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文献名1霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻
文献名2第3篇 月照荒野よみ(新仮名遣い)げっしょうこうや
文献名3第13章 不動滝〔1443〕よみ(新仮名遣い)ふどうたき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2019-05-02 19:58:37
あらすじケリナの姉でデビス姫は、危険な猛獣毒蛇のために人も近寄らないスガ山の谷あいの大滝に夜中やってきて、荒行をしていた。病に苦しむ父・小国別の全快と、三年前に行方不明になった妹ケリナの無事の帰宅、そして館から失われた如意宝珠の神宝の帰還を願っていた。先にエンゼルの大火光に肝をつぶしたベルとヘルは、スガ山に逃げ込んで大滝のふもとまで逃げてきた。こんな山奥に夜中デビス姫を見た二人は、もしや妖怪ではないかとふるえていた。デビス姫の祈願の言葉を聞いた二人は事情を知り、また姫が身に着けている金銀宝石に目が留まった。ベルはまた追いはぎをしようとするが、ヘルは先の大火光に懲り、月の大神がすべてを見ているような気がすると怖気をついた。ベルは祈願しているデビス姫に近寄ると、一文無しで旅をしているから宝石を恵んでくれと声をかけた。デビス姫はこれは魔よけのためにつけているのだから今はあげられないが、物乞いなら改めてテルモン山の神館まで来るようにと答えた。ベルは自分はバラモン軍の鬼春別将軍だと嘘を言うが、すぐにデビスに見破られてしまう。ベルは力づくでデビスの宝石を奪い取ろうとするが、デビス姫は柔術の名手で、組みつこうとするたびに投げられてしまう。ベルは十数回も投げられてぐたぐたになってしまった。デビスはベルを締め上げている。ヘルは黙って見ているわけにもいかず、草の中から出てきて棒杭でデビスの頭めがけて力いっぱい打ち下ろした。手元がはずれて横っ面に当たり、デビスはその場に気絶してしまった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月17日(旧02月1日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年5月3日 愛善世界社版184頁 八幡書店版第10輯 214頁 修補版 校定版195頁 普及版88頁 初版 ページ備考
OBC rm5613
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本文  テルモン山の峰続き  山一面に鬱蒼と
 巨木茂れるスガの山  天を封じて谷間は
 昼さへ暗く濛々と  夏と冬との区別なく
 霧立ち上る秘密郷  天より布を晒したる
 如くに見ゆる大滝は  アン・ブラツク滝といひ
 物凄じき水の音  百の雷一時に
 轟く如く聞え来る  かかる所へスタスタと
 夜な夜な通ふ女あり  バラモン教の神司
 テルモン山に館をば  築きて教を開き居る
 小国別の愛娘  デビスの姫は吾父の
 重き病を救はむと  一人の妹に別れたる
 其悲しさに身を忘れ  父の病や妹の
 無事を祈りて進み来る  月は御空に皎々と
 輝き亘り下界をば  隈なく照らし玉へども
 此滝のみは老木の  枝に影をば遮られ
 只滝水のうす白く  吾目にとまる許りなり
 デビスの姫は忽ちに  衣脱ぎすてて滝壺に
 ザンブと許り飛込んで  一心不乱にバラモンの
 呪文を称へ祈り居る  其心根ぞ殊勝なれ
 かかる所へスタスタと  慌てふためき走り来る
