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文献名1霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻
文献名2第2篇 暗黒の叫よみ(新仮名遣い)あんこくのさけび
文献名3第10章 縺れ髪〔810〕よみ(新仮名遣い)もつれがみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグキールの港(基隆の港) データ凡例 データ最終更新日2021-11-24 16:59:25
あらすじ日楯夫婦と月鉾は、父・真道彦やヤーチン姫が重臣たちの裏切りによって捕らえられたことに心を痛め、神前にて祈願をこらしていた。たちまちユリコ姫に神懸りがあり、国魂神・竜世姫命の神勅が降りた。それによると、このたび真道彦の禍はすべて神界の経綸によるものであり、案じ煩うことは無い、とのことであった。そしてカールス王の迷夢を覚ますためには、日楯夫婦と月鉾の三人で、南琉球の王である照彦王を尋ね、救援を求めよ、と神命を下した。三人は密かに旅立ち、キールの港を指して山道を進んだ。月の照る夜、三人はアーリス山の山頂で休んでいた。すると峠を登ってくる菅笠が見えた。見ると巡礼姿の妙齢の美人である。巡礼姿の美人は、月鉾を追って来たテーリン姫であった。テーリン姫はどうしても月鉾と同行すると言い張り、三人が神勅による旅だと言っても、月鉾が自分から逃げて、マリヤス姫の元に逃げるのではないかと疑って聞かない。三人が困り果てていると、最前より木陰に潜んで様子を窺っていたマリヤス姫が現れ、月鉾が自分のところに逃げるなど無礼千万と言って、月鉾に打ってかかった。テーリン姫はそれを見てマリヤス姫に狂気のごとく組み付いた。月鉾はこれを見てテーリン姫を縛り上げた。そして三人はこの機に乗じてその場を逃げた。後に残されたマリヤス姫は、テーリン姫に優しく接した。最初は疑っていたテーリン姫も、正直に身の上を話すマリヤス姫に心を開き、二人は姉妹のように親しむようになった。そして月鉾らの帰りを待つこととなった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月08日(旧06月16日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年8月10日 愛善世界社版112頁 八幡書店版第5輯 393頁 修補版 校定版116頁 普及版53頁 初版 ページ備考
OBC rm2810
本文のヒット件数全 2 件/アーリス山=2
本文の文字数5185
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本文  真道彦命の教主を始めヤーチン姫は、淡渓の上流なる岩窟の牢獄に投ぜられ、数多の幹部は鉾を逆さまにして、カールス王に取り入り、暴政を振ひ、其勢ひ猛烈にして何時如何なる難題を此聖地に向つて持込み来るやも計られず、且つ数多の信徒は殆ど離散し、寂寥の気に包まれ、日楯夫婦を始め、月鉾は心も落ちつかず、薄氷を踏む如き心地し乍ら、ヤーチン姫始め、父の寃罪の一日も早く晴れむ事を、朝夕神前に祈願しつつあつた。忽ちユリコ姫に神懸りあり、詞おごそかに宣り玉ふよう、
