テームス夫婦は四人の介抱に全力を尽くしていた。そして治国別に、道晴別が全快するまでは家に留まるように懇願した。治国別は別宅に入り、バラモン組の連中に、三五教の教理を説き諭していた。
万公は台所に回って、下女のお民を主人気取りで使役していた。お民から、バラモン軍の兵士・フエルとベットが蔵に閉じ込められていると聞いて、手伝いをさせるために二人を解放した。
万公は三人を口やかましく使役していたが、フエルは手桶の水をかまどの下へぶちあけてしまった。灰が一面に立ち上がり、炊事場は真っ黒になってしまった。
テームス家の二の番頭アヅモスが炊事場の様子を見にやってくると、一面に灰煙が立っている。怪訝に思ったが、万公に怒鳴られてすごすごと退散した。フエル、ベット、お民は鍋蓋の間から入った飯の上の灰を杓子で削り取っていた。
一同はおかしな歌を歌いながら、灰まみれの全部をこしらえて慌ただしく朝飯を病室に運んで行った。