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文献名1霊界物語 第24巻 如意宝珠 亥の巻
文献名2第2篇 南洋探島よみ(新仮名遣い)なんようたんとう
文献名3第8章 島に訣別〔738〕よみ(新仮名遣い)しまにけつべつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-08-02 19:07:56
あらすじ三五教の教主・言依別命は、玉能姫から高姫が玉への執着に囚われて海に漕ぎ出したと聞いた。言依別命は高姫が難儀をしているだろうから助けに行くようにと命じ、命を奉じた玉治別、初稚姫、玉能姫は船を作って高姫を追いかけた。途中、馬関海峡の瀬戸の岩に、友彦、鶴公、清公、武公が難船しているのを見つけ、船に乗せて一緒に高姫を追いかけた。一行はアンボイナ島の海辺に高姫の笠が落ちているのを認め、濃霧の中を雌滝指してやって来たのであった。一行は高姫を見つけ出して来意を告げたが、高姫はまた玉探しの妨害をしに来たと思って毒舌で一行を迎える。玉治別は蜈蚣姫が倒れて苦しんでいるのに気づき、鎮魂を施して癒した。蜈蚣姫が涙を流して玉治別に感謝を表すと、高姫は、自分の神力によって玉治別が蜈蚣姫を治したのだ、と屁理屈をこねる。しかし蜈蚣姫に最前の態度をたしなめられて黙ってしまう。蜈蚣姫は玉治別、玉能姫、初稚姫と初対面をし憎まれ口を叩く。しかし一行に混じって友彦がやってきたのを見て、娘に会おうと思って追いかけてきたのならさっさとあきらめて帰るように、と叱り付ける。友彦は、東助によって罪を赦され、その代わりに高姫の救助に向かうようにと仰せ付けられて、清公、武公、鶴公と一緒に船出したが、難船したところを三五教の一行に助けられたのだ、と経緯を物語る。高姫は、上手いことを言って玉を奪おうとして追って来たのだろうと、東助を始め一同を嘲弄する。高姫のあまりの悪口暴言に、さすがの蜈蚣姫も三五教徒らを気の毒がり、船を持ってきてくれたことに礼を言い、感謝の意を表した。玉治別は、二艘の船を持ってきたので一艘は蜈蚣姫らに与え、もう一艘で聖地に帰ろうと高姫を促す。高姫は誰が玉治別に従うものか、と言うとむくっと起きて一目散に海辺に走り行き、大きい方の船に乗って一人漕ぎ出してしまった。一同は呆れていたが、高姫は印籠を滝の側に忘れたことを思い出し、引き返してきた。そしてちょっと漕いでみたのだ、と言い訳をして、自分が戻るまで船を出さないようにと言い置いて滝に印籠を取りに行った。一行は船を出して、十間ばかり沖で笑いさざめいている。高姫は浜辺に戻ってきて船を呼ぶが、友彦はわざと意地の悪いことを言って高姫をなぶる。高姫は仕方なく泳いで船の方にやってきた。命からがら船に手をかけると、貫州とスマートボールが高姫を船に引き上げた。玉治別、玉能姫、初稚姫、鶴、武、清ら三五教の一行は何処へともなく帰ってしまった。蜈蚣姫、高姫らの一行に友彦を加えた船は、西南指して進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年07月02日(旧閏05月08日) 口述場所 筆録者谷村真友 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年5月10日 愛善世界社版118頁 八幡書店版第4輯 655頁 修補版 校定版120頁 普及版56頁 初版 ページ備考
OBC rm2408
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本文 『神の経綸も白浪の  三つの御玉を探らむと