『汝日楯、月鉾の兄弟よ、真道彦命の此度の奇禍は、すべて神界の経綸に出でさせ玉ふものなれば必ず案じ煩ふ勿れ。頓て晴天白日の時来るべし。真道彦命、此度の遭難なくば、到底三五教の救世主としての任務を全うする事能はず。今日の悲しみは後日の喜びなり、必ず必ず傷心する事勿れ。是れより汝兄弟は、ユリコ姫を伴ひ、暗夜に乗じて聖地を去り、荒波を渡りて、琉球の南島に在る三五教の神司兼国王たる照彦、照子姫の許に到り、事情を打明かし、救援を求めよ。然らばカールス王の迷夢も醒め、汝が父の疑も全く晴るるに至らむ。汝兄弟は未だ年若く、如何なる艱難辛苦にも堪へ得べき能力あり。年老たる父の危難を思へば、如何なる難事に遭遇する共、物の数にも非ざるべし。今宵は時を移さず、聖地を立出で琉球の島に向へよ。中途にして種々雑多の迫害艱難に遭ふ事あるとも、撓まず屈せず、勇猛心を発揮して、此使命を果すべし。我れは本島の国魂神竜世姫命なるぞ。ゆめゆめ我神勅を疑ふな』
と云ひ終つて、ユリコ姫の神懸りは元に復した。茲に日楯、月鉾兄弟はユリコ姫と共に、身を巡礼姿にやつし、蓑笠草鞋脚絆の扮装、金剛杖をつき乍ら、人里離れし山途を辿りて遂に基隆の港を指して進むこととなつた。
 月照りわたる涼しき夏の夜を、三人は漸くにして、アーリス山の頂上に辿り着き、傍の巌に腰打かけ息を休めてゐた。フト見れば、月夜の中に白く光つた菅の小笠一枚、ゆらぎつつ峠を目蒐けて登り来る。三人は目を瞠り、テールスタンの部下の間者にはあらざるかと稍胸を轟かせ乍ら、心の中にて天の数歌を称へつつあつた。笠は漸く間近くなつた。見れば一人の巡礼姿の妙齢の美人である。美人は三人の憩へる前に、恐る恐る近づき来り、さも慇懃に、
巡礼『失礼乍ら、あなたは月鉾様の一行では御座いませぬか。妾は泰嶺の聖地に朝な夕な仕へまつれるテーリン姫で御座います』
 月鉾は此声に驚き、あたりを見廻し乍ら、声をひそめて、
『如何にも私は月鉾で御座います。此深山を繊弱き婦人の身として、同伴もなく只一人、御越しになるとは大胆至極の御振舞、何処へ御出でになりますか』
 テーリン姫は涙を拭ひ乍ら、
『月鉾様、何れへ行くかとは、それは余り御胴欲で御座います。三五教の神様に心願を掛け、ヤツト叶うた妾の恋路、あなたは妾に仰せられた御言葉、最早御忘れになりましたか。エヽ残念で御座います。そんな御心とは露知らず、互に心を変るまじとの御言葉を神様の教示と信じ、夢にも忘れぬ妾の心、……エヽ口惜しい、残念な』
とあたり構はず、身を大地にうちつけて泣き叫ぶのであつた。月鉾は当惑顔にて、太き息をつき乍ら、
『あなたに誓つた言葉は、夢寐にも忘れは致しませぬ。去り乍ら、已むに止まれぬ事情の為、あなたにも委細を打明けず、俄に或秘密の用務を帯びて、暫く聖地を離れねばならぬ事が出来ました。決して決して貴女を嫌つたのでも、忘れたのでも有りませぬ。此月鉾が天晴れ使命を果すまで、泰嶺に帰り神妙に神様に仕へて居て下さい。キツト貴女との約束は反古には致しませぬ。サア斯う云ふ内にも、テールスタンの部下の者共の耳に入らば、互の不覚、今の辛き別れは後の楽み、どうぞ此事を聞き分けて、一刻も早く帰つて下さい』
テーリン『イエイエあなたはさう仰有つて、うまく妾を振棄て、泰安城に隠れますマリヤス姫様のお側へ招かれて行かれるのでせう。何と仰有つても、妾は仮令火の中、水の底をも厭ひませぬ。あなたに影の如く附添ひ参ります』
月鉾『あゝ困つたなア。……日楯さま、ユリコ姫さま、どうしたら宜いでせうか』
日楯『ハテ困つた事が出来ましたなア。何と云つても、今度は特別の使命が有るのだから、ここの所はテーリンさまに聞分けて貰つて、帰つて貰ふより仕方が有りますまい』
テーリン『あなた迄が腹を合はして、妾を排斥なされますか。キツト御恨み申します』
日楯『あゝあ、どうしたら良からうかなア。竜世姫様がいろいろの迫害や艱難に遭うても、撓まず屈せず、初心を貫徹せよと仰有つたが、これは又同情ある迫害に会つたものだ。情ある艱難に出会したものだ。……ナア月鉾さま』
ユリコ『もし、テーリン様、妾は女の身として、差出がましく申上げるのも、何となく恥かしう御座いますが、貴方も月鉾様と深く契合うたお仲、切なき御心は御察し申上げます。さり乍ら夫の一大事、ここは能く噛み分けて、一先づ聖地へ帰つて下さいませ。何れ遠からぬ内に、吉き便りをお聞かせ申すことが出来ませう』
