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文献名1大地の母
文献名2第7巻「火水の戦」
文献名3撫子の花
著者出口和明
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
OBC B138907c09
本文の文字数22597
本文のヒット件数全 2 件/稚姫君命=2
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本文  どすん、どっしーん。……突如起こった二階の地響き。
「素盞嗚尊が地の高天原を奪りに参りた」と、二階から、神がかりした直の大音声が、筒抜けに墜下する。
「吾弟の命、何故に参り来れるか、おう……」
 つん裂くほどの雄叫びが障子を震わし、四股を踏むさま凄まじく家を揺する。
 呼応して、階下の鬼三郎がうめいた。
「わしに邪なき心なし、何を今さら……」
 髪が、ざんぎり髪が、ギイッと針山みたいに逆立つ。鬼三郎に素盞嗚尊の降霊。おのが手足が丸太の如く見え、そばの家財が豆粒ほどに小さくなる。
「そなたの霊魂には、この世は持たせられんものを、この方に敵対うてあまりのやり方。堪忍袋の緒が切れるぞよ」と、直の声が矢弾のごとくふりかかる。
「わしの清き心は、天の安河で誓約して明かしてあるぞよ。疑うにも程があろうが……」
 ぱっと舞い上がった鬼三郎の頭が凄い勢いで天井を突き破り、落下するや、畳に足を踏みこむ。障子が倒れとんだ。
「嘘でつくねて、だまして、この方を力で出したであろうがな。神に誠がないばかりに、人民は悪うなるばかり。二度目の天の岩戸は、誠なしではもう開けんぞよ」と叫ぶ直。
 家鳴り震動させ、同時に二神はとび去る。龍門館の住民は残らず外にとび出し、呆然として顔を見合わせた。
 何が起こったのか、初めは誰にもわけが分らなかった。直に天照大神、鬼三郎に素盞嗚尊が神がかりして、言論戦を展開し始めたのだ。元伊勢水の御用で天照大神の霊魂を、出雲火の御用で素盞嗚尊の霊魂を龍門館に迎え入れてしまったのか。それにしても神代の昔の争いを、なぜ再び繰り返し演じねばならぬのか。
 倒れた障子を起こし、乱れた髪をなおして直はほっと一息、階下から上ってきた鬼三郎に話しかける。
「どえらいお仕組みやげなが、もったいない、天照皇大神宮さまがなぜわたしなどに……」
「あの勢いでは体がたまりまへん。しんどおっしゃろ」
 いたわる鬼三郎に、直は首をふって微笑む。
 それが手始めであった。直と鬼三郎の肉体を宿に、天照大神がかかれば素盞嗚尊、艮の金神がかかれば小松林命が降霊して、時を選ばず戦いが勃発する。きまって二階と階下に分かれて。

「改心せい、小松林命」と、直の肉体に艮の金神がかかって責める。二階が揺らぐ。すかさず小松林命が鬼三郎にかかる。鬼三郎の手から書物が転げ落ち、ダッと床を蹴って体が舞い上がる。
「おう、来おったか、艮の祟り神が……」
「目をさませい、小松林は害国のやり方。この高天原は、艮の金神の筆先で世をひらくぞよ。筆先七分、霊学三分にせよと申してあるぞよ」
 負けずに鬼三郎。
「筆先など糞くらえ。気に入らぬことばかりじゃわい」
「小松林、そなたの改心ができぬ故、この世の難渋。早く改心なされよ。往生いたされよ」
「曲津の神は霊学の光を恐れるわい。この神界の審神者の眼力を避けるのか」
 直が怒り雄叫び、四股を踏む。
「変性女子は霊学でひらきたいのが病であるから、一番にこの病を治してやるぞよ。狐、狸、天狗などにもてあそばれて、それで神国の御用ができるのか。畜生の容器にしられて、それで結構と思うのか。神界の大罪人になりても満足なのか。わけが分らんと申しても、あんまりであるぞよ」
 鬼三郎も天井に箒を突き上げ、たけり立つ。
「筆先の説くところ、一つとして国家社会に害毒を流さぬものなし。『世の立替えが三十四年じゃ』と人を迷わし、世を偽る邪神はその方。『財産家は天の罪人、漢字は国害、学校は害物、害国人を排斥せよ、洋服は神意に反す、商工業は小にせよ……』、生成化育の神意を知らざる馬鹿神じゃ。世の退歩、破滅を好む妖魅にたぶらかされておるのじゃ。その方こそ目をさませい、改心せい」
「小松林のやり方は、たとえて言えば新道じゃ。新道と旧道の二筋道。旧道は昔に戻る誠の道、えらい峠もあるし山道を越えて行かねばならんから今はつらいなれど、先の広きおん道じゃ。新道は、楽なうまいことだと思うて行きよると、行きあたりてあと戻りいたすぞよ。つらい方は誠の道、楽な方は今の時勢の道であるから、楽な方が結構なげにあれど、尻すぼまりであるぞよ」
 はじき返して、鬼三郎はどなる。
「苦労して歩くばかりが誠の道かい。早く遠くへ歩ける平らな新道をつけるために、よく学び、向進発展完成の域に至るのが、人の正しき務めやないか。その方の言う旧道こそ、進化を忘れた楽な道……」
 直の声は、鬼三郎の脳天に錐をもみこむようにきりきりと刺さる。
「見ておざれよ。新道へみな行くなれど、もとのむかしに戻す経綸がしてあるから、旧道へあと戻りいたさねば、この先へ行く道はどこにもほかにはないぞよ」
 ずしんと二階が揺れ、あとはしんと静まる。同じく体を切り、鬼三郎の神も昇霊。
 この間、別室では、君が怯えて世祢にすがりつき、中村竹吉、四方平蔵ら役員信者が四肢をこわばらせていた。
 庭で草むしりしていた澄は、屋内が静まるとほっと溜息をつき、霊縛から解かれたように立ち上る。
「神さん同士、仲が悪いちゅうのは、どもなりまへんなあ」
「わしらが夫婦喧嘩するのも、あたり前のことやでよ」
 無責任な会話に、澄は首をすくめた。裏にも表にも、近所の衆が集まってのぞきこんでいるのだ。いや、あふれた十人もの人たちが隣の柿の木に登って、この争いを見物している。金神さんの喧嘩はもう有名で、町の人々の好奇心をそそっていた。
「けど、何のことでっしゃろ。外国じゃ日本じゃ、新や旧や、改心せいばかりで、さっぱり面白味ござへんなあ」
「ほんまに……それでも凄みがあるわいな。わめいとるだけじゃのに、腹の中までぶるぶるするでよ」
「明日もまた見せてくれてやろか、母ちゃん」
「そら毎日やってやで……」
 勝手なことをいいながら、ぞろぞろ帰り出す。
 この頃では毎日、多い時は日に二、三度。役員信者の中には、「家内和合の道こそ大本の教えやのに、これはどういうことやいな」と信仰を落とす者さえできる始末だ。
