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文献名1霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻
文献名2第2篇 青垣山内
文献名3第10章 矢田の滝〔1022〕
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ葦野山峠の西坂で牛糞をつかまされ、自暴自棄になって二三日は祝詞も修行も注視していた。三日目の晩にまたもや臍下丹田から霊が喉元に上がってきて叫び始めた。
大霜天狗と名乗る神霊は、葦野山峠の失敗を触れて回ってやろうか、とからかい始めた。喜楽は、神霊は大霜天狗ではなく、やっぱり松岡様ではないかと詰め寄ると、神霊は実は松岡だと明かして大笑いした。
喜楽の文句はまったく聞く耳をもたず、松岡神は喜楽の身体を使って夜十二時ごろに自宅を立ち出で、亀岡の産土・矢田神社の奥の滝に水行を命じた。そして一週間の滝行を行うことになった。
七日目ににわかに恐ろしい思いに捉われ、怪しいものを見たが、一声腹の中から『突進』という声を聴くと落ち着くことができた。滝への途上、稲利下げの婆に会った。
滝に来てみると、亀岡旅籠町の外志ハルという神下しの女が行を行っており、喜楽が審神を行った。外志ハルが正気に戻ると、お互いに神様の話をしながら旅籠町に回り、夫の筆吉にも面会して、道のために協力し合うことを約束して穴太に帰ってきた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年10月09日(旧08月19日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所
OBC rm3710
本文の文字数5517
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本文  葦野山峠の西坂でマンマと牛糞をつかまされ、阿呆らしくて堪らず、稍自暴自棄的になつて、二三日の間朝寝をする、宵寝もする、天津祝詞の奏上や、鎮魂帰神の修業は中止してゐた。そうすると三日目の晩、又もや臍下丹田から例のグルグルが喉元へ舞ひ上り、
『アーアーアー』
と大きな声を連発し、暫くすると、
『阿呆阿呆阿呆!』
と呶鳴りつける。喜楽は思うた……本当に天狗の云ふ通り、阿呆も阿呆、図なしの阿呆だ。併し乍ら誰にも云はずに今まで隠してゐるのだから、大霜天狗無頓着にあんな声で、葦野山峠の失敗事件を喋りでもせうものなら、それこそ親兄弟、近所株内の奴に馬鹿にしられ、神さまの祭壇も取除かれて了うに違ひない、どうぞ大きな声を出してくれねばよいがなア……と心の中に念じてゐた。
大霜『コレ肉体、スツパ抜かうか、チツと貴様も困るだろ。どうせうかな』
とからかひ始める。
喜楽『どうなつと勝手にしなさい。元の土百姓や牧畜業者になつて了ひます。却て素破ぬいた方が諦めがついて宜しい』
大霜『そう落胆するものぢやない。まだお前は十分に身魂が研けて居ないから、モウ一度神が連れて行くから、水行をするのだ。小幡川原の水は体にしみ込んで垢がとれぬから駄目だ。今度此方がよい所へ連れて行つてやるから、其用意をせい。草鞋や脚絆をチヤンと拵へて、今晩の十二時に此処を立つ事にするのだ』
喜楽『又ウソを言ふのぢやありませぬか?』
大霜『嘘も糞もあつたものかい。モウ斯うなつた以上は何事があらうと神に任し、糞度胸を据ゑてかからねば何事も成功しないぞ。あの位の事でフン慨しとるやうな事ぢや駄目だ』
喜楽『モシモシ天狗さま、お前さまは大霜だと云つて居られるが、違ひませう。どうも云ひぶりが松岡さまらしい』
