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文献名1霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻
文献名2第3篇 峠の達引よみ(新仮名遣い)とうげのたてひき
文献名3第22章 蛙の口〔963〕よみ(新仮名遣い)かわずのくち
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-09-20 13:43:27
あらすじ
矢方の村の大蛇の三公の館では、三公が子分たちの慰労会を開いていた。高公は、三公がお愛を殺し、二人の男を生き埋めにしたことを気分悪く思い、そのことを愚痴にしてやけ酒を飲んでいる。

徳公は、実は親分はお愛を殺しておらず、生きたまま息ができるようにして埋めておいて、自分に掘り出させて恩義を感じさせる計略なのだ、と酒の席で明かしてしまう。一方で六公たちを遣わして虎公を亡き者にし、お愛の心を靡かせようというのである。

与三公は、徳公にお愛を掘り出しに行けと催促するが、徳公は酒を飲みすぎて管を巻いている。そこへ六公の一団が帰ってきた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年09月14日(旧07月23日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年12月10日 愛善世界社版278頁 八幡書店版第6輯 462頁 修補版 校定版288頁 普及版120頁 初版 ページ備考
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本文  矢方の村の大蛇の三公が館には、何となく物騒がしき声が聞えて居る。夜前の一件に就て、三公は兄弟分や乾児に対し慰労会を催して居たのであつた。数多の乾児は久し振りにうまい酒に酔うて、口々に四辺構はず喋り出した。
甲『オイ、皆の奴、何と甘え酒で無えか。俺ア今日で丁度二ケ月ばかり斯んな甘え酒を飲んだ事はないわ。時々斯んな事があれば宜えけどな』
乙『こりや、徳、貴様はこんな水臭い酒を甘えと吐しやがつたが、余程下司口だな。こんな酒を飲む位なら泥水でも飲んだ方が、何程気持がいいか分りやしないよ』
 徳は泣声になつて、
徳公『こりや、高公、貴様は何と云ふ勿体無え事を言ふのだ。それ程悪い酒なら何故ガブガブと飲んだのだい』
高公『あまり此処の親分が無茶な事をしやがるので癪に触つて仕方がないから、焼糞になつて一杯飲んでやつたのだ。酒なつと飲まねばお愛の幽霊が何時出て来るか分つたものぢやないわ、小気味が悪い。それだから味なくもない嫌ひ……でも無い酒を辛抱して飲んでやるのだ』
徳公『勿体ない事を言ふな。こんな結構な酒があるものか。貴様今幽霊が出ると吐しやがつたが、生た人間は幽霊になつて堪るかい』
高公『それだといつて、お愛を現在殺したぢやないか。さうして二人の男をフン縛つて生埋にしたぢやないか。どんな強い男だつて土中に埋められ、あんな重たい石を載せられちや往生せずには居られないわ。屹度今夜あたり貴様の素首を引つこ抜きに来るから用心せいよ』
徳公『馬鹿云ふな。そこには底があり蓋もあるのだ。お愛の奴ア決して死んでは居やせぬ。彼奴ずるいから死真似をして居やがつたのだ。親分がちやんと其呼吸を計つて死んだにして了つたのだ。外の二人の奴だつて其通り疵一つした奴はない、兼公の野郎でも只縛りあげた丈の事だ。彼奴等三人を一所にまつべて置いたのは互の温味を保たす為めだ。そして頭の処に細い穴をあけ、息の通ふ様にしてあるのだよ。そこは与三公哥兄が呑み込んで、如才なくしてあるのだよ。お前は端くれの人足だからそこ迄は分るめえ』
高公『それでも、あれ丈け重たい石を沢山載せられちや、身体も何も潰げて了ふぢやないか』
徳公『貴様は馬鹿だな。あれ丈け親分が恋慕して居るお愛を、さうムザムザと殺しさうな筈があるかい。之には深い計略があるのだ。あの沢山に積んだ岩の下には、三人は決して埋つてあるのぢやない。うまく其上が外してあるのだ』
