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文献名1霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻
文献名2第4篇 愛縁義情よみ(新仮名遣い)あいえんぎじょう
文献名3第15章 温愛〔1166〕よみ(新仮名遣い)おんあい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-01-11 12:06:38
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年11月28日(旧10月10日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年7月25日 愛善世界社版239頁 八幡書店版第8輯 115頁 修補版 校定版248頁 普及版104頁 初版 ページ備考
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本文  治国別は儼然としてマツ公に向ひ、
『何処の何人の弟か知らぬが、まづまづ無事で目出たいなア。随分苦労をしたと見えて年の割りには窶れて居るぢやないか』
 マツ公は飛びつくやうにして膝をにじり寄せ、
『貴方は私の兄様、亀彦さまで厶いませう。ようマア無事で居て下さいました。嬉しう厶います』
と早くも涙をハラハラと垂らして居る。
治国別『ヨウ、これは近頃迷惑、この治国別は其方のやうな弟は持つた覚えがない。何かの間違ひではあるまいか』
マツ公『それはあまり胴欲のお言葉、よく此顔を御覧下さいませ』
治国別『ちつとも覚えがない』
タツ公『モシ亀彦様、否三五教の宣伝使様、私はマツ公の女房の弟、タツと申します。縦から見ても横から見ても瓜二つ、御兄弟に間違ひはありますまい。そんなにじらさずに早く名乗つて下さいませ。義兄も気を揉んで居ますから』
治国別『三五教の宣伝使玉国別の供を虜にし剰つさへ畏くも斎苑の館の大神様を攻め滅ぼさむと致す、バラモン教の悪神の手先となるやうな弟は持つた覚えがない……かく申す治国別の胸中は千万無量、推量致せよ。バラモン教の神司、否軍人』
マツ公『イヤ、兄様ではない治国別命様、軽率に兄弟呼はりを致しまして、誠に御無礼で厶いました。何卒お咎めなくお見直し聞き直しを願ひ上げます』
玉国別『イヤ治国別さま、決して御遠慮には及びませぬ。折角の御対面……』
と云はむとするを、治国別は玉国別の口元を押へるやうな手つきして、
『貴方の御親切は有難う厶いますが、是が如何して名乗られませうか。決して治国別は兄弟は持ちませぬ。マツ公とやら大神様の御前に三五の誠を現す気はないか』
マツ公『ハイ然らば是より私の真心を御覧に入れます。其上にて兄弟の名乗りをお願ひ申します』
と又もや泣き崩るる可憐らしさ。治国別は目を繁叩き、悲しさを耐へ黙然として居る。
タツ公『サア兄貴往かう、到底誠を表はさねば何程実の兄様だつて名乗つて下さる筈がない』
と涙声を絞りながら立ち上る。マツ公も立ち上り、
『宣伝使其他のお方々、暫時お別れ致します。明日はきつと此処でお目に懸りませう。此山口にはランチ将軍、片彦、久米彦初め鬼春別の大将が勢揃をして居りますれば、随分御用心なさいませ。今此処をお立ちなされては、如何に神力無双の宣伝使なればとて、剣呑で厶います。左様ならば』
と立ち別れ、両人は急坂を南へ下り行く。後見送つて治国別は涙を押隠し、

