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文献名1霊界物語 第25巻 海洋万里 子の巻
文献名2第3篇 竜の宮居
文献名3第9章 信仰の実〔755〕
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじたちまち満天は墨を流したような黒雲に覆われてしまった。五人は祠の前で涼しく祝詞を唱えれば、黒雲の中から一塊の火光が現れて雷のような轟音と共に落下した。たちまち雲は晴れて辺りは日の光に輝いた。
五人が我に返ると、諏訪の湖面には紺青の波がキラキラと気高く輝いていた。純白の帆を掲げた舟が、多数こちらに向かってやってくる。五人は衣服を脱ぎ捨てて、湖の中にザンブと飛び込んだ。
浅瀬を進んで行った五人は、深みに足を取られて水底に落ち込んだ。五人は、水底から浮かんできた金銀をちりばめた神船に救い上げられて、湖を北へと進んで行った。そして気が付くと、湖中の夫婦島に五人は置かれていた。
ここには大小無数の金銀の蛇が、空き地がないほどに群れて遊んでいた。清公は金色の蛇に口の中に這いこまれ、その胸苦しさで眼を覚ました。チャンキーは蛇を引き出そうとしたが、尾ではねられて隣の島に飛ばされてしまった。
チャンキーが飛ばされた島には金銀のムカデがびっしりと群れていた。ムカデはチャンキーの体に這い登って包んでしまったが、チャンキーは少しも痛みも苦しみも感じなかった。ただそのこそばゆさに、チャンキーは腹をかかえて笑い転げた。
清公たちが最初に置かれた島は男島、チャンキーが飛ばされた島は女島といった。清公はにわかに身体が黄金色に変じ、両眼から金剛石のような光を発した。顔色輝いて荘厳の度を増し、背も一尺ばかり伸びると、アイルを掴んで女島に投げ飛ばした。
アイルもムカデに体を包まれて笑い出した。アイルとチャンキーがこの不思議な出来事について放していると、清公に投げられたテーナが島にやってきた。テーナもたちまちムカデに包まれてしまった。
男島のモンキーだけは、なぜか蛇も近づかなかった。モンキーは、蛇が自分に近づかないのは、自分が善だからなのか悪だからなのか判断がつかず、清公の前に平伏して頼み入るが、清公は目ばかりぎろぎろと動かして無言のまま立ち尽くしていた。
モンキーは、この島の蛇もムカデも悪魔のような感じがしない以上、竜宮に居るからには諸善神の化身に違いないと結論し、岩の上に祝詞を上げて諸手を組んで首を垂れ、考え込んでいた。
すると美妙の音楽が眼下から聞こえてきた。驚いて見れば、崇高な女神が舵を取って、厳たる漆塗りの船が進んで行くのが、パインの茂みの間から見えた。船中には、清公、チャンキー、アイル、テーナの四人が薄絹を身につけ、瓔珞の冠を戴いて、各々笛や笙やひちりきを奏でながら、愉快気に湖面を進んでいる。四人の肌は水晶のように透明に清まっていた。
モンキーが思わずアッと叫ぶと、四人は金扇を開いてモンキーを差し招く。船は悠々と波の上を進んで姿を隠してしまった。モンキーは我が身を省みれば、赤銅のような肌に毛がボウボウと生え、嫌な臭いを放出していた。
モンキーは自分のほうが間違っていたことに気付き、磯端に走ると全身を清めて端座し、瞑想にふけった。涼風が吹き、モンキーは気分が晴れてきた。しかし湖面を行く神船はモンキーに一瞥もくれずに過ぎてゆく。
