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文献名1霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻
文献名2第2篇 貞烈亀鑑
文献名3第10章 女丈夫〔1373〕
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ関守長カントの報告に、一同は打ち驚いた。国家の危急にさすがの右守もいままでの確執よりも防衛に焦慮しだした。そして、一切の作戦計画を王家と左守家に一任するときっぱり言ってのけた。
そこで左守と王・王妃が、軍を二隊に分けてそれぞれ左守と右守が率い、迎撃態勢を整えるように命じたが、右守はなんだかんだと言い訳をつけて、城を動こうとしない。そうしている間にも次々に敵軍による被害の報告が上がってくる。
実は右守はこの事態に腰を抜かして自力で立てなくなっていた。それを悟られたくないためだけに、危急のときにあたっても立ち上がろうとしなかった。妹のカルナ姫は自分が出陣すると言って兄を振り切り、夫のハルナを促して部屋を出て行った。
ビクトリヤ王は右守の不甲斐なさに怒って、右守を切りつけようとした。王妃ヒルナ姫は王に取りすがり、右守がここまで慢心してしまった責任は自分にあり、右守の野心を探り、改心させるために、右守と不義の交わりをしたと告白した。
ビクトリヤ王は、ヒルナ姫の忠義を認め、離縁を言い渡しながらも、感謝を述べて今後も王家につかえるように言い渡した。ヒルナ姫はとっさに自害しようとしたが、タルマンはそれを止め、今は防衛に全力を勤めるように諭した。
ヒルナ姫はタルマンの諭しを容れ、武装を整えて戦陣に向かった。左守は老齢のため王のそばに仕えることになり、タルマンも出陣して行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年02月13日(旧12月28日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所
OBC rm5310
本文の文字数3713
本文のヒット件数全 1 件/竜宮館=1
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本文  カントの報告に打驚いて、一同は暫く沈黙の幕を下ろした。諺にも兄弟檣にせめぐ共、外其侮りを防ぐとかや、父死して家にせめぐ子なし、……とは宜なるかな。国家の危急存亡目睫の間に迫れるを聞いて、流石の右守も今迄の争論をケロリと忘れ、兎も角外敵を防がむとのみに焦慮し出した。右守は慌てて口を開き、
右守『刹帝利様、国家の危急、目睫に迫りました。斯様な時に内紛を醸すのは最も不利益千万で厶います。此右守は君の為、国の為、一切の主張を曲げて、吾君様、ヒルナ姫様、左守殿に一任致します、何卒よきに御取計らひを願ひませう』
と打つて変つた挨拶に、ビクトリア王は漸く顔をあげ、
刹帝利『汝の赤心は只今現はれた。人は愈の時にならねば本心の分らぬものだ。サア是から左守、右守、タルマン、一致の上防ぎの用意を致されよ』
ヒルナ姫『左守殿、如何で厶る。其方は三軍を率ゐ、右守殿と力を協せ、防戦にお向ひなさらぬか』
左守『ハイ、委細承知仕りました。然らば之より、右守殿、軍隊を二手に分ち、其一班を拙者が預りませう』
右守『これは怪しからぬ、軍学に経験なき其方、左様な事が如何して出来ませうか。此防戦は拙者にお任せ下され。一兵も動かさずして、樽爼折衝の間に解決をつけてみせませう』
