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文献名1霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
文献名2第4篇 巴留の国よみ(新仮名遣い)はるのくに
文献名3第25章 火の車〔375〕よみ(新仮名遣い)ひのくるま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-10-14 20:30:22
あらすじ淤縢山津見一行は三五教の教えを闇山津見に詳細に説き明かし、夜明けを迎えた。寝室で休もうとしていた三人の耳に、宣伝歌が聞こえてきた。闇山津見の館に迎えられた宣伝使は、駒山彦であった。駒山彦は死んだものと思っていた蚊々虎は、幽霊だと思って恐れるが、駒山彦、淤縢山津見、高彦はそれをからかっている。駒山彦は、筑紫の国からの船中で日の出神に出会い、三五教に改心した経緯を一同に語った。そして、淤縢山津見一行に加えてくれるようにと頼んだ。そのとき、門外に幾百人もの人声が聞こえた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月09日(旧01月13日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年6月15日 愛善世界社版167頁 八幡書店版第2輯 211頁 修補版 校定版169頁 普及版74頁 初版 ページ備考
OBC rm0825
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本文  闇山津見の館における淤縢山津見一行の三五教の説示は、益々微に入り細に渉り、遂に鶏鳴に達したり。
 闇山津見は一同に向ひ、
『思はず尊き御話に実が入りまして、最早五更となりました。皆さま御疲労でせう、暫らく御休み下さいませ』
と別室に寝所を作り、奥の一室に姿を隠したり。
『大変に草臥ました。何うです、一つ休まして貰ひませうか。実際ブラジル峠を越えて来て、蚊々虎の脚は棒のやうになつて了ひましたよ』
『それだから広言は後にせよと云ふのだ。千里万里も応へぬとか、たとへ数万の敵が押寄せ来るとも張り倒すとか偉い元気だつたが、随分弱音を吹くなあ。お前の刹那心も調法なものだよ』
『ナア高彦、些とは休養といふことをせなくては、身体のためにならぬ。眠る時には眠る。遊ぶ時には遊ぶ。活動する時には、獅子奮迅の勢で活動すれば好いぢやないか』
『大変雲行きが変つて来ましたな。何うやら明日は雨が降りさうだ。雨が降つたら、また悠々休まして貰はうかい。昨日は宣伝使様に随いて大活動だつた。大沙漠を横断するのも勇壮なものだ。時に昨夜の神憑りは何うだつた。随分詮らぬものだなあ、蚊々虎さま』
『ナーニ、神様は俄審神者に分つてたまらうかい。これから此方が神憑り兼審神者だ。モシモシ宣伝使様、今日から私が審神者の役だ。そこへ一遍御坐りなさい。眠るのが厭なら審神者でもして、守護神を現はして上げようかい。ブラジル峠でこの神主に悪霊が憑いたからと云つて、何時までも悪霊ばかりが憑いてたまるものか。淤縢山津見の審神者は先入主をよう除らぬから、薩張り平凡審神者をするのだ。矢張り過去の事を思つて居るから、本当の事が判らぬのだよ』
『ソンナラ改めて審神者をしてやらうか』
『人民の癖に神を審神者すると云ふことがあるか』
『さうだらう、化けを現はされては面目ないからな』
『五月姫の前で邪神だの、あてにならぬのと面目玉を潰されては、審神者して貰ふ気にもならぬのう』
 この時門外に宣伝歌が聞えきたる。三人は耳を澄まして聴きゐる。宣伝歌は追々と近寄り来たる。二人の女に導かれて、この場に現はれたる宣伝使あり。彼は被面布を捲り上げ、一行に挨拶する。
『私は三五教の宣伝使です。承はれば巴留の国に同じ三五教の宣伝使が見えたといふことで、取るものも取敢へず参りました。私は智利の国に宣伝を行つてゐるものです』
 蚊々虎は熟々宣伝使の顔を見て、