と慰める様に、言葉やさしく説き諭す。テーリン姫は首を左右にふり、
テーリン『イエイエ、夫が行かるる所へ、仮令内縁にせよ、妻の妾が行かれない道理が有りますか。女房が行く事が出来ないのならば、あなたも日楯さまと此処で袂を別ち、泰嶺の聖地へ帰つて、神前に御奉仕なさりませ。貴女がさうなされば、妾も泰嶺の聖地へ潔く帰ります』
と抜差しならぬ理詰めに、ユリコ姫は是非なく黙り込んで了つた。
 月鉾は父の危難を救ふべく、意を決して住み慣れし聖地をあとに、漸う漸う此処まで息せき来りしものを、恋女に追ひせまられ、恥かしさと苦しさに、五色の息を吐いて居る。
日楯『テーリンさま、貴女は最前の御言葉に依れば、泰安の城に御座るマリヤス姫様に会はむとて、月鉾さまが御出でになる様に仰有つたが、左様な気楽な場合では御座いませぬ。吾々兄弟は父上の危難を救はねばならぬ千騎一騎の此場合、どうして気楽相に女を連れて行くことが出来ませう。まさかの時に手足纏ひになるのは女で御座いますよ』
テーリン『オホヽヽヽ、勝手な事能う仰有ります。ユリコ姫様は男で御座いますか、そして貴方と無関係の御方で御座いますか。あなた方は夫婦で御出でになつても陽気ではなくて、妾が月鉾さまと一緒に参るのが陽気なとは、そりや又如何した訳で御座います。此事をハツキリと妾の合点の往く様に仰有つて下さいませ。心の僻みか存じませぬが、左様な事を仰有れば仰有る程、妾は月鉾さまに見放されたとより思はれませぬ。月鉾さまには、マリヤス姫と云ふ立派な恋女が御座いますから、ここでは一人旅なれど、泰安の都迄御着きになれば、キツと二夫婦手に手を取つて、どつかへ御越し遊ばすのでせう』
月鉾『あゝ持つ可らざるものは女なりけり。余りの親切にほだされて、内縁を結んだのは今になつて見ると、チト早計だつた。あゝ如何したら良からうかなア』
テーリン『そら御覧、吾れと吾手に心の底を御明かしなさつたぢやありませぬか。それ程妾がうるさくて堪らねば、どうぞ此場であなたの御手にかけて、一思ひに殺して下さい。さうすれば定めし、マリヤス姫も御満足遊ばし、夫婦睦じく末永く暮して下さるでせう』
と身を悶えて泣きまろぶ。三人は代る代る理を分けて諭せ共、テーリン姫は容易に承知せず、言へば言ふ程、益々疑烈しくなる計りである。
 最前よりあたりの木蔭に潜んで、此悲劇を聞き居たる人影があつた。忽ち此場に現はれ、四人の前につつ立ち、
『ヤア汝は月鉾の一行であらう。最前よりここを通り合せ見れば、何事か人の囁き声、様子あらむと木蔭に立寄り、聞くともなしに聞き居れば、汚らはしや、アークス王の娘と生れたる、マリヤス姫と月鉾と夫婦の約束を結びしとか、結ぶとか、無礼千万なる申様、妾は仮令父に死に別れたりとはいへ、カールス王の妹、かかる尊貴の身を以て、如何に泰嶺の神司たりとはいへ、月鉾の如きに、秋波を送らむや。吾れは神を信ずるの余り、泰嶺の聖地に仕へ居れ共、決して、月鉾如きに従ひ居るものにあらず、雑言無礼、思ひこらし呉れん』
と云ふより早く、蓑の上より、骨も砕けよと計り、月鉾を打据ゑた。月鉾は一言も発せず、マリヤス姫の乱打の鞭を痛さを忍んで怺へて居る。此態を見て、テーリン姫は狂気の如くマリヤス姫に飛びつき、直に右の腕にカブリつき、一口計り肉を喰ひちぎつた。忽ち血はボトボトと流れ出で、月夜の木蔭を黒く染むるに至つた。月鉾は此態を見て、テーリン姫の腕を後に廻し、笠の紐を以て厳しく縛りあげた。日楯、ユリコ姫は、直におのが帯を引裂き、マリヤス姫の傷所に、土をかき集めて、塗りつけ、固く縛り、天の数歌を歌ひ、伊吹の狭霧を吹きかけた。傷は忽ち元の如くに癒えて了つた。
 日楯、月鉾、ユリコ姫は此機に乗じて、足早に何処ともなく姿を隠して了つた。跡に残りし二人は稍暫し、無言の儘にて互に顔を見つめて居た。
