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文献名1霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
文献名2第1篇 千辛万苦よみ(新仮名遣い)せんしんばんく
文献名3第3章 月休殿〔677〕よみ(新仮名遣い)げっきゅうでん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-05-02 01:11:57
あらすじ三人は、梅照彦の館で晩餐を取り、主客四方山話にふけった。玉治別は、出発前夜に岩の橋が落ちるという大変な夢を見たために、高春山への道を変えたこと、高熊山の岩窟に参拝していくのが順当であると気づいたこと、を話した。竜国別と国依別は、高春山に行く使命自体が、言依別命の密命であり、みだりに話すべきことではないと、玉治別に注意する。一同は口の軽さについて四方山話を繰り広げ、やがて寝につくことになった。玉治別はすぐに寝入っていびきをかいてしまったが、国依別と竜国別の二人は寝付かれずに外に出て庭園を逍遥する。二人は月を眺めながら話をし、月宮殿の境内までやってきた。二人は、お宮が古くて荒れていることを嘆く。国依別は、五六七の世になればこの宮が輝いて闇を照らし、高天原の霊国にある月宮殿のようになるのだが、真の徳が失せた世の中の姿がこのお宮に写されているのだ、と嘆く。竜国別は、テンやイタチが住んでお宮を荒らしていることに、御神徳があれば、罰が当たるはずだと嘆くすると、社の中から声がして、畜生は畜生だから罰を当てないのだ、と言う。そして二人に対して、畜生ならば罰を当てずに赦してやろう、しかし人間ならば即座に神罰を当ててやる、と返答を迫る。二人は、畜生ではないのでそう言うわけにもいかず、しかし人間だと言うと神罰が恐ろしいので、何と答えようか相談している。社の声に脅かされて、ついに二人は畜生と人間が半分の身魂だと答えた。すると社の中の声は、半身を引き抜いてやろう、と罰を言い渡した。二人はそろそろ、お宮の声が、田吾作の声に似ていることにきづき、怪しみ出す。二人が田吾作を呼びつけると、玉治別が社の中から出てきた。三人は笑いながら梅照彦の館に帰って来た。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月16日(旧04月20日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年4月5日 愛善世界社版62頁 八幡書店版第4輯 287頁 修補版 校定版65頁 普及版27頁 初版 ページ備考
OBC rm2103
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本文の文字数6642
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本文  竜国別、玉治別、国依別の三人は珍の館の奥の室に打通り、梅照姫が調理せし晩餐に舌鼓を打ち、主客打ち解けて四方八方の話に耽る。
梅照彦『最前の玉治別様のお歌に依つて、津の国の高春山へお出でになる事を承知致しました。然し乍ら此方から御出でになるのは、少し迂回ではありませぬか』