モンキーがやや不安にくれて、船が消えた方向を見ていると、水面から緑毛の亀が浮かび上がり、島に駆け上がって走り出した。モンキーはその後について行く。亀は大木に登って、そこから落ちた。モンキーも同じように木に登って落ちた。
モンキーは亀の真似をしてもがいたり、付いて湖に飛び込んで泳いだ。モンキーが手足がだるくなって泳げなくなると、亀はモンキーを待って留まった。モンキーが亀に掴まると、亀は水中深く潜っていった。モンキーは必死でしがみついた。
モンキーは今度は女島に居て、亀の後をついていった。数多のムカデもその後に続いた。亀は島の頂上の大木の梢から、水面に飛び込んだ。モンキーは遥か下の水面を見て恐ろしさを感じたが、死に物狂いで亀と同じく頭を下にして飛び込んだ。
気が付くと、モンキーは金色の亀にまたがって紺碧の湖面を悠々と進んでいた。亀はいつしか金銀珠玉をちりばめた神船となっていた。
モンキーは初めて、何事も一切万事神に任せれば良いのだ、ということに気が付いた。蛇の島では蛇の心、ムカデの島ではムカデの心になって神様にお任せして行動してこそ、神の慈悲を体現できるのだ、ということを悟った。
モンキーは四人に再び会えることを願い、悔悟の涙を絞って合掌し、天津祝詞を奏上した。微妙の音楽が聞こえて麝香の芳香が漂い、その身はたちまち薄絹に包まれた。天上を行くごとき爽快な気分に包まれた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年07月10日(旧閏05月16日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所
本文の文字数8051
本文のヒット件数全 1 件/竜宮館=1
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本文  三五教の太柱  変性男子の系統を
 唯一の頼みと経緯に  我儘気儘を振舞ひし
 天狗の鼻の高姫が  部下と仕へし清公の
 左守神と現はれて  鰻上りに上り詰め
 恋の瀬川の宇豆姫を  妻となさむと企み居し
 カラクリがらりと相外れ  地恩の城の頂上より
 大地に急転直下せし  名誉を元に返さむと
 執着心のほとぼりに  胸を焦がして清公が
 チヤンキーモンキー二人連れ  タカの港を立出でて
 屋根無し船に身を任せ  心に荒波立て乍ら
 暗に紛れて和田の原  誠明石のヒル港
 誠魔言の取違ひ  日の出神の其昔
 現はれませる山奥の  酒の泉の湧き出たる
 其滝壺に現はれて  大蛇の荒びを眺めてゆ
 転迷開悟の花咲かせ  生れ赤子と蘇生り
 ヒルの郷人二人まで  旅の御供と定めつつ
 セーラン山の山続き  深き谷間を打渉り
 虎狼や鬼大蛇  狒々猩々の集まれる
 魔窟ケ原を宣伝歌  歌ひ乍らに進み行く
 石の枕に雲の屋根  露の褥も数越えて
 心も光る玉野原  天空海濶限りなき
 金砂銀砂を布き詰めし  諏訪の里にと着きにける
 木の花姫の御化身  巨大の狒々に村肝の
 心の玉を洗はれて  一行五人天地の
 神の恵を覚りつつ  心も勇み身も軽う
 紺青の波を湛へたる  玉依姫の永遠に
 隠れ玉ひし諏訪の湖  五つの御玉の底深く
 納まる竜宮の岸の辺に  心洗ひし清公が
 チヤンキーモンキー始めとし  アイル、テーナの五柱
 祠の前に着きにける  頃しもあれや天上に