『焦がれたる人に相見し今日の身は
  昔にましていとも苦しき。

 走り往く人の姿を眺むれば
  知らず知らずに涙ぐまるる。

 過を改め直し大神の
  道にかへれよ二人往く人。

 秋の日の淋しさ吾に迫りけり
  思はぬ人を見るにつけても。

 懐しき恋しき人は曲津見の
  醜の司となり下りける。

 吾とても心は鬼にあらねども
  神の大道を外すよしなし。

 吾身魂如何なる罪を造りしか
  淋しさ身に沁む秋の山路。

 不意なくめぐり遭ひたる愛人は
  神の仇とぞ聞きし悲しさ』

玉国別『治国別神の御心思ひやり
  吾も思はず涙おとしぬ。

 やがて又花咲く春も来るらむ
  冬籠りして待つ人の身は。

 霜を踏み雪をかぶりて咲く花は
  香めでたき庭の白梅』

治国別『有難し玉国別の言の葉よ
  三月の木々の心地なしぬる。

 吾は今悲しきヂレンマにかかりけり
  誠と愛の枷に責められ』

道公『惟神神の心に任しませ
  やがて晴れゆく秋の大空』

万公『親となり子となり又も兄弟と
  生るも神の仕組なるらむ。

 さりながら生者必滅会者定離
  浮世の様を如何にとやせむ』

晴公『師の君の深き心を思ひやり
  晴の心も曇りけるかな』

五三公『師の君よ心安けく思召せ
  頼りまつ身の花や開かむ。

 清春の山に潜みし伊太公を
  伴ひ帰るマツ タツ二人。

 マツ タツの二人の友はやがて此処に
  笑を湛へて帰り来るらむ』

玉国別『最前マツ公の話に聞けば、此山道には鬼春別の軍勢が数多待ち伏せ居る様子、吾々は別に急ぐ必要も、かうなつてはありますまい。暫く敵軍の此山道を通過する迄待つ事に致しませうか』
治国別『それも一つの神策でせう。仮令幾万の敵軍ありとも神に任せた吾々、些しも驚きは致しませぬが、敵を四方に追ひ散らした処が、飯の上の蠅を追ふやうなもの、再び斎苑館へ攻め来るは必然でせう。どうしても心の底より帰順さすか、但は此難所を扼して其進路を遮り留るより外、名案もありますまい』
玉国別『私は祠の前で暫く眼痛の軽減する迄祈りませう。何卒貴方はもとの場所へお出なさつて英気を養ひ捲土重来の敵に備へて下さいませ』
治国別『左様ならば暫く御免を蒙りませう。サアサア万公、晴公、往かう』
と先に立つ。後には玉国別、道公の両人が残つて居る。五三公、純公も治国別に従つて森蔭に身を没した。晩秋の風は又もや烈しく吹いて来た。半毀れし祠はギクギクと怪しき声を立て、鳴き出した。木々の梢はヒウヒウと笛を吹く。バラバラバラと枯葉が落ちる。冷たき雨さへ混つて、無雑作に目の悪い玉国別の頭を打ち叩く。二人は手早く蓑を被り、笠を確と結びつけ、祠の後に雨と風とを辛うじて避ける事を得た。
 日は漸く西山に傾いて、塒定むる鳥の声彼方此方の谷間より喧しく聞え来る。薄衣の肌を冷やす風、時々降り来る村時雨、日の暮れると共に寂寥益々身に迫り来る。道公は玉国別の身体を後よりグツと抱いて体の暖を保つべく、吾身の寒さを忘れて労つて居る。発作的に出てくる頭の痛み、間歇的に出て来る眼の痛み、得も云はれぬ苦しみである。玉国別は私かに神に祈り、且つ身の罪を謝罪して居た。此時夕の谷間を圧して宣伝歌の声が聞えて来た。
『至仁至愛の大神の  大御心になりませる
 三五教の御教を  豊葦原の瑞穂国
 くまなく開き照らさむと  神素盞嗚大神の
 神言畏み出でませる  吾背の君の音彦は
 今や何処にましますか  斎苑の館の神殿に
 額きまつり吾夫の  功をたてさせ給へよと
 祈る折しも摩訶不思議  吾目にうつりし光景は
 河鹿峠に名も高き  懐谷に現れまして
 子猿の群に十重二十重  取り囲まれし其揚句
 二つの眼を失ひて  苦しみたまふ有様を
 窺ひまつりし吾心  何に譬へむすべもなし
 心を定め肝を練り  神の御前に額づきて
 大神勅を伺へば  皇大神の御言葉に
 斎苑の館の五十子姫  夫の難を救ふべく
 今子の姫を従へて  片時も早く出でませと
 詔らせ給ひし有難さ  天にも登る心地して
 心いそいそ河鹿山  渉りて此処まで来りけり
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましまして
 吾背の君の遭難を  救ひたまひて三五の
 神の依さしの神業を  完全に委曲に成し遂げる
 御稜威を与へ給へかし  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 神に仕へし吾夫の  二つの眼は失するとも
 如何でかひるみ給はむや  遠き山野を打ち渡り
 吾背の君の後追うて  其神業を詳細に
 補ひまつり五十子姫  今子の姫と諸共に
 此神業を果さねば  仮令百年かかるとも
 斎苑の館へ帰らじと  盟ひまつりし悲しさよ
 あゝ惟神々々  此急坂を吹きつける
 醜の嵐の一時も  早く静まり冬も過ぎ
 花咲く春の来るごと  吾背の君の眼病を
 開かせたまへ惟神  神の御前に願ぎまつる』
 斯く歌つて下り来るのは歌の文句に現はれた玉国別の妻五十子姫であつた。
『玉国別の妻神と  仕へたまひし五十子姫
 夫の危難を救はむと  神の御許し受けたまひ
 孱弱き女の身をもつて  荒風すさぶ荒野原
 漸く越えて河鹿山  淋しき山野を打ち渡り
 又もや吹き来る烈風に  髪梳り雨に濡れ
 木の根に躓き足破り  種々雑多と艱苦して
 尋ね来ますぞ雄々しけれ  今子の姫は今此処に
 吾師の君の後を追ひ  女ながらも皇神の
 道にさやれる曲津見を  厳の言霊打ち出して
 言向け和し月の国  四方にさやれる鬼大蛇
 醜神司を払はむと  岩の根木の根踏みさくみ
 足にまかして進み来る  あゝ惟神々々
 吾等一行の出で立ちを  憐れみたまひ逸早く
 吾師の君の御前に  進ませたまへ惟神
 神の御前に今子姫  誠心捧げ願ぎまつる
 獅子狼は猛るとも  如何に木枯強くとも
 河鹿峠は嶮しとも  などか恐れむ皇神の
 恵を受けし此体  勇み進んで何処までも
 往かねばおかぬ吾思ひ  遂げさせたまへ天地の
 御親とまします大御神  神素盞嗚大御神
 日の出の神や木の花の  姫の命の大前に
 頸根突き抜き願ぎまつる』
と歌つて祠の森の前に向つて下り来るのが今子姫であつた。五十子姫、今子姫は、玉国別が此祠の後に雨風を凌ぎ居るとは夢にも知らず、
五十子姫『アヽ今子さま、やうやう祠の森迄参りました。お蔭で風も静まり雨もやみましたから、此処で御祈念をして暫く足をやすめる事に致しませう。かうスツポリと日が暮れては坂道は剣呑で厶いますからなア』
今子姫『ハイさう致しませう。何だか床しい森で厶います。私はどうしても此森に玉国別さまが居られるやうな気がしてなりませぬわ』
五十子姫『貴女もさう思ひますか。私も何となく、なつかしい森だと思ひます。サア此処で一服致しませう』
 両人は拍手再拝、半破れし祠に向つて祈願を籠めて居る。
 此時玉国別は道公に抱かれ心地よく睡について居たがフト目を醒まし、
『ヤア道公、御苦労だつた。吾を抱へて居つて呉れたのだなア。お蔭で温かく睡らして貰つた。頭の痛みも癒つた。眼の痛みも忘れたやうな気がする。アヽ有り難い、此嬉しさは何時までも忘れはせぬぞ』
道公『先生、そりや何を仰有います。弟子に礼を言ふといふ事がありますか。私だつて貴方を抱へさして頂いたお蔭で、真に暖かく知らず識らず安眠致しました。これも先生の御余光で厶います。礼を言はれては困ります。私の方からお礼を申上げねばなりませぬ』