 母と夫の中に立って、澄も身の細る思いがする。正しい神さん同士が争うなど、澄の頭では考えられぬことだから、一方は悪神であろう。どちらが悪神でも、それは悲しい。ただ一つの救いは、神がかりの去った後の母と夫が、実の親子以上に仲の良いことである。
 とんとんと二階から直が降りてくる。
「先生、たいへんな神さまの勢いでしたなあ」
「ごつい荒れようで、かないまへんなあ」
「これは戦いの型をさせられとるんですげなで」
「へえ、いつまで続くのやろ。恰好わるてかなわん」
「神さまはなあ、御苦労ながらもうしばらくで後はちゃんとなるわい、この厭な悪役の御用をさせる者も、してくれる者も外にはござらん、してくれねばならぬのじゃわい……と言うてなさります」
「のどがからからでっしゃろ。白湯なとくみまひょか」
「おおきに……御神水をよばれますわいな」
 こんな仲の良い親子を喧嘩させるなんて、なした意地悪の神さまやろと、澄は思ってしまう。
 直が二階へ上がると、鬼三郎はごろんと仰臥し、天井を見つめた。澄は、鬼三郎の脇に坐りこむ。
「先生、天照大神さまに楯ついてん素盞嗚尊って、そんなに悪い神さんでっしゃろか」
「御苦労な悪のお役目と教祖はんは言わはる」
「悪神じゃと分っとるのなら、なんで先生は審神して追い出してないんやいな」
「素盞嗚尊は強い神さんやけど、邪神違うぞ。いや、本来なら、この地上を主宰すべき天津神の貴のみ子なんや。その御分霊が小松林命……ほいでも小松林はんも思い切ったこと言わはるのう、あれでは教祖はんの神さんが怒らはるのも、しゃあないわい」
「お筆先など糞くらえ言うちゃったもん、まさか先生の本心と違いますやろ」
 澄の瞳が、心をのぞきこむように、まっすぐ鬼三郎に向けられた。鬼三郎は思い返して、逃げようとした眼を澄の目にぶつけた。
「もしかしたら……いや、たぶん……わしの心の奥底に潜む思いが吹き出したんやろ。神人合一する時、小松林命はわしの心と一つや。そやさけ、あの言葉にわし自身驚きながら、膿をしぼり出したみたいなええ気分やった」
「……」
「教祖はんは小松林命を悪やと決めつけはるが、贔屓目か知らんが、わしにはそう思えん」
 悲しみと惑いの色が、激しく澄の顔を曇らせた。膝の上で握った拳に、木の葉の脈のような青い筋が浮き出ている。鬼三郎の苦悩の表情にも、同じ悲しみがにじんでいた。
「分からんのや。どっちが善やら悪やら、正直わしには分からんのや。分からんうちは、戦いも続くこっちゃろ。どっちか一方の改心ができるまではのう」
「小松林命さんに退いてほしい、と思ちゃらへんのどすか」
「退かれたら、わしはすがりつきたいほど淋しゅうなる。あまりかかってないと、懐かしゅうてたまらんのや。小松林命はんと一緒におられるなら、このわずらわしい現界より、いっそ肉体を捨てて、神霊の世界へ行きたいと思うぐらいや」
「なしたことだっしゃろ」と、澄は涙ぐんだ。

 直と鬼三郎にかかる神霊同士の争いを、役員信者たちは「火水の戦い」と呼んだ。火と水、いずれも天地を浄化する強い霊威を持ちながら、まさに龍虎あいうつ。今にして思えばその兆しはすでに今年(明治三十四年)になって始まっていた。
 一月六日、祖母宇能が死に、鬼三郎に深い悲しみを与えた。その直後から、鬼三郎はしきりに生家の火事の夢を見て、胸騒ぎがしてならなかった。
 宇能の百日祭の夜半、上田家全焼。火水の戦いを神の演出する神劇に例えれば、舞台は綾部、主役は直と鬼三郎。上田家の火事は開幕を告げる柝の音がチョーンと入ったというところか。
 住む家を失った上田一族が、出口一族の住む綾部に移住する。前後して、立替え近しと信ずる者たちが続々と綾部に移転、たしかに端役に至るまで役者は勢揃いしたかだ。
「世の立替えは、水の守護と火の守護とでいたすぞよ」の神示の通り、四月二十六日(旧三月八日)には天照大神を祀った元伊勢水の御用。水晶の産水を得ての帰り、お礼参拝した直後の三つの火の不思議。
 五月二十七日(旧四月十日)、沓島の釣鐘岩の絶頂から産水と龍門館の真清水を龍宮海に投じ、「この水、三年で世界へ回るぞよ。世界が動き出すぞよ」と直は叫んだが、何を意味するのか。
 七月一日(旧五月十六日)からは素盞嗚尊の因縁の地の出雲へ火の御用。その帰途、澄の腹の子が男か女かで、直と鬼三郎が神がかって言い争った。龍門館に帰り着いて間もなく、日(火)の大神のアマテラスが直に、大海原(水)を支配すべきスサノオが鬼三郎にかかって神霊同士の大戦い。
 霊界では確かに何かが動き始めたらしい。アマテラスとスサノオ、どちらが善でどちらが悪か。筆先は一方的に素盞嗚尊を岩戸閉めの張本人ときめつけるが、鬼三郎は高熊山での霊界探検で、素盞嗚尊の御剣から生まれた瑞霊三女神の美しく崇高いお姿を拝している。悪神であろうはずがない。
 火水の戦いが熾烈になるほど、直を生神と信じる役員信者たちは一段と会長批判を強めた。この戦いが雛型となってやがて世界に大立替えが起こると、彼らは勝手に妄想した。が、現実にそのけぶりも見えぬとなるとしょげかえり、はては責任を鬼三郎に転嫁する。
「出雲の御用に小松林が供をしたから立替えが遅れた」、「会長の妨害がなければ立替えはもっと容易になるだろう」と話し合い、鬼三郎憎しのあまり「金光教の教師足立先生は偉かった」と追い出した足立を慕う。
 最近では、鬼三郎の醜聞が会員間にものすごい勢いで伝播されていた。まわりまわって鬼三郎の耳に入った時、あまりのたあいなさにあきれ果てた。噂の出所は中村竹吉、火のない所に煙は立たぬというけれど、あれは火の粉とでも言えるだろうか。
 迷信にこり固った役員との対応に疲れ果てた鬼三郎が、ある夜、龍門館を抜け出して、綾部大橋の上で晩夏の月を眺めた。袂をひるがえして吹く風は涼しく、月は冴え、鮎狩りであろうか漁火のかげが遠くまたたく。
 無心の月に心洗われ龍門館に帰ると、戸がしっかり閉ざされている。大声で叫び続けて、ようやくふくれ面の中村竹吉に戸を開けさせた。
「会長はん、神さまに仕える身分で夜遊びとは何じゃいな。気をつけなはれ」と彼はきびしくなじった。つい鬼三郎はからかいたくなる。
「すまん、すまん、橋の上で愛人と会うてて、知らず知らずに夜が更けた」
「愛人とは誰じゃいな。白状しなはれ」
「ほれ、まだ外におるわい。松ヶ枝に照る夏の月、水の面に流るる天の月船、昔からのわしの恋人や」
 中村に風流など通じぬのは百も承知のくせに、ブレーキをかけそこねたのが悪かった。
「何を寝言ほざいてごまかしなはる。ちゃんと名前を言いなはれ」
