、やはり出口直は絶対の存在なのだ。
「短気は損気、立つ鳥は跡を濁さずという譬えもあるさかい、教祖さんに承知させるのは、会長さんの責任ですわな。後で知れたら、うちらが叱られんなりまへん」と黒田清が調子を合わせる。
 成り行きを見守っていた春蔵が、笑み崩れそうな表情を押さえ、
「いざ綾部から去んでやとなると、ほんまにお気の毒な。会長はんが悪いんやない、憑いている小松林が悪いのやさかい、同情しますわな。まあ何事も大神さまのためやと思うて、ぐっと辛抱しとくれなはれ。送別会ぐらいは盛大にさせてもらいます。よかったよかった、後は若輩ながら四方春蔵が世継となって、あっぱれ神さまをお出しするわな」
 足立が憤然と春蔵に抗議する。
「ちょっと待たんかい。上田はんが去んだかて、この金明会はお前の自由にはさせへんで」
 春蔵がさげすむように足立を見返し、四方純の腹に視線を這わした。
「品行の悪い足立はんで、信者がついて行きますかな。わしは神さまから聞かされてますが、あんたはわしの弟子になってまだまだ下座の行をしてないと、人の上に立つことは許されんでよ」
「何を猪口才な、青二才のくせして。お前より数段上の神がかりの福島大先生を仰いで、わしが金明会をかまうのや」
「神さまのお道に年齢はござへん。寅之助はんに憑いとる神は、綾部の仕組みを邪魔する曲津神やでよ。そんなことさえ審神でけんのやから、足立はんにも困ったもんや」
「とにかく一切万事、わしが取りしきる。金明会を解散して元の金光教会で開きます。艮の金神さんは金光教やなけら開けまへん」
「そうなったら安心やなあ」と女性たちが賛成する。
 いきり立った春蔵が反駁しかけるのを、喜三郎が押さえる。
「口論なら、わしが綾部を発ってからにしてくれ。ほなお大事に」
「ちょっと待ちなはれ」
 足立は止め、台所にいる田中新助の長女つや子に声をかけた。
「つや子はん、すまんがなあ、上田はんといっしょに大広間まで行って、ほんまに教祖はんに『綾部をやめる』と言うてかどうか、ちゃんと確かめてきていな」
 喜三郎は田中家を辞し、東四辻へ向う。つや子がついてくる。二十歳の美しい娘だ。
 すっかり夜が更けた。粉雪から牡丹雪に変わっていた。
 つや子がすがり寄り、思いつめた声で訴える。
「先生、みんな、あんまりやと思います。うち、台所で聞いてて、腹が立って腹が立って……こらえとくれなはれ、うちの父さんまで仲間やと思うと……」
「田中はんは部屋を貸しただけやろ」
「父さんいうたら何もわけがわからんのやさかい……先生、どんなことあっても、綾部にいとくれなはれ。あんな人たちの言うこと、ほっといたらよいのや」
「始めから出て行く気、あるけい」と喜三郎はけろんと答える。
「なんですと?……さっき、園部へ帰る言うちゃったのに……」
 愉快そうに、喜三郎が笑った。
「あない言うたらこないなることが、初めからお見通しや。わしにはまだ綾部で大事な御神業がある。おめおめ追い出されてたまるか」
「それでも、教祖さまが『去ね』言うちゃったら……」
「言わはるはずがない。かりに教祖はんがそう思ても、神さまがそうはさせなさらん。そこで一件落着、筋書き通りじゃ」
 やがて四つ堂に近づく。四つ堂は今の綾部市綾中町のあたりを指し、当時は見渡す限り畑と桑畑の淋しい地帯。四つ堂地蔵だけがぽつんと一つ建っていた。地蔵堂は二間角で、善光寺菩薩と粟島明神を祀っている。まわりに遮蔽する物のないせいか、ほかの建物より庇がずっと深くとってあり、雨宿りには恰好だ。
「先生、ちょっと休みましょかいな」
 つや子に誘われ、しばらく軒下にたたずむ。身を寄せて囁くつや子の声が、妙に色っぽい。
「先生が綾部から出て行く言うちゃった時、うち、どんな気がしたと思うてじゃ」
「さあ……」
「うちの気も知らんとあんまりやと……だってうちは……」
 喜三郎は、参拝に来るつど、つや子が熱い視線を注ぎかけるのを知らぬではなかった。単なる憧れと思っていたが、どうもそれだけではないらしい。気づかぬ振りをして、
「えらい心配かけたのう。けどわしは、地の高天原の綾部に腰落ちつけて御神業をやりとげるつもりや。園部へは行かん」
「それより助けてくれてんお嫁さんがいりますなあ。先生、いつまで独身続けてんつもりです」
 つや子が喜三郎の手を握り、しなだれかかる。
「そんな話はまた後や。この雪はちょっともやみそうもない。はよ行こけい」
 その時、四つ堂の中から不快な笑い声が響いた。二、三歩行きかけた二人が振り向く。戸があいて、蓑笠つけた無精髭の中村竹吉がぬっと現われた。
「上田はん、たいしたもんや。この雪の中を、こんな田舎まで女たらしに来てんとはなあ」
「あほぬかせ。雪に濡れて冷めとうてたまらんとこへ、これ以上濡れ衣着せられてたまるけい」
「なんぼ弁解したかて、この眼であんたが娘かきくどいとってん現場を、はっきり目撃したんや。天網恢恢疎にして漏らさず、こんな危険な先生に綾部にいてもらうわけには参らん。さあ、つや子さん、わしが送ったげるさかい、位田に帰んなはれ」
「よけいなお世話です。うちは足立さんから、先生を大広間に送るよう言われて来たんですさかい。下衆の勘繰りはやめとくれなはれ」
 つや子は、眦を決して烈しく言い切った。
「そやろそやろ、上田はんといっしょなら、ほかほか温めてもらえるさかいのう」と、中村が嘲笑する。
 喜三郎はつや子の手を引いて雪の中を走り出した。どうせ今夜のことは、口さがない連中によって針小棒大に広められるだろう。自分はどう浮名を流されようとかまわぬが、嫁入り前のつや子だけは傷つけてはならぬと思いながら。
 西町、本町と雪踏みしだいて、広前に帰る。