 黒雲忽ち顕現し  見る見る四方に拡大し
 満天墨を流すごと  黒白も分かずなりにける
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましまして
 心の雲霧吹き払ひ  天津御空も国土も
 清く涼しく天津日の  輝き玉ふ清明の
 天地に還し玉はれと  五つの口に宣る祝詞
 声も涼しく唱ふれば  あゝ訝かしや黒雲の
 中より出でし一塊の  火光は忽ち目の前に
 雷鳴の如き音響と  共に轟然落下して
 一度に開く木の花の  四方に散るよと見る間に
 さしも暗黒に包まれし  六合忽ち朝日子の
 伊照り輝く世となりぬ  五人は我に立返り
 諏訪の湖面を見渡せば  紺青の波キラキラと
 魚鱗の如く日光に  輝き閃く崇高さよ
 遥に向方の島影ゆ  現はれ出でたる純白の
 真帆や片帆の数多く  此方に向つて進み来る
 其光景は春の野の  青野ケ原に蝶々の
 花に戯れ翩翻と  舞ひ狂ひたる如くなり
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 唯何事も人の世は  直日に見直し聞直し
 身の過ちは宣り直す  三五教の神の道
 鬼も大蛇も曲津霊も  我の身魂を外にして
 神の造りしうまし世に  影も形も白煙
 消ゆる思ひに充たされて  天地万有自ら
 至善至美なる神の世と  変りし如き心地しつ
 五人は衣服を脱ぎ捨てて  湖水の中に一時に
 ザンブと計り飛び込めば  姿は忽ち水底に
 消えて跡なき泡沫の  夢か現か幻か
 神ならぬ身の如何にして  知る由もなき御経綸
 仰ぐも高し久方の  神の心の万分一
 竜宮海の底の底  深き仕組の玉手箱
 開いて述ぶる物語  竜宮館の教主殿
 奥の一間に瑞月が  心天高く日を照らし
 心の海に三五の  真如の月を浮べつつ
 御国を思ふ真心を  雲井上に留五郎
 神の大道を亮めて  世人導く神界の
 鑑を照らす真澄空  唯一言も漏らさじと
 鉛筆尖らし松村が  心を籠めて記し行く
 引きて帰らぬ桑の弓  桑の机にもたれつつ
 無尽意菩薩を傍らに  侍らし誠を述べ立つる
 愈茲に五五の巻  稍半迄書きしるす
 神の出口の因縁を  開く常磐の松風に
 身も魂も清々と  語り行くこそ芽出度けれ
    ○
 清公ほか四人は諏訪の湖の畔の小さき祠の前に端坐し、天津祝詞を奏上し、数歌を歌ひあげ、終つて紺青の波漂へる諏訪の湖の岸辺に立ち、際限もなき広き湖面を崇高の気に打たれて眺め入つた。忽ち心機一転して、天国よりも清く美はしき感想に打たれ、一同は期せずして、衣類を脱ぎ、湖中に向つてザンブと許り、何気なく飛び込んで了つた。千尋の深き水底と思ひきや水溜りは思うたよりも浅く、七尺乃至八尺の肉体の、浅きは臍あたり迄、深きは首のあたりまで位よりなかつたのに、再び驚き乍ら神言を奏上しつつ、波を押し分けて北へ北へと進み行く。
 摺鉢の様になつた湖底に足を辷らせ、茲に五人は一時に水底深く落ち込み、一旦は人事不省の厄に会うた。折柄浮かび来る金銀を鏤めて造りたる神船に救ひ上げられ、北へ北へと運ばれた。
 湖中に浮かべる夫婦島の一角に救ひ上げられ、五人の肉体は其儘自然に気の附く迄棄て置かれたのである。酷熱の太陽は焦げつく如く、赫々と照り輝けども、老樹鬱蒼として天を封じたる此浮島は、涼風颯々として徐に吹き来り、夏の暑さを少しも感じなかつた。此島には大小無数の金銀の蛇空地なき迄に遊び戯れて居る。五人は金銀の蛇、畳の目の如く地上を包んで居る其上に救ひ上げられ、暫くは何も知らずに、睡眠を恣にして居た。