 怪しの影は只二つ  足音忍ばせ忍び寄り
 暗に浮出た白い肌  眺めて互に囁きつ
 デビスの姫が滝壺を  あがり来るを待ちにける
 これぞベル、ヘル両人が  月照彦の神霊の
 御稜威に恐れ修験者  ケリナの姫を振棄てて
 命カラガラ逃げ来る  其道すがら何気なく
 谷の水音たよりにて  尋ね来りし物ぞかし。
 スガ山の谷間は此界隈にても目立つて大木の繁茂せる、余り高からざる密林であつて、二十丈三十丈と幹のまわつた大木が天を封じ、昼さへ暗き凄い様な場所である。そしてテルモン山の谷水を一切ここに集めて大瀑布をなし、高さ数百丈に及び、白布を天から吊り下した様になつてゐる。此地点は殺生禁断の場所であり、アン・ブラツク明王が滝の傍に祀られてある。されど国人は怖れて此滝壺に近よつた者はない。種々雑多の猛獣や蚖蛇などが沢山に棲息し、一歩たり共、スガ山の森林へ足を踏み入れたる者は生きて帰つた者は無いと云つて怖れられてゐた。雨傘を拡げた様な蝙蝠が滝の近辺を真黒になつてバタバタと飛び交ひ、昼は大木の朽穴に身を隠し、日の暮頃から、ソロソロ活動し始めるのである。
 デビス姫は浄行の家に生れた淑女なるにも関らず、自分の命を的に夜な夜な通ひ来つて、老病に苦む父の全快を祈り、且三歳前に姿を隠した妹ケリナ姫の無事に帰り来らむことを、アン・ブラツク明王の前に祈るべく、危険を冒して夜な夜な通ひ来り、深い滝壺に身を投じて荒行をやつてゐたのである。そこへ求道居士、ケリナ姫を撲り殺して姿を隠さうとしてゐる矢先、天の一方より大火光となつて、月照彦神のエンゼル現はれ来り、求道居士、ケリナ姫を甦らせ玉うた。ベル、ヘルの両人は此火団の爆発した音に肝を潰し、スガ山の谷間の恐ろしい事は承知し乍らも、余りの驚きに逃げ場を失ひ、山を駆け登つて、此滝の麓に漸く逃げて来たのである。滝水の音は轟々と騒がしく、デビス姫の祈る声も聞き取る事が出来なかつた。
 ベル、ヘルの両人は斯かる深林に夜中、繊弱き女が荒行に来て居るとは思ひもよらないので、不審に堪へやらず、若や妖怪にはあらざるかと、歯の根をガタガタさせ乍ら、滝の近くへ寄つたものの、気味悪く互に抱きついて慄うてゐた。
 デビス姫は一生懸命に祈願をしてゐたので、二人の男が近くに来て居る事は夢にも知らず、濡れた体の水気を拭き取り、立派な衣類と着替へて、馴た道をスタスタと帰つて行く。怖い物見たさの喩に洩れず両人は、跡を慕うて十間許り距離を保ち跟いて行つた。女は漸くにして月の照り亘る野原に出た。此処には天拝石と云つて、一間四方許りの長方形の削つた様な天然岩がある。デビス姫は其岩の真中にキチンと坐り、再び祈願を籠めた。ベル、ヘルの両人は腰を屈め、茫々たる草原を潜り乍ら、ソツと傍に寄り草の繁みに身を隠して様子を考へてゐた。
 デビス姫は月光に向つて双手を合せ祈り初めたり。
『南無大自在天バラモン大神様、私は丁度今日にて三七廿一日の荒行を無事に了りました。何卒々々大黒主の神司より父が預かりました如意宝珠の玉が、一日も早く発見されまして、大黒主様の御勘気が許されまする様に、又父は妹の行衛不明となりしより心配を致し、それが為めに重き病の床に臥し、命旦夕に迫つて居りまする。何卒私の心を憐み下さいまして、父の病を全快させ、恋しき妹に会はして下さいませ。そして如意宝珠の神宝が一時も早く館へ、何者かの手を経て還つて参ります様に、御恵を垂れ玉はむことを、偏に御願申奉ります。月の大神様の御姿を拝するにつけ、其円満なるお姿にも等しき如意宝珠の神宝の思ひ出されて参ります。あの神宝が無き時は、テルモン山の神館は暗夜も同様で厶います。何卒々々私の命はお召取になつても構ひませぬから、何卒此三つの願はお聞き届け下さいます様に……』