『少しは迂回ですが是には理由があるのです。実は福知山の方面から柏原を通り鬼の懸橋を渡つて参る積りでしたが、出発の前夜に大変な夢を見まして……それで此方へ途を変へたのです。さうして玉照彦様のお出ましになつた高熊山の岩窟を拝して行くのが順当だと気がついたのです。悪魔に対し言霊戦を開始するのですから、余程修業をして参らねばなりませぬ。高姫、黒姫の宣伝使は、不覚にも飛行船に乗つて只一息に苦労も無しに高い所から敵を威喝しようと思つて出たものですから、三ケ月有余も経つた今日何の消息も無し、それが為めに言依別命が我々を密かにお遣はしになるのです。聖地の人々は我々三人以外、誰一人知つて居ないのです。バラモン教やアルプス教の間者が沢山に信者となつて化込んで居りますから、うつかりした事は言はれないのです。又仮令異教の間者が居らないにしても幹部の連中や信者に知らせますと、直に如何な大切の事でも喋つて仕舞ひますから困つたものですよ。何故あれだけ秘密が守れないのかと不思議な位です。三人の外に誰にも言ふなと仰有つたのですから、秘密は何処迄も守らねばなりませぬからなア』
国依別『オイ、玉治別、お前は幹部が喋舌ると今言つたが、我々両人が何も言はないのに、お前は斯んな秘密を門前で大きな声で歌つたぢやないか。猿の尻笑ひと言ふのはお前の事だよ』
竜国別『ハヽヽヽヽ、到頭秘密が曝れて仕舞つたぢやないか。「これは秘密だからお前さまより外には言はないから、誰にも言つて下さるな」と口止めする。聞いた人は「諾々決して言はぬ」と言ひ乍ら、又次の人に「此奴ア秘密だから誰にも言はれぬ。お前だけに言つたのだから、屹度他言はして呉れるな」と口止めする。又次から次へと其通り繰返されるものだ。そして一人より言はないと言つた者が、会ふ人毎に尋ねもせぬのに「お前一人だけだ」と言つて、終には秘密の方が拡がるものだ。表向広告的に言つたのは誰も耳に止めないから却て拡まらないものだよ。「お前一人と定めて置いて、浮気や其日の出来心」式だから困つたものだ。なア国依別』
国依別『そうだなア、此筆法を宣伝に応用したら如何でせう。不言講とか言つて「お前丈けに結構な事を聞かしてやるのだから、主人にでも……仮令我子にでも女房にでも言ふ事はならぬ」と口止めをして置くと、其男は「俺は身魂が立派だから、誰も知らぬ事を神様から彼の口を通して言つて下さつたのだ」「俺の身魂は立派だから、神慮に叶つて居るから、斯う言ふ大切な事を知らして貰へるのだ」と思つて自慢相に人々に秘密々々と言つては喋り散らす、それが却て能く拡まる様なものだ。三五教の宣伝使も、その筆法を応用したら、却て良いかも知れないぞ、アハヽヽヽ』
玉治別『然しそれは……さうとして、梅照彦さまはそんな軽薄な御方ぢや無いから、屹度秘密を守られるでせう』
梅照彦『私は守る積りですが、女房や下男が……余り大きな声で仰有つたものだから……全部聞いて居りませう。そいつア何うも請負ふ事は出来ませぬなア』
玉治別『困つた事だ。何卒成就するまで他へ洩れない様に……喋舌られては困るから……どうか暫時奥さまと下男とは座敷牢にでも入れて、人に会はさない様にして下さいますまいかなア』
梅照姫『オホヽヽヽ、妾は滅多に言ひませぬが、貴方言はぬ様になされませ。屹度道々秘密を開け放しにして、何も彼もみんな仰有るでせう』
玉治別『イヤイヤ決して決して、余りむかついたものですから、つい門口で脱線したのですよ』
梅照姫『余程言霊鉄道の敷設工事が請負と見えて、粗末な事がしてあると見えてますなア、ホヽヽヽヽ』
竜国別『何分宇都山村の田吾作時代には、随分狼狽者の大将だといふ評判でしたから、矢張三才児の癖は百歳迄とか言つて、仕方の無いものですワイ』
玉治別『そんな昔の事をさらけ出して、人の前で言ふものぢやない。竜国別、私が出立の際に「何卒誰にも玉治別は宇都山村の田吾作だと云つて下さるな、秘密にして下さい」と頼んだ時「俺も男だ、ヨシ、言はぬと云つたら首が千切れても言はない」と言明し乍ら、三日も経たぬ間に秘密を明すとは何の事だい。余り人の事を云ふものぢやありませぬぞ。自分の過失は分らぬものと見えますわい』
竜国別『ヤア此奴ア縮尻つた。然し乍らお前が田吾作だつたと言つた所で、今回の作戦計画に齟齬を来す様な大問題ぢや無いから……マア大目に見るのだなア』
