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文献名1霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻
文献名2第5篇 清松懐春よみ(新仮名遣い)せいしょうかいしゅん
文献名3第16章 鰌鍋〔1167〕よみ(新仮名遣い)どじょうなべ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-01-12 12:55:30
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年11月28日(旧10月10日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年7月25日 愛善世界社版259頁 八幡書店版第8輯 122頁 修補版 校定版269頁 普及版112頁 初版 ページ備考
OBC rm4316
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本文の文字数5033
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本文  清春山の峻坂を歌を歌ひ乍ら登つて行く二人の男があつた。これは祠の森を立出でて伊太公を奪ひ返さむと進み行くバラモン教のマツ公、タツ公の両人である。マツ公は急坂を上り乍ら歌ひ出した。
『大足別の神司  難攻不落と頼みたる
 清春山の岩窟も  三五教の宣伝使
 照国別の一行に  不在を守りしポーロさま
 其外一同悉く  生言霊に打ぬかれ
 忽ち心を翻し  善か悪かは知らねども
 三五教が結構だと  部下を引つれ河鹿山
 峠を越えて二三日  以前にここを登りしと
 聞いたる時の驚きは  寝耳に水のやうだつた
 ウントコドツコイ ハーハーハー  之から先はだんだんと
 道は峻しくなつてくる  タツ公さまよ気をつけよ
 家来の奴に言ひつけて  ポーロの帰つた脱殻へ
 三五教の伊太公を  高手や小手にふん縛り
 一先づ隠しておいたのを  コリヤ又えらいドツコイシヨ
 地異天変が勃発し  おれが捕へた人物を
 又もや俺がスタスタと  息の切れるよな急坂を
 登つてスツパリ取返し  治国別の兄いさまに
 お返し申さにや如何しても  水も洩らさぬ兄弟の
 ウントコ ドツコイ ドツコイシヨ  名乗を天晴れしてくれぬ
 バラモン教に這入るよな  俺は弟持たないと
 ダラ助ねぶつたやうな顔  ウントコドツコイ ヤツトコシヨ
 なかなか縦に首ふらぬ  お前の知つて居る通り
 一度兄貴に会ひたいと  バラモン教の神様に
 今日迄祈つた甲斐あつて  思ひもよらぬ谷間で
 ベツタリコーと出会はし  ヤレヤレ嬉しとドツコイシヨ
 喜んで見たのは水の泡  梃でも棒でも受けつけぬ
 三五教の宣伝使  昔の兄ぢやと思うたら
 コリヤ又エライ変りやう  さうぢやと言つてマツ公も
 折角兄貴に会ひ乍ら  此儘別れるこたいやだ
 畏くも素盞嗚の  神の館へ攻めよせる
 魔神の軍に従つて  やつて来たのもバラモンの
 神の御為身を尽し  其褒賞にウントコシヨ
 恋しき兄に如何かして  会はして貰はうと思うた故
 天地の間にドツコイシヨ  ますます坂がキツウなつた
 転んで怪我をしてくれな  モウ一人ともない両親に
 先立たれたる淋しさに  兄貴のことを思ひ出し
 ウラルの教の本山や  所々の広前を
 捜してみたれどウントコシヨ  ドツコイドツコイ ヤツトコセー
 影も形も見当らぬ  兄貴は竜宮の離れ島
 宣伝功を奏せずに  此方の国へ帰り来て
 大方死んだであらうかと  観念してはみたものの
 虫が知らすか如何しても  諦め切れぬ身の因果
 所もあらうに三五の  斎苑の館に居つたとは
 夢にも知らぬ驚きだ  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましまして  私が知らずに手にかけた
 三五教の伊太公を  家来の奴をチヨロまかし
 四の五のなしに取返し  お前と俺と両人が
 治国別の兄の前  ゾロリと出してやらなけりや
 兄貴の顔も立つまいし  俺も大きなドツコイシヨ
 面をばさげて帰れない  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましまして  此坂安く平けく
 登り下りをさしてたべ  タツ公お前も宣伝歌
 一つ歌つてドツコイシヨ  岩窟の前まで行かうかい
