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文献名1霊界物語 第14巻 如意宝珠 丑の巻
文献名2第3篇 高加索詣よみ(新仮名遣い)こーかすまいり
文献名3第10章 牡丹餅〔560〕よみ(新仮名遣い)ぼたもち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-12-28 15:40:31
あらすじ弥次彦、勝彦、与太彦、六公の四人は、ようやく谷間を這い上がって小鹿山峠の坂道に着いた。六公は、途中に松屋という飲食所があるので、そこで休もうと提案する。また、弥次彦の奇妙な宣伝使服の重ね着と自分の衣服を交換する。一行は店に入ると牡丹餅を注文して食べ始めた。食べ終わると、六公は店の下女のお竹に、お釣りは取っておくようにと鷹揚に代金を支払う。しかしお竹は六公の顔を見て六だとわかると、逃げてしまう。三人は、どういうことかと六公に尋ねると、六公は店を飛び出して逃げてしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月24日(旧02月26日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年11月15日 愛善世界社版169頁 八幡書店版第3輯 220頁 修補版 校定版175頁 普及版80頁 初版 ページ備考
OBC rm1410
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本文  弥次彦、勝彦、与太彦、六公の四人は谷間を這ひ上り、漸くにして小鹿山峠の坂道に着いた。
弥『ヤア此処が芝居の序幕を演じたところだ。随分風の神の奴、豪い目に遇はしよつたものだ』
六『貴方達は羽織を三枚着て、而も上に着るものを下に穿いたりするものだから、アンナ目に遇ふたのですよ』
弥『夫でも上下揃ふて世を治めるぞよと神様が仰有るのだ。而も六人の宣伝使から頂戴した結構なお召物を着て居るのに、神様が罰を当てると云ふ筈もあるまい』
六『それでも羽織を袴に穿くと云ふ事は、些と考へものですなア』
弥『さうだと云つて、裸体で道中もなるまいし、仕方がない哩』
六『此峠は、時々レコード破りの風が吹きますから、随分気をつけて往かずばなりますまい。この坂を下ると次は十九番目の大峠です、その峠までに二三里も展開した曠野があつて、其処には沢山の人家も立ち並んで居ます。そこまで往つて一服しませうか』
弥『さうしませうよ、併しながらコンナ風をして、沢山な人の居る処を通るのも変なものだ。何とか工夫はあるまいか』
六『ヤア私はお伴、貴方は宣伝使様だ、何うでせう、私の着物と取つ換へつこをして村落を通る事にしましたら』
弥『さう願へれば結構だ。アヽ六公、早裸体となつたのかい、何と気の早い男だなア』
六『鶴の一声言行一度に一致と云ふやり方です、愚図々々して居て水を注されると約りませぬからなア、アハヽヽヽ』
 茲に弥次彦は六公の衣服と着換へ、六公は羽織三枚を袴並に前後に着ながら、蔓の帯を堅く瓢箪のやうに腰に縛り、
六『サアこれで千両役者の早替はりだ、しかし役者だと云ふても、もう芝居はやめですよ、サア往きませうかい』
と、ドンドンと下り坂を走つて往く。漸くにして麓の村落に着いた。
勝『大分に腹の虫が空虚を訴へて来だした、何処ぞ此辺に飲食店でもあれば這入つて腹を拵へたいものだなア』
弥、与『サアさうお誂へ向に出来て居れば、結構だが』
六『イヤ、御心配御無用、些し先に往きますと、松屋と云つて、一寸した飲食店があります、其処には別嬪も居りますぜ』
与『夫は豪気だ、ともかく其処迄もう一息だ。何だか俄に元気が付いた』
と云ひつつ四人は速度を速めて駆出した。