 清公は稍太き金色の蛇に、口をポカンと開けて居た其隙間より這ひ込まれ、胸苦しさに目を醒まし、『キヤツ キヤツ』と叫んだ声に驚いて、チヤンキー、モンキー、アイル、テーナの四人は始めて気が附き、附近を見れば金銀の索麺を敷いた如く、億兆無数の蛇樹上にも樹下にも、木の幹にまで一面に包んで居る。清公の口には金色の太き蛇、七八分まで口より這ひ込み、僅に七八寸許り尻尾の先を余し、尾は前後左右にプリンプリンと活動し、尾の先にて耳の穴、鼻の穴、目などを無性矢鱈に掃除して居る。チヤンキーは其尾を掴み蛇を引出し、清公を助けむと猿臂を伸ばして尾を掴んだ途端に、ビンと撥ねられて、隣の島に投げ送られた。
 一方の島には金銀の蜈蚣数限りもなく、蓆を布いた如く、沢山の足をチヤンと揃へて、地上を包んで居る。樹上にも木の幹にも金銀色の蜈蚣、空地もなく巻きついて居た。見る見る二三尺の長き蜈蚣は、ゾロゾロとチヤンキーの身体に這ひ上がり、空地なく身体を包んだ。されど不思議にも少しの痛みも苦みも感ぜず、唯少し許りこそばゆい感じがしだし、蜈蚣の足や舌を以て体を舐め始め出すに従れ、こそばゆさは益々其度を増し、遂には笑ひ止まず、腹を抱へて蜈蚣原に七転八倒するに至つた。此島を女島と云ふ。一方の清公が金色の蛇を呑んだ島を男島と云ふ。
 清公は俄に身体黄金色と変じ、両眼より金剛石の如き光を放ち、口をもがもがと動かせ乍ら、何か言はむとするものの如く、七八寸口から出て居た尻尾は、何時の間にか腹中深く納まつて了つた。清公は顔色輝き、層一層荘厳の度を加へ、身長も一尺計り高く延び、体の総体其太さを増して来た。物をも言はず清公はアイルの首筋をグツと掴み、女島に向つて猫の児を投げる様に手もなく投げ移した。チヤンキーが俯むいて笑つて居る背中の上に、フワリと馬に乗つた様に落ちて来た。蜈蚣は忽ちアイルの全身を包んだ。アイルも亦俄に際限もなく笑ひ出した。見る間に蜈蚣は体一面に焦げつく様になつて、両人の体は全身蜈蚣の斑紋に包まれて了つた。チヤンキーは始めて口を開け、
『あゝ地恩城の蜈蚣姫の代りに蜈蚣彦が両人揃うた。……オイ、アイルさま、斯う体が蜈蚣に変化した以上は、モウ仕方がない。一生此島の守護神となつて暮らせと云ふ神様の思召しかも知れないよ。併し乍ら、昔諾冊二尊が自転倒島へ御降りになつた時には、陰陽揃うて夫婦の契を結び、山、川、草、木をお産みになつたのだが、我々は男ばかりだから国生みもする訳には行かず、つまり態よい島流しになつたのではあるまいかなア』
アイル『サア何だか知らぬが、何とも言へぬ好い気分ぢやないか。何れどちらかが女になるのかも知れないよ。併し此島は女島と云ふからは、二人乍ら女にならうも知れぬ。さうすれば尚々妙な事になつて了ふ。併し何時も俺は女に何故生れて来なんだかと始終小言を言つて居つたから、言霊の幸はふ国だと云ふからには、御註文通り女に変化するかも知れぬ。さうすれば所謂平和の女神となつて、お前はチヤンキー、俺はアイル、アイルチヤンキーの女神として後世に謡はれるやうになるかも知れないよ』
チヤンキー『馬鹿言へ、アイルチヤンキーの女神と云ふ様なものが何処にあるか。アイルテーナの女神と言へば昔から聞いてるがなア』
『それなら男島に残つてる奴と俺と合せばアイルテーナだ』