 ウントコドツコイ、ハーハーハー  息が苦しうて言霊の
 どうやら原料が切れさうだ  ハー惟神々々
 御霊幸はひましませよ。
ドレ一服して行かうかい。寒い風は吹いてをつても、坂の上り下りは随分汗の出るものだなア。ここに丁度よい岩がある、気は急いて仕方がないが、チツとは体と相談しなくちや体も大切だからなア、ハーハー フーフー』
と息をはづませつつ言ふ。
タツ公『俺も一つ此処で一休みして、元気を付け、三人の奴がゴテゴテ吐したら、蹴り倒し、陥穽へ突込んでおいて、伊太公一人を連れ帰ることにしようかなア』
と云ひ乍ら、西の空を眺め、脚下の谷川の白布を晒したやうな泡立つ激流が木々の梢の間からチラついてゐるのを打ち眺め、愉快げに汗を入れてゐる。
 タツ公は急坂を攀ぢ乍ら、細い声で千切れ千切れに歌ひ出した。ここからは一層道が嶮しくなり、団子石が狭い山路に無遠慮にころがつてる。
『清春山で第一の  難所と聞えし蜈蚣坂
 道の真中に団子石  遠慮会釈も知らぬ顔
 俺等を転倒そと待つてゐる  ホンに物騒な世の中だ
 チツとも油断は出来はせぬ  ウントコドツコイ人の手に
 持つてゐる物でも引つたくり  吾懐を肥やさむと
 何奴も此奴も企みゐる  悪魔ばかりの世の中だ
 折角口へ頬張つた  パンでも隙があつたなら
 食指を大に動かして  ヤツトコドツコイ剔り出し
 直様自分の口中へ  捻込む様なウントコシヨ
 悪逆無道の奴ばかり  バラモン教の神司
 大黒主こそ天地の  神の心に叶うたる
 誠のお方と思うた故  ウントコドツコイ、マツ公が
 入信したのを幸ひに  俺も一寸出来心
 這入つて見たが思うたより  中身の悪いバラモン教
 こんな事だと知つたなら  ヤツパリ元の百姓で
 暮して居つたがよかつたと  後悔してもハーハーハー
 後の祭で仕方ない  ジツと堪へて開運の
 時節を待ちし其内に  鬼春別に従ひて
 俺等の主人の片彦が  斎苑の館に堂々と
 攻め行く時の秘書役に  選まれたるを幸ひに
 一角今度は手柄して  頭を上げてみようかと
 思うた事も水の泡  河鹿峠の八合目
 三五教の言霊を  雨や霰と浴びせられ
 脆くも逃行く片彦や  久米彦さまの敗軍を
 眺めた時の馬鹿らしさ  俺等は愛想がつきた故
 モウこれきりで御免をば  ヤツトコドツコイ蒙らうと
 お前と密にドツコイシヨ  諜し合せてトボトボと
 皆に遅れて坂道を  下つてみればこれは又
 思ひもよらぬ三五の  神の司の御供たち
 祠の前に端坐して  何かは知らぬがブツブツと
 分らぬことを話してる  コリヤ堪らぬと思へ共
 逃げ路のない一筋の  此谷間が如何なろか
 俄に剽軽者となり  滑稽諧謔あり丈を
 尽して相手を笑はせつ  心を和げゐたる折
 フトした事からマツ公の  兄の亀彦ドツコイシヨ
 ヤツトコドツコイ ハーハーハー  三五教に使はれて
 世にもめでたき宣伝使  治国別となつてゐた
 それをば聞いた俺の胸  地異天変が一時に
 起りし如き心地した  これもヤツパリ神様の
 水も洩らさぬお仕組の  何かの端であらうかと
 轟く胸を撫で下ろし  ヤツと悲劇の幕を上げ
 玉国別の御供なる  伊太公さまを救ひ出し
 それを土産にマツ公の  兄弟名乗を遂げさせて
 俺もこれから三五の  信者にならうと決心し
 心イソイソやつて来た  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』
 話かはつて岩窟の中には伊太公を始め甲乙丙の三人が車座になつて、面白可笑しく打ち興じ乍ら、雑談をやつてゐる。ポーロの留守役が斎苑の館へ一同を引つれて出た跡は、生物と云つたら、蝙蝠がここ幸ひと吾物顔に出入を始めかけてゐた位であつた。そこへマツ公の家来に准ずべき三人の男、マツ公の命令で、伊太公を縛り上げ、此処迄送り来り監視の役を勤めてゐたのである。併し乍ら三人の男は伊太公の弁舌にチヨロまかされ、縛めの縄を解き、ポーロが残しおいた酒壺から残りの酒を汲み出し、チビリチビリと呑み乍ら、面白さうに他愛なく喋べつてゐる。
甲『エーもう今頃は先鋒隊の片彦、久米彦将軍は、首尾よく難関を突破し、斎苑の館へ着かれる時分だろ。斎苑の館に於ても随分心配だらうなア』
伊太公『アハヽヽヽ、斎苑の館には神変不思議の神術を備へてゐる生神ばかりだから、さう容易には行くまいぞ。俺だつて、事と品に依れば片彦将軍位は屁一つ放つたら、吹き飛ばすのは何でもないのだが、昨夜の様に谷底へ辷り落ち、向脛を打つて動けぬ所を括られちや、何程豪傑でもたまらないからのう』
