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文献名1霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻
文献名2第1篇 霊光照魔よみ(新仮名遣い)れいこうしょうま
文献名3第1章 春の菊〔1316〕よみ(新仮名遣い)はるのきく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-08-01 01:09:17
あらすじ妖幻坊の杢助と高姫の両人は、小北山の大門にやってきた。高姫は、桃の木の下にお菊とお千代が蝶を追って遊んでいるのを見て声をかけた。お菊は、参拝者だと思って案内しようとするが、高姫は、自分はここのことはわかっている、お前が誰の娘か、ここの役員は誰なのか知りたいだけだと頭ごなしに言い返した。お菊はむっとして憎まれ口を返す。お千代の口から魔我彦の名を聞いた高姫は、妖幻坊の杢助を連れて受付に赴き、ここの責任者に会いたいと呼ばわった。高姫は、受付にいた旧知の文助と挨拶を交わした。文助は、高姫が斎苑の館で出世したと聞いていたので、その祝を述べた。文助から、かつての自分の弟子であった松姫が小北山の教主をしていると聞いて、居丈高に昔のことを話しだした。文助は、杢助ともども教主館に案内することになった。教主館にやってきた三人は、お菊に出くわした。お菊は会うなり、やかましいおばさんを連れてくるのは嫌だ、エライ四つ足の霊が憑いてるようだから大広間で鎮魂してください、と高姫たちにつっかかる。文助から、これがかつて皆があこがれていたウラナイ教教主の高姫その人だと聞かされたお菊は、聞くと見るとは大違いだとまた憎まれ口をたたき、蠑螈別は若い女と駆け落ちしたと高姫に知らせた。高姫は昔の愛人が若い女と駆け落ちしたと聞いて思わず悋気を出したが、杢助がいることに気づいてごまかそうとした。時すでに遅く、杢助は、蠑螈別とやらの男振りを自分に見せつけようとしてわざわざここに連れて来たのかと駄々をこねだした。杢助は縁切りをほのめかし、その場を立ち去ろうとする。高姫は杢助の足にしがみついて、泣き声で杢助を留めようとする。お菊はこの愁嘆場を手を打って笑いからかう。杢助はお菊の様子に、子供は正直だと近寄り、蠑螈別と高姫の関係を聞き出そうとする。お菊は無邪気に、自分の母と蠑螈別が喧嘩をしてその話を聞いたばかりだと杢助に語ると、面白い活劇を松姫やお千代にも見せるのだと、逃げるように石段を登って行った。文助は、お菊はとんでもないお転婆で自分もいつもからかわれたりいたずらされたりしているから、言うことをいちいち気に留めないように、と杢助・高姫をなだめた。妖幻坊は、悪の見どころがあると喜んでいる。高姫は、改悪というのは悪を改めることだと杢助に理屈でごまかされ、やはり改善を勧める三五教は悪の教えだったと一人勝手に納得している。お菊は戻ってきて、松姫が高姫の来訪を聞いてたいへんに喜び、丁重にもてなすように言いつけたと、言付けを文助に伝えた。文助は、ご飯やお酒の準備をさせるために受付に帰って行った。高姫は、ここの教主の松姫は自分の弟子だからと得意になり、自分が酌をすると妖幻坊の機嫌を取った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月25日(旧12月9日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年12月29日 愛善世界社版7頁 八幡書店版第9輯 267頁 修補版 校定版7頁 普及版3頁 初版 ページ備考
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本文  足曳の四方の山々春めきて  冬枯れしたる梢まで
 芽含みそめたる春景色  瞬き初めし陽炎の
 彼方此方にキラキラと  閃めき渡り天国の
 御苑も今や開けむと  思ふべらなる小北山
 小鳥は歌ひ胡蝶舞ひ  吹き来る風も何となく
 ボヤボヤボヤと肌ざはり  長閑な庭に立出でて
