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文献名1霊界物語 第23巻 如意宝珠 戌の巻
文献名2第4篇 混線状態よみ(新仮名遣い)こんせんじょうたい
文献名3第15章 婆と婆〔727〕よみ(新仮名遣い)ばばとばば
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-10-15 02:00:00
あらすじ
高姫は瀬戸内海を西へ航海し、小豆ケ島に着いた。この島には岩窟が多くあって怪物が住むと伝えられていた。

貫州は岩窟の様子を見に中に入って行った。一人残された高姫は、することなすこと裏目に出る自分の境遇を思い起こして、自分に憑いている日の出神に疑いの心を起こす。

そして、腹の中にいる霊を責め立て始めた。高姫が腹の中の玉のようになっている霊を捻りつぶそうとすると、霊は自分は日の出神などではなく、木常姫の霊だと白状した。

木常姫は、高姫の肉体は自分の分霊が凝ってできたのだから、他所へ移ることはできないと言う。高姫は自分の守護神が日の出神ではないと感づいていたような発言をする。

しかし、日の出神と偽って現れた以上は、どこまでも日の出神で通さねばならないのだ、と逆に霊を叱りつけ、今度は自分が霊を教育して使ってやるのだと吠えている。

そこへ東助の館の便所から逃げてきた友彦が偶然やってきた。高姫が自問自答しているのを見て、気がふれているのだと思って思わず独り言を言う。それが高姫の耳に入って、今度は高姫は友彦に八つ当たりを始めだした。

友彦はバラモン教時代の高姫を見知っており、二人は互いに名乗りをする。そこへ貫州が岩窟から出てきた。

貫州は、どうやらここは泥棒の一団の隠れ家らしいと報告する。一行は岩窟の中へ進んで行くと、現れたのはバラモン教の蜈蚣姫であった。蜈蚣姫は高姫を三五教の鷹鳥姫と見て襲おうとする。

高姫は、元は自分もバラモン教だったことを明かして、バラモン教のために三五教に潜入していたのだと蜈蚣姫を丸め込んでしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年06月13日(旧05月18日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年4月19日 愛善世界社版243頁 八幡書店版第4輯 584頁 修補版 校定版247頁 普及版114頁 初版 ページ備考
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本文  高姫は貫州と共に玉能姫より贈つた新造の船を操り乍ら、漸くにして瀬戸内海の最大巨島小豆ケ島に到着し、磯端に船を繋ぎ、暫し此島に滞在し、山の谷々までも隈なく宝の所在を探さむと、国城山の中腹まで登りつめた。茲には巨大なる岩窟があつて、昔から怪物の潜む魔窟と称へられて居る。
貫州『高姫様、ここには立派な岩窟が有りますなア。玉能姫の奴、ヒヨツとしたら斯う云ふ所へ隠して置いたかも知れませぬ。昔から人の出入した事のない、深い岩窟だと杣人が云つて居りましたから、一つ探険して見ませうか』
高姫『マア暫く考へさして貰はう。どこ迄も注意深い玉能姫の事であるから、吾々両人が此岩窟へ這入るや否や、見張らして置いた味方の奴が穴でも塞ぎ、徳利詰にでもしよつたら、それこそ大変だ。此界隈をせめて四五丁四面調査べた上の事にしよう』
貫州『そんな心配は要りますまい。そんなら此処に貴女は待つて居て下さい。私は一人探険して来ますから……』
と云ふより早く、岩窟の中へ腰を屈めて、ノソノソ這ふ様に這入つて了つた。後に高姫は腕を組み胡床をかき、思案に暮れて独語。