大霜『松岡でも大霜でも構はぬぢやないか、お前の魂さへ研けたらいいのぢや。本当の守護神が分らぬやうなこつては神柱も駄目だ。本当は俺を誰だと思うてるか』
喜楽『松岡さまにきまつてゐますワイ』
松岡『よう当てた、本当は松岡だ。奥山へ金掘りにやつたのも、牛の糞を掴ましてやつたのも皆此松岡だよ、アハヽヽヽ、ウフヽヽヽ』
喜楽『馬鹿にしなさるな』
松岡『馬鹿の卒業生を馬鹿にせうと思つても、する余地がないぢやないか、エヘヽヽヽ。これからサア身魂の洗濯に連れて行かう。草鞋や脚絆がなければ下駄ばきでいいワ、サア行かう』
と腹の中からどなると共に、喜楽の体は器械的に立上がり、庭の駒下駄をはいたまま、夜の十二時頃に自宅を立出で、小幡川を渡り、スタスタと穴太を東に離れ、重利の車清の側の橋を越え、藪をぬけ、一町許り進むと、自分の足は土中から生えた様にピタリと止まつて了つた。そこには田園に施す肥料をたくはへる糞壺があつて、異様の臭気が鼻をついてゐる。腹の中から塊がクルクルと又もや喉元へつきつけ、
松岡『オイ肉体、真裸になつて此糞壺へ這入り、身魂の洗濯を致せ!』
と呶鳴り出した。体は自然に糞壺の方へ進んで行く。鼻が曲るほど臭うてたまらぬ。
喜楽『コレ松岡さま、こんな所へ這入つたら尚汚れるぢやありませぬか。綺麗な水で洗濯してやらうと言ひ乍ら、糞壺へ這入れとはチツと間違ひぢや厶いませぬか』
松岡『錆た刀を砥ぐ時も、生灰をつけたり、泥をつけたりする様に、お前のやうな製糞器は糞で研いてやるのが一番だ。糞より汚い身魂を持つてゐ乍ら、糞が汚いとは何を吐すのだ』
と大声に呶鳴り立てた。喜楽はビツクリして、
喜楽『ハイ、そんなら裸になつて這入ります。どうぞ大きな声を出さぬやうにして下さい』
と帯を解かうとする。
松岡『オイ待て待て、それさへ分ればモウよい。お前の体は機関だ、生宮だ。そんな所へ這入つて貰ふと俺も一寸困るのだ、アハヽヽヽ』
喜楽『私は元からの土ン百姓で、糞位は何とも思つて居りませぬ。糞がなければ五穀野菜が育ちませぬから、一遍這入つて見ませうか』
松岡『這入るなら勝手に這入れ。其代り此松岡は只今限り守護致さぬからそう思へ。あとはもぬけのから、狸の容物にでもなるがよからう』
 斯う言はれると何となしに未練が湧いて来る。松岡神が人の体へ這入つて、ウソ計り言ひ何遍も失敗をさせよる仕方のない奴、こんな邪神は一時も早く退散させたいと思ふ事は度々であつたが、サテ之れ限り立退くと云はれると、何だか惜い様な気がして来るのが不思議である。
喜楽『そんなら、あなたの仰に従ひます。サア是から美しい水の所へ連れて行つて下さい』
松岡『コレから一里許り東へ行くと、矢田の滝というて東向きに落ちてゐる、形計りの滝がある。そこで水行をするのだ、サア行ケ!』
と号令し乍ら、喜楽の肉体を自由自在に操つて、足早に硫黄谷を越え、大池の畔を伝うて、亀岡の産土矢田神社の奥の谷に導き水行を命じた。そして一週間の間毎夜此滝に通ふ事を肉体に厳命した。喜楽はそれより毎夜々々淋しい山道や池の畔や墓場を越え矢田の滝へ通ふ事となつた。
 矢田の滝へ通ひ始めてから七日目、今晩が行の上りと云ふ時になつて、なんとなく心の底に恐怖心が湧いて来た。奥の間にかけてあつた大身鎗をひつさげ、十二時頃自宅を立つて、穴太の村外れまで進んで来ると、自分の持つて居る鎗が心の勢か勝手に動き出し、リンリンと唸り声がして来る。鎗の穂先は夜でハツキリは見えぬが、自然に曲り鎌首を立ててゐる様な気がしてならぬ。黒い古ぼけた鎗を握つた積りでゐたのがいつの間にか太い蛇を握つてる様な気がして来たので、麦畑の中へ矢庭に放り込み、車清の方へ向つて進みかけた。此鎗を棄ててから余程恐怖心が薄らいで来た。
