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文献名1霊界物語 第20巻 如意宝珠 未の巻
文献名2第1篇 宇都山よみ(新仮名遣い)うづやまごう
文献名3第2章 赤児の誤〔664〕よみ(新仮名遣い)あかごのあやまり
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-04-18 19:02:21
あらすじ鬼雲彦の残党・友彦は、宇都山郷にバラモン教を広めて勢力を保っていた。松鷹彦のところへ、留公たち四五人の村人がやってきて、家にかくまっている三五教の宣伝使を渡せ、と言ってきた。松鷹彦と村人が言い争っていると、奥から天の真浦の宣伝歌が聞こえてきた。留公たちはにわかに頭が痛くなり、逃げ帰る。松鷹彦は、ここの村人たちは質朴だが、理解力がないために誤った教えに頑なになっている、と嘆く。松鷹彦と婆は、聞こえよがしに誰かこの村を救ってくれる者はないか、と会話する。天の真浦はそれを聞いてそっと里に向かって行った。バラモン教の友彦のところへ、松鷹彦の家から逃げてきた留公ら村人たちが戻ってきた。そして、負け戦の報告をしているところへ、別の村人がやってきて、留公が逃げるときに、畑の芋の苗を踏み潰したと文句をつけた。友彦はそれを聞いて、留公を一時破門した。留公は怒って、これからは三五教の味方をするのだと言って、出て行ってしまう。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月12日(旧04月16日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年3月15日 愛善世界社版38頁 八幡書店版第4輯 162頁 修補版 校定版39頁 普及版17頁 初版 ページ備考
OBC rm2002
本文のヒット件数全 4 件/宇都山=4
本文の文字数5398
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本文  雪に埋まる川端の  賤の伏家も春が来て
 冷たき雪も何時しかに  溶けて嬉しき老夫婦
 宇都山川の水温み  枯木も青芽を萌き出して
 軒端の梅も匂ひ初め  谷の戸開けて鶯の
 訪る季節となりにける  山と山とに包まれし
 此処は世界の秘密郷  人の心も質朴に
 宛然神代の如くなり  時しもあれや婆羅門の
 神の教の宣伝使  鬼雲彦の残党と
 世に聞えたる友彦が  二十戸許りの里人に
 霊主体従を標榜し  剣を渡り火を渡り
 水底潜り浮き沈み  鳥さへとまらぬ茨室に
 郷の男女を裸体とし  言葉巧に説きつけて
 身体を破る曲の行  足駄の表に釘を打ち
 穿ちて歩む村人は  神に仕ふる第一の
 清き御業と迷信し  心を痛め身を痛め
 無理往生の嬉し泣き  この惨状を救はむと
 天の真浦の宣伝使  松鷹彦が賤の家に
 長らく足を留めつつ  朝な夕なに神の道
 うまらに委曲に説きつれど  迷ひ切つたる里人の
 肯ふ事とならずして  迷ひに迷ふ憫れさよ。
 春は漸く深く、菜種の花もすげなく散りて青い莢の針をいただき、大根の花遅れ馳せ乍ら白く咲いてゐる。一方は大川、一方は田圃で挟まれた川堤の松鷹彦の茅屋さして入り来る四五人の男女、
甲『ハイ御免なさいませ』
松鷹彦『ヤアお前は留公か。大勢伴れで血相変へて何処へ行くのだ』
留公『イヤ何処へも行かぬ。当家へ村人の代表者として、吾々五人がやつて来たのだ。今日は確りと聞いて貰ひませう。お前等夫婦の身の上に関する大問題だから』
松鷹彦『大問題とはソラ何だ。又水の中で河童が屁を放つたやうな事を針小棒大に言つて来たのだらう』
 留公は肩を張り、腕を捲り捩鉢巻をし乍ら、半分許り逃げ腰になつて、