 お菊、お千代の両人は  咲き誇りたる白桃の
 木蔭に戯れヒラヒラと  袖翻す胡蝶の遊び
 同じ腹から生れたる  姉妹の如睦じく
 互に愛し敬ひて  他所の見る目もいと清く
 羨ましくぞ思はれぬ  かかる所へ急坂を
 スタスタ登り来る男女  雲突く許りの荒男
 年増女を引連れ大門の  広庭指して現はれぬ。
 妖幻坊の杢助、高姫両人は、お菊、お千代の桃の木の下に胡蝶を追ひ、睦じげに遊び戯るるを見て、
高姫『コレ、お前さま達二人は此お館に参拝して厶るのかい』
お菊『どこの小母さまだか知らぬが、ようお参りやしたなア。サ案内して上げませう』
『案内はして貰はなくても、盲ぢやありませぬ。受付位はよく分つて居るのだから……併し私の尋ねたのは、お前は此処の信者か、但は誰か役員の娘か、それが聞きたいのだ』
『それでも小母さま、其大きな男の人、頭を括つてゐるぢやないか。私は又目でも悪いのかと思つたのよ。さう偉さうに、年老りだてら、娘を掴まへて理窟を言ふものぢやありませぬぞえ。ここへ詣つて来る人は皆おとなしい人ばかりだよ。お前さまのやうに、いきなり口を尖らして、理窟がましい事を云ふ人は今が始めてだ。ホンにまア好かぬたらしい小母さまだこと。アタ阿呆らしい、お千代さま、放つといてやりませうかな』
千代『それでもお菊さま、ここへお出になるお方はどんな方でも、鄭重に取扱はねばならないと、魔我彦さまが仰有つたぢやありませぬか』
『ナニツ魔我彦が、ヤツパリ此処にくすぼつてゐよつたのだな。ドレドレ調べて来う。どうせ碌な奴ア居らしようまい。ここは日の出神の生宮に神様からお与へなさつたお館だ。サ杢助さま、私に跟いてお出でなさい』
と受付に立現はれ、高姫は横柄な顔しながら、稍軽蔑気味な声を出して、
『ヘー、御免なさい、一寸物を尋ねます。一体此処には何といふ方が大将をしてゐられますかな』
 受付で切りに日の出に松を描いてをつた文助は、絵筆の手を止めて、朧げな目で少しく首をかたげ顔を覗く様にして、
『お前さまは、どつかに聞覚えがあるやうなお声だが、何方で厶いましたかな』
『何方も此方もあるものか、義理天上日の出神の生宮の高姫ぢやぞえ。お前は文助ぢやないか。マアマア御壮健でお目出度う』
『ヤ、高姫様で厶いましたか。これはこれは久振でお目にかかります。貴女は斎苑の館へ此頃は御越しと承はり、大変な御出世を遊ばしたといふ事で厶います。ヤ、お目出度う厶います。ようマア立寄つて下さいました。そして何処へお出になります?』
『立ち寄つたのぢやない、義理天上の命令によつて、小北山の教祖として来たのだ。サアサア是から何もかも、私の云ふ事を聞くのだよ』
『ハテ、妙な事を承はります。此お館は一切斎苑の館の八島主命様の御管掌なれば、貴女様が此処へお越しになるのなれば、前以て御通知があるべき筈になつて居ります。又此館の教主として御出で下さるのなれば、此方にもそれ相当の歓迎準備もせなくてはなりませぬが、何と又火急な事で厶いますなア。教主様の松姫様もヨモヤ御存じは厶いますまい。それでは私もかうしては居られない。御報告を申し上げねばなるまい。一寸待つて下さい。教主様に此由を申上げて来ますから……』
『ナニ、松姫が教主となア。あれは私の家来で、お前も知つてゐる通り、高城山をかまはして居つたのだが、彼奴は腰の弱い奴だから、お節の玉能姫に誤魔かされ、ウラナイ教を捨てて三五教に降参した奴だ』
『モシ高姫さま、貴女だつて、三五教の宣伝使ぢやありませぬか。貴女が率先して黒姫さまと一緒に、三五教へ改心帰順なさつたでせう。それだから松姫さまだつて、帰順遊ばすのが当然ぢやありませぬか』
『ホホホホ、そりやさうだ。併しこれは、一寸副守護神が、あんな事を云つたのだよ。此高姫は義理天上日の出神様の、いよいよ身魂の因縁が分つて来ました。高天原の最奥霊国の天人様だ。そして此高姫は稚桜姫命の御系統、常世姫の肉宮だぞえ』
『ヤ、そんな事は、耳がタコになる程承はつて居ります。サ、何卒教主館があいて居りますから、そこで一服して下さいませ。其間にいろいろの準備をせなくちやなりませぬから……エー、そして、高姫様、貴女の後に立つて厶るのは、影法師か、但はお連れの方か、私には目が悪くつて分りませぬが、人間なら人間と仰有つて下さいませ』