 広前の玄関の戸を開けるや、四方祐助が告げた。
「教祖はんが待ちかねとってやでよ」
 神前に、直が端座していた。つや子の挨拶を受けた直は、喜三郎の瞳をのぞきこむようにして訊く。
「福林さんのお話しでは、田中さんの家で秘密の寄り合いがあったそうですなあ。どんな具合いでした?……」
 喜三郎は足立らの密議の模様をこまごまと語り、つや子が真剣な面持ちでそれを裏付けた。直は静かに聞き終わり、淡々と言う。
「悪神が尊い綾部のお仕組みを奪ろうとして、躍起になっているようじゃなあ。足立さんらがどのいに先生を追い出そうと企んでも、神さまが守ってなさるさかい、帰なされはしまへんで。御苦労ですけど、神さまの御用をしっかりと勤めとくれなされ」
 予期していた言葉ではあったが、喜三郎は胸が熱くなった。つや子も嬉しげにうなずいている。
 中村竹吉がずかずかと入ってきて、神床に向って音高く拍手し、大声で祝詞を奏上し終え、直に向かって深々と頭を下げた。
「教祖さま、わしは今さっき見てはならぬものを見てしまいましたんじゃな。蔭口はいやですさかい、このお二人のいる前ではっきり言わしてもらいます。わしが四つ堂の中で休んどりましたらな、会長はんがつや子はんを四つ堂の軒下に連れこんで、怪しげなことに及ぼうとしちゃった。わしが止めに入ったさかい、大事には及びまへなんだ。けどもしわしが四つ堂におらなんだら、純白の雪の上で、花も羞じろうつや子はんも哀れや落花狼藉……ううう……」と中村は泣きむせび、
「わしが四つ堂に居合わせたんは、つや子はんの身を守れという、神さまのお導きに違いござへん。教祖さま、こんな先生が綾部におっちゃったら、役員信者の心がはだはだになって誠のお仕組みが成就しまへん。どうぞ会長はんに去んでもろとくれなはれ」
 ほんものの涙を流して訴える中村の顔から撫然とした表情の喜三郎へと視線を移して、直は問いただす。
「先生、中村はんの言いなはったこと、ほんまですかいな」
「わしが純粋潔白じゃと言うても、中村はんが生き証人やと主張する以上、水かけ論になるだけや。けどもしつや子はんに怪しげなことする気なら、吹きっさらしの軒下やのうて、はじめから堂の中へ連れこんだでっしゃろ」と喜三郎は苦笑する。
 思いつめたように、つや子は言った。
「足立さんの言いつけで、御迷惑承知で、うちがむりについてきたんですわな。軒下で休んだのも、うちが『一息入れて』と頼んださかい……それより、こんなことは言いとうござへんけど、中村はんは人のおらんところで、うちにへんなこと言うたり、いやらしい素振りをしてんじゃがええ……中村はん、こないだのこと言うてもだんないか」
 意外そうな顔で直は狼狽する中村を見ていたが、やがて吐き捨てるように言う。
「中村さん、自分の尺度で先生を判じたら間違いますで。わが顔の墨を洗うた後で、他人さんのことを言いなはれや」
「それはその……つや子さんの誤解ですわな。わしにはちゃんと女房もおりますし、何も小娘になど……けどまあ、そう思われたんならわしの不徳のいたすとこじゃさかい、今から水行してお筆先を拝読させてもらいますわな」
 蒼惶として中村は引き下がり、足音荒く外へ出ていく。
「人は見かけによらぬものですなあ」と直は呟いた。中村の狂熱的信仰態度を信頼していただけに、裏切られた気持ちであろう。
 足立正信を先頭に、田中家に集まった連中が押しかけてきた。田中新助が朴訥な調子で述べる。
「教祖さま、娘を迎えに来ましたんじゃがええ、ちょこっとだけ御挨拶させてもらおうと思いましてなあ」
「それは御苦労はんなことでございます。この雪では難儀なさかい、広間で泊まって行きなはれ」と直がやさしくいたわる。
 足立が進み出て、切り口上で言った。
「教祖はん、上田はんからお聞き及びでしょうが、今夜、わしらが集まって相談の結果をご報告に来ました。上田はんが来て霊学を始めなはってから、綾部はごたごたが続いてどうにもなりまへん。それでこの際、時節がくるまで上田はんには去んでもろて、後は福島先生にお願いしたらということに決まりました。上田はんもこころよう承知してくれはったさかい、そのようにはからわせてもらいますで」
「そうですか、どのように御相談になろうとかまいまへん。どうぞ金光教の看板でお好きにおやりなはれ。艮の金神さまは、わたしと先生と澄の三人だけでも、表にお出ししますさかい」と直はぴしっと言い渡す。
 突然、奥の一間から、どなり声が聞こえた。筆先を拝読していた福島寅之助が発動し始めたのだ。
「この福島寅之助は生神大金神であるぞよ。足立正信殿、でかした、でかした」
 同室でいっしょに筆先を拝読していた村上房之助が、寅之助に誘発されて発動し、どなりながら広間に現われる。
「丑寅の大金神さまのお成りー。牛人の金神が先触れでござる」
 六方踏みつつ寅之助も現れ、神前に立ちはだかった。
「足立正信は霊魂の因縁悪い故、いやな御用をさせられたなれど、お手柄であるぞよ。何事も霊魂の因縁性来のことよりできぬ仕組みであるぞよ。上田を一時も早く追い出せよ。後は福島がこの大広間をかまうぞよ」
 直がつと立って、居間へ引きこむ。その背に、太い眉を上下させて、寅之助は大声を浴びせかけた。
「この方が世に出るまでの先走り、お直と上田を出しておいた。直よ、それも知らずに偉そうになさるなよ。その方は福島の末の眷属じゃぞよ」
 神がかり慣れした澄が台所から現われて、笑いをかみ殺して呼びかける。
「義兄さん、よう分かったさかい、ちょっと静かにしとくれなはれ」
「ちっとも分かっておらんぞよ。この方が雪を降らして、地を浄め、銀の世界にしたのであるぞよ。この方は生神、その証拠には雪の上に寝ようと転ぼうと、裸で風邪一つひいたことのない、まことの金神であるぞよ。実地を見て下されや」