高姫『あゝする事成す事、鶍の嘴程喰ひ違うと云ふのは、ヤツパリ大自在天大国別命の御神慮に背いた酬いかも知れない。一旦鬼雲彦の部下となり、バラモン教の教理を称へ乍ら、又もや三五教の変性男子が恋しくなり、ウラナイ教と銘打つて、中間教を捻り出し、何時の間にか大自在天の名も唱へぬ様になり、再び国治立命を信じ、再転して素盞嗚尊の三五教に逆戻りをなし、今又三五教の幹部の為に散々な目に遇はされ、日の出神さまも如何して御座るのだらうか。此頃は高姫の精神も変だが、日の出神様も何とはなしに便りなうなつて来た。あれ程光る玉の所在が分らぬ様な日の出神では、実際の事役に立たぬ。ヒヨツとしたら此頃は眼病でも患つて居られるのではあるまいかなア。あゝ最早瞋恚の雲に包まれて、一寸先も見えなくなつて了つた。どこを探ねたら此玉の行衛が分るであらうか。但は熱心な黒姫が最早手に入れて居るのではあるまいか、サツパリ五里霧中所か岩前夢中に彷徨すると云ふ高姫の今日の境遇。アーアもう神様が厭になつて了つた。時々腹の中からイロイロの事を言つて聞かして呉れるが、後振り返り眺むれば、一つとして神勅の的中した事はなく、自分の体に憑依して居る霊には、何とはなしに贔屓がつくものだから、自分もチツと怪しいとは思ひ乍ら、今の今迄日の出神の生宮で頑張り、貫き通して来たが、明石の灘で難船に遭ひ、又家島では船を奪られ島流し同様の憂目に会うても、何にも知らして呉れぬ様な盲神の容器になつた所で、日に日に恥の上塗りをするばつかりだ、アヽ如何したらよからうかなア。今更聖地へ引返し、言依別の教主や杢助に対し謝罪るのも馬鹿げて居るし、モウ仕方がない、毒を喰はば皿迄舐れだ。今となつて、ヤツパリ妾は日の出神の生宮では有りませなんだと……そんな事は是迄威張つた手前、言はれた義理でもなし。……一つ守護神に談判をして其上の事にしよう。……コレコレ腹の中の守護神、チツと発動して妾の質問に答へて下さい。今度は今迄の様なヨタリスクは聞きませぬぞ。ネツトプライスの誠一つを開陳なされ。返答に依つては高姫も今日限りお前の言ふ事は聞かぬのだから、サア早く発動せぬか、口を切らぬか』
と拳を固めて臍の辺りを力一杯擲りつけて居る。如何したものか、今日に限りて日の出神と称する憑依物も、チウの声一つ挙げず、臍の下あたりに萎縮して、小さき毬の様になつて付着して居る。高姫は力一杯其玉の上から握り詰め、
高姫『サアどうぢや、なんとか返答せぬか。結構な変性男子の系統の肉体を、今迄よくも弄物にしよつた。捻り潰してやらうか』
と腹の皮が千切れる程力を籠めて、グリグリとした固い塊を握り潰さうとする。腹の中より、
『アヽ痛い痛い。白状します。どうぞ宥へて下さい。私は金毛九尾の狐の乾児、昔エルサレムの宮で、大八洲彦命以下の神々を苦めた木常姫の霊で御座います。其木常姫の分霊が疑つて貴女の肉体が形作られ、此世に生れて来たのだ。そして私は同じ身魂の分派だから、お前に憑るより外に憑る事は出来ないのだ』
高姫『よう白状した。大方そんな事だらうと思うて居つたのだ。併し乍ら同じ身魂の因縁なれば、お前の云ふ通り離す訳に行かず、妾も実際はお前と別れとも無い。併し木常姫の霊魂だなぞと、何と云ふ弱音を吹くのか。始めから日の出神と偽つて現はれた以上は、どこまでも日の出神で通さぬか。そんな気の弱い守護神は妾は嫌ひだ。サア是から妾がキツと教育をしてやるから、今迄の様に此肉体を自由自在に使ふ事はならぬぞ。高姫が今度はお前を使ふのだから、さう思へ』
木常姫の霊『肉体が霊をお使ひになれば、体主霊従になりはしませぬか』
高姫『エー又しても、お前までが理屈を言ふのか。世間の奴は皆表面でこそ霊主体従と済ました顔して吐いて居るが、分らぬ奴だなア。物質の世の中にそんな馬鹿な事が如何して行へるものか。体主霊従が天地の真理だ。妾は今迄お前の霊に従ひ、霊主体従を守つて来て、一つも碌な事は出来なんだぢやないか。体主霊従に世の中は限る。虚偽式生活は此高姫の取らざる所、これからはスツクリ気を持直し、赤裸々に露骨に、体主霊従を標榜して世の中に立つ心組だから、お前もそう心得ろ』