『ヘン、馬鹿にしなさるな、お前さまのやうな人間とはチツと違ふのだよ。畏くも斎苑館の総務、時置師神又の名は杢助様で厶るぞや。サ、早くお出迎へをなされ、粗忽があつては貴方のお為になりませぬぞえ』
『それはそれは、存ぜぬ事とて、誠に御無礼を致しました。此頃は相当に参拝者も厶いますので、斯様な所で御話して居つてもつまりませぬ。サ、教主館へ御案内を致しませう』
妖幻『拙者は噂に高き三五教の三羽烏、杢助で厶います。以後御見知りおかれまして、宜しく御交際を願ひませう』
『ハイ、それはそれは、自己広告を承はりまして、尊き杢助様を拝まして戴きました。併し杢助様は三五教切つての言霊の清らかな御方と承はりましたのに、大変なダミ声ぢや厶りませぬか。どうも私には、失礼ながら、イー心の底から尊敬の心が起つて参りませぬ。守護神が腹の中から、違ふ違ふ、と申します。もし間違ひましたら御免下さいませ』
高姫『コレ、文助、何といふ失礼千万な事を云ふのだい、杢助様は、此頃一寸お風邪をめしてお声が変つてゐるのだよ。お前だつて風邪ひいた時にや、満足に祝詞もあがらぬぢやないか』
『イヤ、どうも恐れ入りました。それなら、之から教主館へ御案内致します。何卒御神殿で御拝礼をなさつて下さいませ。其間にチヤンと座敷を片付けて用意を致しますから』
 高姫は神殿に行くのが、どこともなしに恐ろしいやうな、内兜を見すかされるやうな気分がして気が進まなかつた。そこで又例の詭弁を弄し始めた。
『コレ、文助さま、最前も云つた通り、義理天上日の出神は霊国の天人ぢやぞえ、祭典をしたり拝礼をしたりするのは天国の天人のする事だ。それから又お前たちのやうな八衢人間が、助け給へ救ひ給へと、祈る為に拝礼をしたり、お祀りをするのだよ。吾々は教を伝へるのがお役だ。それぞれ身魂の因縁性来によつて御用が違ふのだからな』
『それでも貴女、今迄は一生懸命にお祀りもなさつたり、朝も早うから御祈願を遊ばしたぢやありませぬか』
『それはきまつた事だよ。よく考へて御覧なさい。蛙の子のお玉杓子だつて、鯰の子だつて、小さい時にはヤツパリ同じ姿をして居りませうが。此高姫もお玉杓子の時は、蛙の子と同じやうに、人並に拝礼をしなくちやならぬぢやないか。けれども日日が経つと、同なじ形のお玉杓子でも、霊の性来によつて、手が生え足が生え、糞蛙になる霊と、大きな鯰になる霊と立て別れるぢやないか。例へて言へば、お前はお玉杓子の出世した蛙だ。此高姫は鯰ぢやぞえ。鯰は地の底に居つて、尻尾をプイと掉つても、此大地がガタガタと動くのだ。其因縁がハツキリと分つたのだから、今迄の高姫と同じ様に思うて貰ふと、チツと了簡が違ひますぞや、なア杢助さま、三五教にはかふ言ふ分らぬ受付が居るのですからな、困つたものですよ』
妖幻『さうだなア、ロクな男は一人も居ない。これでは三五教も駄目だ。一つお前が此処で奮発して一働きせなくちや駄目だ。オイ文助殿、これから杢助がここに暫らく出張して、事務を調査し監督致す、そして高姫は筆先の御用を致すによつて、何事も其命令に服従するのだぞや』
『ハイ有難う厶います。併しながら此館は変性男子様のお筆先を以てお神徳を頂くやうになつて居りますから、もう日の出神様のお筆先は必要がないかと心得ます』
高姫『オツホホホホ、訳の分らぬガラクタばかりぢやなア。変性男子のお筆先は余りアラごなしで、お前達を始め、人民の腹へは入りにくいによつて、此度誠生粋の水晶霊の根本の日の出神様が、お筆先を書いて、細かう御知らせなさる世が参りたのだぞえ、此筆先を読まなくては、誠の五六七神政は成就致しませぬぞや』
『さうかも存じませぬが、私は松姫様の御意見に従はねばならぬ事になつて居りますから、何卒松姫さまにお会ひになつたら、貴女より詳しく其由を仰有つて下さいませ』
『成程お前としては無理もない。さうすれば之から松姫にトツクリと言ひ聞かしてやりませう、サ、兎も角館へ案内して下さい』
『承知致しました。サ、かう御出でなさいませ』