 寅之助は澄を押しのけて、はだしで庭にとび出した。いつの間にか提灯を口にくわえ、左右左と打ち振りながら四股を踏む。
「上田と直が改心いたさぬから、世界はまことの闇。提灯を下げねば、一寸先も見えぬぞよ。世界の悪魔と相撲取るぞよ。生神のこの腕を見よ。骨がござる。いかなる敵も張り飛ばすぞよ」
 村上が雪の上に頭をすりつけて平伏。信者たちも首を並べて見物している。寅之助はふんぞり返った。
「出口直は先ばしり。今日からは丑寅の金神が福島大将軍さまと現われて、表に立ちて働くぞよ。俥引きこそしていたれ、この方が大和魂の生粋の元の種、世界中かねの草鞋で捜してもござらぬ。直も上田もすっこめ、すっこめ」
 手を振り、足を振って、どすんどすんと飛び上がる。やにわに逆立ちして、太い両腕の間から頭をもたげ、
「大の字逆さまの世であるぞよ。天地がひっくり返る、西から日が出る、月が出るぞよ」
 くるりとでんぐり返って見得を切る。雪まみれの大奮闘に畏怖した信者たちは、手を合わせて拝み出した。
 立ち出でようとする喜三郎の袖を、祐助老人が押さえている。
「教祖さまさえ奥に入ってござるのや。先生、また福島大将軍さまに御無礼なさったらどもならん。じっとしてなはれ」
「会長はんの改心が足らんさかい、また大金神さまが福島先生におかかりなして、わざわざお気付け下されてるんやで。先生、早うお詫びしなはれ、さあ早う」
 黒田清と四方純が走ってきて、喜三郎を引き立てた。
 雪庭に出ると、あの実直律儀な寅之助が凄まじい形相で襲いかかった。大きな拳骨が、喜三郎の胸に乱れとぶ。ようやく引きはずして一声、言霊を放つ。寅之助は雪の上を転がった。
 村上房之助が立ちふさがる。
「おのれ、生神さまに手向う気か」
「目をさませ、小北山の野天狗ども」と喜三郎がにらむ。
 寅之助はでんぐり返った。
「上になり、下になるぞよ。めまいがくるぞよ」
 それでもまだ強がりが口をついて出る。四方純が素足でとび出してきた。
「謝るのや。『改心する』と手をついてお詫びしなはれ、先生」
 純は喜三郎の胸ぐらを掴んだ。身重の純の体に、精一杯の闘志がみなぎっている。審神を断念して、純の言いなりに室内に入った。
 直は奥の間にこもったまま。その窓下に立って、寅之助は雨戸を揺さぶる。
「教祖だとて、偉そうになさるなよ。福島大将軍の御神格は、眷属身魂には分かるまいがな。分からな分かるようにして見せるぞよ。ぐらぐら降りこむ雪を、言霊で晴らしてみせるぞよ。うーむ」
 村上もいっしょに天を仰いで睨みつける。
「うーむ」
 鵞毛の雪は、音もなく霏々として降り落ちる。際限もなかった。一人去り、二人去り、やがて広前の灯も消える。
 澄は夜半の雪庭にそっと出た。寅之助は誰もいない白雪の只中で、まだ空を向いてうなっていた。いつの間にか、村上房之助の姿もなかった。
「義兄さん、これ」
 澄の差し出したのは、暖かい毛布であった。王子から八木まで、この義兄の人力車に運ばれた夜を、澄は忘れていない。寅之助の父に似た匂い、背の丸みも――。
 寅之助は恐れるように後退った。ひとひねりでつぶれそうな繊細な澄の体の底に無意識に在る力を、寅之助の憑霊は知っている。上谷で一度は見たのだ。
「毛布持ってきたんやないの、兄さん」
 脛まで沈む雪を踏んで、澄は近寄った。
「来るな、来るな」
 叫びつつ、寅之助は激しく跳ね上がっていた。
 明け方、毛布を抱えて軒下に眠る寅之助を、澄は見た。
 寅之助はぷいと八木へ帰った。

 寒風吹き荒ぶ黎明、肌襦袢一枚の直は、いつものように井戸端に跪き、まず手桶の水を押しいただいた。
 この朝、厳粛な面持ちで井戸端にひかえていた四方平蔵と四方祐助は、ちらと目まぜする。祐助が半開きの雨戸を庭から手繰り、内障子を左右いっぱいに引きあける。暁の冷気は、激しい水音と共に室内に流れこんだ。
 高鼾がやんで蒲団が波打ち、頭が中にもぐった。前夜から広間に泊まりこんでいた喜三郎である。
 平蔵は、縁先から身を乗り出して、蒲団をはがした。
「先生、起きとくなはれ。眼えあけて、教祖さまの水行をごらんなはれ」
 喜三郎は、薄目をあけた。
「なんじゃい。まだ暗いやんか」
「先生、あの水音が聞こえますかい」
「わしの耳は地獄耳じゃ。うるそてかなんわ」
「平蔵がお頼み申します。還暦を過ぎちゃった教祖はんが、もったいない、朝晩欠かさず水行してはるのや。先生も今日から改心して、どうぞ水行しとくなはれ」
 祐助も枕元にすり寄った。
「足立先生の寒がりが、この頃水行しとってんやて。この爺かて改心しました。平蔵はんと一緒に、今日から教祖さまに習うて水行しますで。ちょっと起きて見とくれなはれ」
「寒い、閉めてくれ」
 平蔵が、きっとなった。
「お筆先が真実なら、先生はお世継のお体でっしゃろ。毎朝浄めてくれなはったら、うるさい役員たちかて納得しますわな。寒いぐらい、お澄はんのためや思うたら……」
「じゃかまし。水浴びは嫌いや。蛙の生まれ代わりやないわい」
 言葉を失って、平蔵は黙った。
「蛙の生まれ代わりやて……蛙の生まれ代わりやて」
 手ばなしで祐助が泣き出した。ぬけぬけと喜三郎が続けた。
「今頃は蛙は土の中で温もっとるやろ。蛙の真似ぐらい、わしかて夏になったらしてやるわい」
 背骨がきしむばかりの怒りに、平蔵は我を忘れた。憎悪をこめて、喜三郎の首を締め上げる。
「もう一度言うてみい。蛙やと、教祖さまが……。おのれよくも……この罰当りめ」
 はね起きて、喜三郎は平然と言い放つ。