木常姫の霊『アヽ仕方がない。何を言つても水のでばなに聞いて呉れる筈がないから、ここ暫くは沈黙の幕をおろさうか。アハヽヽヽ』
と自問自答を荐りにやつて居る。
 此所へ糞まぶれになつて登つて来た一人の宣伝使があつた。宣伝使は岩窟の前に中婆の首を垂れ、モノログして居るのを見て、
宣伝使『ハハア、此奴ア気違だなア。独り言うては独り答へて居よる。昔から腹の中から自然にものを言ふ病気があると云ふ事を聞いて居つたがテツキリ斯んな奴の事を云うたのだらう。神懸にしては少し調子が違ふ。併し乍ら病気でも何でも可い、腹の中より何でも可いから、物を言つて呉れると、実否は兎も角も、神懸として誤魔化すのに都合が好いけれど……自分の様に何時まで修行しても、鎮魂しても、腹の中からウンともスンとも言うて来ない者には困つて了ふ。あちらでも神懸の真似をしては失敗し、こちらでも真似をしては失敗し、到頭洲本の酋長の宅に於て、九分九厘と云ふ所で、女房に看破され肝を潰し居る所へ、死んだ筈の主人が帰つて来よつて大いに面目玉を潰し、雪隠の中から籠脱けをやつた時の苦しさ、恐さ、大自在天様のお蔭で漸く海辺に無事到着し、一艘の舟を見付けて、無理やりに沖へ漕出し、暴風に吹き流され、此島までやつて来たのだが、雪隠を潜つた時に、自分の宣伝使服は雪隠の雑巾役を勤めよつたと見えて、未だに怪体な臭気がする。アヽ困つた事だ。一層の事、再び改悪して、此婆を裸にし、臭い着物と取換こをしてやらうかなア』
と何時の間にか小声が大きくなり、高姫の耳に聞えて来た。高姫は、大部分宣伝使の独語を聞き悟り、
高姫『オツホヽヽヽ、糞まぶれの宣伝使、雪隠の雑巾と日の出神の生宮の教服と換るなんて、そんな大それた野心を起すものぢやない。チヤンとお前の腹の底まで見抜いてあるのだから……』
宣伝使『ヤアお前は何処の婆アか知らぬが、俺の腹中をさう早くから見透かして居るのなれば仕方がない。止めて置かう。俺の着物にはドツサリと黄金色のババが付いて、ババの着物になつて了つた。貴様のを脱がした所でヤツパリババの着物だ。……オイ婆さま、どこぞ其処らの谷川で俺の着物を洗濯して呉れぬか』
高姫『日の出神の生宮の宣伝使と、洗濯婆と間違へられては迷惑だ。こんな高い山の水もない所に、洗濯婆が居るものか。谷川の畔へでも行つて探して来い。婆は川に付物だ。此婆は世界の人民の身魂を洗濯する大和魂の根本の洗濯婆だぞ。……ヘン宣伝使面をしやがつて、何をとぼけて居るのだ。余程よい頓馬野郎だなア』
と今までの腹立ち紛れに、宣伝使の方へ鉾を向けて了つた。
宣伝使『なんと口の達者な婆アも有ればあるものだ。恰度今ウラナイ教を立てて居る高姫の様な、口喧しい婆アさまぢやないか』
高姫『その高姫は此肉体ぢや。わしの名を如何して知つて居るか』
宣伝使『私は其時に雉子と云つた男だ。お前が鬼雲彦の膝元へ出て来て、バラモン教を聞いて居つた時、私も聴いて居つた。あの時の事を思へば随分年が寄つたものだなア……今はバラモン教の宣伝使友彦と云ふ名を賜はつて、自転倒島一円の宣伝に廻つて居るのだ』
高姫『アヽさうかい。そんなしやつ面で宣伝が出来たかな』
友彦『センデン万化に身を窶し、獅子奮迅の勢で活動した結果、とうと糞塵の中に陥り、フン失の所だつた。アハヽヽヽ』
と打解けて笑ふ。
高姫『お前もそこまで糞度胸がすわつて、雪隠の中まで潜れば、最早是から上り坂だ。糞に生く雪隠虫は遂には這ひあがつて、空中飛行自在の玉蠅となり、どんな偉い人間の頭へでも止まつて、糞を放りかける様になるものだ。お前も是から一つ糞発して、妾と一緒に活動したらどうだ。フンパツせいと云つても雪隠へ往て尻をまくるのだないぞツ』
友彦『お前は随分口の達者な糞婆ぢやなア。併し乍らヤツパリ、ウラナイ教とか云ふ中間教を立て通して居るのかい』
