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文献名1霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻
文献名2第1篇 神授の継嗣
文献名3第6章 執念〔1392〕
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ治国別は松彦、竜公とともに左守のアールについての相談を聞いた。治国別は、左守の心配はもっともなれど、恋愛の中にいる両人は恋の殉教者の心境に立っているため、なるべく穏やかに治めるよう考えるのが得策だと答え、対応策を相談に入った。
万公はふすまの外から立ち聞きしてみれば、治国別が恋愛の擁護をしているようである。てっきり、師匠が自分の恋愛に助け船を出していると勘違いし、いつのまにか室内に入り込んで妙な声を出して恋愛擁護論を語りだした。
万公は、ダイヤ姫が自分に乗り移ってあんなことを言わせたのだと弁明したが、治国別は万公を注意して部屋を出て行かせた。
最後に治国別は、自分はアールの恋愛と結婚を支持する、と左守に伝えた。左守は意外の感に打たれながらも、こうなっては治国別の意見を刹帝利にぶつけてアールの縁談を結ぶ方向で進めるより仕方がないと腹を決めた。左守は治国別に礼を述べて帰って行く。
後に治国別は万公を呼び、左守に対する失礼な言動について油を搾った。竜公は、ダイヤ姫の縁談話があったかのように偽って、万公をからかう。
万公は、松彦に説明されて、ようやくアール王子と首陀の娘ハンナの結婚話が話題になっていたのだと悟った。しかし竜彦に、黄金山の御神業が終わるまで女のことから離れるよう諭されると、あくまでダイヤ姫への執着心を起こし、左守の後を追って、ダイヤ姫は他の誰とも結婚させないように頼み込んだ。
左守は、自分はアール王子の縁談を最後に、もう金輪際仲人みたいな気の揉めることはしないつもりだ、とだけ答えてさっさとビクトリヤ城の門を潜って中へ行ってしまった。
治国別は、万公がまた左守を困らせているのではないかと、松彦に言い含めて呼びにやらせた。松彦は、ビクトリヤ城の城門の前でポカンと空を眺めていた。松彦は万公をおどしたりなだめたり、やっとのことで治国別の館へ連れ帰った。
万公は、治国別の懇篤な訓戒を受けて、やってダイヤ姫に対する執着の念を断ち切りることになった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年02月21日(旧01月6日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所
本文の文字数5364
本文のヒット件数全 1 件/竜宮館=1
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本文  左守は治国別の居間に進み、襖を密閉して、松彦、竜彦と共にアールの結婚問題につき、声を潜めて意見を聞かむと、有りし顛末を物語つた。
左守『治国別様、誠に心配が出来ました。何を云つても一方は刹帝利の家、一方は素性の低い首陀で厶いますから、何うしても之は体面上成立させる事は出来なからうと存じますが、如何で厶いませうかな』