「きれいなきれいなお月さま……おい、冗談やで」
 寝室へ行きかける鬼三郎の袖を中村は引き戻し、「きれいなきれいなおつきさま、お、つ、き……ふーむ」と深刻な顔で考えこむ。ややあって、「冗談ですむか、すまぬか。とにかく教祖さまに報告しなされ」と先に立つ。
 二階の直の居間の外から、中村は両手をついて声をかける。
「教祖さま、重大事件が勃発しました。起きてなはりますかい」
「どうぞ入っとくれなはれ」と直の澄んだ声が返ってくる。
 襖を開けた。直が衣紋を会わせながら床に起きなおり、不審そうな顔で迎える。
 中村は進み出て、直訴する。
「こんな夜更けに、会長はんは橋の上で恋人と逢い引きしとっちゃったんですで。本人が自白したことやさかい、嘘やござへん。こんな人は一時も早う去なせて、まず大本の立替えを始めておくれなはれ」
「先生、ほんまですかい」と、直は意外そう。
「さあ、どうでっしゃろ。どうせわしが弁解しても信じてもらえんやろさけ、御自分で神さまに問うてみなはれ」と向っ腹立てて不貞腐れる。この際、直をためしてみたい気もあった。
 直は水を浴びて着物を着換え、神前にぬかずく。しばらく何か伺っていたが、朗らかに笑い出す。向きなおって、直は微笑みながら中村に語りかける。
「中村さん、先生の恋人というのはなあ、それはそれはきれいなお月さま。地の上のきれいなものも汚いものもにこやかに照らして下さるお月さまはみろくの大神さまやでなあ、それならわたしにとっても恋人ですわな」
 釈然とせぬ顔で、中村は小首を傾け傾け引き下る。
 鬼三郎は直の一言で、一度に心が晴れる思いであった。
 それきりお笑い草として忘れていたものを、中村は「きれいなおつきさま」にこだわって、考え続けていた。「おつき」、「おーつき」、「大槻」……そして「きれいな大槻」で、上谷修行に参加した娘大槻とうを連想したらしい。いったんそうではないかとひっかかるや、そうに違いないと確たる信念に達するのに時間はいらぬ。それが中村の偏執的な性格であった。
 大槻とうは一昨年の秋、巡査と結婚しどこかで幸福に暮らしているという噂を聞いたぐらいで、その後、鬼三郎は会ったこともない。
 ばからしさに弁解する気にもならぬが、それが火種になって吹き立てられ、飛び火は広がっていった。

「誰か来とってやでよ。大事な相談があるさかい、そっと産土さんまで顔貸してほしいげな」
 奥の林の椋鳥の群に投げていた視線を、鬼三郎は返した。
 知らせに来たのは、入信して日の浅い信者のひとりだ。
「どんな男や」
「何やら目つきのこわい、大きな旅の男ですわな」
「誰やろな。よし、すぐ行くわい」
「あの……役員はんに言わんでも、大事ござへんかい」
 気になるらしく、追いすがって囁く。
「呼び出す以上は、人に知られたない話やろ。黙っといてやれ」
 鬼三郎は澄にも告げず表へ出た。
 何気ない散歩の足取りで熊野神社の境内に入った。背後の森に待ち受けていたのは杉浦万吉。京都から出雲出修にも参加した熱心な信者であるが、寡黙な性格で、何を考えているか分からぬ所があった。彼が只一度、感情をあらわにしたのは、冠島参りで海難に会った後、泣いて鬼三郎に陰謀を告白した時だけである。
 散り敷く木の葉を踏んで、二人は向い会った。杉浦は紙巻き煙草を草鞋でもみ消し、低い押しのきく声で口を切った。
「会長はん、迎えに来たんどっせ。このままわしと京都まで行っとくれやす」
「こんな迎え方があるけい」
「失礼は承知の上どすわ。わしの勝手やおへん。京都、伏見の信者一同を代表して来たんどす」
 元刑事という経歴に四十近い年輪の重みも加わって、恰幅のいい杉浦の体には、どことなし威圧する力があった。
「なんのために行くのや」
 蜘蛛の巣にからまった秋蝉の死骸をみながら、鬼三郎が聞く。杉浦は唇の端に嘲笑を乗せた。
「そんなことぐらい、会長はん、あんたの霊眼で見とくれやす」
「そうはいかんのや。一々霊眼の世話になっとった日にゃ、どいつもこいつも狐や狸に見えてきて、たまったもんやないわい」
 杉浦は底光りする鋭い目を細めた。
「元伊勢水の御用は終った。出雲火の御用も終った。野崎はん、田中はん、時田はんなど、京都から家業を擲って綾部に来たんは何のためどす。わしかて警官を辞め、一筋にこの道にとびこんで夢中で宣伝して来た。みな、立替え立直しが目前やと思えばこそどすで。さあ、それはいつ来るのどす。おまけにあんたは、この大事の時にお澄はんという立派な世継の奥さんがありながら、人妻の大槻何とかに夢中やそうな。どんな料簡どすねん。京都、伏見の連中が騒いどる。もうわしらでは押えられまへん。会長はんの口から納得のいくように説明したっとくれやす」

 やはりその要件かと、鬼三郎は暗然となった。この地元、綾部の役員信者たちも、火の御用のあとに立替えが来ると妄信していた。
「世界には、火と水とで不思議があるぞよ」
 が、一向にその気配があらわれぬばかりか、教祖と会長の神霊同士の激しい戦いが始まった。立替え切迫を吹聴していた役員たちは次第に焦燥の色が濃くなり、信者間に失望が広がる。それが会長排斥運動を再燃させ地方に波及していく。四面楚歌であった。ひとりでも真実の信仰の友がほしかった。
「杉浦はん、あんたらはそんなに立替えが待ち遠しいのか」
「そらそうや。役員さんらの言葉を信じて『今に天地がひっくり返る』とふれ廻ったんや。世間から法螺吹きやの気違いやのと笑われながら……立替えが来なんだら、わしらの立場はどうなるのどす」
「心を鎮めてよう考えてみい。『一度に立替えいたせば、世界に大変な人減りいたすぞよ。世界の人民三分になるから早う改心して下され』とくどう神さまが気をつけたはる。大戦いが起こるか、世界が火の海、泥の海になるか、立替えの形は分からん。しかしわしに言えることは、それが世界に起こる前に必ずこの大本の中に型となってあらわれるという、神界の約束や」
「その立替えをさせまいとして、小松林が艮の金神さまに敵対うて、広前は毎日えらい騒ぎやそうどすな。会長さんさえ改心してくれはったら、とっくに立替え立直しはできたはずどす」
「立直しは結構じゃ。けど杉浦はん、その前にあるべき立替えが今起こったとして、あんたらは生き残れる三分の側に入れるとでも思うのか」
 杉浦は笑った。哀れむふうに鬼三郎を眺めた。
「そんな心配してくれたはるのか、会長はんは。艮の金神さんを信じ、その示さはる筆先を信じるわしらが、なんで立替えられる側に入らななりまへん」