弥『ヤア此処が松屋だ。いよいよ目的地点に無事御到着か、アハヽヽヽ、久し振で弁才天の拝観も出来ると云ふものだ』
弥『弁才天はどうでも好い、早く御飯に有りつきたい哩、もう斯うなれば色気より食気だ』
 松屋の門口に一人の下女立ち現はれ、
下女『モシモシ、お客サン、コーカス詣りですか、随分強い坂でお草臥れでせう、何卒一つお茶でも飲んで一服してお出なされませ』
与『云ふにや及ぶ、吾々一行四人は松屋をさして休息の予定でお越し遊ばしたのだ。一服してやらう、ナンゾ、小美味ものは無いか』
下女お竹『ハイハイ、何でも御座います。お望み次第お金次第です』
与『チエツ、直に之だから嫌になつて仕舞ふ、お銭お銭と何だ。矢張ウラル教の空気が漂ふてゐるな、仕方が無い哩、腹が減つては戦が出来ないから』
と云つて与太彦は先にたち飛び込む。
下女『マア、マア、お二人のお方、ホヽヽヽヽ、妙な風をなさいまして』
与『妙な風でも何でもお前に惚れて呉れと云いやしないし、着物を貸して呉れとも云やしないから、いらぬ口を叩くな、早く小美味ものを出さぬかい』
 奥の方から中年増の婆アサンが、ヒヨコヒヨコとやつて来て、
婆『アヽこれはこれはお客様、よう一服して下さいました。何なと御註文次第、仰有つて下さいませ』
六『牡丹餅は無いかなア』
婆『ヘエヘエ、御座います、お彼岸の牡丹餅を今拵へた処。ヌクヌクのホコホコの、手から漏るやうなのが、沢山に握つてあります』
弥『初に握つた奴は真黒けと違ふかね』
婆『滅相な、清めた上にも清めた、清潔な牡丹餅です。牡丹餅の嫌ひなお方は此処に握り飯がございます。貴方達は遠方の方と見えますが、随分お足の達者なお方らしい、恰で牡丹餅のやうな健脚家だ。毎日コーカス詣りの道者が通られますが、牡丹餅のお客は少い、握飯が随分多いやうですワ。オホヽヽヽ』
弥『婆アサン、牡丹餅のお客だとか、握飯のお客だとか、それや一体何の事だい。俺の顔が牡丹餅のやうな不恰好だと云ふて嘲弄するのだな』
婆『オホヽヽヽ、夫は譬で御座います。握飯は丸い、牡丹餅は一寸角が立つて居る。或時に握飯と牡丹餅とがマラソン競争をやりました。さうしたところが、丸い方の握飯が勝たねばならぬ筈だのに、中途で平太張つて仕舞つて、牡丹餅はとうとう決勝点まで安着されて名誉の優勝旗が手に入りました。そこで饅頭がやつて来て、牡丹餅よ、お前は一寸見てもぼたぼたして足が遅いと思つたに、勝利を得たのは何うした訳かと尋ねよりたら、牡丹餅が云ふには、私はあづきつけとるから道中は安心だと、オホヽヽヽ』
弥『ナアーンダイ、この腹の空いとるのに落し話をしよつて、気楽な婆アサンだなア』
婆『コンナ話しでもして、お客サンを誑かし暇を入れて腹を空かし、その間に牡丹餅を炊いて進ぜると云ふ此方の考へ、もう一寸待つて下さい、今飯が噴いて居ります、直に小豆の衣を着せて、どつさり食つて貰ひます』
与『ヤアヤア牡丹餅と聞けば、俄に咽喉の虫がグウグウと催促をし出した。何でもよいから手早くやつて下さい』
弥『オイ与太公、此処には素敵な別嬪の娘があるぢやないか、貴様は何うだ。思召は無いか』
与『どうだ、女子を国有にして居る国さへもあるのだから、吾々四人が何とかして四国協調の結果彼奴を国有にしたらどうだ。毎晩交代にあの尤物をエンプレスして楽まうぢやないか』
勝『ソンナ エンプレスと云ふやうな事をやると此処の人気娘を、此村の誇りとして居るのだから、貴様は村民の怨府となるかも知れないぞ。とは云ふものの縦から見ても横から見ても、三十三相具備したあななし姫だ。男と生れた甲斐には切めて一遍位はエンプレスをやつて見たいやうな気もせぬでは無いが、何を云ふても厳めしい三五教の宣伝使だから、どうする事も出来やしない、宝の山に入つて裸体で帰るやうな心持がする哩』
婆『サアサア皆サン、牡丹餅が出来た、お上りなさいませ』
与『これはこれは有難う御座います、マア悠くりと頂戴致しませう』