高公『何で又そんな妙な事をしたのだい』
徳公『馬鹿だなア、貴様等には親分の神謀鬼策は分るものぢやない。秘密を守るなら云つて聞かせてやらう。如何だ他言はせぬか』
高公『決して決して誰にも云はないから、俺に其訳を聞かして呉れえ』
徳公『やあ何奴も此奴も酒に喰ひ酔うて寝りよつたな。与三公の哥兄迄ズブ六に酔うて居らあ。そんなら云つてやらう。抑も其理由は斯うだ。此徳公はな、遠国から来たものだからまだ虎公やお愛に顔を見られて居らないのだ。それを幸に親分から頼まれたのだ。之から旅人の装束をして道に迷うた様な顔をし、昨夕の喧嘩場へやつて行つて土をクワイクワイと掘上げ、三人の奴を引張り出し先ず一番にお愛の縛を解き親切さうに水でも飲まし、懐中から薬でも出して与へてやり……何処のお方か知りませぬが危い事で御座いました、ネ、わつちや旅の者でげえすが、夜前此辺に大喧嘩があつたと聞き、一寸道寄りをして探して見た処、御存じの通り此処に此様な大きな石が積んである。見れば土は新しい、何うやら昨夜の喧嘩で何人かが殺され、埋けられて居るのであらう。あゝ気の毒な、何とかして助けてやらうと思ひやして、之御覧なされ、此通り大きな石を此処に積み上げ土を掻き分けて見れば、貴方等三人の御遭難、此奴ア一つ助けねばなるまいと、秘蔵の薬を与へ水を飲ませた処が、お前は此通り生き還つて、何と斯んな嬉しい事は御座いませぬ……と一つかち込むのだ。さうするとお愛の奴、優しい目をしやがつて……妾は虎公と云ふ男の女房で御座いますが、大蛇の三公と云ふ大親分の為めに斯んな目に会はされ、土の中に埋められて死んで了ふ処で御座いましたが、お前のお蔭で可惜生命を助かり斯んな嬉しい事は御座いませぬ、生命の親の旅人様、何卒妾を何時迄も可愛がつて下さいませ、虎公が何程偉いと云つても、女房がこれ丈け偉い目に合うて居るのに、夢にも御存じないとはあまり情ない男だ。何卒旅の御方、妾の力になつて下さい…ヘン…なんて吐しやがるのだ。さアそうなれば占めたものだよ。そこで俺が……これこれお女中、お礼は却て痛み入る。世の中は相見互だ……とかますのだ。さうするとお愛の奴は俺の男前と気前にぞつこん惚込みやがつて、俺が右へ向けと云へばハイと言つて右を向き、左へ向けと云へばハイと云つて左へ向くなり、死ねと云へばハイと云つて死ぬし、肩を打てと云へば肩を打つし、随分もてたものだよ。オホヽヽヽ』
高公『オイ徳、涎が落ちるぞ。見つとも無い。捕ぬ狸の皮算用しても駄目だぞ』
徳公『何、大丈夫だ。チヤーンと確信があるのだから滅多に外れつこは無いわ』
高公『さうして其お愛を手に入て貴様の者にするのか。大親分に返上するのだらうな』
徳公『そこは、うまく徳公の弁舌でチヨロまかし、或山奥へ手に手を取つて忍び入り、一寸した小屋を結んで……お前と妾と添ふならば、竹の柱に萱の屋根、虎狼の棲処でも決して厭ひはせぬ程に、コレ徳さま、何卒妾を何れの山奥なりと連れて往つて下さい。虎公や大蛇の三公にでも見付けられたら大変だから……と向方から急きたてられるのだ。そこで態と此徳公は落ちつき払ひ……これお愛、天下無双の英雄豪傑、此徳公が居る間は虎公の千匹や万匹、又大蛇の三公がどんなに不足相に云つて来ても大丈夫だ……と太う出てやるのだ。さうするとお愛の奴……否々何程お前が強うても、欺すに手なしと云ふ事が御座んす。さあ一時も早く妾を奥山へ連れていつて下さい……とお出で遊ばすにチヤンと定つてるのだ。そこで此徳公が……エー仕方がない、女子と小人は養ひ難しだ、然しお前がそれ程怖がるのなら俺が一つ山奥迄送つてやらう。然し決して夫婦にならう等との野心を起しちや可けないぞ……と高尚に出るのだ。さうするとお愛の奴、益々感心しやがつて、終ひの果てにや本気になつて惚れて来やがるのだ。その時甘い顔しちや可けない。ピンと一つ肱鉄砲を喰ますのだ。……思ひきつて……さうするとお愛の奴益々恋慕心が募つて来る。弾かれた女には益々男が熱心になる様に、女の意地を立てておかねばならないと妙な処に力を入れて、俺を手込みにしようとするのだ。