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文献名1霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻
文献名2第2篇 兇党擡頭よみ(新仮名遣い)きょうとうたいとう
文献名3第7章 負傷負傷〔1301〕よみ(新仮名遣い)ふしょうぶしょう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-07-13 12:08:41
あらすじ
初稚姫は珍彦の館を訪れた。門口の戸をそっとひらいて名乗りをすると、楓姫が迎え入れた。初稚姫が神丹のことを知っていたので、驚いた楓姫が尋ねると、神丹は言霊別命のお告げによって初稚姫が作り、スマートに持たせて楓姫に渡したものであったと明かした。

そこへ、神殿に神丹のお礼に行っていた珍彦と静子が帰ってきた。楓姫からいきさつを聞いた珍彦と静子は感激して初稚姫に礼を述べた。初稚姫は、自分は神様のご命令にしたがって行動しただけと答えた。

珍彦、静子、楓姫は、祠の森にやってきた杢助の行いが悪いので、そのことを不審に思って初稚姫に尋ねるが、初稚姫は言葉をにごし、三人は何事かを悟ったようであった。そして一同はここの杢助が本物ではないという秘密を歌に詠んでそれとなく確認し合った。

すると門口に、男の声で若い女性に恋の思いを告げる歌を歌う者がある。珍彦と静子は、誰かこの館に楓姫や初稚姫を思う者がいると心配するが、楓姫と初稚姫は、自分たちは気を付けもするし神様のご守護もあるから心配いらないと安堵させる。