留公『オイお前達、道をサツと開けて置けよ。まさかの時に邪魔になると困るから』
松鷹彦『なんだ貴様は肩をいからし、腕をまくり、よう気張つたものだなア。今からそれだけ力一杯出して気張つて居ると、力の原料が欠乏するぞ。先づじつくりせぬかい』
 留公は少し肩の角を削り、手持無沙汰にそつと捲つた腕を隠す。
松鷹彦『なんだ其の鉢巻は。他人の家へ出て来るのに、あまり無作法ぢやないか。親の仇敵にでも出会つたやうな勢だなア』
留公『親の仇敵どころかい。大自在天大国彦の神様の、最も大切な仇敵をお前の家に匿まうて居るでないか。其奴を一つふん縛つて帰り、友彦の宣伝使の御前に曳き据ゑて、相当の処置をつけるのだ。サア爺、もう斯うなつた以上は隠しても駄目だ、キリキリと宣伝使をおつ放り出して吾々に渡すのだよ。ゴテゴテ吐すと村中が貴様の信用を買はないぞ。ボイコツトを始めるが、それでもいいか。さうすれば、武志の宮の宮司は、足袋屋の看板足上り、鼻の下の大旱魃、大恐慌だ。悪いことは言はないからさつさと渡して呉れ。老爺の身に取つて実に大切な場合ぢやぞ。焦頭爛額の急場と言ふのは今のことだ。サア早く神妙に宣伝使を吾々に渡したがよからう。里人の代表者留公の言葉に二言はないぞ。覚悟を定めて返答しろ』
松鷹彦『何事かと思へばそんな事かい。ベラボウ教のドモ彦だな。矢張り彼奴は何時迄も頑張つて居るのかい。遠の昔に宇都山の里から消滅した筈だが、オイ留公、此方には用が無いが訊ねたい事があれば、宣伝使は奥にチヤンと祭りこみてあるから、友彦と云ふ御大将を此処へ連れて来い。及ばず乍ら松鷹彦が天地の道理を説き諭し、友彦の身魂を浄めて三五教の宣伝使真浦様のお伴彦として使つてやるから早く帰つて注進致せ』
留公『中々老耄の癖に俄に強くなりやがつたな。オイお春、お弓、樽公、捨公、貴様等何を愚図々々してゐるのだ。俺と一緒に奥へ踏んごみ、宣伝使をふん縛つて帰らうぢやないか。こんな奴が此の結構な里に来やがつて、三五教とかを説きやがるものだから、この御天道様の色を見よ。御機嫌が悪うて黒い雲が出て居るぢやないか。御天道さまのお気に入らぬ奴が此の里へ来ると、何時も黒い雲が出ると云ふことだ。二三日前から人の尾峠の頂きに、真黒けの鍋墨のやうな雲が現はれたのも、全くお前達が仕様も無い奴を宿めて居るからだ。バラモン教の宣伝使友彦さまの御示しだぞ』
 奥の間より真浦の声として、涼しき宣伝歌の声聞え来たる。
『天教山に現はれし  木花姫の分霊
 玉照彦や玉照姫の  神の命の朝夕に
 心を清め身を浄め  仕へ給へる丹波の
 国の真秀良場ただなはる  青垣山を繞らせる
 真中に立てる世継王山  御稜威も高く照山の
 袂にひらく神の苑  錦の宮の最聖き
 心の花も咲耶姫  彦火々出見の二柱
 国治立の大神や  豊国姫の大神の
 厳の御言を畏みて  天地にさやる曲津神
 八岐大蛇や醜狐  バラモン教に立籠る
 醜の曲鬼言向けて  此世を清め澄さむと
 七十五声の言霊を  朝な夕なに宣り出でて
 教司を招び集へ  言依別を三五の
 神の柱とつき立てて  錦の機の御経綸
 開かせ給ふ常磐木の  われは小さき者なれど
 神の恵を蒙りし  三五教の宣伝使
 天の真浦の命ぞや  高天原を立ち出でて
 雲霧分けて降り来る  人の尾山は高くとも
 宇都山川は深くとも  如何で及ばむ神の徳
 バラモン教の友彦が  舌の剣に操られ
 神よりうけし生血をば  滝の如くに流し居る
 哀れ果敢なき里人を  諭して誠の大道に
 救はむための鹿島立  武志の宮に立寄りて
 しばし憩らふ折柄に  宮の司の松鷹彦
 現はれ来り吾々を  これの伏家に伴ひて
 朝夕唱ふる太祝詞  神の恵みもいやちこに
 五風十雨の順序よく  花は梢に咲き乱れ
 梅の蕾はさわさわに  枝もたわわに重なり合ひ
 見渡す限り野も山も  色蒼々と栄え行く
 神の恵みを目の当り  眺め乍らに汝等は