「お前らの自由になるわしとちゃうど。わしはまだ、冷水かぶらんなんほどの罪穢れは持たんわい」
 いつの間にか直がきちんと着物をつけていて、血相の変わった平蔵と祐助の袖を引いた。
「先生はそれでよろしいのや。好きなようにさせてあげなされ」
「教祖さま……」
 平蔵が口惜し涙をすすり上げる。
「罪穢れの多いわたしらが朝夕に水垢離とるのは当然です。わたしはまだまだ前世からの罪が深いさかい、水行で身魂を潔めなんだら、神さまのお許しがないのですで」
「ほな、先生は罪がござへんのかいな」
 祐助が頓狂な声を上げる。
「お筆先にも、『水浴びるばかりが行でないぞよ。いろいろの苦労が、まことの行であるぞよ』とあることじゃさかい、先生には水行よりもっと苦しい行があるかも分かりまへん」
 直は、すっと縁を離れていった。
「平蔵はん、教祖さんでも穢れとってんじゃったら、わしらはどうなるのやいな」
「……」
 平蔵は答えず、荒々しく着物を脱ぎ捨てた。祐助が胴震いして、痩せて骨ばかりの鳥肌をさらす。
 中村竹吉がやってきて、にやにやしながら二人の水行を眺める。青紫に変わった唇をひんまげて、祐助ががくがく歯をかみ鳴らす。
「代わった、代わった。見ちゃおれん。わしの水行見せたるわい」
 竹吉が逞しい体をむき出し、ものすごい勢いで水を浴び始めた。四、五人水行希望者がつめかけてきて、高らかに数をとなえる。さすが豪快。二十五……二十六……竹吉の赤黒い全身から、湯気がたちのぼる。賞賛の声が井戸端に上がった。
 誇らしげな竹吉の高笑い。
「教祖はんは釣瓶に十杯の水を浴びてやが、わしは三十五杯や。わしこそ日本男子の典型やでよ」
 障子が開いて、冬の朝陽のさし始める縁先に喜三郎が立った。
「雨蛙さん、お早う」
 大あくびが続いた。
「先生、お取次ぎしとくなはれ。お参りに来ちゃった人が、腹を病んで苦しがっとってじゃ」
 澄の声に導かれ、喜三郎は神前に向かう。直は筆先に没頭し、病気治しのための神への取次ぎは、神示のままに喜三郎の役となっている。おかげは面白いように立っていた。

 雪が降りつもったせいか、訪う人も少ない朝であった。喜三郎は、借りてきた新聞に読みふけっていた。広前から中村竹吉のくりかえし読む筆先が流れてくる。
 ――神徳と学との力くらべであるぞよ。神の国には、あまり学があり過ぎると、かえってまことの神力を失うて、なにごとも、真実の道理が分らんようになるぞよ。神力がつよいか、学力がえらいか、こんどは解けてみせるぞよ。こんど綾部の大本でなにかのことを解けて、邪神の道をあらためさせるぞよ。
 いきなり新聞がひったくられた。中村が突っ立っている。
「会長はん、外国身魂やなかったら、角文字止めて、これを拝読しとくなはれ」
 中村は目の前に筆先を押しつけた。
「あとで読むわい。新聞返せ」
「返しますかいな。『いろは四十八文字で世を新つにいたすぞよ』とけっこうなお筆先が出てますがな。新聞読む暇あったら、自分の眼でよう確かめてみなはれ」
「筆先はけっこう。みみずのぬたくったような字見ただけで、わしは頭が痛うなる」
 それ見たことかと、中村がせせら笑った。
「なんと神さんはお見透しやなあ。わしらは大和魂やさかい、四角い支那文字みただけで頭が痛うなるのに、金明会の会長はんはさかさまや。とうとう外国身魂の曲津の正体、現わしおった」
 どんと胸を突いてきた。尻もちをついた喜三郎の懐に、中村の片手がさし込まれる。
「平蔵はん、祐助はん、ちょっと来ておくれい。先生が……」
 中村の大声に、直を除いて居合わせた全員がかけつけた。
「見てみや。これが先生の魂や。いつも懐ふくらましとったやろが。何が入っとるか、一度確かめて見んなんと思とったんや。この本、角文字ばっかりやで。いろはのいの字もないで」
 中村の手にあるのは、分厚い無点の漢書であった。子供の頃から、喜三郎は厠へ行くにも本を手放したがらぬ癖があった。用心して執筆は人々の寝静まった夜半に限っていたが、まさか読書まで非難されるとは――。
 手から手へと気味悪げに本が一巡する。最後に竹吉がばりばりと引き裂き、踏みつけた。
「何さらすんや、ど阿呆」
「神と学との力くらべや。神には勝てんぞよ」
 中村が平然と言う。
 喜三郎は竹吉にむしゃぶりつく。その隙に、平蔵が裂けとんだ漢書をさらって雪庭に走った。
「燃やせ、外国身魂を征伐せい」
 口々に叫ぶ信者たち。火打石の音高く、たちまち書物は炎となった。喜んだ人々が手を打ってはねまわる。組み合ったまま縁先までころげていった喜三郎は、竹吉を雪庭に突き落として、灰となりゆく愛書をみつめた。
 怒りが炎をあげて喜三郎の胸をも焦がしていた。
 こんな奴らの仲間に入って、どうするのだ。こんなところで、むざむざ一生を捨てる気か。やりきれぬ頑迷さ・無学・無知、くそいまいましい、かちんかちんの信仰め。
 怒るそばから、まっ正直、生真面目な奴らばかりなのだと、喜三郎はすぐ思い返していた。まともに腹を立てる方が間違っとる。ならば……喜三郎はにやっとした。
 広前の片隅に置き忘れられている客用の木根火鉢にとび乗った。
「おい、ありがたいお話聞かしたるで。みなこっちゃ来いや」
 信者たちは、遠まきに警戒している。
「何しとんじゃい。外国身魂燃やされちもたさけ、あとわしに残っとんのは生粋の大和魂ばかりやないけ」
 平蔵が、目に角たててつめ寄った。
「いや、まだまだ。先生、この様は――あんまりやござへんかい。教祖さまは、あのお年で、もったいない言うて火鉢があってもよう手もあぶりなさらん。世の中の行く末を思うたら、我一人ぬくぬくはしておれん言うちゃってな。寒水かぶりなさっても、火には寄らんお覚悟ですで。それを股火鉢やなんて」