「教祖はんを見てみい。立替えの恐ろしい有様を神様に見せられとってやさけ、それを思うと心配で食事も喉を通らんというてはる。世界の大難を小難に、小難を無難にと必死に日夜祈ったはる。それが誠一筋の神心や。神様にしても、一人でも多く人民が改心するよう、立替えの時を一刻でも引きのばしたいお気持や。世の立替えが避けられん神業ならば、そのことをひとりでも多くに知らせ、神心に立ち返るように叫ばねばならん。それが神から課せられた大本信徒の使命やぞ。その努力もせんうちに、いま世界の大立替えが起こるなら、艮の金神は鬼神、悪魔神、鬼門の沓島に閉じこめておくべき祟り神やったと思わんならんわい」
「……」
「自分たちさえ助かる限り、悪人は滅びるがよい。己れの痛まぬ立替えの早かれと望む心こそ、本来、艮の金神が立替えなはる眼目、利己心なのや。もしあんたらの願い通り即座に立替えが起こってみい。真先に滅びるのは、立替えを知らされながら手をこまねいとったあんたらやで。まず大本信者が三分になる。三分どころか、うかうかしよると全滅じゃろ。大本信者になったから救いの船の予約席におさまれると勘違いすなよ。自分が水にとび込んでも人を救いの船に乗せてやる誠心こそ、大本信者の資格やぞ。わしは、できれば立替えという大きな犠牲をはらわずに、このまま末代続く松の世、神国の世に進んでいくことを祈りたい」
「うまいこと言わはる、その口にころっとだまされるとこどしたで」
 杉浦の褐色の顔面が、も一度にやりとゆるんだ。
「とうとう悪神の正体、あらわしくさった。会長はんは筆先がこわいのやろ。立替えがこわいのやろ。そのはずやな。艮の金神に楯つく小松林やさかい、立替えには真先に血祭りじゃろい。その小松林を改心させたれと、京都、伏見の熱心な信者たちが、手ぐすねひいて待っとるのどす。腹ん中の芥は、みんなの前で吐いとくれやす。さあ、東に向かって歩きなはれ」
「これだけいうてもまだ分からんのか。お前らみたいな分からず屋のいる京都へなど、行く気がせんわい」
「歩かなんだら、その減らず口もたたけまへんで」
 ぴたりと鬼三郎の横腹に吸いついたのは短刀だった。威しではない殺気が走る。鬼三郎は観念した。
 そのまま歩き始めて、須知山峠を越え、綾部から二里八丁。早くも陽が落ちて、川合村大原の「あたらし屋」という旅篭で草鞋をぬいだ。街道に面した山村の、名に似ぬ汚い古宿である。
 気まずく夕飯をかきこんでから、杉浦は落ちつかぬふうで黙って部屋を出ていった。することもなく鬼三郎は蒲団にもぐりこんだが、何か胸騒ぎしてならぬ。心気を澄ますと、家全体を包むただならぬ殺気。
 足音をしのばせて、暗い廊下に出た。廊下の突きあたりは便所。生理的要求のままに戸をあけた。
 便所の外に四、五人寄って何やら相談している気配。思わず鬼三郎は耳をそば立てた。
「ほんな分かったな。ぐっすり寝込んどらなんだら、奴の霊縛喰らうさかいな。わしの合図を見落とすなよ」
「あとのことは杉浦さん、うまいことしとくれやっしゃ」
「わしらには艮の金神さんがついとるわい。わしにまかせて逃げたらええ」
 誰かがあわただしく走ってきた。
「たいへんや、蒲団はもぬけのからでっせ。いつのまに隠れたんどっしゃろ」
「ちぇっ、頼りない見張りや。あいつ、勘づきよったんかいな」
 とどめを刺すように、杉浦がいい放つ。
「こうなったら見つけしだい殺ろかい。何事も神さまのためや。まだ遠くへは逃げとらんやろ」
 京都、伏見の血気にはやる若者たちが杉浦とここで落ち合い、鬼三郎を暗殺する手はずなのだ。
 小松林命は邪魔だが鬼三郎の肉体は必要と信じている輩も困りものだが、まだしも危険性はない。しかし、彼等は、鬼三郎の肉体ぐるみ小松林を抹殺しようとしている。
 ――阿呆やなあ、こいつら。わしの肉体がのうなったかて、わしの魂まで殺せるけえ。まして肉体を持たぬ小松林の神さんを、刃物や鉄砲で追い払えるとでも思ってけつかるのか。霊魂に代わりはのうても、肉体ぐらいなんぼでも代わりはあるわい。
 雪隠にしゃがみながら、鬼三郎はあきれた。淋しく悲しかった。
 排泄をすますと、急に恐怖がのさばり出した。
 ――けど、こんな気違いどもにかかったらたまらん。命が惜しいわいや。
 豪胆なのか臆病なのか自分自身でも見当のとれぬ鬼三郎、今は子兎にも負けぬくらいびくついていた。
「お前らは裏門から二つに別れて追うのや。わしは宿の中を捜す。東か西か、逃げ道は二つに一つや。ああ、天眼通が使えたらええのに」
 刺客らの走り去るのを待ち、鬼三郎は雪隠の草履をつっかけたまま、手洗鉢の脇から庭に降りた。この際、荷物のないのが幸いだ。裏門のあたりにはまだ人の気配があった。生垣をくぐり、崖下に流れる谷川に滑り落ちる。裾をまくって月明かりに急な流れの川を渡ると竹薮。孟宗竹に寄りかかって、寒さと恐怖に震えつつ一夜を過ごした。
 明け方の光とともに、恐怖がとけ去った。雀どもに一夜の宿の礼を言い、薮を出た。朝霧の這う中に波の瀬がしらじらと光るのを眺めていると、昨夜の人間世界の出来事がまるで絵空事のように思えてくる。
 のこのこと宿の玄関に入った。女中たちが驚いた顔で見た。杉浦たちは立ち去った後で、宿の払いもすましてあった。宿の寝巻きと草履をかえ、帰途につく。
 並松の土堤の片方に咲き遅れた河原撫子が一株、ひっそりと淡紅の花びらをひらいていた。目に止めて行き過ぎながら、鬼三郎は引き返した。撫子の横に寝そべって、花弁に鼻を触れる。可憐な優しさが鬼三郎の体の隅々にまで滲みとおってゆく。離れがたい思いで、土ごと撫子を掘り採った。
「どこへ行っとっちゃったんです。昨日からみんな大騒ぎで捜し回っとったんじゃでよ」
 平蔵や祐助や与平たちがとび出してきてなじった。
 こわばった顔の澄に、鬼三郎は笑いかけた。
「すまんすまん、勘忍やぞ。ついうっかり、この花と一晩寝過ごしてもたんや」

「お澄、撫子知らんけ。鉢に植えて霜に当たらんよう、縁先に置いといたのに、一夜で花だけ消えちもた」
「へえ、妙ですなあ。うち、知りまへんで……」
 井戸端で洗濯していた澄が腰を上げた。五ヶ月目に入って、澄の腹が少し目立ってきた。
 朝寝の鬼三郎がいつもより早く起き出してきたのは、撫子の花の御機嫌うかがいであろう。
 昨日はまるで子供でも拾ってきたように、「鉢はどこじゃ。土や。いや、ここらの土ではあかん。こいつが生まれ育った並松の土堤土や。河原の砂が慣れとってええやろ」などと、ひとりではしゃいで植え、水を与え、とみこうみ楽しんでいたのだ。