 執着心の何処までも  深き海原に浮びつつ
 此世の瀬戸の海越えて  家島高島小戸島
 国城山の岩窟に  砦を構へて瑞宝の
 所在を探す蜈蚣姫  心も同じ高姫が
 やうやう妥協を整へて  再び船に棹をさし
 梅島竹島桜島  馬関の海峡乗越えつ
 神の恵も大島や  栗島岩島竹野島
 尚も進んで琵琶の島  南洋一の霊場と
 噂に高き竜宮島  玉の所在を探るべく
 尋ね来るぞ果敢なけれ  吾は聖地に現れませる
 言依別の神司  稜威の御言をかかぶりて
 再度山の山麓に  尋ねて来る折柄に
 玉能の姫の物語  三五教の高姫は
 玉に心を奪はれて  荒き海路を渡りつつ
 南洋さして出で行きし  話を聞くより矢も楯も
 耐り兼ねたる玉治別の  天地に通ずる真心は
 玉能の姫を動かせて  新に堅き船造り
 御後を慕ひ来りけり  馬関の瀬戸を過ぐるとき
 波に漂ひ船を破り  岩に喰ひつき泣き叫ぶ
 二三の人の影を見て  船を近寄せ眺むれば
 バラモン教の宣伝使  友彦初め三五の
 神の教の信徒と  仕へ奉りし鶴さまや
 清さま武さま四人連  九死一生の有様を
 救うて漸く此島に  来りて見れば海端に
 落ちたる笠は高姫の  此処に居ませる印ぞと
 心も勇み身も勇み  青葉茂れる木の間をば
 潜りて此処に来て見れば  雄滝雌滝と相並び
 天下に無比の絶景と  憧憬れ居たる折もあれ
 忽ち包む深霧に  咫尺を弁ぜず一行は
 雄滝の前に佇みて  様子窺ひ居たりしが
 雌滝の方より聞え来る  怪しき女の叫び声
 何事ならむと気を苛ち  助けむものと思へども
 咫尺弁ぜぬ霧の中  手を下すべき由もなく
 心をいらつ一刹那  忽ち吹き来る科戸辺の
 神の伊吹に払はれて  一望千里の晴れの空
 小路を伝ひ来て見れば  高姫さまの一行が
 愈此処に立籠り  禊の修業の最中と
 覚りし時の嬉しさよ  あゝ惟神々々
 御霊幸ひましまして  高姫さまの胸の中
 一日も早く晴らせかし  吾は玉治別の司
 玉能の姫や初稚姫の  誠の御言に従ひて
 汝が命を救はむと  やうやう此処に来りたり
 嗚呼高姫よ其外の  神の大道を歩む人
 心平に安らかに  吾一行の真心を
 うまらに詳細に聞召せ』
と歌ひつつ男女七人、高姫の前に立ち現はれ、歌に装ひて来意を述べ立てたり。
 高姫は一行の姿を眺め、
『ヤアお前は玉能姫と初稚姫さま、それに玉治別の田吾作どの、何用あつて執念深く高姫の後を付け狙うてお出でたのだ。矢つ張り玉の所在を探されてはならないと思つて、夜も碌々寝られず、こんな所迄調べに来たのだらう。遥々と御遠方の処御苦労様。よもや高姫が此島に居るとは思はなんだでせう。サアかうなる以上は玉を隠したのは、此竜宮島に間違ひない。百日余りも探して見たが、何分大きな島だから充分に調べる訳にも行かず、サアよい処へ来た。今度は玉の所在を明瞭言ひなされ』
 玉能姫は静かに、
『高姫さま、何程お探し遊ばしても、三十万年の未来でなければ、三つの神宝は現はれませぬ。妾は決して貴女方の玉探しを、気に懸けて参つたのではありませぬ。初稚姫様が教主言依別命様の命を奉じ、高姫さまは玉に心を奪はれ、いらぬ苦労をなさるのが気の毒だから、お迎ひ申して来いとの御命令、船は流され嘸お困りだといふ事を、神様が先にお分りだから、二つの船を持つてお迎ひに来たのです。どうぞ吾々の此処へ来た事を善意に解して下さい』