玉治別『小さい事だと云つて秘密を洩らしても良いのですか。小さい事を洩らすやうな人は、矢張大事を洩らすものですよ。蟻穴堤防を崩すとか言つて、極微細な事から大失敗を演ずるものだ。如何ですか』
竜国別『ヤア大変な速射砲を向けられて……イヤもう恐れ入りました。只今限り屹度慎みませう』
梅照彦『皆さま、お疲労でせうから、もうお寝みなさいませ』
玉治別『何時迄も攻撃計り受けて居つても詮らない。ア、お迎ひが出て来た様だ。アーアツ』
と口の引裂ける様な欠伸をなし、目を擦つて居る。
梅照姫『サア、お寝みなさいませ。奥の室に寝床が敷いて御座いますから』
 玉治別は、
『皆さま、お先へ』
と奥の室に入るや否や、雷の如き鼾をかいて他愛もなく寝入つて了ふ。二人は続いて、
『左様なれば寝ませて頂きませう』
と奥の室に入る。玉治別の粥を煮る大きな鼾が耳に這入つて二人とも寝つかれず、そつと裏口を開けて、月を賞め乍ら庭園を逍遥してゐる。
竜国別『アヽ佳い月だな。秋の月も佳いが、冬の月も又格別綺麗な様だ。あの月の中に猿と兎が餅を搗いて居ると云ふ事だが、一つ我々に搗落して呉れさうなものだなア』
国依別『アハヽヽヽ、八日日が来たら落して呉れますワイ』
竜国別『卯月八日、花より団子と言つて、あれや餅ぢやない、団子ぢや』
国依別『団子でも餅でも、矢張搗かねばならぬよ』
竜国別『団子は月が落すのぢや無い。此方から搗いて上げるのだよ。竹の先に躑躅の花と一緒に括つてな……』
国依別『その上げた団子を揺すつて落して喰つて呉れるのだ。十五の月は望月(餅搗)と云ふから、屹度十五日になれば餅搗するに違ひない』
竜国別『良い加減に洒落て置かぬか。お月さまに恥かしいぞよ』
国依別『三五の月の御教を開く我々宣伝使は、何……月に遠慮する事があらうかい。子がお母アさまになんぞお呉れと言つて、駄々と団子をこねるやうな心餅で居るのだよ、アハヽヽヽ』
竜国別『あのお月さまの顔には痘痕が出来て居るぢやないか。円満清朗、月の如しと言ふけれど、余りあの痘痕面では立派でも無い様だ。月は玉兎と云ふからには、ドコか玉治別の円い御面相に似た所がある様ぢや無いか』
国依別『玉治別の面の様に見えてるのは、矢張あれは地球の影が映つて居るのだ。白い所は水、黒い所は陸地だ。天体学の事なら、何でも俺に尋ねたら聞かしてやらう、オホン』
竜国別『アハヽヽヽ、瑞月霊界物語の第四巻を読んだのだらう』
国依別『そんな本が何処にあるのだ』
竜国別『三十五万年の未来に活版刷で天声社から発行せられた単行本だ。それに出て居るぢやないか。貴様はまだ見た事が無いのだなア。あれだけ名高い名著を知らないとは余程時代遅れだ。それでも宣伝使だからなア』
国依別『未来の著述は見ても見ぬ顔をして居るものだ。世の中が開けて来ると種々の学者とやら、役者とやらが出て来て、屁理屈を言つて飯食ふ種にする奴があるから、……それを思うと俺も愛想が月さまだよ。まア現在の事でさへも分らないのに、未来の事までも研究は廃めて置かうかい。三五教の其時代の宣伝使でさへも、読んで居ないものがある位だからなア』
竜国別『未来の宣伝使は無謀なものだなア。しかし大分に夜露を浴びた様だが、もう徐々帰つて寝床に横はらうぢやないか』
国依別『俺はもう少時散歩する。却て一人の方が都合が好いから……お前は先へ寝たが宜からう。又肝腎の時になつて眠むたがると困るからなア』
竜国別『そんならお先へ御免を蒙る。お前は、ゆつくりお月さまとオツキ合ひ話でもするが良いわい。近い所に御座るからよく聞えるだらう』
国依別『きまつた事だ。お月様の分霊が……これ見い、此通り……草の上にも玉の如く輝いて御座る。貴様の鬚にも沢山に天降つて御座るぢやないか。神様の御威徳は斯んなものだ。貴様はお月様は只御一体で大空ばつかりに居られると思つて居るやうだが、仁慈無限の弥勒様だから、草の片葉に至る迄此通り恵みの露を降して、輝き給ふではないか』