高姫『バラモン教も、鬼雲彦の大将、大江山の砦から三五教に追ひまくられて逃げ帰る様な腰抜教なり、ウラナイ教から一寸都合に依りて、元の三五教へ逆転して見たのだが、ヤツパリ此奴も糞詰り教だ。何分穴の無い教だから、万事万端行詰りだらけ、それに分らず漢が幹部を占めて居るのだから活動しようと思つても手も足も出し様がない。併し乍らバラモン、ウラル、ウラナイ、三五、四教を通じて一番勢力の有るのは依然三五の道だ。此島には天上天下唯我独尊的の三つの宝があるのだが、其奴の隠し場所を探し当てさへすれば、三五教は吾々の自由自在になり、天晴れ神政成就は出来るのだから、玉の所在を探さうと思つて、一人の家来を連れて此島まで来た所だが、お前も事と品に依つたら家来にしてやるから、今迄の経路を物語つて呉れ。先づ第一にお前の着物の因縁から聞かう。雪隠から脱け出た事は聞いたが、それは何処の雪隠だい』
 友彦は有りし次第を悉く物語りける。
高姫『さうすると、お前は東助の宅へ行つたのだな。彼奴は三人の男を連れて帰つた筈だが、お前見たのかい』
友彦『何だか三五教の宣伝使の服を着けて居つたやうだ。併し乍ら東助にスツカリ服従して、是から東助を大将に、高姫の所在を探ね打亡ぼさねば置かぬと云うて、力んで居ましたよ』
と嘘を並べ立て、高姫の肝を挫がうとする。高姫は驚いて口を尖らせ、目をグルグルと廻転させ乍ら、
高姫『そりや本当か。そして何時出て来ると云つて居つたかな』
友彦『何でも東助の囁くのを聞けば、高姫は小豆島に漂着したに違ないから、数百人の軍勢を引連れ、全島を片つ端から捜索して、高姫を生擒にして連れ帰り、舌を抜いてやると云つてましたよ。用心せぬと何時やつて来るか分りませぬぜ。アツハヽヽヽ』
と笑ふ。高姫は其顔をチラリと見て、
高姫『エー腹の悪い。そんな恐喝を食ふものか、小豆ケ島へ来たと云ふ事がどうして東助に分る道理があらう。又お前の声色と云ひ、顔色と云ひ、嘘を吐いて居るのだろ』
友彦『アヽそこまで看破されては仕方がない。お察しの通りだ。マア嘘にして置きませうかい』
 斯く話し合ふ所へ、顔一面に蜘蛛の巣だらけになつた貫州は、数多の衣類を小脇に抱へて出て来た。高姫はこれを見て、
高姫『ヤアお前は貫州、一体其顔は如何したのだ』
貫州『ハイ此処は恐ろしい泥棒の岩窟と見えて、沢山の掠奪品が山の如く積んで有りました。私も泥棒のウハマヘをはねて、大泥棒となり、顔は此通りクモ助になつて出て来ました。資本が何分懸らぬ代物だから、安うまけと来ます。絹物も有れば、木綿物も有るが、突込みで一尺何程で卸ませうかい。……ヤア何だ、怪しい臭気がすると思へば、そこに糞まぶれの着物を着てる奴が一人立つて居る。大方雪隠虫のお化けだらう。早速此奴ア買手が出来た。世の中はようしたものだ。斯んな山中に店出しした所で、たアれも買手は有るまいと思うて居つたのに、出せ買はう……とか云つて、不思議なものだなア』
と一人洒落てゐる。
高姫『お前そんな悪い事をして、何ともないのか。神様に済まぬぢやないか』
貫州『私の天眼通で糞まぶれの人間が今出て来ると云ふ事を、チヤンと悟りました。こんな所で洗濯する訳には行かず、困つてるだらうと思つて、慈善的に抱へて来たのだ。サア俺の物ぢやないけれど、お前勝手に着たがよからう』
友彦『持主の分らぬ着物を勝手に着る訳には行きませぬ。買ふとか、借るとかせなくては、黙つて着服すれば泥棒になりますから……』
貫州『殊勝らしい事を言ふな。お前は宣伝使のサツクを嵌めて泥棒をやつて居つた男に違ひない。お前の面付は、どう贔屓目に見ても、泥棒としか俺の天眼通に映じない、大方貴様の…ここは親分の根拠地だらう。何だか此岩窟の奥には大勢の声が聞えて居つたから、ソツト是れ丈の着物を引抱へ逃げ出して来たのだが、貴様も大方岩窟の乾児に違ひあるまい』
友彦『これは聊か迷惑だ。実の所は始めて此島へ漂着したばかりだから、そんな痛うない腹を探るものだない。併し此着物は暫く拝借しよう。其代りに私の衣類を渡すからお前御苦労だが、岩窟の中まで持ち運んで置いてくれぬか』
 貫州は、
『勝手にせい』