『ヤア、お前はコヽヽ駒山彦じやないか。俺等と一緒に高白山を攻めた時、爆弾に命中つて脆くも死んだ筈のお前が、何うして此処へやつて来たのだ。ハヽア夜前俺らが神憑りをやつたので、貴様救けて貰はうと思つて幽冥界から来たのだな。道理で顔の色が蒼黒いワイ。コラ駒山彦の幽霊、俺が今審神者をしてやらう』
『オーお前は蚊々虎か。ようまあ無事で居つたね。お前の事が忘れられぬので幽冥界から迎へに来たのだよ。さあさ一緒に行かう。閻魔様が待つてゐるぞ。貴様はあんまり悪い事ばかりやつたので、閻魔の庁から御迎へに来たのだ。門口には赤鬼や、青鬼が沢山に来て待つて居る。俺は貴様の顔を知つて居るので検視の役に来たのだ。サーサ早く早く』
『駒山彦、待つて下さい。モシモシ宣伝使様淤縢山津見さま、此奴は曲津でせう。審神者して下さいな。困つたものがやつて来ました』
『審神者するに及ばぬ。この霊眼で一目見たらチヤンと分つてゐるのだ。成程貴様は悪い奴だ。是から閻魔さまにお目玉でも頂戴して、修行した上で幽冥界の宣伝でも行つたらよからう。現界も幽界も同じことだ。唯生命がなくなる丈けの違ひだ、とつとと行つたらよからう。アーア悪い事は出来ぬものだな』
『モシモシ、駒山彦の地獄の御使さま、貴方も知つての通り、俺よりもモツト悪い張本人が此所に居ります。此奴はなあ、今は偉さうに淤縢山津見ナンテ云うてゐよるが、元は醜国別と云つて、有らうことか有るまいことか、御三体の大神様の御宮毀ちの張本人だ。私はこの男に頤の先で使はれた丈だ。閻魔さまも一寸聞えませぬ。罪の大小軽重をよく審判して下さい。コンナ悪い奴を此世に放といて、蚊々虎さまのやうな正直な者を幽世へ連れて行くとは、余り胴欲ぢや』
高彦『エー蚊々虎さま、刹那心だよ。先の事は何うならうと心配せいでもよい。年貢の納め時だ。男らしくとつとと行つたがよからう。序でに、淤縢山津見さまも……後に残る宣伝使はエヘン、この高彦さま一人だ。五月姫と是から二人、宣伝に歩くのだよ』
『莫迦にするない。俺はそいつが修羅の妄想だ。モシモシ、駒山彦のお使さま、この高彦といふ奴はな、今まで此の巴留の国に荒熊と云うて悪い事ばつかりしてゐた奴だ。貴方も知つてるだらう。昔は俺らと一緒に随分悪い事をした奴だ。いつそのこと三人とも連れて行つて下さいな』
『イヤ、さうは行きませぬ。今度は一人だけ御迎へして帰ります。御車が一台より来て居りませぬから』
『ヤア、洒落てるね。地獄へ行くのに車が迎へに来たのか。ドンナ立派な車だい』
『それはそれは立派な火の車ですよ』
『エー火の車、そいつは御免だ。ソンナラ籤引をしようかい』
『アハヽヽヽヽ馬鹿だね。嘘だよ。蚊々虎、幽霊でも何でもありはしないが、貴様は今まで偉さうに審神者になつてやるの、立派な神憑りになるのと法螺を吹いたが、駒山彦の彼の霊衣が判らぬか。幽界から来たものなら三角になつて居る筈だ。彼の円満な五色の光彩を放つてゐる霊衣が判らぬか』
『ほんにほんに、余り周章てて霊衣に気がつかなかつた』
『貴様は本当に霊衣が見えるのか。貴様の霊衣は三角になりかけて居るぞ。三角になる奴は冥土行きの近づいた証拠だ。アハヽヽヽヽ』
 蚊々虎は自分の頭へ手をやり、身体中を探つて霊衣が手に触らぬかと捜してゐる。駒山彦は一同に向ひ、
『私は不思議な縁にて筑紫の国より、智利の国へ渡る船中に於て、日の出神様に邂り逅ひ、結構な教を承はり、夫れより悪心を翻し、旧友と共に此の高砂島に渡り智利の国を猿世彦と南北に別れ、宣伝を致して居りました。然るに風の便りに承はれば、三五教の宣伝使が、ブラジル峠を越えられたと云ふこと、巴留の都には鷹取別といふ悪神が居つて、三五教の宣伝使を全滅させようと、いろいろ計画をして居ると云ふことですから、吾々も一つ御手伝ひがしたいと思うて参つたのです。何卒御供に御加へ下さらば有難う存じます』
『面白い面白い、蚊々虎が御供を許す』
『私は蚊々虎さまに御願ひしたのぢやありませぬ。淤縢山津見さまに願うたのですよ』
『俺が許したら同じことだ。ねエ、淤縢山津見さま』
 このとき門外に、幾百人とも知れぬ人声聞え来たりぬ。
(大正一一・二・九 旧一・一三 外山豊二録)
(第一二章~第二五章 昭和一〇・三・二 於神聖会総本部 王仁校正)
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