 何を狼狽へ騒ぐぞよ  一時も早く立帰り
 汝が親と頼み居る  バラモン教の友彦を
 わが目の前に伴れ来り  天と地とを守ります
 誠の神の御心を  うまらに委曲に説き諭し
 汝等里人悉が  眠れる眼を醒まさなむ
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  我宗門の神力は
 如何に強しと誇るとも  誠一つの言霊の
 幸ひ助くる三五の  神の教に比ぶれば
 月に鼈雲に泥  天地の差別あることを
 洩らさず落さず細やかに  教へて呉れむ里人よ
 神代ながらの里人よ  此世を造りし神直日
 心も広き大直日  唯何事も人の世は
 直日に見直し聞直し  世の過ちを宣り直す
 神の教に省みて  天地の道を誤りし
 深き罪をも差赦し  高天原の神国の
 教の御子と何時迄も  心に安きを与ふべし
 栄えの花は永久に咲く  高天原の神の子と
 生れ変りし其上は  此世に恐るるものは無し
 アヽ惟神々々  御霊幸はひましまして
 留公其他の里人を  安きに救ひ給へかし
 アヽ留公よ里人よ  友彦伴ひ早来れ
 天の真浦の神司  襟を正して待暮す
 アヽ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
と屋外に響く竜声に留公始め四人の男女は、
『ヤア大変だ。頭が痛い、胸が苦しい。一先づ此家を立去り、友彦の宣伝使に注進せむ』
と大麦、小麦、豌豆、蚕豆畑を踏躙り、周章狼狽き帰り往く。
松鷹彦『此の村は質朴な代りに理解力が無いので困る。信仰も結構だが無理解な信仰にああ堅くなつては、何うにも斯うにも手の付け方が無い。まるで鉄を以て固めた城壁に向つて、無手で子供が襲撃するやうなものだ。アヽ何うしたら彼等の目を醒す事が出来ようかなア。斯う云ふ時に不言実行の教理を徹底的に発揮して欲しいものだ。広い世界には何処かに、一人や半分位天から溢れて来て居り相なものだなア』
と、わざと奥の間に聞えよがしに、
『ナアお竹』
と婆アに向つて話しかけたればお竹はウナヅイて、
『さうですな、随分いろいろの神様の教もあり、宣伝使も沢山ありますが、どれもこれも言葉の花の山吹ばつかりで、実ののつた例は無い。あれだけ近くにバラモンが跋扈して居るのだから、何とかして彼の様な惨酷な教を根底より転覆させ、せめて此の村だけなりと助けて呉れる真人が現はれ相なものだなア』
とお竹も亦爺の言葉尻について、奥の間に聞けよがしに言つてゐる。真浦は之を聞くや否や、奥の間の戸を、音させじとソツと開き、スタスタと宇都山の里を目ざして走り行く。
 留公の離れ座敷に陣取つて日夜怪気焔を吐き里人を煙に捲いてゐるバラモン教の友彦は、松鷹彦の茅屋に遣はしたる使の帰り来るを、今や遅しと首を長くして日当りのよい角窓から覗いてゐる。倒けつ転びつ、ハーハー、スースーと息を喘ませ帰り来る留公一行の姿を見るより、友彦は、
友彦『ヤア待ち兼ねた。様子は如何だ。早く返答聞かして呉れ』
留公『イヤもう暗雲低迷、前途暗黒、収拾すべからざる形勢で御座いました。この留公が深遠微妙の言霊に依つて、漸く騒乱鎮静の曙光を認めました』
友彦『アヽさうか、それは大儀であつたのう』
お春『モシモシ宣伝使様、全くですよ。全くは全くだが零敗の大当違ひ、夜食に外れた梟鳥の憫れ儚なき列を乱した頓狂振り、実に目も当てられぬ惨状でしたワ』
留公『コラコラ女の差出るところでない。黙つて物言へ。それだから女に大事は明かされぬと昔の聖人が云つたのだ』
友彦『一体何方が本当だ。吉か凶か、天か地か、月か鼈か、雪か炭か』
お春『鼈に炭の様なものです。爺さま、中々の剛情者で村中の協議の結果を一も二もなく退け、青瓢箪のやうなヘボ宣伝使の加勢ばつかりやつて居ます。さうして奥の間から何百人とも知れぬ大きな声を揃へて、照るとか曇るとか歌ひ居つた。其の声に私達の結構な笠の台は忽ち地異天変、目は暈ふ、鼻はうづく、口は自然に弛んで下顎が乳の辺まで垂下する、胸は早鐘をつく消防夫は駆出す、纏はガサガサ チヤンチヤン』