「ええ気持ちやで。ぬくとて、全身がほかほかしよる。火鉢があるのにあたらん方こそ、天地の冥加を知らん罰あたりのするこっちゃ。もったいない、火があるなら充分あたって、ぬくもるのが冥加やないけ。手あぶるよりは、茶袋ぬくめる方が一段とけっこう、けっこう」
「会長はん、教祖さまに逆ろう気かい」
「いやいや、ただ物の道理を言うたまでじゃ。雪は降る。赤穂浪士討入りの夜が近づきおるのう。奴らがめざす仇の首を上げながら、何故最後になって全員切腹か。哀れにも明日を生きれなんだそのわけを言うたろかい。それはのう、四十七士では、も一つ不足やった。いろは四十八番目の尻むすび『ん』の言霊の活用を知らんかった。『運』がなかった。円満清朗いろは四十八文字の言霊がすっかり揃わなんだら、何ごとも成就せんわい、新つの世は迎えられんわけや」
 喜三郎は信者たちを手招いた。いろは四十八文字の講釈ならばと、彼らは気を許して火鉢のまわりに近寄った。
「おぼえとけよ。いろは四十八番目、尻むすびの言霊を活用して見せちゃる」
 高らかに「うん」と力む。俄然、大砲一発。灰神楽が舞い散った。あたりはもうもう。のぞいていた澄がふき出し、笑いころげて逃げていく。
 平蔵・中村の両人は憤然として立ち上がった。奥の間を開けて、平蔵は進み出る。
「教祖さま、わしは神さまのご意見じゃと思うて、今まで上田会長とお澄はんの結婚に賛成してきましたが、なんぼなんでもあんな行儀の悪い先生は、見たことも聞いたこともござりまへん。わしは、あんなものを婿にせいいう艮の金神さんのお言葉まで、信じられんようになりましたわいな」
 中村竹吉もにじり寄った。
「教祖さまは、広前のことは御存じありまへんやろ。あの上田会長は朝寝が好き。水行は冷たいさけ嫌い。火鉢にまたがり、尻あぶって屁をひる。おまけに筆先は大嫌いで、支那文字ばかりの本を一日抱いとってですで。わしらの手にはおえまへん。あんな外国身魂に、世継のお澄はんをやりなさるんですかい」
 中村の目にも涙が光っていた。
 平蔵や中村の危ぶむ気持ちは、素直に直に響く。筆先を絶対と信じながら、肉体の母親の心で喜三郎を見る目は、直とて彼らと変わらなかった。
「神さまにうかごうてみます」
 直は二人を従えて広間に出、神前に坐した。銀鈴を振るような直の神言が始まった。
 喜三郎は彼らの前に出て、神前に供えてある蜜柑をつかんだ。蜜柑は当時、この地方では珍しい高価な果物であった。指を突き立てると、甘ずっぱい香がひろがる。
 むいた皮は、直の頭ごしに拝礼中の平蔵めがけて投げつけた。頭にひっかかる。次は中村竹吉。まともに鼻の先にぶつかった。手頃な的であった。まいったか、高慢ちきな鼻め。くっくっと含み笑う喜三郎。真赤な顔をよけもせず、二人は一層祝詞に力をこめる。
 蜜柑を食い終わり、ぶつける皮もなくなると、ごろんと横になった。
 ――これでよいのだと、喜三郎は思った。
 ――これで愛想をつかして追い出す直なら、こちらから出て行くまでや。艮の金神がいったんかけた綱を、引きちぎっても出てみせよう。世継や、結婚やと勝手に一人ぎめする神につき合うて、一生わけもわからんことに無茶苦茶に引きまわされてたまるかい。とっておきの四十八手、わしの最後の審神の仕方や。見とれい。
「うん」と思いきりぶっぱなして、運を天にまかせ、大の字になった。空鼾をかいて、狸寝入りをした。
 直は祝詞のあとの祈念に入っていた。
「ほほほ……」と声を上げて笑った。
 平蔵と中村は、ぎょっとして、平伏していた頭を上げる。
 直の傍近く仕えながら、二人とも、直がこんなに軽やかな声を上げて笑うのを初めて見たのだ、しかもこんな場合に。二人は直の両脇にすり寄った。
 やがて直は眼を開き、拍手して拝礼を終え、喜三郎の寝顔に深く見入る。その頬には微笑が浮かび、目には可愛くてたまらぬやんちゃ坊主をいとおしむ、慈母の光がある。
「お澄、先生が風邪引かれたら悪いで、おふとん掛けてあげなされ」
「はーい」
 澄の返事を聞きながら、直は次の間に入った。ついてくる二人は、世にも不服げにふくれ返っている。直は楽しそうに茶を入れてやりながら、
「やはりお筆先は違うてはおりまへんで。『この者じゃぞ。この者でないと大本の経綸はできんのじゃ。この者は化物じゃ。神が使うて化かしてあるぞ』と神さまは言いなさる……」
「それでも、あんまりやござへんか」
 投げつけられた蜜柑の皮をもみくちゃにしながら、憤然と中村が言った。
「御神前ですで。わしらはともかく、大神さまや教祖さままで馬鹿にしくさって」
「艮の金神さまは細かいことがお嫌いじゃさかい、かれこれ言わんとおくれなはれ。何事も神さまにお任せするより、しょうがござへんでなあ」
「へーん、ともかく、これが証拠や。蜜柑の皮は大切にもろときますで」
 中村は皮を紙にくるみ、懐にしまいこむ。
 平蔵が面を上げた。
「神さまの仰せですけいど、わしに一つお願いがあります。わしが会長はんを初めに綾部に引き出してきたのですさかい、責任がありますわな。足立先生とも相談して、穴太に上田喜三郎の身元調査に行きとうございます。うかつにも、どこの馬の骨やらも確かめなんだのでは、いくら神さんまかせいうても、お澄はんに済まんさかい……。家柄・血筋・経歴・素性にまちがいござらぬと納得できれば、わしも潔う御神示に服します」
「好きなようにして下され。と言うても、こちらこそ出口家の素性いうて、誇れるものは何一つありませんで……」
 二人は気負い立って、足立の下宿先へと出て行った。
 喜三郎は、耳をすまして彼らの会話を聞いていた。直の言葉を反復するうち、いつの間にか涙が滲んでいた。一人で意地をはって反抗している自分が、ひどく卑小な存在に思えた。