『俺も今日限りチヤンキーと云ふ名を返上して、アポールと云ふ名に改名しよう。アポールの女神は、所謂アテーナの又の御名だ』
 斯く話す折しも又もや、清公に掴まれて投げ送られたテーナは、二人の前に空を切つて降つて来た。
チヤンキー『アイルテーナ、……此奴ア不思議』
とソロソロ地金を現はし、洒落気分になつて無駄口を叩きかけた。テーナはものをも言はず俯むいて、膝頭を打つたと見え顔を顰め乍ら撫でて居る。蜈蚣はそろそろテーナの全身を包んだ。テーナは向脛を打つた時の様に痛さうなこそばゆさうな、痛さとこそばゆさが一つになつた様な声で、泣きと笑ひの中間的声を出して『キユーキユー』と脇のあたりを鳴らして居る。
 男島に於けるモンキーは、
『モシモシ清公大明神、お前は金竜の化神となつて了ひ、三人の奴まで皆金銀の蜈蚣の衣服を着て、平和の女神だとか何とか威張つて居るが、此モンキー一人はどうして下さるのだ。始めの間は蛇や蜈蚣を見てゾツとし、罪の重い奴が斯んな所へ来たものだから、蛇や蜈蚣に責められて苦しむのだと思ひ、アーア俺丈はヤツパリ盗んで来た船を返しに往つた正直者の発頭人だから、蛇も蜈蚣も如何ともする事が出来ないのだと、稍得意気分になつて居た。が併し乍ら、誰も彼も金銀の体になり、余り苦痛さうにもないのを見ると、何とはなしに、自分も羨りくなり当然の肉体が却て罪の塊の様な感じが致しますワ。一体何方が善ですか。万一四人の者、神の冥罰に触れて斯んな態になつたのならば、我々は友人の為に充分の謝罪を神界へ致さねばならず、又四人が神徳を蒙りて出世をしたのならば、我々も同じく出世をする様に願つて頂かねばなりませぬ。善悪不二と云ふ事は予て聞いて居りました。併し乍ら神が表に現はれて、善と悪とを立分けると云ふ以上は、今立て分けられた五人は、どちらが善か悪か、どうぞ聞かして下さいませ』
と一生懸命に手を合せ、清公の前に平伏して頼み入る。清公は口をへの字に結び、目計りギロギロさせ乍ら一言も答へず時々二つの鼻の穴から、フウフウと荒い息を吹き出すのみである。モンキーの傍二尺許りの四方は、何故か、金銀の蛇近寄り来らず。斯うなるとモンキーも神に嫌はれて居るのか、好かれて居るのか、少しも合点がゆかぬ。已むを得ず稍自棄気味になつて、島中を歩行き始めた。蛇は先を争うて、モンキーに踏まれまじと慌ただしく路を開く其怪しさ。
 一時許り島を彼方此方と金銀の蛇を驚かせ乍ら、或る美はしき金色燦爛たる苔の生えた岩の側に辿りつき、恰好の休息所と岩上に身を横たへ、頬杖を突き、思案に暮れて独言を言つて居る。
モンキー『あゝサツパリ善悪不可解だ、鬼も大蛇も悪魔も、すべて自分である。自分を離れて極楽もなければ地獄もなし、又神もなければ鬼もない…………と酒の滝壺の大蛇に向つて清公が宣伝歌を歌つた時、大蛇は忽ち小さくなつて消えて了つた。さうすれば尚々合点のゆかぬは此島へ来てからの出来事だ。清公始め其他の連中は残らず、金銀の蛇や蜈蚣に全身を取巻かれ、神に救はれたのか、棄てられたのか、チツとも訳が分らなくなつて了つた。さうして我々の身辺には蛇も蜈蚣も近寄らず疥癬患者が来た様に、皆吃驚したやうな調子で路を開けて呉れよる。考へれば考へる程、俺の精神が神の御心に叶うて居るのか、或は四人の連中の方が良いのか、どうしても合点がゆかない。我輩に神徳が有つて蛇や蜈蚣が恐れて逃げるのか、或は威勢に恐れて避けて居るのか、此奴も一つ考へ物だ。