 かかる所へ第二の使者として、慌ただしく入り来るはエムであつた。エムは一同の前に平伏し、汗を拭ひ乍ら、
『御注進申上げます、敵は目に余る大軍、バラモンの勇将、鬼春別、久米彦両将軍指揮の下に数千騎を以て押寄せ来り、忽ち表門を破壊し、陣営を焼払い、民家に火を放ちました、時遅れては一大事、一時も早く防戦の用意あつて然るべし。いで某は、命を的にあらむ限りの奪戦を致し、君の為に一命を捨て申さむ。早く御用意あつて然るべし』
と言ふより早く、韋駄天走りに駆け出だし、何処ともなく消え失せたり。
左守『只今となつて、拙者は貴殿の意思に反き、内紛を続くる事を好み申さぬ。然らば吾君の御身辺の保護を仕るべければ、貴殿は之より三軍を率ゐ、華々しく戦ひめされ、日頃鍛へし武術の手並、現はし玉ふは此時ならむ。サ早く早く御用意あれ』
とすすむれど、右守司は泰然として動きさうにもない。
ヒルナ姫『右守殿、国家危急の場合、一時も早く防戦におかかりなさらぬか』
右守『これはこれはヒルナ姫様のお言葉とも覚えませぬ。敵は目にあまる大軍、勝敗の数は既に決してをりまするぞ。あたら勇士の屍を戦場に曝すよりも、暫く敵の蹂躙に任し、極端に無抵抗主義を発揮して、敵をしてアフンと致さすが兵法の奥義で厶る。右守が胸中に貯へたる神算鬼謀を発揮するは瞬く内、まづまづお待たせあれ。急いては事を仕損ずる、英雄閑日月あり程の度量がなくては国家を処理する事は出来ますまいぞ。アハハハハ』
とクソ落着きに落着き、何か心に期する所あるものの如くなりき。其実右守は実際の卑怯者で早くも腰を抜かしてゐたのである。併し乍らヒルナ姫及其他並ゐる歴々の手前、驚いて腰が抜けたといふ訳にも行かず、さりとて軍隊を左守に渡せば、再び兵馬の権は吾手に還つて来ない。出でて武勇を現はさむとすれば、已に腰が抜けてゐる。又勝算の見込がない。なまじいに戦つて敗北をなし、自分の沽券を堕すよりも、太刀を抜かざれば、其勝劣が分らないであらう、何とかならうから……といふズルイ考へが咄嗟に起つた。ヒルナ姫は心に弱点があるので、右守司に対して厳しく叱咤する事が出来ず、実に煩悶苦悩の極に達した。刹帝利は心焦ち、
『アイヤ右守殿、早くお立ちなされ、日頃軍隊を練り鍛ふるは、斯様な時の必要ある為ではないか。汝が武勇を現はすは此時ではないか、サ早く早く』
と急き立つる。左守も側によつて、
『右守殿、早くお出ましなされ。貴殿に於て不賛成とあらば、拙者が軍隊を預り、防戦に出かけませう。早く返答を聞かして下さい』
と双方から詰めかけられ、右守は一言も答へず腰を抜かした儘、首を左右に振つてゐる。
 カルナ姫は側近く寄つて、
『お兄さま、君の御心慮を慰め、貴方が忠誠を現はすは、今此時で厶います。飾りおいたる弓矢の手前、かやうの時にお働きなさらねば、却て武門の恥辱で厶いまするぞ』
右守『エエ小ざかしき女の差出口、構つてくれな、右守は右守としての成案があるのだ。燕雀何ぞ大鵬の志を知らむやだ。ひつ込みをらう』
と妹に向つて、噴火口を向けた。
カルナ姫『エエ不甲斐ない兄上、ようマア右守司だと言つて、今日迄威張られたものだ。こんな卑怯未練な兄があるかと思へば、カルナ姫残念で厶います。イザ之よりは此カルナが三軍を指揮し、戦陣に向ひませう、兄上さらば』
といふより早く立出でむとする、右守はカルナの手をグツと握り、目を怒らして、
『コレヤ妹、女の分際として戦陣に向ふとは何事だ。越権の沙汰ではないか』
カルナ姫『エエ此場に及んで、越権も鉄拳もありますか、上はタルマンを始め下一兵卒の端に至る迄、力を合せ心を一にして、王家と国家を守らねばならぬ此場合、ササそこ放して下さい』