 澄はひやひやしていた。鮮やかな花の色は母の嫌うところ、またいつそれが種になって、直と鬼三郎の神の大喧嘩に発展するやら知れぬ。母の目に触れぬよう祈る思いで今朝、庭の片隅に鉢をまわしておいた。
「おう、いやらし……一晩、うっかり色花と寝たやて……」
 中村竹吉が鉢の前にかがんでぶつぶついっていたが、澄は知らぬ振りをしていたのだ。主のない鉢を抱いて、鬼三郎が二階へ上がってゆく。思わず澄は聞き耳を立てた。 二階で筆先を音読していた中村の大声が止まった。
「中村はん、わしの撫子がのうなった。知らんけ」
「ああ、あの色花か。いやらしいさかい、神さまに代わってわしが退治したでよ」
「退治した?……どこに……どうやって?」
「はて、松の木の下やったかのう。引っこ抜いて、へし折って、踏んで踏んで踏みちゃくって埋めてやったわな」
「なんやて、お前……なんでそんな無茶さらすにゃ」
 わざとらしい中村の嘆息が、階下の澄の耳にも響く。
「あーあ、金明霊学会の会長はんが、そんなことまでわしに聞かんと分からんのかいな。こうも立替えが遅れる道理じゃ。会長はん、まずここへお坐り。なんでわしが色花を退治んならんか、納得ゆくように教えて進ぜる」
「おう、ちゃんとした理由があるならぬかしてみい」
 中庭をへだてた離れで筆先を書いている母に聞こえはせぬかと、澄は気をもむ。
 鬼三郎の怒号にもひるまず、中村が説教しだした。
「そもそも、もったいなくも、天照皇大神宮さまのお妹ごの御精霊である稚姫君命さまが世を持っておいでの時、自ら夫婦の道をあやまられて地におちなされた。生きかわり、死にかわり、その罪のために苦しみなされて、天より高く咲く花も地獄の釜のこげおこし、今度許されて二度目の世の立替えの御用をなさる。お筆先にも、色花はいかんと書いてござるわけや。ましてこの世界の鑑のうつる神屋敷、教祖さまのお膝元に色花など、もってのほかですわいな」
「色というても色々あるわい。稚姫君命の間違いは色情、道ならぬ男女の恋やろ。お筆先でいう色花とはな、物の譬で、とわに変わらん松葉色に比べて花のようにうつろいやすい浮き心をいましめてはるのや」
「どっちゃにしろ花はあかん。花一つ植えるお土があれば、野菜を植えんならん。筆先の合い間には、教祖さまはせっせと畑作りしとってや。ちょっとはあんたも見習いなはれよ」
「そやさけわしは鉢に植えてる。つつましく咲く一本の撫子に何の罪があるんや。教祖はんはな、雑草一本引き抜くにもいちいち言い聞かせ、『御免やで』とあやまりながら抜いてなさる。草花にもこの世に生きる権利がある、生命があり、感情があるさかいや」
「ほう、草花に感情が……こら聞き初めやで」
 馬鹿にしたような中村の高声。が、鬼三郎の声は激しい感情が静まって、むしろ訴えるように響く。
「田の稲は主人の足音を喜ぶと昔から言われるやろ。主人が朝晩見回ってやれば、稲田の不備にも気がついて補修する。世話が行きとどくさけ、収穫もようなる……確かにそうや。今の人たちは、そういう解釈だけを合理的やと思っとる。ところが、ほんまに稲は主人の足音を聞きつけて、葉を震わせて喜びよる。ちゃんと足魂にも喜怒哀楽の感情があるのや。人間でも、理屈抜きに気分の良い時は食欲も進む。五穀かて野菜や果物かて、肥やしは人間の注ぐ愛情なんや。咲きおくれて、きつい霜に打たれれば一夜にも死ぬ撫子の花を、どんな気持でお前は土足で踏みにじれたのや。それを退治したやと……阿呆めが……」
 鬼三郎の声は弱々しく、涙を含んでいる。
 澄は階段に腰をおろし、顔をおおった。母の心も、夫の心も共に切なく滲みてきて、やはりどちらを取ってよいやら分からない。
「一本の花が、何ですいな。何ちゅう女々しいお人や。きれいなきれいなおーつきさま、色花抱いてひと晩寝たやと。ウー気味わる。千騎一騎のこの立替えがせまっとる時に情なや。浮わついとる外国身魂の証拠やで。梅で開いて松で治める、これが艮の金神の大本のお仕組みでござる。生粋の日本魂のこの中村の目ん玉の黒いうち、小松林に色花などなに植えさそうやい」
「こいつ……」
「わしの心なら、会長はんに見せたいぐらいや。お道のためならば、たとえわが子を眼の前で殺されても、びくともいたさん覚悟ができとる」
「このドテ頭め……我が子を生んでからぬかせやい」と、鬼三郎の癇癪玉が爆発する。

 ある日、牛田源次郎巡査(三十五歳)が訪ねてきた。牛田は元屋敷の一軒おいて南隣、龍門館の空地をへだてた斜め裏に住み、温厚で世話好きな警察官として町民から親しまれていた。鬼三郎とも近所づき合いの仲である。けれど、要件は聞かずとも分かるだけに、澄は一層暗い気持ちになった。
「御苦労はん、まあ、おかけなはれ」
 階下に降りて、鬼三郎は上がり框に座蒲団をすすめた。
「こんなことであんまり来とうないんやが……」
 牛田は、人の良さそうな目を天井に向け、困ったように八字髭の尻尾を撫でた。
 大本が金明霊学会の名で稲荷講社に所属して以来、一時、警察の干渉はなかった。元伊勢水の御用のあと、各地から綾部への移住が目立った。立替え立直しも公然と叫ぶ。世間も注目し出した。
 警察で内偵すると、稲荷講社とは拝んでいる神もその主張もどうやらまるで違う。一身一家の吉凶を判じたり、気の病を祈って治すぐらいのことなら黙認もしよう。が、世を立替える、上と下がひっくり返る、鬼門の金神が表に現れて世界を一つに丸めるなどと、途方もないことを言い出したのでは、放ってもおけない。綾部警察ではその責任を恐れた。宗教として府の認可を受けねば布教は許さぬと、当然ながら神経を立て始めたのだ。連日のように警察はうろつき廻るし、鬼三郎も呼び出しを受けていた。
 澄が運んだ砂糖水でのどをしめして、牛田が聞いた。
「どうや、ちゃんと公認の手続きしちゃったかい」
「へえ、進めとるけど、なんせ田舎者でこういうややこしい手続きは慣れんもんやさかい、なかなか……」
 鬼三郎は言葉尻をにごしたが、実際にはまだ手もつけていなかった。府に認可手続きすることを、直が頑として許さぬからである。
 鬼三郎の煮え切らぬ返事で牛田は事情を察し、声をひそめた。
「あまり埓があかんさかい、警察では毎日眼え光らせて、出入りする信者たちをつけとめとるんや。お参りに来にくいようになるやろ。そこがつけ目らしいでよ。この頃は当局もうるさいでなあ。禁止、禁止で、思想上の問題はことに苛立ってきとる。上田はん、気ィつけなはれや」
