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文献名1霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻
文献名2第1篇 長駆進撃よみ(新仮名遣い)ちょうくしんげき
文献名3第1章 クス野ケ原〔468〕よみ(新仮名遣い)くすのがはら
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-10-07 18:31:41
あらすじ青雲の別の宣伝使こと天児屋根神司は、高彦と名を改めて、ウラル教の本拠であるアーメニヤに宣伝をなそうと、アルタイ山のふもとのクス野ケ原にやってきた。日も暮れてきて、ここで一夜を明かそうとした高彦の前に、巨大な一つ目の怪物が襲いかかろうとしていた。高彦は心静かに宣伝歌を歌い始め、次第に高唱すると、怪物は小さくなっていき、消えてしまった。見れば、怪しい影が雲別けて空に逃げていくのが見えた。高彦は怪物を追い払って改めて寝ようとすると、何者か杖で体を打つ者がある。驚いて一喝すると、それは鉄谷村の時公だった。鉄谷村の村長・鉄彦は、三五教の宣伝使となってアーメニヤに宣伝に赴いたが、村では鉄彦の奥方が病気になってしまい、時公はそのことを主人の鉄彦に伝えに、後を追いかけてきたのであった。高彦は東彦と名乗り、時公と一緒にアーメニヤに向かうことになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月28日(旧02月02日) 口述場所 筆録者桜井重雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年9月10日 愛善世界社版9頁 八幡書店版第2輯 517頁 修補版 校定版9頁 普及版3頁 初版 ページ備考
OBC rm1101
本文のヒット件数全 3 件/アルタイ山=3
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本文  天の原澄きり渡る青雲の  別の命の宣伝使
 名も高彦と改めて  岩戸の前にいさをしを
 いや永遠に建ましし  天児屋根の神司
 ウラルの山やアーメニヤ  醜の本拠と立籠る
 ウラルの彦やウラル姫  八十の曲津を言向けて
 豊葦原の瑞穂国  隈なく澄まし照さむと
 黄金山を立出でて  天の真名井を打渡り
 波にさらはれ雨に濡れ  吹きくる風に梳り
 山川幾つ打越えて  神の稜威もアルタイの
 山より落つる宇智野川  渡りてここにクス野原
 一望千里の草の野に  月日を重ねて進み来る。
 目も届かぬ限りの薄野を分けて、ことさら寒き木枯に吹かれながら、疲れし足をとぼとぼと、虎狼のうそぶく声を目あてに、宣伝歌を歌ひながら進み行く。
 日は黄昏に近づきて、夜気陰々と身に迫る。百鳥の声もピタリと止んで、猛き獣の声は刻々に高く聞え来たりぬ。
 高彦の宣伝使は、一夜をここに明かさむと枯野ケ原を衾とし、顔に笠を蓋ひ簑を被つて睡むうち、何処ともなく胸騒ぎがして来た。フト目を開けば、見上ぐるばかりの大怪物、額の中央に鏡の如き一つ目を光らし、鼻は神楽獅子の如く、口は耳まで裂け、青藍色の面をして、高彦を睨みつけた。
 高彦は仰臥せしまま黙然として一つ目の怪物を目も放たず見つめてゐた。怪物は毛だらけの真黒な手を差し伸べて、高彦の胸を一掴みにせむと迫り来る。
 高彦は心静かに宣伝歌を唱へた。怪物は怪しき声を出して、前後左右にキリキリ舞ひを始めた。高彦は益々宣伝歌を高唱する。怪物は次第々々にその容積を減じ、終には白き煙の如き玉となつて次第々々に消え失せた。中空を眺むれば、怪しき黒影魚鱗の淡雲を分けて昇り行く。
高彦『あゝウラル山の鬼奴が、折角疲れを休めて好い塩梅に眠つてゐたのに、安眠の妨害を致しよつた。このクスの野は油断のできない所だと聞いてゐた。ヤア、もう少し夜が明けるのに間もあるから、モウ一と寝入りしてから行くこととしよう』
と又もやコロリと横たはり、後は白河夜船、鼾声雷の如く四辺を響かしてゐる。
 この時、何者ともなく高彦の身体を目がけて、杖をもつて力限りに打つものがある。高彦は驚いてスツクと立上り、
『無礼者ツ』
と一喝したるに、一人の大男は、
『バヽヽヽ化物奴が、馬鹿にするな。その手は食はぬぞ。俺をどなたと思うて居るか、恐れ多くも、鉄谷村の酋長鉄彦が門番、今こそ少し年はとつたれ、これでも若い時は小相撲の一つもとつた近所界隈に名の通つた時公さんだぞ。何だツ、最前も一つ目の化物となつて、大きな無恰好な口を開きやがつて、青い面してこの方さまを喝かしよつたが、この時さまの宣伝歌の言霊によつて、雲を霞と逃げたそのザマは何だ。今度は手品を変へやがつて、石凝姥の宣伝使の真似をさらして、こンな所に横たはつて鼾をかいてゐやがるんだ。もう承知せん。貴様はアルタイ山の蛇掴みの子分だらう。親分の蛇掴みでさへも、時公さまの御威勢に恐れ、青白い光となつてザマの悪い褌を垂らしやがつて、アーメニヤとかいふ国へ逃げ帰りやがつた位だ。サア、目を剥け、舌を出せ、そんな事でビツクリするやうな時さまとは違ふぞ。あまり見損なひをすな』