諸善竜宮に入り玉ふと云ふ以上は、此竜宮島に悪神は一柱も無い筈、仮令金銀の色をして居つても、蛇に蜈蚣と云ふ奴、余り気分の良いものだない。併し此島の蛇も蜈蚣も悪魔の様な感じもせぬ。悪魔でなければ諸善神の化身であらう、此点が一向合点の行かぬ所だ。清公だとて余り神様に好かれる様な至善至美の人間でもなし、又俺だとて神様が恐れて逃げなさる様な御神徳があらう筈もなし、又蛇が悪魔であるとすれば、我々の神徳に恐れて逃げる様な蛇には力も徳もないのだ。ヤツパリ竜宮は竜宮式だ。薩張五里霧中に彷徨して、見当の取れぬ仕組の実地を見せて貰うたのだらうか。あゝ如何したら此解決が附くだらう。初の間は金銀の蛇、一二尺づつ遠慮した様に先を争うて逃げて居よつたが、何時の間にか見渡す限り、俺の周囲には、一匹の蛇も居なくなつて了つた。蛇に好かれるのも余り気分の良い話ではないが、此通り敬遠主義を執られるのも、何だか面白くない様な気分がする。あゝ到底人間の理智では解るものでない。先づ神様に天津祝詞を奏上し、悠くりと心を落着けて、鎮魂三昧に入つたならば、何とか此解決がつくであらう。あゝ惟神霊幸倍坐世』
と、拍手をなし、祝詞を、声限り奏上し終つて、又もや岩上に端坐し、腕を組み考へ込んだ。
 モンキーは岩上に双手を組み、首を垂れ、善悪の解決に心身を傾注する時しもあれ、美妙の音楽眼下に聞ゆるに驚き、目を開いて眺むれば、金銀珠玉を以て包まれたる、厳はしき漆塗の船に、得も言はれぬ崇高なる女神舵を操り、清公、チヤンキー、アイル、テーナの四人、赤裸の筈の男が、何とも知れぬ麗しき薄衣を身に着け、身体は水晶の如く透明に清まり、各自に横笛、笙、ひちりきを吹き、美はしき纓絡の附いた冠を頭に戴き、愉快気に波面を進み行く光景が、パインの繁みを透かしてアリアリと現はれた。モンキーは思はず『アツ』と叫んだ。四人は金扇を拡げ、モンキーに向つて『早く来れ』と差招き乍ら、微妙の音楽の声諸共に、紺青の波の上を悠々として彼方の島影に姿を隠しける。
 モンキーは太き息を吐き乍ら、我身を振り顧れば、赤銅の様な黒赤い肌に毛をボウボウと生やし、得も言はれぬ汗臭い、厭な臭気が放出して、我と我が鼻をつく。
『あゝヤツパリ俺の方が間違つて居たのかい。こりやモ一つ考へ直さなくちやなるまいぞ』
と岩を離れて磯端に走り寄り、全身を清め、再び磯端に端坐して瞑想に耽りゐる。
 涼風颯々と面を吹くさま、得も言はれぬ気分となつて来た。向ふの島影を見れば、金砂青松絵の如く展開し、名も知れぬ羽毛の麗しき鳥、迦陵頻伽か孔雀か鶴か、確とは分らねど、長閑な声を放ちて天国の春を歌ふものの如く感じられた。金銀珠玉を鏤めたる白帆をかけた神船は或は一つ、或は三つと、時々刻々に眼下の波面を過ぎ行く。されどモンキーの方には一瞥もくれず、素知らぬ顔して進み行く船のみである。モンキーは益々合点ゆかず、心中稍不安を感じて恨めしげに、四人の船の姿の隠れた方面の空を眺めて佇み居る。
 忽ち足許の水面より緑毛の亀、忽然として浮び出で、見る間に島へ駆け上り、一生懸命に走り出せば、モンキーは其亀の後に従いてスタスタと走り行く。亀は益々速力を速め遂には大木の幹に掻きつき二三間計り攀つた所で、如何した機みか、手を放し大地に顛倒した。モンキーも亀に添うて大木に駆け登つた。亀が落ちたのを見て、自分も亦手を放し、地上に顛落し、強たか頭を打ち『惟神霊幸倍坐世』と云ひつつ、手の掌にて息を吹きかけ、創所を二三回撫でまはせば、痛みは頓に止まりぬ。亀は腹を上にし、四つの足で空を掻いて藻掻いて居る。之を見たモンキーは、又もや地上に背を附け、手足を上げて空を掻き、亀の真似をして居る。亀はカタリと音をさせて起き上り、亦もやノタノタと反対の方面に走り出す。モンキーも同じくクレリと体をかはし、音がせぬので口で『カタリ』と云ひ乍ら亀の後に引添うて、今度は四這になつて従いて行く。