友彦『オイオイ貴様何を言つてゐるのだ。何処へ行つて来たのだ』
留公『ハイ一寸小火があつたものですから』
お春『留さま、何をボヤボヤして居るのだ。火事つたら何処にあつたのだい』
留公『エー貴様の見えない、遠い遠い神霊界に無形の火事があつたのだよ。霊眼の開けないデモ信者の窺知し得る限りでないワイ。女だてらブカブカと此の場面に浮き出して水をさすよりも女らしう暫らく沈艇をしてゐて呉れ』
友彦『アハアお前たちはフの字だな』
お春『フの字ですとも、それはそれは麩のやうな腑抜け魂ですよ。戦況を詳細に報告致しませうか』
留公『オイ敗軍の将は兵を語らずだ。弱虫は弱虫らしう控へて居らう』
 斯く争ふ所へ、スタスタと現はれて来た一人の男、鍬をかたげ頬被りをし乍ら、
男『留さん、一寸外へ出て下さい。俺ん所の大事な赤子を踏み殺しやがつて、如何して呉れるのだい』
留公『貴様の家に赤子があるのか。何時の間に子を産んだのだ。嬶も無い癖に如何して赤子を踏まれる道理があるか』
男『有らいでか、有りやこそ言うて来たのだ。嘘と思ふなら俺ん所の畑までやつて来い。さうしたら一目瞭然貴様も成程と合点がいくだらう』
留公『赤子の三つや五つ踏み殺したつて、なんだい。此の村は今や地異天変の最中だ。ちつと位辛抱して作戦の用意にかからねばならぬだないか。悠々と野良へ出て仕事をして居る場合ぢやない。挙国一致で敵に当らねばならぬ危急存亡の場合だぞ』
男『それでも貴重な赤子を捨ててまで馬鹿らしい、斯んな戦争が出来るかい。婦人国有論が起つて赤子を一人でも殖やさにやならぬ時に、二十も三十も踏み殺されてたまるものかい』
留公『貴様鼠のやうな奴だな。沢山な赤子を如何して産んだのだい。あまり仕様も無い種子を蒔くと、米が騰貴して国家的破産を来さねばならぬやうになるぞ。産児制限の問題が喧しい時だ。俺が踏み殺したのも国家の為めだよ』
男『天地の大神様の御恵みで、やうやうと芽をふき、葉も出来、花も一寸咲きかけたとこだ。それを貴様が三五教の宣伝歌に驚き慌てて、広い道路があるのに俺ん所の芋畑を通りやがつて、三度芋の赤子をすつかり踏割つて了ひやがつた』
留公『何を吐しやがるのだい。俺は又人間の赤子だと早合点して、聊か同情の涙にくれて居つたのだ。貴様の芋畑を通つたものは俺ばかりぢやないぞ、五人も居るのだから、そりや大方人違だらう』
男『馬鹿言ふな、足型でよく分つて居る。六本も指のある奴は、此村には貴様一人より無いのだ。指の型が証拠だ。モシモシ バラモン教の先生、あんなことをしても神様は許されますか。私は何時も貴方の御話を聞いてゐますが、畔放ちの罪と云ふことは大変な重い罪だ。そんなことを致したものは直にバラモン教を破門すると仰有いましたなア』
友彦『それは何時も言うて居る通りだ。オイ留公、お前は今日限り破門する。併し乍ら明日は又明日のことだ。兎も角教が許さぬから此場を立去つたがよからう』
留公『エー置きやがれ、今まで先生々々と崇めてやれば、好い気になりやがつて、なんだい芋種子の二十や三十踏み躙つたと言つて、それがそれ程悪いのか。芋と人間と何方が貴い、芋よりも安く見られるのなら、俺も此方から破門だ。其の代りにタツタ今頭の痛い、胸の苦い宣伝歌を謡つて、天の真浦とか云ふ偉い生神様がやつて来るから、その時に犬突這ひになつて、ベソをかかぬやうに用心せい。これが俺の別れのお土産だ。オイお春、貴様も好い加減に目を醒せ。俺はこれから三五教の宣伝使に御味方するのだ』
と言ひ捨て、一目散に駆出した。
(大正一一・五・一二 旧四・一六 外山豊二録)
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