竜国別『成る程、さう言へば……そうだ。是だけは国さまの嘘月でも間誤月でもない、併し雨露月だなア』
国依別『分つたか、「月二つ担うて帰る水貰ひ」と云つて、一荷の桶水の中にも御丁寧に一ツづつお月様は御守護して下さるのだ』
竜国別『よく分りました。モウ之位で御中止を願ひます』
国依別『馬鹿云ふな。此処は月の名所、月宮殿の御境内だ。これ丈け結構な月の光を拝んで此儘寝ると云ふ事があるものか。サア今の間に月宮殿へ参拝して、その上で寝まうぢやないか』
竜国別『ウン、それもそうだ。そんなら一つ是からお参詣して来うか。天には寒月、地には迂露月の影ふるふだ、アハヽヽヽ』
『サア行かう』
と両人は鬱蒼とした森影に建てられたお宮の前にすたすたと進み行く。
 二人は月の森の月宮殿の階段を登りながら、
竜国別『結構な月だが、斯う鬱蒼と樹木が茂つて居ると、肝腎の月宮殿は、暗も同様ぢやないか。此月宮殿は暗宮殿だ。これ程綺麗なお月様が祀つてあるのに、何故此森が明くないのだらう』
国依別『馬鹿言ふな。之は晦の月宮殿といつて、お月様のお休み遊ばす御殿だ。宮と云ふ字は休と云ふ字に改めさへすれば、名実相適ふのだ、イヤ明月相反すと言ふのだ。アハヽヽヽ』
 神殿の何処ともなく、
『ガサガサ グヽヽヽ』
と怪しき物音が聞えて来る。
竜国別『ヤア此宮は余程古いと思へば、貂か鼬が巣をしてると見えて、大変に暴れて居るぢやないか。「月は天に澄み渡る」と詩人が言つて居るが、貂は月の宮に棲み渡り頭から糞、小便を垂れ流すぢやないか。之を思へば月宮殿も薩張愛想が月の宮ぢや。此宮も貂や鼬の棲処となつては最早運の月だなア』
国依別『人間の運命にも栄枯盛衰がある。潮にも満干がある。此宮さまは今は干潮時ぢや。それだからかう見窄らしく荒廃して居るのだ。之でも五六七の世に成れば、此お宮は金光燦然として闇を照し、高天原の霊国にある月宮殿の様になるのだが、何程結構な弥勒さまのお宮でも時を得ざればこんなものだ。信真の徳の失せたる世の中の姿が遺憾なく此お宮に写されてあるのだ。嗚呼如何にせんやだ』
竜国別『そうだなア、社会の時代的反映かも知れないなア。神様が頭から四足に糞や小便をかけられ、四足と同居して御座る様では御神徳も何もあつたものぢやない。御神徳さへあれば、こんな失敬な……神様の頭の上へ上つて糞や小便を垂れる奴に、罰を当てて動けない様に霊縛なさりさうなものぢやないか』
 社の中より、
『此方は月の大神であるぞよ。汝三五教の宣伝使、竜国別、国依別の盲目ども、否魔誤月、嘘月、キヨロ月人足、神の申すことを耳を浚へてよつく聞け。神は人間の信真の頭に宿る、決して畜生等には神の聖霊は宿らないぞ。畜生には人間の副霊が宿つて居るのだ。それだから神殿に鼬や貂等が小便を垂れ様が、糞を垂れ様が、放任してあるのだ。元来が畜生の因縁を以て生れて来て居るからだ。神は人間らしき人間が無礼を致した時は即座に神罰を与ふるぞ。只今の世の中は獣が人間の皮を被り白日天下を横行濶歩する暗の世だ。今、此処へ人一化九の妖怪が二匹も現はれて来よつたが、之も人間で無いから神罰は当てないで差赦してやらう。サア如何ぢや、人間なれば人間と判然申せ。四足の容器なれば容器で御座いますと白状致せ。神の方にも考へがあるぞよ』
 国依別は小声で竜国別に向ひ、
『オイ、何だらうな。えらい事を言ふぢやないか』
竜国別『あんまり神様の悪いことを言つたものだから、神さまが怒つて御座るのかも知れないよ』
国依別『罰が当る様なことは出来はしまいかな』
竜国別『サア、其処ぢやて。俺も一つ如何言はうか知らんと思つて心配をして居るのだ。結構な神の生宮たる万物の霊長、大和魂の人間で御座いますと言へば、直に神罰を当てられて如何な目に逢はされるか知れないし、四足の容器と言へば、お咎めは無いけれど本守護神に対して申訳が立たぬなり、自分も何だか阿呆らしくて、卑怯未練にもそんな事は断然、アヽもう良う言はんワ』