そこへイルとハルがあわただしく入ってきて、高姫が大杉の梢から転落して怪我をしたと報告した。初稚姫は高姫のところに急いだ。

高姫は、自分は日の出神の御守護があるから大丈夫と、杢助のところに先に行くように初稚姫に懇願した。初稚姫は高姫の介抱をハルとイルに頼んで杢助のところに向かった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月20日(旧12月4日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年12月7日 愛善世界社版86頁 八幡書店版第9輯 180頁 修補版 校定版90頁 普及版46頁 初版 ページ備考
OBC rm5007
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本文  初稚姫は静に歩を運びながら珍彦の館を訪ひ、門口の戸をそつと開き、
『御免なさいまし、私は初稚姫で厶います。ハルナの都へ宣伝使として参ります途中、大神様に参拝を致し、高姫様のお世話になりまして、此処に暫く足を留めて居るもので厶いますれば、何卒御入魂に願ひます』
と云つた。此声に驚いて楓姫は襖をそつと開いて現はれ来り、叮嚀に辞儀をしながら桐の火鉢を据ゑ、座蒲団を敷いて、
『貴女様が驍名高き初稚姫の宣伝使さまで厶いましたか。それはそれはようまアお訪ね下さいました。実の所は貴女様がお越し遊ばしたと云ふ事を、承はりまして、一度拝顔を得たいと願つて居りましたが、私の両親が申しますには「お前のやうな教育のない不作法者が、エンゼルのやうな方の前に出るものぢやない、御無礼になるから控へて居れ」と申しますので、つひ失礼を致して居りました。ようまア尊き御身をもつてお訪ね下さいましたねえ。サアどうぞ、此処へお上り下さいませ。お茶なりと汲まして頂きます』
『ハイ、御親切に有難う厶ります。何彼とお世話に預かりましてなア。時に珍彦様、静子様はどちらにお出でになりましたか、お顔が見えないやうで厶いますなア』
『ハイ、一寸両親は神様へお礼参りと云つて出て往きました。大方御神前に参つて居られませう』
『神丹のお礼を申しにお出でになつたのでせう』
 楓姫は此言葉に吃驚して、初稚姫の顔を見上げながら、少しく手を慄はせ、
『貴女はまア、どうしてそんな詳しい事を御存じで厶いますか』
『ハイ、御夫婦の危難を見るに見兼ねて、妾が言霊別命様のお告により、神丹と云ふ霊薬を造り、スマートに持たせて貴女のお手に渡した筈で厶いますから』
『ああ左様で厶いましたか。さうすると貴女様は、文珠菩薩様で厶いますか、ああ尊や有難やなア』
と感謝の涙に咽ぶ。いつの間にやらスマートは床の下を潜り、尾をふりながら此処に現はれて来た。
『これスマートや、うつかり出歩いちやいけませぬよ。何うして此処へお出でたの。お前は本当に霊獣だねえ、私の云ふ事をよく聞いて、御夫婦の危難をよく救うて下さつた。ほんとにスマートの名に背かぬ敏捷なものだねえ』
と讃美へて居る。スマートは嬉しさうに体や尾をふつて居る。楓は漸うに顔を上げ、スマートの姿を見て二度吃驚し、
『アー、昨夜文珠菩薩様がお連れ遊ばした犬は、これで厶いますわ、この犬の口から私の手へ神丹を三粒渡して呉れました。さうして文珠菩薩様は私に神丹を授けて直様犬を引き連れ、どこかへお帰りになつたと思へば夢は醒め、堅く握つて居た手を開いて見れば、あの神丹が厶いました。貴女は全く生神様、私がかうしてお側へおいて頂くのも恐れ多い事で厶います。さうして私が何うしても合点が参りませぬ事が一つ厶います、貴女は何故高姫さまのやうな余りよくないお方のお子さまになられましたのか』
 初稚姫はニツコと笑ひ、
『ハイ、いづれお分りになる事が厶いませう』
と云つたきり答へなかつた。楓は畳みかけて又問うた。
『貴女様は承はれば、杢助様のお娘子様で厶いますさうですねえ』
『ハイ左様で厶います。併し此処の杢助さまは……』
と云つたきり、口をつぐんで仕舞つた。楓は鋭敏の頭脳の持主であるから、早くも意中を悟つた。さうして小声になり、
『本当に何ですねえ、何も云はない方が無難でよろしいわね』
と以心伝心的に、目と目で話の交換を簡単に済まして了つた。
 かかる所へ珍彦夫婦は藜の杖をつきながら拝礼を終り、裏口から帰つて来た。其足音を早くも悟つて楓は裏口の戸をあけ、嬉しさうな声で、
『お父さま、お母さま、お帰りなさいませ。夜前の神様がお越し遊ばしたのよ。あの神丹を下さつた文珠菩薩様が』
と小声に囁いた。
珍彦『何、文珠菩薩様が此処へお出で遊ばしたの。それは直様お礼を申上げねばなるまい』
静子『余り悪魔が蔓るので、この聖場に居ながらも、夜の目も碌に眠られなかつた。ああ有難い、文珠菩薩様がお越し下さつたか』
と早くも涙声になつて居る。楓の後に従いて夫婦は座敷に上り、初稚姫の前に頭を下げ、歔欷泣きしながら、一言も発し得ず感謝の涙に暮れて居る。
『もし珍彦様、静子様、日々御神務御苦労さまで厶いますなア。妾は初稚姫の宣伝使で厶います。突然参りましてお邪魔を致して居ります。楓様が親切に仰有つて下さるので、つひ長居を致しました』
と、鈴のやうな柔しい声で挨拶をした。珍彦はハツと頭を上げ、初稚姫の霊気に満てる其容貌に感じ入り、
『貴女は文珠菩薩の御化身様、よくまアお助けに来て下さいました。これ静子、早く御礼を申さないか』
『初稚姫様、文珠菩薩様の御化身様、よくまアお助け下さいました。この御恩は決して忘れは致しませぬ』
とハンケチに霑んだ目を拭ふ。
 初稚姫は迷惑な顔をして細い手を左右に振りながら、
『イエイエお礼を云はれては済みませぬ。妾の立場が厶いませぬ。実は言霊別の神様が妾に御命令遊ばしたので厶いますよ。どうぞ大神様にお礼を申して下さい。妾は決して貴方等をお助けするやうな力は厶いませぬ』
『なんと御謙遜な貴女様、実に感じ入りました。時に初稚姫様は、昨日見えました杢助様の御令嬢と承はりましたが、左様で厶いますかなア』
『イエ……ハイ』
と煮え切らぬ返事をして居る。
 楓は両親に向ひ、
『お父さま、お母さま、そんな失礼な事を仰有つてはいけませぬよ。何、あんな方が姫様のお父さまであつて耐りませう。これには深い訳がおありなさるので厶いますよ。併しながら、これきりで何も仰有らないやうにして下さい。姫様の御迷惑になつては済みませぬからなア』
 珍彦夫婦は楓の言葉に打ち首肯き、
『ウンウン、成程々々、いや解りました。御苦労さまで厶います。どうぞ貴女の御神力で悪魔をお取り払ひ下さるやうにお願ひ申します』
と夫婦は手を合せ、又もや伏し拝むのであつた。
楓『余り斯様なお話は、誰が聞くか分りませぬから、ちつとハンナリと歌でも歌ひませうかねえ』
『さうですね、楓さま、一つ歌つて下さいな』
 楓は初稚姫の言葉をいなみ兼ね……お恥かしながら……と前置きして、