甲『ソラさうだ。誰だつて寝鳥を締るやうな目に会はされちや叶ひつこはないワ。ナア伊太公さま、実ア俺も君に同情してゐるのだ。マツ公の………大将、厳しく牢獄へ放り込んでおけと言やがつたが、それでも俺はかうして君に同情をよせ、チツとも虐待はせないのだから、チツとは俺の心も買つてくれな困るよ』
伊太公『ソラさうだ、敵の中にも味方ありと云ふからなア、併しお前達は大黒主の神は本当に偉い神さまだと思つてゐるか』
甲『さうだなア、何を云つても化物の世の中だから、善悪正邪の、俺達に判断はつかないワ。………苔むす巌は変じて金殿玉楼となり、虎狼野干は化して卿相雲客となり、獅子は化して万乗の尊となり、王位の座に装ひを堆くし、袞竜の袖に薫香を散らす世の中だからなア。大黒主もキツと其選に洩れないだらうよ。昔は鬼雲彦とか云つたさうだから、どうせ立派な神様の系統ぢやあるまい。併し乍らこんな事はここ限りだ。ノウ乙丙、メツタに喋りやしようまいのう』
乙『そんな事喋らうものなら、俺の首がなくなるワイ、ナア丙、さうぢやないか』
丙『さうともさうとも、こんな話を聞いた以上は直様甲の首をチヨン切るか、後手にフン縛つて将軍様の前へ突き出すのが本当だ。それを看過しておくと云ふのはヤツパリ同罪だからなア。甲の云つたのは俺達が言うたやうなものだ。それだから言へと云つたつて言ふ気遣ひないワ。マア安心してくれ』
伊太公『併し大分酒がまはつたやうだが、モウいい加減に帰つたら如何だ。俺も実はお師匠さまが待つてゐるのだからなア』
甲『其奴ア一寸困る、何程親密なお前と俺との仲でも、お前を取逃がしたことが分れば、俺はサーツパリだからなア。どないでも大切にするから、一遍マツ公の大将が査べに来るまでここに斯うして居つてくれ。お前にや気の毒だけれど、俺だつてヤツパリ気の毒ぢやないか』
伊太公『さう言はれると俺も先生が大事だから帰りたいのだが、情誼に絆されて帰ることも出来なくなつた。何と人間と云ふものは気の弱いものだなア、自分乍ら自分がでに愛想がつきて来たわい』
 岩窟の入口からマツ公の声、
『オーイ、イル、居るかなア』
イル『イルは此処に居ります』
マツ『三五教の○○は如何したツ』
イル『オイ、伊太公、頼みぢや、一寸暫く牢へ這入つとつて呉れぬか、こんな所みられちやそれこそサツパリだ。あれあの通り大将が臨検に来よつた。オイ乙、丙早く伊太公さまを、一寸の間でいいから、牢へ入れといてくれ、俺や出口まで行つて何とか彼とか云つて隠す時間を保つてゐるから、手早くやつてくれよ』
と云ひ乍ら、入口へ駆け出し、
イル『これはこれはマツ公の御大将、御臨検御苦労で厶います。貴方の仰せの通り、後手に縛り、どこもかも、雁字搦みにして石牢へブチ込み、昨日から叩いて叩いて、キヤアキヤア言はして苦めてやりました。モウあゝしておけばメツタに逃げる気遣ひありませぬ。御安心下さいませ。サア、斎苑館の方の戦が大変忙がしいでせう、どうぞ門を這入らずにトツトとお越し下さいませ。片彦将軍様がお待兼で厶いませう』
マツ公『逃げないやうに、此岩窟の中で貴様たち番をして居れと言つたのだが、そんな打擲を為いとは言はないぞ。本当に左様な目にあはしたのか、エーン』
イル『イエイエ滅相もない、誰がそんな残酷なことを致しますものか』
マツ公『そんなら、如何しておいたのだ』
イル『ヘー、実の所は………エヽ一寸相手に致しました、随分面白い奴で厶いますよ』
マツ公『何、一寸相手にした? 随分手が利いてゐるだらうなア』
イル『ヘーヘー、中々好う利いてゐますワ、特に左が一番能う利きますよ。呑めよ騒げよ一寸先や暗よ………と申しましてなア、それはそれは面白いお相手で厶いますワ』
マツ公『ハヽヽヽヽさうすると、お酒でも出して大切に扱うてゐたのだなア』
イル『ヘー、マアざつと、そんなもので厶います』
マツ公『ウン、其奴ア偉いことをした。定めて満足して居るだらうなア』
イル『ヘイヘイ、十二分に満足して居ります。ソラ昨夜も賑やかう厶いましたよ。ステテコを踊つたり、舞をまうたり、賑かいこつて厶いました』
マツ公『ポーロの大将はどこに居るのだ。根つから人が居らぬやうぢやないか』
イル『ポーロですか、アリヤもう二三日前に斎苑の館へ行つて了ひましたよ』
マツ公『ナーニ、斎苑の館へ?………沢山連れて行つたのか』
イル『ヘーヘー何でも十五六人連れてゐたやうです、チヤンと遺書がして厶いました。而も三五教の信者になりましてなア』
マツ公『何は兎もあれ、伊太公さまに会はしてくれ。オイ、タツ公、サア這入らう』
と言ひ乍ら細き入口を潜つてイルの後に従ひ、奥へ奥へと進み入る。
(大正一一・一一・二八 旧一〇・一〇 松村真澄録)
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