治国『成程、それはお困りでせう、何とか考へねばなりますまい。併し乍ら此恋愛関係計りは、到底如何なる権威を以てしても制止することは出来ますまい。凡て愛なるものは自己を放棄することに依つて、却て自己を主張してゐるものですから、愛の終局に達した時は、自己の地位や財産などを構ふものではない、実に猛烈なものですからな。其恋愛が益々嵩じて強烈の極度に達する時は、自己の生命も惜まずに喜んで投出すに至るものですから、此問題については何程宣伝使だとて力は及びますまい。国家を愛するが為に、主君を愛するが為に、又は金銭を愛するが為に、全く他を顧みずして生命を投げ出す者があるのは、世間に珍らしくない例で厶います。殊に燃ゆるが如き宗教信念の為に、神の愛の祭壇に生命を捧げて悔いざる殉教者の如きも、殆ど恋愛と同じやうなものです。此強烈なる恋愛を目して狭隘なる自己的行為だとのみ非難する事は出来ませぬ。愛の度の強烈なるに比べて益々集中的となることを免がれませぬ。従つて恋愛に於てそれが最も狭隘らしく見えるのは、たまたま恋愛が他の如何なる愛よりも強烈に集中的でもあり、熾熱の最高度に達するものを証して居りまする。此両人の恋は殉教者が教に殉じて悔いざると同様の心境に立つてゐるのですから、可る成く穏かに治めなさつたが得策だと考へます』
 万公は襖の外から、様子如何にと耳を傾けて立聞をしてゐたが、治国別の答弁を聞いて、……何ともなしに芳ばしい言葉だ。そしてハツキリ分らぬけれど、体面だとか首陀だとか言ふ言葉が聞えたからは、ヤツパリ自分の事に違ひない。治国別さまも偉いワイ、ヤツパリ俺の贔屓をして下さる……と打ち喜び乍ら、尚も耳をすまして聞いてゐる。話はだんだん声が低くなりつつ進んでゐる。万公は襖の外に自分が立つてゐるのを、何時の間にか忘れて了ひ、五寸許り襖をあけてヌツと顔を出した。されど四人は頭を一緒に鳩めて、一生懸命に此問題に頭を痛めてゐるので、万公が覗いてるのに気がつかなかつた。万公はソツと竜彦の後ににじり寄り、俯いて作り声をし乍ら、女の優しい声で、
万公『恋愛の心境に於てのみ、人間は最も完全なる人であり得るのです。それに一生の間、一度も恋を味はつた事のないやうな人間、又終身全く異性に接しないやうな人間には、人として必ずどこかに大なる欠陥のあるものですよ。ねえ治国別様、一切の人間愛の源泉が性欲にあるのは、開闢以来の神律でせう、性欲がなければ恋愛はありませぬ。恋愛がなければ一切の愛なる者はありませぬよ』
 治国別一同は俄に妙な声がして来たと、一度に顔を上げて見れば、竜彦の後に小さくなつて万公が慄うてゐる。左守は早くも自分の目の前に万公の姿を見て、
左守『オツホホホホ、万公さまが秘密会議の席上へおみえになつて居ります。これ万公さま御心配なさいますな。決してお前さまのことぢやありませぬからなア』
治国『オイ万公さま、何だ、妙な女の声を出したぢやないか。なぜあちらに番をしてゐないのか』
万公『ハイ、何だか存じませぬが、ダイヤ姫さまが私にパツとのり憑り、こんな所へ引摺つて来たのです。そしてあんな優しい声で何だか仰有いました』
治国『馬鹿に致すな、サ、早く彼方へ行け、グヅグヅしてゐると尻尾が見えるぞ』
 万公は不承無承に後ふり返りふり返り表へ厭相に出でて行く。
治国『ハハハ、左守さま、困つたものですよ。彼奴は此頃春情立つて居りますので、困りますよ。併しアールさまの結婚問題は大体に於て私は賛成致します。何卒其処は刹帝利様によく取持つて、此話をつけて上げて下さい』
 左守は案外な治国別の挨拶に肝を潰し乍ら、万一刹帝利が不服を称へられた時は、治国別さまを頭にふりかざし、此縁談を結ぶより仕方あるまいと決心し乍ら、叮嚀に礼を述べ、帰つて行く。
 後に治国別は万公を近く招き、
治国『万公、お前は左守司を相手に大変吹いてゐたぢやないか。チツと心得て貰はぬと俺達の顔に係はるぢやないか』
万公『ヘー、そらさうでせうが何と云つても一生一代の私に取つて大問題ですから、チツとは火花も散らしたでせう。何うです、都合好く話をして下さいましたかな』
治国『ウーン』
竜彦『オイ万公、先生が千言万語を費し、お前の為に非常に斡旋の労をとられたが、肝心の所へ襖をあけて飛び出し、ダイヤ様の声色を使つたり致すものだから、左守司もたうとう愛想をつかし……見下げ果てたる男だ。何程姫様がラブされても私の目の黒い内は此縁談は結ばせない。本当に下劣な人格者だ……と云つて、愛想をつかして帰つて了つた。それで虻蜂取らずになつて了つた。貴様も下劣な事をしたものだなア』