『人の心の底深く
 千尋の浪を分け往けば
 見る目たなびく岩蔭に
 醜き鰐の住めるかな』

 初稚姫は幾度も諾きながら、にやりと笑ひ、
『成程ねえ。よく出来ましたよ。妾も腰折を読まして頂きませうかねえ。ホホホ』
と笑ひながら、

『木の花一度に咲き満つる
 天津御国へ誘ひて
 常住不断の法楽を
 与へたまはる瑞御霊

誠にお恥かしい事で厶います。ホホホホ』
と梅花の露に綻ぶ如き小さい唇から笑を漏らして居る。
 此時、門口に男の声として、

『○○恋しや春の夜の
 闇に立ちたる面影は
 消えてあとなく吾声の
 只木霊する淋しさよ』

と歌つて通るものがあつた。又かはつた男の声で、

『楽しからずや恋の夢
 唯力なく君が手に
 抱かるる時吾涙
 ほほ笑む眼をぬらすかな
    ○
 神の光に包まるる
 尊き君を偲びつつ
 吾等の恋に幸あれと
 涙流して祈るかな
    ○
 悲しき夢のさめし時
 涙にしめる目をあげて
 独り寝る夜の淋しさを
 神の御前にかきくどく』

と歌ひながら珍彦館の門口を通り、神殿の方へ足音が消えて往く。楓は、
『何とまア誰か知りませぬが、調のよい歌ですこと、ねえ、初稚姫さま』
『ほんにさうですねえ。私なんかの歌から見れば、比べものになりませぬわ。このお館には風雅人が沢山居られるとみえますなア』
と斯く話す時、又もや聞ゆる歌の声、

『桜の花咲く春の野に
 君とまみゆる嬉しさよ
    ○
 祠の森にます神の
 守らせ給ふ恋の幸
    ○
 恋しき人を待ち暮らす
 男心の淋しさを
 知るや知らずや東雲の
 光はさしぬほのぼのと』

初稚『何とまア情緒の深い風流な歌ですなア』
珍彦『姫様は申すに及ばず、楓其方も気をつけなくてはなりますまい。きつと貴女方二人に心を寄せて居る男があるのでせうよ。何と云つても花の莟の姫様又楓姫、美しい花には害虫のつき纒ふものですからなア』
『仰の通りで厶います。妾もあの歌によつて、吾身辺に容易ならざる恋の魔の付纏うて居る事を悟りました。併しながら決して御心配下さいますな。左様な事に心を動かすやうな私では厶いませぬ。楓さま、貴女も大丈夫でせう』
『姫様のお言葉の通り、妾は何処までも注意を致して居ります。何分お父さまやお母さまが、若い娘をもつて居ると云うて非常に心配をして下さるのですもの、有難迷惑を感じます、ホホホホホ』
珍彦『それはさうだらうが、あの高姫さまだつて、あれだけ歳が寄つてから、コテコテと白粉をつけたり白髪を染めたり、日に何度も着物を着かへた揚句、杢助さまとやらを喰へこんで、夫婦気取で浮かれてゐらつしやるのですもの。若い娘をもつた親はどれだけ気が揉めるか知れたものぢやありませぬ。これ楓、姫様の様なお方なれば大磐石だが、お前はまだ神様の事がよく分らないのだから、両親が心配するのも無理ではありませぬよ、アハハハハハ』
『あのまアお父さまとしたことわいのう。それ程私に信用が置けませぬか。私だつて道晴別の妹、祠の森の神司珍彦の娘で厶います。必ず必ずお心を悩ませ下さいますな。きつと神様のお名を汚したり、親兄弟の御面を汚すやうなことは致しませぬ。ねえ姫様、貴女私の心をよく御存じでせう』
『御夫婦様、必ず御心配なさいますな。楓様は、本当に見上げたお方で厶いますよ。きつと妾が保証致します。如何なる魔がさしましても神様がお守り下さる上は、楓様のお心が極めて堅実に居られますから、何程仇し男が云ひ寄りましても、楓さまに取つては鎧袖一触の感もありませぬ。どうぞお心を悩めないやうにして御神務にお尽し下さいませ』
珍彦『ハイ有難う、ようまア云つて下さいました』
静子『そのお言葉を承はり、私も安心を致しました。ああ惟神霊幸倍坐世』
と合掌する。
 斯く話す折しも、又もや門口に恋の擒となりし人の歌ふ声、隔ての戸をすかして聞え来る。