 追々進んで硫黄谷の大池の側へ来て見ると、周囲一里もあると云はれてゐる山間の大池の中に二三丈計りあらうと思はる背の高い、それに恰好した太さの、赤い丸顔の男が深い池水に腰あたりまでつけて、バサリバサリと自分の方を向いて歩んで来る様に見える。髪の毛は縮み上る、胸は動悸が高くなる。一心不乱に『惟神霊幸倍坐世』を称へ乍ら池端を東へ東へと走りゆく。此怪物はどうなつたか、後は分らなかつた。前方に当つて青い火が、いつも灯つてゐない所に見える。進みもならず退きもならず暫く途中に立つて思案をしてゐると体がオゾオゾと慄ひ出す、益々怖くなつて来る、四方八方から厭らしい化物に襲撃されるやうな気がしてならない。あゝこんな時に松岡さんが憑つてくれるといいのにと思ひ、
『松岡天狗さま、松岡さま』
と大きな声で叫んでみた。自分乍ら声は大きうても、其の声に波が打ち、ふるひが籠つてゐた。かうなると自分の声まで厭らしくなつて来る。怖いと思ひかけたら、如何にも斯うにも仕方のないものである。……マア此処で暫く静坐して公平な判断をつけねばなるまい……と道の傍の芝生の上に腰を下し、姿勢を正しうして両手を組んで見た。されど自分の体も腰も手も足も、骨なしの蛸のやうになつて、グラグラして一寸も安定を保つ事が出来なかつた。たつた一声腹の中から、
『突進!』
といふ声が聞えて来た。其声を聞くと共に、俄に糞落着きに落着く事が出来た。そして心の中で……エー之れが霊学の修業だ、何れ霊界の事を研究するのだから、現界と同じやうな事では研究の価値がない、これが却て神さまの御守護かも知れぬ、今日は一週間目の修業の上りだ、高熊山の修業中にいろいろと霊界の事を見せて貰ひ、教へても貰うて居る。随分其時も厭らしい事や恐ろしい事があつた、これ位な事は霊界探険当時の事を思へば、ホンの門口だ……と直日に省み漸く腰を上げて、青い火の方へ進んで行つた。怖々火の側へ寄つて見れば青く塗つた硝子の行灯に火が点してある。途のわきがすぐ墓になつてゐて今日埋けたばかりの新墓に白い墓標が立つてゐる。気をおちつけて見れば、亀岡の稲荷下げをして居つた婆アで、御嶽教の教導職を勤めて居た六十婆アが死んだので、此処に葬つたのだと云ふ事が白い墓標の文字で明かになつた。ヤツと安心して漸く矢田神社の境内にさしかかり、社前の水で体を清め、御社の前で天津祝詞を奏上し、瞑目静坐などして夜の明けるのを待つてゐた。最早これから奥へ夜中に行く丈の勇気が臆病風に誘はれて無くなつてゐたからである。
 夜はホノボノと明けて来た。そこらの様子が何となく昼らしくなつたので俄に元気を出し、細谷川を伝うて、一週間歩き馴れた谷路を登つて行く。併し実際は夜が明けてゐるのではなかつたと見え、再びそこらが薄暗くなつて来た。空を包んでゐた雲がうすらぎ、東の空から月が昇つたのが薄雲を通して光つたからであつた。二三町許り行つた所に、五十五六の骨と皮とになつた、痩た可なり背の高い婆アが、一方の手を前に出したり後へ引いたり、切りに樵夫が前挽をひくやうな事をやつてゐる。……ハテ怪体な奴が出やがつた。夜が明けたと思へば暗くなつて来る。そこへ川に臨んで婆アが妙な手つきをして体を揺つて居る。此奴ア、ヒヨツとしたら稲荷山の峰つづきだから、奴狐がだましてゐるのかも知れぬ。心よわくては駄目だ……と俄に空元気を出し、婆アの近くによつて、一生懸命の声で、
『コラツ!』
と呶鳴つて見た。婆アは此声に驚いて、折角発動してゐた手をピタリと止め、腰を屈めて、