 牛田巡査が帰ってから、鬼三郎は真剣に考えこんだ。穴太で幽斎修行していた頃も警察の干渉があったが、警察の態度は今度の方が本腰だ。よほど腹を据えてかからねばならぬ。実際、思案にあまる問題であった。
 ――大日本帝国憲法第二十八条に曰く。
「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限リニ於テ信教ノ自由ヲ有ス」
 同じく第二十九条に曰く。
「日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス」
 ――空文もよいとこやな。事実はどうやい。信仰の自由も信仰団体創設(結社)の自由もまるきりないやないけ。政府は表向き信仰の自由を標榜しながら、国家神道(伊勢神道)以外の宗教はさまざまな法規でがんじがらめや。もっとも、そうせなならん理由があるさけ……。
 明治維新後、日本は、天皇を中心とする絶対主義的国家への道を急速に進んだ。天皇家の祖先の天照大神を祀る伊勢神宮の崇拝を、まず国民に押しつけてきた。天皇は主権の主体であり、同時に現人神として神格化されているから、国家神道は事実上、国教の地位に立つ。この国情下で別の神を立てて認可を得ようなど、どだい無理なのだ。それぞれの宗教は、信仰的権威の一点に集中しようとする体質がある。その教義が国家神道的流れに沿う場合はまだしも、それから逸脱したり反発する場合、認可が下りる筈がない。
 教派神道の中で、教祖の天啓によって創められた黒住、金光、天理の三教団の公認までの経緯を、鬼三郎は学んでいた。
 黒住教は備前岡山の黒住宗忠(一七八〇~一八五〇)を教祖とし、一八一四(文化十一)年開教。伊勢神道と同じく天照大神(太陽神)を信仰する。その故か、造化三神を祀り「忠孝」中心を説く神道修成派と共に他の教団にさきがけて七二(明治五)年、黒住講社として公許を得、七六年、教派として独立、八二年より黒住教と称するようになった。
 金光教は、川手文治郎(一八一四~一八八三)を教祖とし、一八五九(安政六)年開教。天地金乃神を主神とし、忠君愛国、死生安心を大旨とする。国家権力には柔順であったが、公認されたのはようやく一九〇〇(明治三十三)年、開教より四十一年後であった。
 この二者は国家の宗教政策に対してさほど苦悩せずにすんだが、天理教の場合は事情が違う。
 天理教は出口直の生まれた二年後の一八三八(天保九)年、中山みき(一七九八~一八八七)が神がかりして、「自分は神の社である」と宣言したのに創まる。天理王命(男女五組十柱の神の総称)を信じ、独特の人類創世神話を持つ。天皇、官憲を「高山」、信者を「谷底」と称し、天変地異による世の終末に高山は滅び、神の支配する世が到来するという教祖中山みきの予言を奉ずる。だから、天理教の場合、国家の宗教政策との矛盾は切実であった。幾度も警察の弾圧に合いつつ、みきを先頭に抵抗を続け、世直しの待望と民族主義的傾向を強めた。
 みきの死後は大工の伊降伊蔵が教団を指導、一八八八(明治二十一)年には神道本局付属天理教会として公認された。国家の宗教利用政策にうまく対応して大発展、みきの昇天当時三万の信徒が、十年祭の一八九七年には二百万といわれる大教団にまでふくれ上がった。それでも独立した教団として公認されてはいない。公認の請願をくりかえし、教典に手を加え、時勢に迎合しつつもいまだに……。
 ――魂を売ることで形骸の安全を得る、そんな国との取引きはわしにはできぬ。いまの世にある神に押し込められた艮の金神を信奉し、三千世界の立替え立直し、つまり現体制の根本的変革を叫ぶからには、国家の公認など不可能であろう。変革すべき対象の国家から公認を得ようなど、考える方がどうかしとるわい。たとえくれてやろうといわれても、世にある神に尻尾を振って認められたのでは、艮の金神を押し出す意義がない。
 世界の鑑である大本をあるべき形で存続させ、否、発展させるためには結局、公認宗教の看板を借り、しかも本質を変更することなく、どうかして変化れに変化れ、化け抜いて時節を待つ以外にはない。そこに組織者としての鬼三郎の悩みがあった。
 初期の頃、直は金光教の廂を借りたが、「この方は金光の下につく神ではないぞよ」とついにはねのけた。鬼三郎の大本入りによって稲荷講社に所属、金明霊学会を設立したが、「駿河の本部でよい」と受け入れていた筆先も、出修が進み神霊の活動が激しくなるにつれ、たびたび不満を示し出す。
 鬼三郎は独り愚痴った。
 ――人間界には人間界の法則があるのや。艮の神様もちっとは察してほしいわい。我が強すぎてしくじった神さまやそうなが、あまり聞きわけがなさすぎる。
 突如、別荘(離れ)から大声がはじけた。
「大本は神の開きし神の道であるぞよ。人間どもの許しを得て開こうとは、えらい間違いであるぞよ」
 ――あ、来はった、艮の……。
 と思う間もなく、雷が落ちたように全身がびりびりしびれる。ずっしーんとのしかかってくる重み。炎の走る感覚があって、体は天井にはね上がる。凝塊が鬼三郎ののど元をふさいで突き上がった。

 上田世祢の次女君は十歳。尋常小学校三年生。一家の移転によって曽我部尋常小学校から綾部尋常小学校へ転校。八番目の末っ子のせいか泣き虫で甘えん坊、穴太にいた間中は母の乳を飲んでいた。泣くと日頃やさしい鬼三郎兄が「灸すえるぞ」と目を怒らした。
 兄さんは綾部へ来てからは恐くなったと、君は思った。お筆先を書かれる教祖さまや、みんなへの迷惑を考えたら泣けないと、やがてわがままは押えられるようになった。
 朝早く、教祖さまと母世祢と君と、よく畑の石拾いや草むしりをした。神がかりでない時の教祖さまはやさしくて、手水鉢の水をつけては丹念に君の髪を梳いて下さった。
 ある日、学校から帰ってくると、鬼三郎兄が門前に立って、秋空を見上げていた。また兄さんのぼんやり癖やと君は思い、おどかそうとして足音をしのばせ背後へ回った。兄は奇妙な節をつけて同じことをつぶやいていた。
「さっぱり来んの、さっぱり来んの、さっぱりさっぱりさっぱり来んの……」
「何が来んのやいさ」
 おどかすのも忘れて、君が見上げる。
「うーん、さっぱり来んのじゃわい」
「なあ、何が来うへんのやいさ。手紙でも待ったはるのん」
 鬼三郎は顎をなでる。
「参拝者や」
「なーんや、参拝者か。来やはらへん方が、静かでええやんか」
 君が兄の腕にぶら下がる。鬼三郎は苦笑した。
「その代わり、のど仏さんが乾上がるわい。あーあ、起きて半畳、寝て一畳、どんなに食っても腹いっぱいしか食わりゃせん。出てったろか、出てったろか」