『これはこれは何から何まで抜け目のない言依別命。……初稚姫、玉能姫さま、船を二艘も持つてようマア来られました。誠に御親切有難いと申したいが、さう安々とお礼を申されぬ理由が……ヘン御座いますワイ。あれだけ此高姫に揚壺を喰はし、喜んで居る言依別命に海洋万里の此島迄私を助けに来る親切があれば、玉隠しをしたりして我々を苦しめる道理がない。元をただせば此高姫がコンナ処まで来て、あらゆる艱難苦労するのも、みな言依別命、初稚姫、杢助、玉能姫様のお賢い悪智慧のお蔭ですワイ。ようマアこれ丈人に心配をかけて下さつた。何程高姫の機嫌をとらうと思つても其手には乗りませぬぞえ』
 玉治別は口を尖らせ、
『何とマア執念深き訳の分らぬ高姫だなア、命からがら小舟に乗つて、万里の波濤を渡り助けに来ながら、こんな小言を聞かうとは思はなかつた。……高姫さま、お前さま、本当に没分暁漢だなア』
『コレ田吾作どの、何をツベコベと横槍を入れるのだイ。お前は宇都山村で、芋の赤子さへ大切に育てて居れば性に合ふのだ。言依別の珍らしもの喰ひに抜擢されて宣伝使になり、玉治別の名を戴いたと思うて、変性男子の系統の生宮に、何をツベコベほざくのだ、スツコンで居なさい。あまり偉相に云ふと此島の熊蜂が遣つて来て……それ其処に居る蜈蚣姫の様な目に遭はされますよ』
と言葉尻をピンとはねて体を揺り、蜂を払ふ様な態度にてパタパタと羽ばたきして見せる。玉治別は初めて其処に蜈蚣姫の倒れて居るに気付き、一生懸命に神言を奏上し、言霊を唱へ鎮魂を施した。不思議や蜈蚣姫の腫は刻々にひすぼり、忽ち元の姿に復り、玉治別に向ひ両手を合せ、涙を滝の如く流し感謝の意を表して居る。
『コレハコレハ蜈蚣姫さま、お仕合せな事、妾が今救けて上げようと思つて、色々神様に願つて居つた所、半時ばかりの間に全快させてやらうと、日の出神が仰有つて恰度今半時許り経つた所だ。其処へ玉治別がやつて来て烏のおどしの様な恰好して鎮魂をしてそれで癒つたと思ふと大きな間違ひ、恰度好い時刻に来よつて自分が癒した様に思うて、お前さまの感謝の言葉を手柄顔に偉相に、……蚯蚓切りの蛙飛ばしの癖に、鎮魂に、神力があつてたまりますか。コンナ男に病気が癒せる位なら、妾は既に神様の宣伝使はやめて居りますよ』
『ドチラのお蔭だか知りませぬが、有難う御座います。然し高姫さま、貴女の最前濃霧に包まれた時、……貫州だけ助けて下され、蜈蚣姫は御都合でドウなとして下さい……と祈つて居ましたねエ。随分水臭いお方ですワ』
 高姫は無言。
『貴女が噂に聞きました蜈蚣姫様で御座いますか。これは珍らしい所でお目にかかりました。妾は生田森の玉能姫で御座います。此小さい女の方は聖地に於て有名な初稚姫様で御座います』
『さうかいナア。……お前がアノ梃でも棒でも動かぬ玉能姫だな。さうして頑固者の杢助の娘と云ふのは此奴かいなア。ホンニ一寸小賢しい悪気の有りさうな、無ささうな顔をして居るワイ、オホヽヽヽ。……ヤアお前は糞まぶれになつて逃げて来た友彦ぢやないか。大方妾の後を追ひ、娘に逢はうと思つて来たのだらう。エヽ穢らはしい。友彦の糞彦、サア、トツトと帰らつしやれ』
『私は決して小糸姫に未練があつて参つたのではありませぬ。淡路島の酋長東助様が、私の大罪を赦して下さいまして、其代り御一同をお助けする為めに船を持つて行けと命ぜられ、清さま、武さま、鶴さまと一緒に後を追うて参つたのです。東助様に神様がお告げ遊ばしたには、お前さまは南洋のアンボイナ島で船をとられるに違ひないから、船を持つて迎ひに行つて来いと仰有られて、情深い東助様が、お前を助ける様に私をお遣はしになつたのだ。東助さまにお礼を申さねばなりませぬぞえ。高姫さま、蜈蚣姫さま、どうです。これでも不足を云ふ処がありますかい』