万公『ヤア、其奴は困つた。併し乍ら当人と当人との精神が結合してゐるのだから、誰が何と云つても大丈夫だ。竜彦さま安心して下さい、キツと、コリヤ、早かれ遅かれ成功しますからなア』
竜彦『お前、妻君を貰うてどうする心算だ。先生は吾々と、此お宮が落成と共に、黄金山に向つてお越しになるのだから、貴様もお伴をせねばなるまい。あんな子供を女房だと云つて伴れて行く事は許されまい。貴様は宣伝使のお伴はやめる心算かなア』
万公『妻君を持つたが為に、宣伝使のお伴が出来ぬと云う事があるかい、よく考へてみよ、先生だつて、松彦さまだつて皆立派な奥さまがあるぢやないか。俺に妻君があるからと云つてお伴をささぬと云ふ事があるものか、そらチト得手勝手だ。貴様の悋気で言ふのだらう』
松彦『アハハハハ、オイ万公、お門が違ふのだ。お前の話だない、アールさまの結婚問題でお越しになつたのだから心配するな。そして此竜彦の云ふ事は嘘だよ。お前が余り逆上せてゐるから揶揄はれるのだ』
万公『これは怪しからぬ、天国迄探険した竜彦とあるものが、嘘を云つてすむか。オイ竜彦、どうだ。本音を吹け、返答次第に仍つて俺にも考へがある』
竜彦『考へがあるとは、何うすると云ふのだ。俺が嘘を云つたと云つて、貴様はせめるが、貴様も随分左守司に歌迄うたつて、上手に嘘を並べ、内兜を見すかされ、屁古垂れたでないか』
万公『ウーン、ソラさうだ。そんならモウ、此奴ア帳消しにしよう。併しアールさまの結婚問題とは、一方は誰だ。一寸聞かしてくれないか』
竜彦『余りハンナ……りせぬ話だが、縁は何うやらアールと見えるワイ、アハハハハ。万公お前も熱心が届いたら、又お菊と夫婦になれるかも知れぬから、余り落胆せずに、黄金山の御用がすむ迄、女の事は云はないやうにしたらどうだ』
万公『ヘン、馬鹿にして貰ふまいかい。お菊なんて、古めかしいワ、俺は何うしてもダイヤ姫だ。一番がけに俺が手をかけて助けた女だからな。どうしても向ふは俺に対しては、何者かが残つてゐるのだ。それをば無下に放棄すると云ふ事は、男として人情を弁へぬと云ふものだから、仮令三年先でも十年先でも構はぬ、男の一心岩でもつきぬく程の大金剛心を以て、どこ迄もやりぬく心算だ』
竜彦『何とエライ野心を起したものだなア、其しやつ面で、ダイヤ姫のバチュウンカ(旦那)にならうとは余り虫が好すぎるぞ。そんな事を思ふよりも、なぜ神様の信仰を励まないのか』
万公『神様は神様だ。神の愛と人の愛とは又別だ、神の地位に立てば神の愛、人の地位に立てば人の愛を完全に遂行するのが人間の道だ。一寸先生、俄に便が催しましたから失礼致します』
と万公は此場を外し、裏口から左守司の後を逐うて、抜け道から走つて行く。左守司は老の足許トボトボと杖を力に漸く城門前の馬場に着いた。万公はチヤンと先へ廻つて、
万公『ヤア之れは左守様、遠方の所御苦労で厶いました。エエ承はりますれば、アール様と、ハンナとかいふお方との御結婚がととのうたやうな塩梅で、さぞさぞ貴方も御骨折で厶いませう。人間は一生に一度は何うしても仲介人をせなくては、人間の役がすまぬと云う事ですが、それは普通の人間の事、何と云つてもビク一国の左守様、到底一人や二人の仲介人では、神様に対し御責任がすみますまい。ついては六人の御兄妹様、皆貴方が御仲介人を遊ばすに違ひ厶いますまい。何卒ダイヤ姫様の御結婚丈は、まだお年も若いなり、どこから誰が何と云つて来ましても何卒取合ないやうにしておいて下さいませ。それ丈神勅に仍つて、ソツと万公が御注意を申しておきます』
左守『アハハハハ、宜しい宜しい、まだ年も若いなり、又其時は其時の風が吹くでせう。私はモウ此御結婚が纒まつたら、縁談の仲介人は之れぎり御断り申す心算だ。こんな心配な事はないからなア』