 喜三郎はのびをした。気がついてみれば、ごろ寝の神前なのに、ちゃんと掛蒲団がかかっている。頭の下には枕まである。そうか、お澄はんやな。寝心地の良いまま、つい深く寝入ったらしい。広前には人気もなく、障子の外は雪明かりにほの白い。
「お目ざめですかい。先生、夜は何しとってんやら知らんけど、よっぽど寝不足しとってやなあ。あれでは、寝首かかれても分からしまへんわな」
 澄が笑顔で言った。
「すまん、すまん。御神前やさけ、良い気持ちやった。……教祖はん、これやないけ」
 喜三郎は、頭に指二本立ててみせる。
「さあ、どうでっしゃろ。母さんは奥の間や」
 首をすくめてみせて、澄は行ってしまった。ふっと刻んだ澄の両頬のえくぼが、何ともいえぬ可愛さで喜三郎の胸にやきつく。
 足立らが身元調査に行けば、いかな直でも愛想をつかそう。内縁とはいえ、二度までも妻を持った。何をしても失敗ばかり、しかも女でいり、侠客との喧嘩沙汰。郷里には悪評がいっぱいである。
 ――それでええのや。琴と別れたのも、一生を神に捧げ、結婚すまいと誓ったからや。だからこそ、澄のことは意識におくまいと、つとめて気をそらしてもきた。が、いざ出て行くとなると、あとのことがひっかかる。足立正信・中村竹吉・四方春蔵、その誰にも、無垢な澄を渡したくない。いやだ、あいつらになぞ。
 唐突に激しくふき上げてくるその感情に、喜三郎はよろめく思いであった。

 喜三郎は澄を誘い、ひそかに昼下がりの本宮山に登った。
 山頂の古い山小屋は雪をかぶり、木枯しが潰れかけた戸をあおり立てる。その横の新築の小屋は完成まぢかだから、いずれ取り壊される運命にあろう。小屋の主、改森老人の姿はない。
「おう寒む。このぼろ小屋を借りよけい」
「けど黙って入ったら、改森はん叱ってないやろか」
「かまわん。いずれこの山ごと、大本の物になるんや」
「ほんまに!……」と澄が眼を丸くする。
「ただしいつのことやら知らん。今はこの山小屋跡に立派な神殿の建つ姿が見えるだけや。小屋の中かて隙間風は入るけど、吹きっさらしよりはましやろ。まあ遠慮なしに入ってくれ」
 狭い土間の中央に囲炉裏が掘られている。隅に積んである藁を敷いて席を作った。
「何も愛想はないけど、薯なと食おけい」
 にやっと笑って、懐から数箇の薩摩薯を取り出す。台所から失敬してきた奴だ。喜三郎は薯を灰に埋め、手早く柴を積んで火をおこす。
「お澄はん、この薯がほっこり焼けるまで、ゆっくりせいや」
「大事な話がある言うてやさかい、忙しいのに祐助はんの目盗んで抜け出してきたんですで」
「そう言うな。実は誰にも邪魔されんと、二人だけで話がしたかった。知ってるやろ。お澄はんとわしが大本の世継になるちゅう、筆先が出てるのは……」
「そうですてなあ。なんせ神さんのしやはることやさかい、うちらには見当とれしまへん」
 澄が他人ごとのような返事をした。さし迫る運命にも神にまかせて自若としている十七歳の少女の面を、喜三郎は不思議な思いで眺めた。
 綾部に腰落ち着けてからの半年――めまぐるしい修行、役員たちとの確執、疑惑、反撥、そして邪神憑きどもとの切羽つまった対決、夜は他人の目を忍んでの執筆の明け暮れ、澄と心を割って語り合うひまはなかった。
 喜三郎の生い立ち、苦渋に満ち放埒に過ぎた青年期、喜三郎を生まれ代わらせた霊的な高熊山での体験、人には打ち明けられぬ出生の秘密など、澄は何も知らぬ。また澄の十七年間の時の流れを、喜三郎は知らない。五歳の時に父に死別し、七歳から転々と歩いた苦しい子守奉公、狂った姉を持ち神がかりの母と暮らした幼時、母と離れ死をも考えた少女期、語るには過去はあまりにも苦い。
 お互いに過去は知らなくとも、その積み重ねの果てに今、二人はここにいる。それで十分ではないかと、喜三郎は思う。
 未熟な少女に過去を告白し、なまじ恐れさせて常識はずれた狂信の男どもに澄を渡す結果になることは、絶対にしたくない。が、神示が下ったのを幸い、このまま無心の澄を妻にしてよいものかどうか。あれほど尽くしてくれた多田琴にさえ、「神の道に妻は不要」といっぱしのことを言った。
 その上、二重に喜三郎が迷うのは、筆先の神示がはたして誠の神の言葉か否か――。
 迷いを振り切るように、喜三郎は澄に向う。
「お澄はん、わしの過去を知りたないか。この年まで人間やっとると、恥ずかしいようなことがようけあるのや」
「そんなにようけ聞いてたら、日が暮れますわな」と涼しい顔の澄。
「そらそやのう。そんなら過去はともかくとして、かりにわしが結婚しようというたら、いっしょになる気はあるのけ」
「はあ、かましまへんで」
 けろりと答えながら、消えそうになる火をかき立てる方に熱中している。ちろちろと炎が澄の頬に反射して、とても可愛い。もう少し次の言葉を期待して待つが、ただ唇をとがらしてふうふう吹くだけである。はたして先ほどの返事も、喜三郎の質問を訊いての上かどうか、疑わしくなる。
「お澄はん」
 もう一度呼びかけると同時に、澄は喜三郎を見上げて言った。
「先生、こんな火で、お薯さん焼けるじゃろか」
「薯のことはええ、ほっとけ」
「けどわざわざお薯はん、持ってきちゃったのに。はよ焼いて食べなんだら、祐助はんがうちらを探してやで」
 ぜひなく喜三郎は柴をつぎ足して、火を燃やす。澄は囲炉裏に手をかざし、薄い煙に眼を細めながら、懐かしそうに言った。
「うち、囲炉裏であたってると、おさよ婆さんを思い出すのや」
「おさよ婆さん……」