玉国別『惟神なれが情のあつ衣
  冷たき風を凌ぎけるかな』

道公『師の君の御身の温み身にうけて
  蘇へりけり吾の魂』

玉国別『旅に出て人の情を悟りけり
  神と道とに仕へゆく身は』

道公『毀れたる古宮なれど新しき
  恵の露を下したまひぬ』

玉国別『治国の別の命の神司
  夜風にさぞや苦しみたまはむ。

 吾宿に残せし妻は嘸やさぞ
  吾身の行く方尋ね居るらむ』

 五十子姫、今子姫は敏くも、祠の後より幽かに漏れ来る歌を聞きて、飛び上るばかり打ち悦び「吾夫はここにましませしか」と轟く胸をぢつと抑へ、

五十子姫『懐しき吾背の君の声聞きて
  冴え渡りけり胸の月影』

今子姫『懐しき吾師の君や皇神の
  影に包まれ安くいませる』

 道公は小声になり、
『モシ先生、あの歌をお聞きになりましたか、どうやら五十子姫様のやうで御座いますなア』
玉国別『ウン確に五十子姫だ。一人は今子姫に間違ひなからう』
道公『そんな事を仰有らずに、早くお会ひになつたらどうでせうか。五十子姫様は遥々此処迄お後を慕つてお出なさつたので厶います』
玉国別『ウン、会うてやり度いは山々だが、今会ふ事は出来ぬ。不愍ながら斎苑館へ追つ帰さねばなるまい』
五十子姫『モシ其処に居られますのは、吾夫玉国別様ぢや厶いませぬか。貴方は大変な怪我をなされましたと、神様に承はり心も心ならず、今子さまとお後を慕つて参りました。御容態は如何で厶いますか、どうぞお知らせ下さいませ』

玉国別『盲目たる心の眼開けけり
  右りの目をば猿にとられて』

五十子姫『情なや吾背の君の御眼
  剔り取りたる猿ぞ恨めし』

今子姫『兎も角も吾師の御君出でませよ
  五十子の姫の心あはれみて』

玉国別『妻の君に一目会ひたく欲すれど
  神の使命はおろそかならねば。

 玉国の別の司は妻神に
  助けられしと人に云はれむ。

 恥かしき吾眼をば若草の
  妻の命に如何でか会はさむ』

道公『モシ先生、そんな几帳面の事仰有らいでも宜しいぢやありませぬか。奥様がお出になつて居るのですから、誰が何と申しませう。そこが夫婦の情愛で厶いますから、サア祠の前迄参りませう』
玉国別『そんなら兎も角も出て見ようかなア』
と道公に手を曳かれ、杖を力に祠の前に出て行つた。五十子姫は十七夜の月の漸く山の端に上つた光に夫の顔を打ち眺め、
五十子姫『ヤア思つたよりも酷い掻き創、マアどうしたら宜しからうなア、今子姫さま』
今子姫『お気の毒な事で厶います、何と申し上げて宜しいやら、言の葉も出ませぬ。併し御心配なさいますな、キツト神様が癒して下さいませう』
五十子姫『モシ吾夫様、余り痛みは致しませぬか』
玉国別『ウン些ばかり痛むやうだ』
(大正一一・一一・二八 旧一〇・一〇 加藤明子録)
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