『ひそびそと銀の雨
 絶間もなしに降りそそぐ
 うらぶれし叢のなげかひ
 ああかかる日は
 一入痛みも出づれ
 毒の爪をもて
 永久に癒え難く
 刻りつけられし
 胸の痛手よ』

と哀れな声調で聞えて来る。又続いて、

『静に静に瞳をつぶつて
 目にも見えない或物を
 見るとき吾は銀色の
 夢の中にぞ浸り入る
 素裸体の人間は
 温かい暖かい
 桃色の雰囲気に包まれながら
 歌ひつつ踊る
 心を蕩かすやうな
 メロデイーが流れ
 総てのものが
 やすらかに息づく
 吾は夢の為に働き
 夢によつて働く
 そして又
 夢によつて、はぐくまれてゆく』

 斯る所へ慌しくやつて来たのは、受付のイル、ハルの両人であつた。遠慮会釈もなく門口の戸を押し開き、
イル『もし珍彦様、大変な事が出来ました。どうぞ来て下さい、タタ大変で厶います』
『慌しき其言葉、大変とは何で厶るかな』
ハル『ハイ、タタタ高姫様が大変な事で厶います。どうぞ来て下さい。到底私等の挺には合ひませぬから』
静子『何か高姫様が御機嫌でも損ねて御立腹して厶るのかな』
 初稚姫は、
『イエイエさうぢや厶いませぬ。玉茸を取らむとして梟鳥に目をこつかれ、大杉の梢から顛落遊ばし、腰の骨を些し挫かれたのでせう。決して御心配なさいますな、直に癒りませうから』
イル『もしもし初稚姫様、貴女そんな平気な顔してよう居られますなあ。義理あるお母さまぢやありませぬか、サア早くお出でなさいませ。お父さまはお怪我をなさるなり、お母さまは木から落ちて苦しんで厶るなり、何どころぢやありますまい』
『ハイ直に参りますから、お母さまにさう仰有つて下さい。これスマートや、早く何処かへお隠れ』
と云ひながら、初稚姫は倉皇として高姫の危難を救ふべく館を立ち出で、大杉の許へと歩を急いだ。高姫は苦しげな息をつきながら、
『アア、其方は初稚だつたか、よう来て下さつた。お母さまは、つひお父さまの病気を直したいばかりに玉茸を取りに登つてこんな目に遇つたのだよ。お父さまは誰にも知れないやうにして取つて呉れと仰有つたのだが、こんな不調法をして人に見つけられたから、もう利かう筈がない。どうぞ私には構はず、あの森の木の下にゐらつしやるのだから、早く行つて介抱して上げて下さい。私は日出神の御守護があるから心配は要りませぬ。サア早く往つて上げて下さい、気が気ぢやありませぬから』
『さうだと云つてお母さまの危難を見捨てて、これがどうして往けませうか。一旦親子の縁を結んだ上からは、そんな水臭い事を仰有らずに、どうぞ介抱さして下さい、これが貴女に対する孝行のし初めですから』
と、高姫が妖幻坊に云つた言葉其儘を応用して居る。
『エイ、お前は親の云ふ事を聞かないのかい、さうであらう。お腹を痛めた子でないから恩も義理もありませぬわい。聞いて下さらないのも仕方がありませぬ。もう諦めます』
『お母さま、それでは済みませぬが、お父さまの介抱に参ります。不孝の奴とお卑みなきやうにお願ひ申します。これ、ハルさま、イルさま、どうぞお母さまの介抱を頼みますよ。お母さま左様なら』
と云ひながら此場を立ち去つた。高姫は相変らず苦悶の息を漏らして居る。
(大正一二・一・二〇 旧一一・一二・四 加藤明子録)
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