「向かいの安藤金助はんとこの……三年前に七十九で死んじゃったけど、眼が見えんお婆さんで、よう可愛がってもろた。いつでも囲炉裏のそばにぺたんと坐って、糸つむぎしとっちゃったんですわな。それは上手でしたで。まだうちがちっこい頃、遊びに行くじゃろ。ほったらお婆さんが『お澄はん、もう何時ごろかいな。もう八つ(午後二時)ごろか知らん。まだ下の方からお初が戻りよりませんかいな。どれどれ、お茶をわかしておこうかな』言いながら、腰をかがめてひょこひょこしとっちゃった。何かお三時をやろうという心づもりですわな。ほいで囲炉裏で豆煎りしてもろて……」
 澄が身ぶりでしゃべり出すと、その情景が目の前に浮かぶようだ。だが喜三郎、今はそれどころではない。
「おいおい、大事な話や言うとるやろ。もういっぺん聞くけど、お澄はんはわしと結婚しても、ほんまに『かましまへん……』でええのか」
「はあ、結婚してもよいで」
「あっさりぬかしよる。つまりわしが好きなんや」
 澄はびっくりして喜三郎の顔を眺めたが、急にくっくっと笑い出した。喜三郎はむっとして訊く。
「なんで笑うねん」
「それでも……好きやなんて。先生みたいな変な人――」
「変な人でわるかったのう」
「ほんまやもん。友達かて言うとってじゃ」
「ほんなら何でわしみたいな変な男と結婚してええのや」
「神さんが結婚せい言うてやさかいですわな。神さんが『お澄や、行やでな』言うちゃったら、どんな辛抱かてさせてんやでよ。うち、今まで神さんの言いなりに生きてきたさかい……」
 あまりに無邪気で神に対して純一無雑なその言葉にぐっと胸つまり、喜三郎は黙した。
 ――行……そうか、この子にとっては、結婚ですらもただ神の命ずる行に過ぎんのか。
 心外であった。
 愛のためにこそ、どんな辛抱でもするのが結婚やぞ。それを神のため、行やなぞ……。
 そんな喜三郎の思いにとんちゃくなく、澄は話し続ける。
「金助さんには子供がのうて、それでかねさんいう子を貰い子しちゃったんですわな。かねさんはいつも良い着物きせてもろて、大事にされとっちゃった。それが子供心にうらやましかったんやろなあ。うち自分で唄つくって歌うてましたんやで」
 澄は坐り直して、澄みきった声で歌う。
   向いのかねさんはうまいもんや
    紅いべべ着て紅じょじょ(草履)はいて
    下のていさんとのの(神)さん参り
「へえ、よい声やのう。何かもう一つ聞かしてくれ」
「むかし、うちに泊まった旅のお婆さんが教えてくれちゃったはやり唄、あれ歌いましょか」
「おう、それ頼む」
「うちが十で八木に子守に行ってた頃、みんなから『お澄さん、あの唄うとうてんか』いうて、おもしろがって歌わしてんじゃな。そしてなんでや知らんが、後で笑うてんですわな」
   蜜柑金柑こちゃ好かん
    子供に沢山やりゃ毒じゃ
    鶏はだしで土つかん
    相撲取りは裸でかぜ引かん
    橋の欄干屋根ふかん
    犬がボボしてマラ拭かん
 喜三郎は涙を流して笑った。澄とこうしていると、胸につまったもろもろの苦悩が、何のこだわりもなく溶けていきそうな気がする。この十七年、澄がどんな辛い行を積んで生きてきたかは知らぬ。しかし苦労の翳をみじんもとどめぬその天心さ、すべてを神にまかせて動じぬ清らかさ。
 澄の取り止めもない話に楽しく耳を傾けながら、わしはいま世界一の女性を相手にしてるのやないかと、喜三郎は思うのだった。
 薯が焼けて、二人はふうふういいながらかじりつく。夢中で食べるうち、喜三郎は高らかに放屁した。それがなぜか今日はむしょうに恥ずかしい。照れ隠しに一句ひねる。
「いも(妹・薯)といて一間にこもる屁のにおい」
 笑い終った澄がまじめな顔をして、
「先生、口のまわりが焼けこげの炭でまっ黒ですで」
「ほんなら澄(炭)拭いてくれやい」と喜三郎は洒落て見せ、ぬっと唇をつき出した。ぷっとふき出した澄は、手拭いを持った白い腕をのばしてくる。ほとんど本能的に、喜三郎は澄の手を引き、小柄な体を抱きすくめていた。
「わ、先生、そんなんすこい(ずるい)……」
 悲鳴を上げてちょっとあらがった澄は、やがて体の力を抜く。何か暖く、柔らかく、そのくせ限りなく力強いうねりに攫われて眼を閉じた。
 肉体を刺し貫ぬく痛みに耐えた時、喜三郎の囁きが夢うつつに響いた。
「これは行やないぞ、お澄はん。愛や、愛やで。わしがお前を愛しとるさけや」
 眼をひらく澄の前に、見たことのない喜三郎の厳粛な顔があった。
 へんに気怠い身を起こし、澄は身形を整えた。誰にも気取られたくはなかった。母の霊魂は稚姫君命という神さまで、昔、天の規則にそむいた因縁で、死にかわり生きかわりして責め苦にあい、今度ようやく許されて立替えの御用をなさる。その稚姫君命の破った天の規則が色の道だったと、澄は聞かされている。それだけ男女間のことに母は厳しかった。また役員信者に知れては、自分はともかく、喜三郎は半殺しにされかねない。
 丹念に火の始末をして小屋を出た。雪が降りしきっている。
「お澄はん、わしは決めた。誰を押しのけても、わしはあんたと結婚するぞ」
 不意に澄を抱き上げた。驚いて足をばたつかせる澄。その澄の細い手足が哀れや、凍えている。
 何かが……忘れていた何かが……。
 記憶の堆積の底から浮かび上がってくる。
 喜三郎は手を離し、雪明かりに澄の面を上げて見た。底知れぬ野性の力を秘めた清らかな瞳。
「もしかしたら、王子で会うたあの子やないか。お澄はん、わしを覚えてへんけ」
 澄は眉をしかめた。お歯黒の消えてしまった喜三郎の皓い歯と今抱き上げられた力強い肌の感触が、何かを呼び醒そうとしている。