 宮の御殿より、
『人間か、四足か、早く返答致せ。四足と有体に白状すれば今日は断然赦して遣はす。人間と申せば此儘汝の生命を取つて、根の国、底の国へ追ひやつてやらう。サア早く返答を致さぬか』
竜国別『ハイ、一寸待つて下さいませ。今鳩首謀議の最中で御座います。相談が纏まつた上御返事を申上げます』
 宮の中より、
『エー、これしきの問題に凝議も何もあつたものか、一目瞭然だ、早く返答致せ。四足に間違ひあるまいがな』
両人『へ……そ……それは……あんまり……殺生で御座います……』
 宮の中より、
『それなら誠の人間と申すのか』
国依別『ハイ……まア人間が半分……畜生が半分で人獣合一の身魂で御座います』
 宮の中より、
『然らば獣の分だけは赦して遣はす。半分の人間を之から成敗致す。耳一つ、眼玉一つ、鼻一つ、下腮を取り、手一本、足一本引き抜いてやらう。有難う思へ』
竜国別『ヤア、もう何卒今度に限り大目に見て下さいませ』
 宮の中より、
『何、大目に見て呉れと申すか、蛇の目の唐傘の様な大きな目で睨んでやらうか』
国依別『イエイエ滅相な、そんな目で睨まれては此方も……めゝゝゝゝ迷惑を致します』
 宮の中より、
『此方も時節の力で斯の如く屋根は雨漏り、鼬、貂の棲処となり、些か迷惑をいたして居る。どうか此方の片腕が欲しいと思つて居た矢先だ。いやでも応でも其方達の片腕を取つてやらう』
竜国別『滅相もない、片腕どころか、弥勒様の為なら、両腕を差上げて粉骨砕身して尽しますから、お頼み申します』
と泣き入る。宮の中より、
『よしよし、粉骨砕身は註文通り赦してやらう。サア脇立、眷族共、両人の骨を粉にし身を砕いて参れ。粉骨砕身して尽さして呉れえと願ひよつたぞよ』
竜国別『モシモシ、その粉骨砕身の意味が断然違ひます。さう早取りをしてもらつては困ります』
 宮の中より、
『粉骨砕身とは読んで字の如しだ。神は正直だから誤魔化しは、些も聞かぬぞよ』
国依別『オイ竜、此奴アちつと怪しいぞ』
竜国別『そうだなア、田吾作の声に似ては居やせぬかなア』
 宮の中より、
『コラコラ両人、其方はまだ疑ふのか。此方は空に輝く月の玉治別命、又の御名は田吾作彦の大神であつたぞよ。ワツハヽヽヽ』
竜国別『あんまり馬鹿にすない。俺の胆玉を大方潰して仕舞ひやがつた』
国依別『こら、悪戯けた真似をしやがると承知をせぬぞ』
玉治別『胆玉ばかりぢや無からう。睾丸が潰れかけただらう、アハヽヽヽ』
と笑ひ乍ら、ドシンドシンと朽ちはてた階段を降つて来る。三人は笑ひ乍ら梅照彦の館を指して、月を仰ぎつつ門前に着いた。梅照彦、梅照姫は、
『モシ貴方等、何処へ行つて居られました。俄に三人様のお姿が見えぬので、何かお気に障つてお帰りになつたかと思ひ、大変に胆を潰しましたよ』
玉治別『睾丸は大丈夫ですかな、アハヽヽヽ』
竜国別『実は我々両人はあんまり月が佳いので、つい浮かれて散歩をし……月宮殿に参拝して……』
玉治別『胆玉を潰しました』
竜国別『お前、黙つて居れ。人の話の尻を取るものぢやない』
玉治別『何、尻は取りたくないが睾丸が取り度いのだ、アハヽヽヽ』
国依別『月宮殿と云ふ所は妙な処ですな。貂がものを言ひましたよ。而も神さまの声色を使つて……てんと合点のゆかぬ事ですわい』
梅照彦『エ、貂がものを言ひましたか、それや聞き始めだ。何と云ふ貂でせう』
国依別『何でも田吾作とか言ふ貂で、鼬の成上りださうです。随分気転の利かぬ馬鹿貂の水転でしたよ、アハヽヽヽ』
 一同腹を抱へて『アハヽヽヽ』と笑ひ転ける。
(大正一一・五・一六 旧四・二〇 北村隆光録)
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