 兄の心痛を理解できる年ではなかったが、この時の情景はくっきりと君の脳裡に残った。

 元伊勢、出雲出修の前後、われ勝ちに参拝を競って広前にあふれていた信者の足が急に遠のいた。
 考えられる理由は三つ。期待した立替えの来そうにもない失望。教祖と会長が神がかりして連日争うことへの批判。そして警官が見張に立ち参拝者を訊問することへの不安。
 金明霊学会は会費制であるが、会員には会費を払う自覚が乏しい。役員といっても名称ばかりで、別に決まった役割があるわけではない。だから責任の所在は役員にあってないようなもの。結局、会の維持費は会長の才覚にかかってくる。会費があてにならねば、参拝者が捧げるいくばくかの玉串料にかかる比重は大きい。
 玉串は祭神の標木として地上に刺し立てたのが由来らしいが、後世、榊に木綿または紙垂(紙片)をつけて神に捧げることになった。祭典の本義は、感謝から祈願に移る。神饌物で食を、玉串で衣、住を(紙垂は衣、松は住)型どり、衣食住を与えたまう神への感謝をこめる。
 開教当初、信者は、金銭よりも自家製の野菜や五穀等を感謝の意味で神前に供えるものが多かった。直はそれを誠心として喜び、神に供えた後は参拝者に分け与えたものである。しかし時代が下るにつれ、それを購う料としての金銭(玉串料)に代わることが多くなった。重い農作物を運んで歩くより金銭を供える方が手軽であったし、教団側の体制が整うにつれ、維持費として農作物より金銭が必要であった。
 玉串料は、その人分相応の無理ない金額を清浄な紙に包んで自発的に供えるものであり、その金銭にいささかでも執着があっては本来の意味をなさない。
 玉串料と賽銭は本質的に違う。神に捧げる点は同じでも、玉串が神への感謝であるのに対し、賽銭には、個人の罪穢を祓い浄める科料の意味がある。
 鶴岡八幡宮に賽銭箱が置かれたのは天文年間(一五三二~五五)、銭が民間に流通してからで、そう古いことではない。賽銭箱のない社寺には、拝殿の中へ銭を投げ入れる習慣ができてしまった。人と人の間で金銭を贈る時でさえ、紙に包む。まして神へ供えるのに、むき出しの端銭を犬猫に物をくれるように投げこんでやるのは、どうにも心ないわざに思える。
 ともあれ、神道系の宗教団体にとって、賽銭や玉串料は有力な財源であった。信者が集まらねば玉串が上がらぬ。神さまは食わずともよいが、専任で仕えるものは最小限でも食わねば身が持たぬ。肉体を持つ身の悲しい現実なのだ。
 鬼三郎の母や弟妹まで綾部に来て扶養家族が増えた。澄は大きな腹を抱えて、青野の麦藁帽子の小工場から帽子の頭の飾りの部分を作る内職をもらって、深夜まで励んでいた。世祢は材料をとりよせて網すきの手内職。鬼三郎もまた昼夜縄ないをせねば、目玉のうつるような粥さえすすれぬ状態になっていた。
「食べるものがなければお土をいただいても命は保てますで」と、直はひとり、平然と筆先を書き続ける。
 ――教祖はんは土を食っとれば良いかも知らん。けれどあんたの孫をいま腹の中で育てとる娘に、せめて固めの粥など食わしたいと思わんのか。
 鬼三郎はあせってきた。

 十月十五日、鬼三郎は、木下慶太郎を供に、ひそかに綾部を発って駿河へ向かった。公認手続きのために、長沢雄楯の助言を得ようとしたのである。金明霊学会は名目上は稲荷講社の下部組織である、駿河の月見里神社には因縁ある素盞嗚命と鈿女命とが祀ってある。鬼三郎がまず長沢を頼ろうとしたのは、ごく自然であった。
 一夜、胸襟をひらいて、長沢と語り合った。大本が雄飛するにはまず公認を得て堂々と布教すべしと、長沢は鬼三郎を鼓舞した。我が意を得た思いであった。相談の結果、皇道会という法人組織にすることとし、帰途、京都府庁に寄って出願の手続きをした。しかしそのために必要な印鑑が一つ足りない。鬼三郎は木下に言い含めて綾部に印鑑を取りに帰らせ、自分は京都支部で待つことにした。
 鬼三郎に別れて京都から汽車、園部で下りて夜霧をかきわけ幾峠、薄明の頃綾部入りした木下慶太郎は、人かげのない龍門館の裏口に忍んだ。
「お澄さん、お澄さん……」
 小声で呼びかけた。朝食の支度にかかっていた澄がすぐ気づき、土間から顔を出す。
「お帰り。先生はどうしちゃった」
 とっさに木下は指で自分の唇をふさいでみせる。澄は耳を寄せた。
「先生は京都ですわな。府庁で法人の出願手続きしよう思たら、判子がひとつ足りまへん。わし、それ持って、すぐ引き返さななりまへんのや」
「えらいことやなあ」
「役員さんたち、どないしとってです」
「先生と木下さんがおってないさかい、大騒ぎしとっちゃったわな」
 濃いまつげを伏せて、木下は口ごもった。
「教祖さま……気づいて怒っとってですやろ」
「教祖さんに心配させまいとして、誰も言うとってないで。けど激しい筆先が出とるげな。機嫌ようしとってんようで、腹の中は……なあ」
「……」
 澄は気を変えて、手早く炊き上った粥を茶碗によそった。
「腹ごしらえだけはして行ってや。判子を捜してくるさかい」
「お澄さん……」
 木下が苦悩に蒼ざめて、澄を引きとめた。
「待っとくなはれ。判子……その判ひとつで大本の運命が決まりますやろ。判ひとつあれば、昨日のうちに大本は『皇道会』と名を変えて、お国に公認の手続きがでけたはずや。その判が足らなんだ。つまり、大本の運命は、わしが今判ひとつ持って帰るか帰らぬかで決まる。神さまは一日のばして、その決定をわしに負わせちゃったのや」
「……」
「道々、わしは迷うた。会長はんはこういいなさる。『法人にすることは大本のためや。今は怒ってやけど、きっと後には教祖さまにも分かって喜んでもらえる。この判ひとつで変化れとらな、後に大本は国からつぶされてしまうのじゃわい』。わしはその言葉を信じたいのや。信じれたら、京都の往復くらい、足が棒になっても、くさってもかまわん。這ってでも戻りますで。けどどんなに立派なことを言うちゃっても、先生は小松林の身魂やさかい……お澄さん、言うとくなはれ、わしにどうせいと」
 土間の上り框にがっくり腰を下ろして、木下は顔をおおった。激しく肩が波打っている。澄が突き放すように言った。
「分からんのは、うちも木下はんといっしょや。どっちゃにせいというてあげる力が、うちなどないわいな」
 木下が顔を上げた。
「もしや、小松林が大本を盗むのやったら……」