と体よくつつ放し、サツサと門を潜り入る。万公は後姿を見送り、ポカンとして口をあけたままテレ臭いやうな顔して立つてゐる。
 治国別は万公の便所へ行くと云つて出たきり、どこにも姿が見えぬので、……大方左守の後を逐うて、せうもない事を頼みに行つたのではあらうまいか、困つた事だ、コレヤ誰か行つて貰はねばなるまい……と松彦をソツと招き耳打した。松彦は一生懸命にビクトリア城を指して駆け出し、門前に行つて見ると、万公が奴拍子のぬけた顔して、烏や鳶の中空に舞うてゐるのをポカンと眺めてゐる。松彦は足音を忍ばせ万公の側によつて、『オイ』と一声、肩に手をかけて二つ三つゆすつた。万公は吃驚して、
万公『誰ぢやい、人をおどかしやがつて……』
と振返りみれば松彦であつた。
松彦『オイ万公、偉い遠い雪隠だなア』
万公『ナアニ、別に遠い事もありませぬ、雪隠の窓から覗いて居つたら、鳶と烏がつるんでをつたので、此奴、妙な事だなア、大方刹帝利の娘と首陀の息子とが婚礼をする前兆だと思つたものですから、突止めやうとここ迄やつて来た所、たうとうここでパツと放れ、あの通り中空を翔つてをるのですよ。何とマア不思議な事があるものですなア』
松彦『馬鹿云ふな、鳶と烏がさかるといふ事があるかい』
万公『サ、それが不思議だから、かうして見てゐるのです。天がかうして標本を見せてる以上は、キツと首陀の息子に刹帝利の娘が結婚を申込み、目出たく合衾の式をあげるやうになるかも知れませぬで。松彦さま、お前さまは立派な奥さまがあるから結婚問題に付いては門外漢だ。私は今研究中だから邪魔をしないやうにして下さい。既婚者と未婚者と同一に扱つちや困りますからな』
松彦『エエ困つた男だなア。お前はそんな事を云つて、左守の後を追ひ、恥をかかされたのだらう、吾々宣伝使一行の好い面汚しだ。これから暇をやるから、小北山へなと帰つて、お菊さまの弄物にでもなつて来い。治国別さまが、只今限り師弟の縁を切ると云つて、大変に御立腹だぞ』
万公『ああどうも粋の利かぬ先生についてゐると、面白くないなア。併し乍らこんな所でつつ放されちや、こつちも男が立たず、マア辛抱して、黄金山迄お伴をさして頂かうかなア』
松彦『ソレヤならぬ、どうしてもお前は師弟の縁を切ると、一旦仰有つたからは、何と云つても駄目だ、サ、ここに旅費を預かつて来たから、之を持つて小北山迄帰れ』
万公『竜彦の奴、甘く先生の喉の下へ這入りやがつて、俺の恋人をせしめやうと企んでゐるのだなア、さうだらう。万公さまが居ると一寸都合が悪いから……』
松彦『馬鹿を云ふな、竜彦はそんな男ぢやないぞ。清浄潔白な宣伝使だ。御用の途中に女に目をくれるやうな腐れ男ぢやない。そんな事をいうと竜彦に気の毒でたまらないワイ。自分の卑しい心を土台にして人の心を忖度しようとは、訳が分らぬにも程があるぢやないか』
万公『ヘン、仰有いますわい、治国別の貴方は弟なり、竜彦さまは義理の弟、兄弟三人が肚を合して、他人の万公さまを体よく排斥する心算だなア。口で立派な事を云つても、ヤツパリ身贔屓をなさると見えるワイ。ドーレ、之から斎苑の館へ帰つてお前等三人の不公平な処置を一切合切陳情するから、其心算でをれ。こんな旅費は要らぬワイ』
と松彦の渡した金を芝生の上に投げつけてしまつた。松彦は身贔屓すると言はれて大に弱り、一応治国別に頼んで再び万公の罪を許して頂き、黄金山まで御用のお伴にさしてやらうと決心し、いろいろと宥めて万公をたらしつ、賺しつ、治国別の館へ連れ帰る事となつた。そして万公は治国別の懇篤なる訓戒に仍つて、ダイヤ姫に対する執着の念をヤツと断ち切る事を得たりける。
(大正一二・二・二一 旧一・六 於竜宮館 松村真澄録)
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