ともがけど、剛力に掴まれたカルナ姫の細腕は容易に離れなかつた。カルナ姫は幸左の手を握られてゐたのだから、右の手にて懐剣の鞘を払ひ、右守の二の腕をグサツと突き刺せば、パツと散る血潮と痛さに驚いて手を放したり。カルナ姫は、
『ハルナ殿、サア、厶りませ。妾と共に防戦の用意、吾君様、ヒルナ姫様、御身を御安泰に』
と言ひ乍ら、一目散に駆け出した。
刹帝利『汝不届至極な右守司、此場合になつて、卑怯未練にも防戦の用意を致さぬとは、不忠不義の曲者、一刀の下に斬りつけてくれむ、覚悟いたせ』
と大刀をスラリと抜いて斬りつけむとする。ヒルナ姫は王の腕にすがりつき、
『吾君様、暫くお待ち下さいませ。妾が悪いので厶います、ここにて一切の罪科を自白致しまする。何卒右守をお斬り遊ばすならば、それより先に妾を御手にお掛け下さいませ。そして臨終の際に申上げておかねばならぬ事が厶います。此右守は表に忠義面を装ひ、数多の軍隊を擁し、内々手をまはして国民を煽動し、各地に暴動を起させ、収拾す可らざるに至るを待ち、已むなく王様を退隠致させ、自ら取つて代つて、刹帝利たらむとの野心を抱いて居りまする。妾は陰になり陽になり、此野謀を悔い改めしめ、王家を救はむ為に、彼と不義の交はりを致しました。これも全く王家を思ふ一念より女のあさはかな心から、女として行く可らざる道を通りました不貞の罪、万死に値致しますれば、何卒妾を先へ御手にかけ下さいまして、右守を御成敗下さいます様、偏にお願申します』
 刹帝利は之を聞いて、怒髪天を衝き、一刀の下にヒルナ姫を斬り捨つるかと思ひきや、刀を座敷に投げ捨て、ドツカと坐し、両手を組み、涙をハラハラと流して云ふ、
刹帝利『ヒルナ姫、其方の心遣ひ、吾は嬉しう思ふぞよ。女の行く可らざる道を行つて迄も、王家を守らむとした其誠忠、実に感歎の余りである。併し乍ら其自白を聞く上は、最早吾妃として侍らす事は出来ない。可愛相乍ら、夫婦の縁を切る。併し乍ら以前に変らず、王家の為に尽してくれ、其方の赤心は実に感謝致すぞよ』
とヒルナ姫の背を撫でて慰めた。ヒルナ姫は王の愛情に絆され、立つてもゐてもゐたたまらず、懐剣を抜くより早く吾喉につき立てむとしたるを、タルマンは目敏く之をみて姫の手を固く握り涙と共に、
『姫様、吾君のお許しある上は、国家危急の場合、自殺などなさる所では厶いませぬ。そこ迄の覚悟をお定めなさつた以上は、王家の為に今一息の命を存らへ、敵の陣中に駆け入り、仮令一人なり共敵を悩ませ、勇ましく討死なさつたらどうで厶いませう。さすれば姫様の死花が咲くといふもの、勇猛な女武者として、千載に其芳名が伝はるでせう、暫く思ひ止まつて下さいませ』
と涙乍らに諫止する。姫は打ち頷き、
『ああ如何にも、其方の言ふ通り、王様の為に陣中に駆け込んで命を捨てませう。今此処で自害して果つれば、犬死も同様、不義不貞腐れの女よと、醜名を後の世に流すのも残念で厶います。ああよい所へ気がついた』
と気を取直し、俄に武装を整へ、後鉢巻凛としめ、薙刀小脇に掻い込み、門外さして只一人、トウトウトウと足早に駆け出す其勇ましさ。王は後姿を見送つて、手を合せ『盤古神王守らせ玉へ』と祈願を凝し、且つ姫が天晴、功名手柄を顕はして、華々しく凱旋せむ事を祈願した。左守司は老齢の事とて、王の命により王の側近く仕へた。タルマンは、
タルマン『われも之より戦陣に向ひ、一当あてて敵の肝を冷してくれむ、吾君様、さらば』
と言ひ残し、武装を整へ、表をさして一目散に駆けり行く。
(大正一二・二・一三 旧一一・一二・二八 於竜宮館 松村真澄録)
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