そこで俺はツンと澄ました顔して……これこれ女の身としてあられもない事をなさいますな。みつともない……と喰はすのだ。お愛の奴益々カツカとなり…(サワリ)ほんにまあ女の心と男とは、夫ほど迄に違ふものかいな。生命の親と思ひつめ、ホンに気の利いた男ぢやと、思ひ初めたが病みつきで、恋の虜となりました。もう斯うなる上は徳公さま、焚いて喰はうと煎つて炙つて喰はうとも、貴方のお好きに紫壇竿、一筋縄で行かぬ此女、何卒三筋の糸で引き殺して下しやんせ、拝むわいなと手を合し、口説き嘆けば徳公も、轟く胸をジツと抑へ、お前の心は察すれども、此徳公にも国許には可愛い女房がある。如何して二度目の妻が持たれようか。そこ放しや……プリンと背中を向けるのだ。さうするとお愛の奴……そんならもう仕方がない、妾は之で死にます……と九寸五分をスラリと引き抜き、アハヤ喉につき立てむとする。徳公慌しく引き止め……やれ待てお愛、お前の心底見届けた。此世は愚か七生迄も誠の夫婦……と喰すと宜いのだが、其処はそれ、大蛇の三公と云ふ大親分が後に控へて居るのだから、お愛を山奥の一つ家に連れ行き……これお愛どの、一寸此徳公は買物にいつて来るから、淋しからうが留守をして下さい。直に帰つて来るから……と喰まして置いてフイと其処を外すのだ。さうすると大蛇の親分が、与三公、勘公等の面々を引き連れ、其小屋を十重二十重に取り巻かせ置き、自分が否応云はさず責め立てるのだ。何程嫌がつた女でも、一辺ウンと云はすれば、もう此方の者だ。チヤンと斯んな段取が出来て居るのだから驚いたものだらう。俺の責任も重且大なりと云ふべしだ』
と云ひ乍ら、一升徳利の口から又もや喇叭飲みを初める。与三公は此場に行歩蹣跚として現はれ来り、
与三『やあ何奴も此奴も意地汚く酒に酔ひ潰れて寝て居やがるな。何だ、そこら中に八百屋を開店しやがつて臭くて居られたものぢやない。ヤアお前は徳公じやないか』
徳公『へい、徳利で御座います。トクとお改め下さいませ。徳公の徳利飲みでげえすから何卒トク心の行くとこ迄飲まして下さい。お愛に又トクりと納トクをさせねばなりませぬ。トク命全権公使だからトクに大目に見て下さいませ』
与三『そんな事でトク別の使命が勤まると思ふか。もう時刻だ。トクトク行かねばなるまいぞ。貴様は酒癖が悪いからトクりと心中するかも知れやしない。トクりと考へて見よ』
徳公『八釜しう云ふない。俺だけはトク別待遇をやつて呉れ。斯んな役に行くのは俺ら一寸気が進まないのではないけれどな、本当の事を言へば哥兄、お前がトク派される処だつたが、生憎トク(禿)頭病の様な頭をして居るから、お愛の奴によく顔を知られて居るなり、又其様な土瓶章魚禿ではお愛だつて釣れはしないし、如何しても此徳公ぢやなくちや勤まらないのだから、トク別大切にするのだよ』
与三『エヽ俺の頭の批評までしやがつて仕方の無え奴だ。貴様は如何やら秘密を此高公に打あけた様だ。よもやそんな事あ致しちや居るまいなア』
徳公『高が知れた高公位に言つた処で、ナニそれが邪魔になりますけエ。高を括つて云つたのだからそう声高にケンケン云つて下さるな。相互に迷惑だからエヽガラガラガラ、エ、酒の奴、あと戻りをしやがる。怪しからぬ奴だ、ウンウンウン』
与三『いい加減に準備をして行かないと遅くなるぞ』
徳公『八釜しう云ふない。死んだつて何だい。お愛が俺の女房になると云ふではなし、折角骨を折つて成功さした処が鹿猪つきて猟狗煮らると云ふ様な目に会ふかも知れないからな。まあ酒の飲まれる時に飲んだ方が余程利口だなア。自分の思ふ様にするのが人間と生れた身の一生の徳利だ。オツハツヽヽヽ』
 斯く管を巻く処へ門前俄に騒がしき人の足音……其処へ勘公がやつて来て、
勘公『オイ皆の奴、宜い加減に起きぬか。今六公が帰つて来たから席をあけねばなるまい』
 此声に一同はムクムクと頭を上げ、ヒヨロヒヨロし乍ら裏の田圃へ駆出し、風に酒の酔を醒まして居る。
(大正一一・九・一四 旧七・二三 北村隆光録)
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