 亀は矢庭に湖面に向つてドブンと飛び込むを見て、モンキーも亦四這のまま、湖水の中にドブンと飛び込み見れば、亀は頭をあげて悠々と水面を泳いで居る。モンキーは亦亀の後に従いて首をあげた儘に泳いで行く。手足は倦くなり、最早此上十間たりとて泳げなくなつて了つた。亀はモンキーの追ひ付き来るを待つものの如く、ポカンと浮いたまま、首を伸ばして後を振りかへつて居る。モンキーは其間に亀に追付き、甲の両側に両手をかくれば、亀は水中深く潜り出した。死物狂ひになつて両手を甲に掛けた儘水底に続いて行く。
 フト目を開き見れば、自分の体は亀と共に、女島の磯端に上つて居た。金銀色の蜈蚣の一面に並んで居る其上を、亀は容赦なく這ひ乍ら、島山の頂を目蒐けて進み行く。数多の蜈蚣は、今度は蛇の様に避けず、足許をウザウザさせ亀の後に、一生懸命に追うて行く。
 亀は又もや大樹の枝に登つて了つた。モンキーも亦大樹の枝へ亀の後に添うて登りついた。眼下の水面を見渡せば、霞む許りに高き島山の頂上の大木の梢から水面を見た事とて非常に恐ろしい。亀は亦もや水面を目蒐けて、首をすくめ乍ら落ち込んだ。モンキーは死物狂になりて水面を目蒐け、身を躍らし、頭を下にしたまま、飛び込んで了つたと思つてハツと気が付けば、モンキーは金色の亀の甲に跨がり、紺碧の湖面を、悠々として泳いで居た。亀は何時しか容積を増し船の如く大きくなり、知らぬ間に金銀珠玉を鏤めた目無堅間の神船になつて居る。船は艪を漕ぐ人も無きに、自然に動き出し、四人が進んだ方面を指して辷つて行く。モンキーは始めて悟つた。
モンキー『あゝ何事も一切万事、神に任せば良いのだ。郷に入つては郷に従へと云ふ事がある。蛇の島へ来れば蛇と一つの心になり、蜈蚣の島へ来れば蜈蚣の心になつて済度をしてやらねばならぬ。蛇を呑んでも構はぬ、体を巻きつけられても、救ひの為には厭ふ所でない。蜈蚣が我々の肉体を嘗めたがつて居るならば、何程厭らしくても舐めさしてやるのが神の慈悲だ。神心だ。我々は理智に長けて、神の慈悲心を軽んじて居た。最早斯うなる以上は、何事も神様のままに、お任せするが安全だ。……惟神霊幸倍坐世……と口任せの様に唱へて居たが、今迄は何事も頭脳で判断をし青人草倣ひの行ひをやつて居たのが誤りだ。あゝ神様有難う御座います。どうぞ清公其他の一行に、一時も早く面会の出来まする様、御取計らひ下さいませ。モウ此上は一切万事、貴神にお任せ致します』
と悔悟の涙をしぼり、湖面に向つて合掌し天津祝詞を奏上して居る。
 何処よりともなく、以前の如き美妙の音楽聞え来り、麝香の如き風湖面を吹いて、其身は忽ち薄物の綾錦に包まれ、天上を行く如き爽快なる気分に酔はされて居た。
 あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一一・七・一〇 旧閏五・一六 松村真澄録)
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