と早くも足駄をはいて、杖をつきながら、五六間より隔つてゐない庭を跨げ、蠑螈別、お寅の住まつてゐた教主館へ案内した。
 お菊は三人の姿を見て、
『コレ文助さま、そんな喧しい小母さまを、こんな所へ連れて来るのはイヤよ、大広間へ連れて行つて鎮魂をして、四足の霊をのけて上げて下さい。何だか知らぬが、エライ物が憑いてゐますよ』
『ハハハハ、どうも仕方のない娘さまだな。モシモシ高姫さま、何卒気にして下さいますな。此方は一人娘で気儘に育つて厶るから、人さまにあんな事を仰有るのです。何卒若い人の云つた事だから、お咎めなく許して下さいませ』
『許していらぬよ。此処は私の留守を預つて居る所だ。お母さまや魔我彦さまがお帰りになるまで、誰も入れることはならぬのだから、帰つて下さい』
『そりやさうで厶いますが、此方は又特別のお方だ。お前さまがいつも、それ、憧憬して居つた、ウラナイ教の教主様の高姫さまだぞえ。サアサア、叮嚀にお辞儀をして、御無礼のお詫をするのだよ』
『聞くと見るとは大違ひだネー。蠑螈別さまも、こんな品格のない、ヤンチヤ婆アさまを可愛がつてゐたのかと思ふと、可笑しいワ、ホツホホホホ。モシ蠑螈別さまのレコさま、生憎、来て下さつたけれど、蠑螈別さまは不在なのよ。会ひたけりや浮木の森へ御出なさい。万緑叢中紅一点のお民さまといふ、あたえのやうな別嬪と、手に手を取つて駆落しましたよ。そして、何時も高姫々々と寝言をいつたり、お酒を呑んで朝顔のチヨクを口へあて、これが高ちやまの口によく似てると云つてはキツスをしたり、うちのお母さまと掴み合の喧嘩をしたり、鼻を捻られたり、それはそれは面白い事だつたよ』
高姫『ナニ、蠑螈別がお民といふ女と駆落した? ヤ、其奴は大変……』
といひかけて、杢助の側に居るのに気がつき、
『ホホホホ、何とマア面白い話を聞かして貰うたものだ。高姫といふ名は私ばかりぢやない。広い世間には沢山あるからな、ソリヤ人違ひだ。此高姫とは違ひますぞや』
『それなら、お前は蠑螈別のお師匠さまではないのだなア。ウラナイ教の元を開いた高姫さまとは違ひますね。此小北山は今では三五教だけれど、それまではウラナイ教の神様ばかり祀つてあつたのよ。其ウラナイ教の根本の教祖は高姫さまだと云つて、私達も朝から晩まで、御神体を拵へてお給仕をしてゐたのよ。其高姫さまと違ふのなら、こんな所へ来る資格はない。サアサア トツトと出て下さい』
妖幻『ハハハハ高姫も随分色女だなア、蠑螈別の男つ振りを、此杢助に見せびらかさうと思つて、此処迄つれて来たのだなア。イヤもう其凄い腕前には感心致した。ヤこれで、お前の心もスツカリ分つた、高姫、これまでの縁だと諦めてくれ、左様なら……』
と踵を返し帰り行かむとする気色を見せた。高姫は慌てて袖を控へ、涙を流して、
『コーレ、杢助さま、短気は損気だ、一寸待つて下さい。之には言ふにいはれぬ訳があるのだから……』
『イヤ、訳を聞くには及ばぬ、何もかもスツクリと判明致した。イヤ杢助は馬鹿だつた。よくマア今まで嬲つて下さつた。眉毛をよまれ、尻の毛の一本もないとこまで、金毛九尾さまにぬかれて了つたかと思へば残念だ。千言万語を費しての弁解も、俺には何の効能もない。高姫、左様ならば……』
と袖ふり切つて行かうとする。
 高姫は妖幻坊の足に確かとしがみつき、一生懸命の泣き声を出して、
『コレ杢助さま、短気は損気ぢや、一通り私の云ふ事を聞いて下さい。今となつてお前さまに捨てられて、どうして五六七神政の御用が出来ませうか、義理天上日の出神がお願ひ致します』
 お菊は手を拍つて、
『ホツホツホ、雪隠の水つき、婆浮きぢや、イヤイヤ婆泣きぢや。面白い面白い、こんな所をお千代さまに見せて上げたいのだけれどなア。お千代さま、又何処へ行つたの、まるで蠑螈別さまとお母さまとの喧嘩のやうだワ、ホツホツホー』
 妖幻坊はお菊の声に、何と思うたか、後ふり返り、二歩三歩近寄つて、
『ハハハハ、子供は正直だ、面白い面白い。コレお菊さまとやら、蠑螈別の素性から高姫の関係、お前は知つとるだらうな、どうか緩りと聞かして貰ひたいものだ』