と一心不乱に祈願を籠めてゐる。ベル、ヘルの両人は初めて此女の素性を聞知り、胸を撫で下し、又もやソロソロ横着心を起し、女を赤裸にして多少の財産を手に入れむと考へ込んだ。デビスの頭や体には金剛石や珊瑚珠、瑠璃、瑪瑙、硨磲等の宝玉が飾られ、折柄の月光に映じて花の如く光つてゐる。之を眺めた両人は猫に松魚節を見せたやうに、喉をゴロゴロならし、よき獲物厶んなれと耳に口を寄せ、
ベル『オイ、ヘル、素的滅法界なナイスぢやないか。そしてあの頭から体に光つてゐる宝石は随分高価な物だらうよ。ここで一つ悪の仕納めに、彼奴を赤裸にして、持物一切を奪ひ取り、それを持つて国許へ帰り、故郷へ錦を飾らうぢやないか。さうすればバラモン軍が解散になり、お払ひ箱になつたと笑はれる事もあるまい。人間はどうでもよい、成功さへすれば人が褒めるのだからなア。こんな好い機会は又とあるまいぞ』
ヘル『どうも何だか、体がビリビリと動き出して来た。俺やモウ泥坊は廃業する。何程高価な物でも欲しくはないワ。頭の上から皎々たる月の大神が、吾々の行動を看視してゐられるやうに思へて、怖ろしくなつて来たよ。お前欲しけら、あのナイスに事情をあけて、頼んで貰つたら如何だ』
ベル『エー、腰抜だなア。さうだから惚泥と云はれるのだ。そんなら汝、ここで俺の腕前を拝見してゐよ、其代りに、俺が奪つたら一つも汝に分配せぬから、承知だらうな』
ヘル『ウン承知だ、併しベル、余程考へてやらないと、どんな目に会ふか知れぬぞ。どこともなしに彼奴の体から御光がさして居るぢやないか、俺やどうしても神さまのやうに思はれて、体がすくむ様だ』
ベル『光つてゐるのが価値だ。彼奴をスツカリ手に入れやうものなら、何十万両とも知れぬ価値の物だ。汝は余程可い腰抜けだなア。目の前にブラ下つてる宝を見す見す見捨るのか。冥加知らず奴、そんなら、そこに少時蝮のやうに蟄伏して居れ』
と言ひ乍ら、ツカツカとデビス姫の祈願してる前に立現はれ、
ベル『オイ、どこの女中か知らぬが、長の旅を致す内、盗賊に出会ひ、有金をスツカリと奪ひ取られ、今は是非なく乞食の様になつて道中をしてゐるのだ。之から月の国迄帰らなくてはならない。どうかお前の頭に光つてゐる物を二つ三ツつ此方へ渡して下さるまいか』
 デビスは此声に驚いて、祈願の手をやめ、月影によくよく透して見れば、荒くれ男が一人、自分の坐つてゐる少し横手に立塞がつてゐる。
デビス『お前はどこの旅人か知らぬが、今私の頭の物をくれと云つたやうだが、之は何うしても上げる訳には行きませぬ。体中に宝石をつけてゐるのは、悪魔を防ぐ禁厭ですから、まだ之から吾家へ帰るのには、一寸二里許りも道程がある。夜の道を帰るのは危険だから、たつて欲しいのなれば更めて来て下さい。私の家はテルモン山の神館で厶います』
ベル『ナニツ、お前はあのテルモン山の霊地小国別様の娘といふのか、ヤアそりや妙な縁だ。拙者は斯う見えてもバラモン軍の征夷大将軍鬼春別将軍で厶るぞ』
デビス『ホホホホ鬼春別将軍さまは沢山の軍隊を伴れて堂々とお出で遊ばすぢやありませぬか。最前何と云ひました……長途の旅、泥坊に出会ひ、金をスツカリ奪られたから頭の物でもくれい……と云つたでせう。鬼春別ともあらう方が、只一人歩いたり、賊に持物を奪られたりする様な事がありませうか。お前は胡麻の蠅だらう。サア、奪るなら奪つて御覧、女乍らも腕に覚がありますぞや』
ベル『実の所は鬼春別に間違ひは無いのだ。三五教の軍勢十万騎を以て吾陣屋へ押寄せ来り、味方は僅に三千余騎、それも大部分は脚気を患ひ、殆ど戦場に立つ者は二三百人許り、如何に勇猛なる鬼春別も僅に三百の手兵を以て十万の敵に対するのだから、天地の道理上、已むを得ず味方は残らず討死し、自分は神の助けによつて、漸く命を助かり、此処まで落伸びて来たのだ。鬼春別に間違ひは厶らぬぞや』