「先生のしとってんことが正しいかどうか、『スサノオが高天原を奪りにくる』いうてん、母さんの神さんがほんまなのか、うちかて知りたいのや、木下はん」
「分からんではすまんのですわ。わしが先生を裏切って判子を今持っていかなんだら、先生は……ああ」
 六畳の別荘から渡り廊下づたいに、いつもの忍びやかな直の足音。足音は廊下のはずれに止まって、きれいな声だけが響いた。
「お澄、木下さんに来てもろておくれ」
「はい、母さん」
 足音は御神前への階段を上がっていく。
 澄と木下は無言で目を交した。姿も見ぬのに、木下の帰郷を直は知っている。すべてを見透している。絶望にも似た思いが、木下を決意させていた。
 怯える足を励まして二階へ行く木下。澄が唇を噛みしめて見送る。
 神前に端座した直を、木下は正視できなかった。
「教祖さま、すみまへん」
 あとの言葉が途切れる。直は反り身になって目を閉じたままだ。
 思い切って木下は進み出た。
「わし、どうしたらよいんでっしゃろ。教祖さま、先生が京都で待ってなはります。『皇道会』の手続きに判子がひとつ……」
 直はやわらかくさえぎる。
「心配せんでもよい、ゆっくり休みなされ。京都へ行かいでも大事ござへん」
「けどわしが戻らず、このまま放かしといたんでは、先生が……先生が……」
 突如、直の形相が変じた。水行でぬれた白銀の髪一本一本が光の炎のようにゆらめき立ち、坐ったままの膝頭が交互に激しく畳を踏み轟かす。
 木下はとびすさって目を瞠った。あのやさしい、ほっそりした直が、まさに怒れる巨大な男神と化し、雄叫ぶ。
 木下は恐ろしさに身がすくみ、魂も宙に吹きとばされんばかり。
「上田には好きにやらしてみよ。出口捨ておいて、女子(鬼三郎)が一力でやれるものなら、やりてみよれ。出口の御用継ぐなら、筆先を腹へしみ込めて、まことの心になりたらしぐみを申してやろと言うてあろうが。道が違うと後戻りばかり、肝心のこと、放かいておいて、先へ行こうも行くえわからず。大橋越えてたずねに行くとこ、他には無いぞよ。この経綸問いに行くとこ、どこにも他にはないぞよ。これではものが遅くなりて、ものごとがのびるばかり。今から派手にやりたら行きも戻りもならんことができるから筆先で気をつければ、えらいお気に障りて……。艮の金神は苦労のかたまりで貫くのであるから、知恵学ででけることなればこんな苦労はしもさせもせんぞよ。あまり女子がはばるから、やむを得ず出口を岩戸へ連れまいる。木下慶太郎、今すぐ真倉の後野市太郎を呼びに行けい。後野に御用きかすぞよ」
「はっ、今すぐ……」
 それも声になったかどうか分からない。木下は転げるように階段を下り、夢中で外へとび出した。木下が去ると同時に、直の神霊も鎮まる。澄が階下から白湯を入れて上がってきた。
「お母さん、お疲れでっしゃろ」
「おおきに」
 一息に飲み干して、ほうっと肩で息をつく。
「神さま、どえろう怒ってどしたなあ」
「お澄や、しばらくわたしは一人になるようや。神さまが弥仙山の岩戸へこもれといいなさる」
「先生は、どうしちゃったらよいんです」
 直は強いて笑ってみせる。
「先生には先生の神さまがついてなさる。先生の神さまがご指図なさるじゃろ。今は艮の金神さまに敵対う御苦労なお役やが、改心でけたら誰も足下にも寄れん身魂やそうな。金の草鞋で捜して見ても、御用をさせる力のある者は他に一人もない代えのないお方、女子は化物じゃわいというてなさる。けどなあ、先生が胴を据えて筆先をいただいてさえくれなさったら……」
 筆先は澄も好きになれぬ。そのことで澄もちょくちょく艮の金神に叱られていた。
「澄子も行ない変えてもらわなならんぞよ。早く改心して下されよ」
 改心をせまられると、いっそう反撥したくなる。だから筆先で責められる夫の立場に同情もできる。澄は早々に二階から退散した。
 金明霊学会内部は騒然となった。鬼三郎が駿河の稲荷講社にもたれて、無断で法人出願手続きをしかけたことで教祖が激しく立腹、老いの身を弥仙山へこもると言い出したのだ。会長駿河行きの三日前にはすでにそれらしい筆先が出ていて、役員たちの間で憶測が乱れとんでいた。
「今度岩戸が閉まるから、人間界ではできん御用で……しばらく弥仙山へ出口を連れ参るぞよ」
 鬼三郎の駿河行きが動機で早くも決行されようとは、思いも及ばなかった。
 後野市太郎(十七歳)が神がかりした教祖に呼ばれ、何事か御用を仰せつかって国元の加佐郡中筋村字真倉(現舞鶴市真倉)にとんで帰った。夜になって十二里の道を駆け戻ってきた後野市太郎をつかまえ、役員たちが囁きかける。
「市さん……どうやった。教祖さまに何を命じられなはったんや」
「ちょっとでよいさかい教えとくれ……市さん」
 心持ち蒼ざめた頬をこわばらせ、市太郎は振り切る。きっと唇を結んだまま、真直ぐに二階の教祖の元へ。やがて中村竹吉が呼ばれ、役員一同に直の意志が伝達された。
「今度の岩戸ごもりは、誰もついていくことはできぬ。弥仙山までの御案内に、わしと後野市太郎が供するだけや」
 一同はしんとなった。鬼三郎の勝手な行跡が、教祖さまを単身、岩戸へ押し込めるのだ。悲しみと怒りが、ふつふつと彼らの胸をたぎらせる。しかしこの場にその悪神鬼三郎がおらぬのは、妙に心細かった。鷹栖に使いを走らせたが、折りあしく四方平蔵も留守。
 後野市太郎は宿舎の元の東四辻教会に戻るなり、ぶっ倒れるようにして眠りに入った。この麦藁葺きの大きな宿舎には、教祖と会長の戦いが始まってから、上田世祢と君が移っていた。それ以前から上田幸吉と木下慶太郎、春頃には後野市太郎も加わって共同生活をしていた。
 後野市太郎は、祖母ナカと母こう(戸籍名キク)が一時に病に冒され医師からも見放されたために、御神徳にすがって助けたい一心で綾部に来た。十七歳の純な魂の祈りが通じてか、母も祖母も快癒。のち祖母は九十四歳の長命を保ったほどだ。感動した市太郎は、直を慕ってそのまま綾部に住みつき神業に参加。元伊勢水の御用の時は、直のひそかな命に応じて御神水を入れる青竹の筒を二本つくっている。
 思いもかけず今日、弥仙山へお出ましの下調べと、父滝三郎を通じて神主から中の宮おこもりの内諾を得ることを直に頼まれたのだ。年端もゆかぬ自分を名指しで。神命の重さと御信頼の厚さに胸ふるえる思いであった。弥仙山は女人禁制なのだ。交渉は難航したが、山を野路を駆けずり回って使命の一半を果し終えた。若い市太郎の眠りは安らかであった。
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