 暫くあつて、マリヤス姫は言葉を軟らげ、
『貴女様はテーリン姫様で御座いましたか。不思議な所でお目にかかりました。何事も人間は神界の御経綸の儘によりなるものでは御座いませぬから、どうぞ心を落ちつけて、月鉾様の無事使命を了つて、泰嶺の聖地へ無事御帰りなさる日を御待ちなされませ。キツト妾があなたの望みを叶へさして上げませう』
 テーリン姫は後手に縛られ乍ら、歯を喰ひしばり、血さへ滲らして居る其形相の凄じさ。月の光に照らし見て、マリヤス姫は恋の妄執の如何にも恐ろしきものたることに舌を巻いた。
テーリン姫『あなたは、妾に比べて、余程年をとつて居られます丈あつて、実に巧名な八百長を行られますなア。田舎の未通娘をだまさうとなさつても、私は一生懸命ですから、そんな手には乗りませぬよ。要らぬ気休めはモウ言つて下さるな。何と仰有つても、あなたには、そんな事を仰有る資格はありませぬ。三五教一般の喧しい噂で御座います』
マリヤス姫『あゝ情ない事になりました。実の事を、妾は白状致して、貴女の疑を晴らして頂かねばなりませぬ。妾は或事情の為、泰安城をのがれ、泰嶺の聖地に参りまして、尊き神様の教を奉じ、今は神前近く仕ふる聖職となりました。一度は月鉾様に対し、妾も非常に恋慕の念を起し、いろいろと言ひよりましたが、如何しても、月鉾様は御聞き下さりませぬ。翻つてよく考へて見れば、妾はアークス王の落胤とは申し乍ら、父が母の目を忍んで生みましたる罪の子の妾、如何して尊い月鉾様の女房になることが出来ませうか。又国治立大神様の御教を奉じ玉ふ真道彦命様は、アークス王に弥増して尊き御身の上、其御方の珍の子と生れ玉ひし月鉾様に、恋慕の心を起すといふは、全く早まつた考へだと気が付きました。其日よりプツツリと思ひ切り、今は極めて清き心を以て神前に奉仕して居るので御座います。世間の噂の喧しく立つたのも、元はヤツパリ妾の月鉾様を恋ひ慕ふ其様子が何となく目に立つたからで御座いませう。全く妾の罪と諦めるより仕方はありませぬ。……どうぞテーリン姫様、今迄の疑を私の此告白に依つてお晴らし下さいませ。貴女は月鉾様とは従兄妹同志の仲、何れも尊い神様の御胤、こんな結構な縁はないと存じまして、妾は内々月鉾様に、あなたとの御結婚を、お勧め申して居る者で御座います』
テーリン姫『其のお言葉に依つて、妾も安心致しました。月鉾様は父上の危難を救はねばならぬ大切な此場合妾などが此んな所へ参りまして、ゴテゴテと御邪魔を致す場合では御座いませぬが、つい恋の意地から貴女様の事が気にかかり、妬ましくなり、最前の様な恥しい事をお目にかけました。どうぞ御宥し下さいませ。妾は月鉾に後手に縛められて居ります。どうぞ此縛をお解き下さいますまいか』
マリヤス姫『あゝさうで御座いましたか、夜分の事とて、……つい、気が付きませなんだ』
と言ひ乍ら、テーリン姫の縛を解き、背を撫でさすり、労り助け抱き起し、
マリヤス姫『サア妾も是れより泰嶺へ参りませう。泰安城には大変な事が突発致し、何時妾に追手がかかるかも計られませぬ。何事も運を神様に任せ、泰嶺の聖地に於て神様に奉仕し、惟神の御摂理に任す考へで御座います。又日楯様が夫婦連にてお越し遊ばしたのも、これには特別の事情が御座いますから、聖地へ帰つた上御得心の行く様に御話し申上げませう。サア斯様な処にグヅグヅ致して居りましては険呑千万、早く帰りませう』
とテーリン姫の手を取り、互に打解けて、アーリス山を降り、日月潭の湖辺を辿りて、遂に玉藻山の聖地に参拝し、漸くにして泰嶺の聖地に帰り着いた。これよりテーリン姫の疑は全く晴れ、姉妹の如く相親しみ、神業に奉仕し、月鉾の帰り来るを待ち居たりける。
(大正一一・八・八 旧六・一六 松村真澄録)
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