デビス『鬼春別様に間違ひなければ、何卒妾の館迄来て下さいませ、自分の体につけてる宝石位は物の数でも厶いませぬ。諸方から貢いで来た種々の宝物は山程厶いますから、そして又父も鬼春別様がお出になれば喜ぶ事でせう。何卒私と一緒に来て貰ひたいものですな』
と偽者とは知り乍ら、ワザと気を引いて見た。そしてデビスは自分の館近くに行つた時に、部下に命じて此泥坊を捕縛し、懲らしめて改心させむと刹那に考へた。ベルは館へ行つては直様バケが現はれると思ひ、焼糞になり、
ベル『エー、実の所は天下晴れての泥坊様だ。サアここで何もかもお前の体に附着してゐる物は受取らう。ゴテゴテ申すと大切な命迄奪つて了ふが何うだ』
 ヘルは思はず知らず草の中から、
ヘル『オイ、ベル、そんな無茶な事云ふない。それ程欲しけりや一つ丈頂戴したらどうだ』
と呼んでゐる。ベルはハツとし乍ら、
『アハン アハン』
と大きな咳払に紛らし、ヘルの声を消さうとした。デビスは早くもまだ外に一人の卑怯な泥坊が潜んでゐる事を悟つた。
デビス『ホツホホホホ、腰抜泥坊だこと、一つ丈頂戴せいなどと、何した情ないシミツタレた事をいふのだらう。命が欲しけりや命もやらう。宝石が欲しければ与らぬ事もない。併し乍ら此方も生物だから、チツと許り動きますから、跳飛ばされぬやうになさいませや』
ベル『エー、モウ駄目だ。コラ、ヘルの奴、汝もやつて来んかい。戦利品は山分けだ』
ヘル『俺モウそんな殺生な事はしたくないワ、又天から光つて来たら何うする。ダイヤモンドでも何でも、俺モウ光るものには懲々だ』
デビス『ホホホホ、腰の弱い泥坊許り集つたものだなア。併し乍ら其処辺に慄つてる腰抜泥坊、お前は可愛想な奴だ。こんな奴にやるのは惜いが、お前になら宝石もやらうし、体が欲しけら体も任してやるから、そんな草原に螽斯の如うにスツ込んでをらずに、トツトと此処へ出て来なさい』
 ヘルは大胆不敵の女の言葉に度肝を抜かれ、腰をぬかしてバタリと平太つたまま慄うてゐる。
ベル『エー、腰抜奴、気の弱い事許りぬかしやがつて、助けになる所か商売の邪魔許りする奴だ。タカが女の一人、何程手が利いてると云つても知れたものだ。オイ女、渡すのが厭なら俺が直接に奪つてやる、神妙にしろ』
と云ひ乍ら猿臂を伸ばして、頭に光る宝石をグツと掴みかけた。デビスは其手をグツと握り、日頃鍛えし柔術の手を以て、三間許り草つ原へ投げ付けた。ベルは死武者になつて、女に喰ひつき喉を締めようとした。ベルも少し許り手は利いてゐたが、到底デビスには敵はない。併し乍ら宝石に眼眩んで、自分の危い事も忘れ、一生懸命に放られては組み付き放られては組み付き、殆ど十二三回も投げられ、グタグタになつた。それでもまだ性懲もなく、頭や体の宝石の光を目当に喰ひつく。デビスは『エー面倒』と岩を飛下り、武者振りつくベルの胸倉をグツと取り、息を詰めた。ベルは手足を藻掻きヂタバタとやつてゐる。流石のヘルも何時迄戦慄して草の中に伏艇してる訳にも行かず、傍に落ちてゐた半朽ちたる棒杭が月に照らされて光つてゐるのを見つけ出し、デビスがベルの首を締めてゐる背後から、脳天目蒐けて力一杯打下した。手許外れて耳から横つ面をウンと云ふ程撲りつけた。愍やデビスはアツと一声叫んで脆くも其場に倒れて了つた。夜嵐は遠慮会釈もなく音を立てて通つて行く。
(大正一二・三・一七 旧二・一 於竜宮館 松村真澄録)
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