と捨台詞を残して、又もや岩窟の中に駆込んだ。高姫、友彦も続いて岩窟の中に入る。或は広く、或は狭く、起伏ある天然の隧道を、身を堅にし横にし、或は這ひなどして漸く広き窟内に進み入つた。どこともなく糸竹管絃の音が聞えて来る。三人は怪しげに耳を澄まして其音の出所を佇み考へ込んだ。或は前に聞え、後に聞え、右かと思へば左、左かと思へば頭の上に、地の底に音がする。途方に暮れ、半時ばかり無言の儘、顔を見合せて考へ込んでゐた。傍の岩壁は音もなくパツと開いて、中より現はれ来る一人の婆ア、三人を見るより、
『アヽ、お前は鷹鳥山に巣を構へて居つた鷹鳥姫其他の奴だなア。アヽよい所へやつて来た。サア是れから日頃の恨みを晴らし、金剛不壊の玉や紫の玉の所在を白状させねば置かぬ』
高姫『これはこれは御高名は予て承はりて居りましたが、一つ谷を隔てた魔谷ケ岳と鷹鳥山、御近所で居り乍ら、誠に御不沙汰を致して居りました。妾も其玉を……よもやお前さまが何々してゐるのではあるまいかと思うて来たのです。人を疑うて誠に済みませぬが、貴女もあの玉に就ては非常な執着心がお有りなさるのだから、妾が疑ふのも強ち無理では有りますまい』
とシツペ返しに捲し立てる。蜈蚣姫は顔色を変へ、
『盗人猛々しいとはお前の事だ。何なと勝手にほざいたがよからう。此穴にはスマートボールや其他の勇士が沢山に抱へてあるから、最早お前達は袋の鼠も同様、運の尽きぢやと諦めて、神妙に白状したがよからう。あのマア迷惑相な面付わいの、オツホヽヽヽ』
と肩を揺り、腮をしやくり、舌まで出して笑ひ転ける憎らしさ。
高姫『お前さまは音に名高い鬼ケ城山、鬼熊別の奥さま蜈蚣姫さまと云ふお方でせうがなア。妾も元は鬼雲彦の弟子となり、バラモン教の教理を信用して聞いた事がある高姫で御座います。今は一寸都合があつて、三五教の宣伝使と化け込んでゐるのだが、心の底はお前さまと同様、ヤツパリ大自在天様を信仰し、生命までも捧げて、千騎一騎の活動をしてゐるので御座います。どうぞして三五教の三つの宝を奪ひ取り、それを手柄にメソポタミヤの本山へ献上し、御神業を助けたいばつかりに、斯うして化けてゐるのですよ。貴女方は今迄妾を敵と思うて御座るが、決して敵ではありませぬ。強力なる味方です。玉の所在が分らうものなら、それこそ隠す所か、貴女の手を経て鬼雲彦様に奉つて貰ふ考へで、これ丈苦労をしてゐるのです。三五教の教主言依別命が、玉能姫、初稚姫と云ふ女や子供に現を抜かし、肝腎の玉を隠さして了ひよつたのだから、何でも其所在を探さうと思つて、此島までやつて来たのが、神様の不思議の縁で、思はぬ所でお目に掛りました』
蜈蚣姫『アヽそう聞くとメソポタミヤでお目に掛つた高姫さまによく似てゐる。それなら何故妾が魔谷ケ岳に居つた時、お前さまは三五教ぢやと云つて反対をしたのだ。それが一体合点がいかぬぢやないか』
高姫『アハヽヽヽ、誰も彼れも皆、此高姫の腹は知らない奴計りだから、三五教の熱心な宣伝使とのみ思うて居る矢先に、何程お前さまに会ひたうても、会ふことが出来ない。そんな事ども分つた位なら、今迄の苦心が水の泡になるのだから、妾の心もチツと推量して下さい。神の奥には奥があり、其又奥には奥があるのだから、そんな企みをして居れば直に発覚しますから、事を成さむとする者は仮令、自分の夫であらうが、女房であらうが、何程信用した弟子であらうが、一口でも喋る様な事では、成就しませぬからな。オホヽヽヽ』
蜈蚣姫『何とお前さまは感心な人ぢや。さう事が分かれば敵でもなし、姉妹同様、サアどうぞ奥へ通つてゆつくりと寛ろいで下さい。昔話をして互に楽みませう』
と今迄と打つて変つた挨拶振りに、高姫は与し易しと心の中に笑ひ乍ら、蜈蚣姫の後に従いて、奥の間に進み入る。
 貫州、友彦は入口の間に木の根で造つた火鉢を与へられ、手をあぶり乍ら、様子如何にと待つて居た。高姫は今後如何なる策略をめぐらすならむか。
(大正一一・六・一三 旧五・一八 松村真澄録)
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