婆『サア私がついで上げませう』
与『ヘイ、ヘイ、ヘイ、アヽ、それは結構ですが、同じ事ならあのそれ、お梅サンによそつて貰へば一入、美味いやうな気が致します哩』
婆『ホヽヽヽヽ、貴方もよほど苦労人と見える哩、渋皮のやうなお手で、牡丹餅を盛つて上げても、お気に召しますまい、私が盛るのがお気に入らねば、もう牡丹餅は食べて貰ふ事は真平御免蒙ります』
弥『マア、マア、マア待つて下さい、これは冗談ですよ、さう真に受けて貰つては困ります』
婆『冗談から暇が出る。瓢箪から駒が出る。青瓢箪の黒焦のやうな顔をして年寄が気に入らないの、スツポンのと、それやお前何を云ふのだ。さう老人を見下げたものぢやない、人間は年をとつて苔がついて来る程値が出来るのだよ』
勝『左様左様、御尤もだ』
婆『ソンナら勝手に取つて食ひなさい』
と婆アサンはむつとした顔をして奥に入る。四人は熊手のやうな手を出して、餓虎のやうに、グイグイと呑み込み、
四人『ヨー美味い、コンナ美味い牡丹餅は、臍の緒切つてから食つた事がないワイ。コンナ奴なら、一遍に腹が弾けても構はぬ、百でも二百でも咽喉の虫が御苦労御苦労と云ふて辷り込んで仕舞ふやうだ』
と堆高く積んであつた沢山の牡丹餅を一息に平げてしまつた。
下女のお竹『お客サン、よういけましたなア、お米の相場が狂ひますぜ、お代りはどうです』
与『餅屋の喧嘩で、餅論だ。早く出したり出したり』
お竹『マアマアお客サン、貴方達は閂の向ふに居る、角の生えたお方のやうな方ですなア、モウ モウ モウ呆れましたよ』
弥『何うでもよい、早く出して貰はうかい、腹の虫は得心したやうだが、未だ舌と眼とが羨望の念に駆られて居るやうだ。同じ一つの体だ、腹ばかり可愛がつて、眼と舌とを埒外に放り出すと云ふのも、吾々宣伝使として情を弁へぬと云ふものだ。アハヽヽヽ』
お竹『サアサア、お代りが出来ました。悠くりお食りなさいませ』
 四人は又もや一斉に二膳片箸の同盟軍を作つて、複縦陣の備へを取り、爆弾のやうな牡丹餅を又もやパクつき始めた。
与『オイお竹サン、馬鹿にするない、見本は美味い奴を出しよつて、これは大変味が悪いぢやないか、一番先に出したやうな奴を出して呉れないかい、上皮の方には甘い奴を並べよつて、下になる程不味い牡丹餅を並べといたつて、俺の舌がよく御存じだぞ』
お竹『それや何を云ふのぢや、美味いも不味もあつたものか、皆同じ味に造つてあるのですよ、お前サン腹の空つた時に食つたから美味かつたのだ。腹が膨れてから何を食つたからつて美味い事はありやしない。ソンナ小言を云ふのなら、食ふだけの権利がない、食物の味に対しては気の毒ながら神経麻痺だ。サアサア好い加減食つたらお銭をお払ひなさい』
六(懐中より)『それ、お剰金は要らないぞ、後はお前の小遣ひだ』
お竹『大きに有難う御座いました』
と顔を見上ぐる途端に、
『ヤアお前は六サンだつたかい』
と転げるやうにして裏口をさして姿を隠して仕舞つた。
与『オイ六、貴様は罪の深い奴だ。何か之には秘密が籠つて居るだらう、それだから松屋に寄らう寄らうと云ひよつたのだなア、酢でも蒟蒻でも行かぬ奴だ。お目出度い処を見せつけよつて、余り馬鹿にするない』
『ヤア、何でもよい、退却々々』
と羽織の袴をバサバサと穿ちながら、一散に駆け出した。三人は止むを得ず、
『オイ六公待つた』
 六公は後振り向き乍ら、
『マツたも松屋もあつたものかい、マア、一所に出てこないかい』
と息せき切つて走り出す。三人は、
『あゝ合点の行かぬ突発事件だ。仕方がない、ソンナラそろそろ行かうかい』
と又もや牡丹餅腹を揺りながら、六公の後を追跡する。
(大正一一・三・二四 旧二・二六 加藤明子録)
(昭和一〇・三・一五 於高雄港口官舎 王仁校正)
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