高彦『ヤア、時さまとやら、我々は化物ではありませぬ』
 時公は一寸舌を出し、頤をしやくつて、
『ヤア、時さまとやら、我々は化物ではありませぬ。……とケツかるワイ。その手は桑名の焼蛤だ。グヅグヅぬかすと、この杖がお見舞ひ申すぞ。目の玉奴が』
高彦『これはこれは化物とのお見違ひ、決して決して左様の者ではござらぬ。我々も今その一つ目小僧に出会つたところだ。せつかく安眠してをるのに、中途で起され、眠たくて目の工合が……』
時公『オツト……御免だ。目の話は止めた止めた。こつちも一寸めいわくだから……』
『何分眠りが足らぬものだから、熱が出て舌がもつれ……』
『オイオイ、その舌はもう言ふな。俺もあの舌にはギヨツとした』
『何分長途の旅で疲れたものだから、お前さんが見たら人間らしくもなからうが……わしの顔は蒼白く見えるだらう。それでお前が疑ふのは……』
『疑ふも疑はぬもあつたものかい。顔の蒼い白いは言ふな。貴様は大方蛇掴の兄弟分だらう。今は一体何といふ名だ』
『我は東彦と申す者』
時公『ザマ見やがれ。白状しよつた。アクマ彦奴が。蛙は我と我が口から白状したが、もうアクマと知つた以上は、俺は善にも強ければ悪にも強い時さまだ。あくまで打ちこらしてやる。俺の顔を冥途の土産に穴のあくまで見ておけ。根の国底の国へ行つてもこの時さんのやうな強いお方は滅多にありやせぬぞ』
と言ひながら、携へた鉄棒をもつて打つてかかる。東彦は笠をもつて、その棒を右に左に避け乍ら、時公の足をさらへた。時公はズデンドーと仰向けに倒れた。東彦は、
『ウン』
と一声霊縛をかけたるに時公は、
『オイ、目の玉、アクマ彦、何うしよるのだ。貴様わりとは悪戯けた事をしよる。身体はアルタイ山の鬼の化石のやうになつちやつたが、目と口と耳とはしつかりしてをるぞ。貴様は一つ目だ。俺は二つ目だ。睨み殺してやらうか』
東彦『アハヽヽヽ、やあ、時さまとやら、私を信じて下さい。私もつい最前のこと、その一つ目小僧に出会つたのだ。が、お前さんも途中で出会つて来たのか』
 時公は俄に調子をかへて、
『ハイハイ、一目見るよりビツクリ仰天せむとせしが、待て暫し、アルタイ山の蛇掴みでさへも、この時さまの鼻息で吹き散らしたのだ。何だ、一つ目の化物位と思ひ直してここまでやつて来たが、何だか膝頭がこそばくて、笑うたり泣いたりしやがつて、時さんは怒る、膝坊主は泣き笑ひする。酒も飲まぬに、一人で三人上戸を勤めて来ました。私の主人は鉄彦というて、それはそれは余り偉うない豪傑ですが、三五教の宣伝使のあななひをしてな、アナ有り難いとか何とか言つて石凝姥の宣伝使と、何でも名は忘れたがスイスイ、粋な名のつく別嬪の宣伝使と三人連れで、クスの原を向ふへ渡ると言つて出かけました。さうしたところが俄に奥さまが、病気になつたものだから、オイ時公、お前は天下無双の豪傑だ、一つ目小僧の百匹や千匹はビクともようせぬ奴だから、御苦労だが主人を呼んで来てくれと、奥様が手毬のやうな涙を、こぼして頼むものだから、ヨシきた、たとへウラル彦の軍勢、幾万来るとも、この時さまが腕力をもつて、縦横無尽に打つて打つて打ちまはし、木端微塵に砕いてやるは瞬くうちと尻ひつからげ、クスの荒野を韋駄天走り、生かじりの宣伝歌を、処々歌つて足拍子をとり乍らやつて来たところ、向ふに怪しき影がある。ハーテ訝しやな、この荒野ケ原に現れ出づる怪物は何者なるぞ、尋常に名を名乗れとやつて見せたり、と思つたが何だか、向ふの舌が長うてこつちの舌が捲かれたか、負たか知らないが、こわばつて一寸も時さまの言ふ事を聞きやがらぬので、今度は目の御用だと、クルクル鏡の如き両眼を開いて見せた。流石一つ目の怪物も、時さんの勇気に辟易し、褌下げて西南の天を指して逃げ散つたり』
東彦『アハヽヽヽ、面白い奴だな』
時公『面白いか知らぬが、私はねつから面白くない。かう横に立つて物語をしても、ねつからはつからハバがきかぬ。お前さまも私の傍へ来て、横に立てつたら何うだ。ゆつくり寝物語でもしようかいな』
『アハヽヽヽ、どこまでも、徹底した法螺吹きだな。負け惜しみの強い奴だ。そんなら私もお前の傍で、夜が明けるまで添寝をしてやらうか。これだから悪戯小僧を持つ親は困るといふのだ。やあドツコイシヨ』
と、時公と枕を並べて、ゴロンと寝た。
時公『やあ、アクマ彦もなかなか話せるワイ。しかし、お気の毒だが、お時さまだと好いけれど、時公さまではお気に召しますまい。それでも何だかトキトキとしますよ』
東彦『アヽ、私も退屈で困つてゐたところだ。霊界物語ぢやないが、一つここでしつぽりと仰向けになつて、寝物語でもやらうかい』
 東雲の空別け昇る朝日子の、東彦の宣伝使はムツクリと起上り、時公の霊縛を解き、二人は途々神話に耽りながら、際限も無き大野原を西へ西へと進み行く。
(大正一一・二・二八 旧二・二 桜井重雄録)
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