『友さま、イランお世話だ。誰が助けて呉れと頼みました。自分が勝手に口実を設けて、玉の所在を探さうと思ひよつて来たのだらう。ヘン阿呆らしい。誰がお礼を云ふ馬鹿があるものかい。いい加減に人を馬鹿にして置きなさい。余人はイザ知らず、此高姫に限つて、ソンナ巧妙な嘘を喰ひませぬわいなア。オホヽヽヽ』
と一言々々肩から胴体を揺つて嘲弄する。友彦は疳筋を立て、
『私は何程嘲笑されても不足を云はれてもかまはぬが、さういふ挨拶をされて東助様に対して、ドウいふ返事をしてよいか分りませぬ。何とか其処は人情を弁へての御挨拶が有りさうなものですなア』
『ヘン、巧い事を仰有いますワイ。人を家島に放つたらかして、東助の野郎、清、武、鶴の三人を引捉へ、気楽さうに追分を歌つて帰んだぢやないか。それ丈け親切があるなら、ナゼ私を家島へ放つて帰んで仕舞つた。ナント巧い事を云うても、事実が事実だから仕方がありますまい。オー恐や恐や、虫も殺さぬ様な面をして居るチツペの初稚姫や玉能姫が、此年寄に素破抜きを喰はして、玉隠しをやると云ふ世の中だから、油断も隙もあつたものぢやないワイなア。何程親切にして見せて下さつても、心から親切でない以上は、有難いともナントモ思ひませぬ。却て其仕打が憎らしい。イヒヽヽヽ』
と上下の歯をけたりと合はせ唇を四角にして、前に突出して見せる。
『高姫さま、あまりぢやありませぬか。東助さまはアヽ見えても、親切な方ですよ』
『親切ぢやと云つて船頭位をして居る奴が何になるか。日の出神の天眼通でチヤンと調べてある。船頭社会のヤンチヤで家も何も無い奴だらう。偉さうに国城山に清、鶴、武を来させよつて、一廉酋長だとか金持だとか吐しよつて、態とに八百長で友彦を引縛つて帰り、其後を追かけて来たのだらう。船頭が賃銭なしに誰がお前達をよこすものか。又お前達も日頃の泥棒根性を発揮して、高姫が玉を発見したら、フンだくつて帰らうと思うて来たのに違ひない。三百両フンだくつたり、人の女房を狙ひそこねて、雪隠を潜つて逃げ出したりする様な男が、何んな巧い言を云うても駄目だ。モツト人格のある男が云ふのなら、一つや半分は承知をせまいものでもないが、お前の様な泥棒根性の男や、清、鶴、武の様な裏返り者の云ふ事が、ドウして、……ヘン信じられますか。初稚姫、玉能姫、田吾作だとて其通りだ。七人が腹を合せ、高姫や蜈蚣姫の手柄を横取りしようと思つてやつて来た其計略、仮令千万言を尽し弁解しても……ヘン、だアめですよ』
と両手を前の方にニユウと突き出し、腰を曲め、尻を縦に振つて、蛙の如く二三間前にピヨンピヨン飛んでキヨクツて見せる。
 蜈蚣姫は気の毒がり、
『高姫様が何と仰有ろうとも、どうぞお気に障へて下さいますな。あの方は一寸変つて居ますから、妾は船を持つて来て下さつたのが何より有難い。玉能姫様、初稚姫様有難う。此通りお礼を申します』
と涙を流しながら両手を合して心の底より感謝する。
『何これしきの事に、お礼を仰有つて下さつては、玉能姫一行、却て恥かしい様な気が致します。世の中は相身互ひで御座います。天が下に他人だの敵だのと云ふ者が有らう道理が御座いませぬ。サア何時迄も斯様な所に居られましても、玉は決して出ては参りませぬ。早く帰りませう』
『ハイ有難う。ソンナラ船を持つて来て下すつたのを幸ひ、妾は娘の小糸姫に逢ひたくてなりませぬから、竜宮の一つ島に渡りますから、どうぞ一艘の船をお貸し下さいませ』
『二艘持つて参りましたから、一艘丈はどうぞ、御自由にお使ひ下さい。……サア高姫様、妾と一緒に聖地に帰りませう。お供致しますから』
『ナント云つても此処は一寸も動きませぬぞへ、高姫は』
 玉治別は、