『詳しい事は知らないよ。何時も蠑螈別さまとお母さまとが酒を呑んで、喧嘩ばかりしてゐたのよ、其時の話を聞いたばかりだ。高姫さまの顔を、まだ見た事がないのだから分らないワ。其高姫さまはお人が違ふと仰有つたが、口許が朝顔の盃によく似て、唇が妙に反り返り、曲線美をうまく発揮してゐるワ。ホホホ可笑しい顔だネー、コレ小父さま、お前、そんな婆アさまが好きなの、イツヒヒヒヒ、エエ物好だねえ。ドレ是から松姫様に面白い門立芸者が出て来て、いま一幕活劇を演じてゐる、之からが正念場だから……と云つて知らして来う、お千代さまもキツと喜ぶだらう』
と云ひながら、逃げるやうにして二百の階段を登つて行く。
文助『皆さま、何卒気にさへて下さいますな。あの子はお寅さまの娘で、どうにもかうにも仕方のない、侠客娘と綽名を取つてるオキヤンですから、あんな子の云ふ事を耳に入れて居らうものなら、腹が立つて仕方がありませぬ。何時も受付へ出て来て、私の目が悪いのをつけ込み、首に手拭を引掛けたり、ソツと出て来て耳を引張つたり、鼻を摘んだり、熱い茶と水とをすり替へたりして、手を叩いて喜んで居る悪戯盛りだから、何卒貴方等も、広き心に見直し聞直し、許してやつて下さいませ』
妖幻『ハハハハ、何と面白い子だなア。そんな子なら、甘く仕込んだら、すぐに改悪するだらう』
高姫『コレ杢助さま、何と云ふ事を仰有る、改悪するだらう……なんて、チツと心得なさらぬか、なぜ改善するだらうと仰有らぬのだい』
『改悪といふことは悪を改むる事だ。悪を改むれば善になるぢやないか。改善といふことは善を改むる事だ。善を改むれば悪になるぢやないか』
『成程、さうすると、今迄三五教で言つてゐたのは逆様だつたなア。ハハー、アアそれで分つた、義理天上さまが素盞嗚尊の行り方は駄目だと仰有つたのは……其事だ、流石は杢助さまは偉いわい、改悪と云つたら無上の善だ。之から一つ言霊を改めねばなるまい。流石は高姫の夫だけあつて、仰有る事が違ふワイ。ホホホホ、時置師の大神様、イヤもう、流石の義理天上も感服仕りました。コレコレ文助殿、お前は結構なおかげを頂きましたなア。改悪の因縁が分つたかい』
『ハイ、貴女等の仰有る事は余り六つかしうて、文盲な吾々には、どうも解釈が出来ませぬ。何と云つても、逆様の世の中で、悪が善に見えたり、善が悪に見えたりする世の中ですからなア、改悪……否皆目分りませぬ』
『さうだろ さうだろ、お前は眼目からして分らぬのだから、皆目分らぬといふのは無理はない、今までは改心といふは善い事、慢心と云ふは悪い事と思うて居つたが、ヤツパリ之も逆様だつた。なア杢助さま、さうぢやありませぬか』
『ウンさうだ、お前の云ふ通りだ』
『何と義理天上さまも偉いワイ。ヤ、此筆法でゆけば凡ての解決がつく。三五教は善に見せてヤツパリ悪の教だつた。何もかもスカタンばかり言つて、吾々を誤魔化して居つたのだな……義理天上日の出神様、有難う厶います。……コラ金毛九尾、貴様も其積りで、これから活動するのだぞ』
と小声に囁いてゐる。
 かかる所へ最前のお菊は慌しく帰り来り、
『高姫さま、松姫様に申上げましたら、大変にお喜びやして、どうか鄭重に、お酒でも出してもてなして上げて下さい。今一寸御用の最中だから、御用済み次第御挨拶に行きますと云つてましたよ。コレ文助さま、徳さまと初さまとを呼んで来て、お酒の用意をさすのだよ』
文助『それなら、これから徳と初とに御飯やお酒の準備をさせますから、一寸待つてゐて下さい』
とまたヨボヨボと受付さして帰り行く。
『コレ杢助さま、松姫といふのは私の弟子だから、一寸も遠慮はいりませぬよ。マ、ゆつくりと寛いでお酒でもあがつて下さい。お気に入りますまいが、此義理天上がお酌をさして頂きますから、ホホホホホ余り憎うもありますまい』
 妖幻坊は俄に機嫌を直し、赤い尖つた口をあけて、
『オツホホホホ』
『何とマア。俄に尖つた口をして、アタ厭らしい。そして、赤い口だこと』
『ウツフフフフ』
(大正一二・一・二五 旧一一・一二・九 松村真澄録)
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