「その子は、赤茶けた髪の、がりがりの、十ぐらいの女の子やったで。王子の坂を越えた道端の溝っこに四つん這いになって震えとったのう。『何しとるんじぇい』ちゅうてわしが訊いても、振り向いただけで返事もさらさん。あかぎれのひどい手足で……氷のような水の中……思わず抱き上げた」
「あっ」と澄が息をのみ、
「思い出した。一銭玉、落とした時のことですわな。お琴姉さんに預かったお使いの銭やった。いっしょに溝っこに入って捜してくれちゃった……あの車力の……」
「そうや、その車力はわしや」
 見交わす二人の眼に涙が滲む。一瞬にして、双方の魂は寄り添った。
 筆先がどうあろうと、周囲の思惑がどうあろうと、それを越えて喜三郎は澄と共に生きたかった。けれど虹の夢を抱かすことはできぬ。
「お澄はん、わしは自分でも分からんのやが……世界一の大阿呆かも知れんぞ。地の底まで行かんならんと、神さまが言うてんじゃ。可哀そうなが、ついてきてくれるこ」
 澄はこっくりした。阿呆かも知らんと澄は思った。けど温といこの人について行く――。
 山頂に並び立って、夕暮れの雪の里に次々ともる街の灯を眺めた。雪風から守るように、喜三郎は澄の小さな両肩をうしろから抱く。無意識にその指に指をからませながら、うっとりと澄は呟いた。
「螢みたいや、あの灯。葱に入れた螢の光って、あんなにぼうっと滲んでますなあ」
 それから慌てて、喜三郎の腕をふりもいだ。
「阿呆や、うち、何しとったんやろ。晩げの仕度、忘れてしもたわな」
 ばたばたと後をも見ずに、澄は駆け出していく。
「気いつけよう、滑るぞう」
 木の間隠れに降りて行く澄の姿を、喜三郎は眼で追った。
 ――母直と父政五郎、姉米と大槻鹿蔵、王子の栗山夫婦、久と寅之助、どの組合せを見ても、澄の眼には、しょせん結婚はつらい行としか映らぬであろう。その通りかも知れぬ、わしと澄も……。
「これでわしもがんじがらめや。艮の金神のしかけた罠の擒やな。けど見とれよ、お澄……」
 喜三郎は昂然と天を仰ぐ。
「これからは二人の愛の行脚じゃ。惚れてしまえば行やない。今にお前も、わしに惚れさせてみたるわい」

 はっきりと直に、末子澄と上田喜三郎の結婚の神示が降ったのは、それから数日たった朝であった。直は喜三郎を招いて、嬉しげにそれを伝えた。
「お式は(旧)正月元日と、神さまが決めておられます」
 黙したままの喜三郎に、直はしみじみと語りかけてきた。
「平蔵はんと足立はんが、先生の身元調べに穴太まで行ってこられました。素行調べなど、人間心を出すのを私は好きまへん。『天でさっぱり身魂のあらためがいたしてある』とまで言われる神さまにおまかせするのが、本当ですやろ。けれど、調べていただいてよかったと思います。平蔵はんは上田家の系図をみてきて、血筋・家柄のよさに喜んで帰ってきなさった。でも足立さんはちと違います。穴太での評判の悪い方ばかり集めて来とってです。それを足立さんは、澄に聞かせなさったらしい。『先生は穴太でもてちゃったらしいで、母さん。二度も嫁さん持って、別れとってんやげな』とさも不思議そうに言うのです。『お澄とは十二も年が違いますで。先生は、ずっと早うから大人になっとってやさかい……』と言いましたら、『あ、そうや、足立先生もそれを忘れとってや』……それきり、その問題は片づけたつもりですやろなあ」
 直と喜三郎は同時に笑い出した。こだわらぬ澄の性格、邪気の無い明るさが、涙の出るほどいとしかった。喜三郎の過去へのこだわり、重荷まで、澄の一言は消しとばしてくれる。こんなふうに打ちとけて話す直も珍しかった。
 直は改めて喜三郎に向った。
「わたしが何より気になりますのは、先生が上田家の御長男、跡取りということ。養子婿にと神さまが頭から決めてですさかい、私も気がつかず、平蔵はんに言われてはっとしました。世継の澄を嫁にはやれず、どうでも上田家に頭を下げて、先生を出口家にいただかねばなりまへん。わたしも今こそ教祖だのとおさまっておりますが、ついこの間までは、その日の米にも困った襤褸買いですわいな。わたしも、米も、久も、一時は世間からみれば気違い。出口家は気違い筋じゃという噂も立っとります。澄は七つの時からよそさまに奉公に出して苦労ばかりはさせとりますが、なんの躾もできとりまへん。見なさる通りの男八分(お転婆)ですわな。そんな所へ跡取りを婿になど……」
 直は苦しげに息をついだ。
「勝手じゃと怒ってでしょうが、先生、お願いですさかい、お澄と結婚して、大本の世継となっとくれなされ」
 直は銀の頭を下げた。
「御神示には、そむきませぬ」
 喜三郎は言った。じいんと身内が熱くしびれた。
 その夕、集まった役員たちに、直はにこやかに結婚の日取りを発表した。どよめきたつ顔、顔……しかし神命とあれば、誰も表立った反対はできなかった。
霊界物語ネットで読む 霊界物語ネット
王仁DB (王仁三郎データベース、略してオニデビ)by オニド /出口王仁三郎の著作物を始め、当サイト内にあるデータは基本的にすべて、著作権保護期間が過ぎていますので、どうぞご自由にお使いください。また保護期間内にあるものは、著作権法に触れない範囲で使用しています。それに関しては自己責任でお使いください。/出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別用語と見なされる言葉もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。/本サイトのデータは「霊界物語ネット」掲載のデータと同じものです。凡例はこちら。/データに誤り等を発見したら教えてくれると嬉しいです。
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