『ソンナラお前さまの御勝手になさいませ。……サア皆さま、帰りたい方は船に乗つて帰りませぬか。居りたい方は手を上げて下さい。一、二、三……ヤア何方も帰りたいと見えます。一人も居りたい人はないと見えます。一寸も動かないと仰有つた高姫さまでさへも手を上げなさらぬワイ』
『誰が田吾作の命令に服従して、この尊い手を安々と上げたり下げたりしますかいナア。ササ早う往つて丈夫な船に乗りませうかい』
とムクムクと起上り、浜辺を指して一目散に走つて行く。一同は高姫のあとに付き添ひ浜辺に向ふ。高姫は早くも一艘の船に飛び乗り大勢を残し、只一人海の中に遠く漕いで走り行く。
 玉治別は舌をまきながら、
『ヤア高姫の奴、怪しからぬ事をしよる。大きい好い船に只一人乗りよつて此小船に是丈けの者が乗るのは大変に険難だ。波の静かな時は好いが、チツトでも波が立つたら遣り切れない。困つた事になつたものだ』
と磯端に地団駄踏んで口惜しがつて居る。一方高姫はメラの滝の麓に肝腎要の印籠を忘れた事を思ひ出し、イヤイヤ乍ら再び船を漕いで此方へ帰り来る。
 玉治別は手を拍つて、
『ヤア、さすがの高姫も沖まで出て恐くなつたと見え、後戻りして来をる。偉さうに云つても流石は女だ。これでは日の出神の生宮も好い加減なものだなア。アハヽヽヽ』
『オホヽヽヽ』
 大勢一度にドツト笑ふ。此時長途の航海に馴れた手で、艪を操り矢を射る如く戻つて来た高姫は、
『皆さま、一寸漕いで見たが随分面白いものだ。是なら仮令百里千里漕いだところで大丈夫だよ。妾はメラの滝に落し物をしたから、五六丁の所だから往つて来るよつて待つて居て下さいよ。……コレコレ貫州、玉治別さま、妾に付いてお出で、若し船を出されちや大変だから……』
 貫州、玉治別は口を揃へて、
『滅相な、吾々両人は揃ひも揃うて足の裏を竹の切り株に突き、一歩も歩けないのだよ。吾々一同は此海の景色を眺めて待つて居るから、貴女一人行つて来て下さい、決してお前さまのやうに意地の悪い事はせぬからなア』
 高姫は慌しくメラの滝の方に向つて、青葉を縫うて姿を隠したり。其間に玉能姫、初稚姫、玉治別、清、鶴、武の六人は新しき船に乗り込みぬ。蜈蚣姫、友彦、久助、スマートボール、お民其の他二人は、稍古き小船に身を寄せたり。さうして手早く纜を解き、十間ばかり陸をはなれて面白可笑しさうに笑ひさざめき居る。そこに高姫は印籠を引掴み、スタスタと走り来り、
『妾に応答もなしに…………何故船を出したのだい。サア、早く船を漕いでこちらへ寄せなされよー』
 玉治別は新船を、友彦は古船を一生懸命に漕ぎ出す。一刻々々陸地を遠ざかる。高姫は声を限りに、
『オーイその船、此方へ寄せるのだー』
『ナンダか知らぬが、友彦が漕げば漕ぐほど船が先へ行くのだよ』
と歌を謡ひながら、意地悪く沖に向つて漕ぎ始めける。高姫は赤裸になり、印籠を口に銜へ、着物を頭にくくりつけ、抜手を切つて蜈蚣姫の乗つた古船に向つて泳ぎ行く。友彦は相変らず急いで艪を漕ぐ。蜈蚣姫は、
『コレコレ友彦、ソンナ意地の悪い事をするものでない。高姫さまの心にもなつて見たがよからう』
『余り口が好いから改心の為めに、友彦が一寸いちやつかしてやつたのです。ソンナラ待ちませうか』
と艪の手を休める。高姫は命カラガラ漸くにして船に喰ひつきぬ。スマートボール、貫州は高姫の両手を持つて、やつとの事で船の中に引上げた。
 玉治別は艪を操つりながら此場を見捨てて何処ともなく帰り行く。……高姫、蜈蚣姫一行を乗せた船は友彦に操られ、西南の縹渺たる大海原を指して進み行く。
(大正一一・七・二 旧閏五・八 谷村真友録)
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