婆『ハーイ、どなたか知りませぬが、何か御無礼な事を致しましたかな。妾は樽幸の稲荷さまに信心して居りまして、御台さまから神うつりの伝授を受け、今日で三年許り毎晩此処へ修業に来て居ります。おかげで右の手丈此通り御手うつりが出来出しました。モウ三年すれば又左の手に御手うつりがあり、それから胴うつり、頭にうつり、御口が切れるのが、マアマアザツと之から十年の修業で御座います。お前さまは此頃評判の高い、穴太の天狗さまぢや御座いませぬか』
喜楽『お婆サン、そんな年寄りがこれから十年も修行して居つたら、口の切れるのと死ぬのと一時になるぢやないか。モツと早う口の切れるやうにして上げようか。私が修業さしたら、一週間にはキツと口を切つて上げる』
婆『ハヽヽヽヽさうかが易く神様が憑つたり、口が切れるやうな事なら、此婆もこんな永い修行は致しませぬワイナ。早う口の切れるやうな神は碌なものぢやありませぬ。どうで狐か狸でせう』
と自分が豆狸にうつられて居乍ら、狐狸をくさしてゐる其可笑しさ。肥持ちが糞の臭を知らぬのと同じやうなものだなアと思ひ乍ら、此場を立去らうとすると、婆アサンは又右の手を樵夫が木をひくやうに動かせ乍ら、腰をキヨクン キヨクンと揺り動かし、動かぬ方の手をニユツと前に出し、
婆『コレもし、穴太の天狗さま、どうで御世話になりますが、一遍樽幸の稲荷さまに伺うた上頼みますワ。此間西町の御台さまが、樽幸の稲荷さまの弟子で居乍ら、余部の稲荷さまの方へ肩替しやはつたら、其罰で死なはりました。昨日葬式がありました。神さまの御機嫌を損ずると恐ろしいから、とつくり樽幸の稲荷さまに伺うた上御世話になりますワ』
喜楽『樽幸の稲荷さまはキツと反対するにきまつてゐる。此方は天狗さま、そちらは黒サンだからなア』
婆『コレコレ、何といふ勿体ない事を仰有る。あの神さまは正一位天狐御剣大明神さまだ。一の峰に御守護遊ばすお山一の御守護神さま。勿体ない、黒サンぢやなどと、狸にして了うとは、罰が当りますぞえ。そんな御方に御世話にならうものなら、どんな事が起るか知れませぬ。モウ是ぎりお前さまも妾の事を忘れて下さい、妾も忘れます。妙な因縁の綱がからまると互に迷惑しますからなア。六根清浄六根清浄南無妙法蓮華経……』
と一生懸命に唱へ始めた。喜楽はここを見捨てて二町許り上手の東向きの滝へ行つて見ると、いつも余り太くない滝が一丈程落ちて居るのに、今日は又如何したものか、五六間こつちから滝を見ると、真白けの者が立つてゐる。朧月夜にすかし乍ら、滝壺の前まで近よつて見ると、二十五六の女が白衣をつけて髪をふり乱し、滝にかかつてゐる。喜楽は神憑りと見て取り、
喜楽『何神さまで御座いますか、お名を聞かして下さい』
とやつて見た。滝にかかつた白衣の女は両手を組んだまま、頭上高く差し上げ、背伸びをし、少しく反り返つて、
『力松大明神……』
と甲声で呶鳴つた。
喜楽『力松大明神とは何処の守護神ですか?』
女『稲荷山、奥村大明神の御眷族、力松大明神だ。此方を信仰致せば病気災難一切をのがらしてやるぞよ。其方は穴太の天狗であらう。今日で一週間の修行の上りと聞いた故、此肉体の外志ハルを、此方が誘ひ出し、其方に面会させる為に待つて居つたのだ。随分途中で怖かつただらうのう』
喜楽『分りました、どうぞ御引取を願ひます』
女『引取れと申さいでも、此力松大明神はそちの心をよく知つとるから引取るぞよ。ウンウン……』
と云つたぎり、亀岡旅籠町の外志ハルと云ふ神憑りは正気に帰つて了うた。
 さうかうする間に夜はカラリと明け渡つた。二人はいろいろと神様の話をし乍ら外志ハルの頼みに依つて、旅籠町に廻り、夫の筆吉といふに面会して、互に道の為に助け合ふ事を約し、穴太へ帰つて来た。
(大正一一・一〇・九 旧八・一九 松村真澄録)
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