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文献名1霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻
文献名2第1篇 妙法山月よみ(新仮名遣い)すだるまさんげつ
文献名3第4章 山上訓〔1611〕よみ(新仮名遣い)さんじょうくん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-06-03 17:32:09
あらすじ一行はスダルマ山の峠の頂上で野宿をすることになった。治道居士は自分のかつての部下だったベルやバットが強盗をして人々を苦しめていることを気に病み、玉国別に懺悔した。玉国別は人間はそれぞれ自らの心の垢によって迷い、一時的な変調異常が起こるものだと治道居士に諭した。一同が寝に就くとベルとバットがやってきた。二人は、暗闇の中に野宿している人間がいるとわかり、泥棒をしようと相談している。治道居士は実際には寝入らずに玉国別一行の保護の任に当たっていた。智道はベルとバットを驚かしてやろうと、法螺貝を吹きたてた。ベルとバットは法螺貝の化け物だと思いしりもちをついて震えている。ベルはバラモン教の陀羅尼を唱えた。玉国別たちはこの騒ぎに目を覚まして成り行きに聞き入っていた。治道居士はベルとバットに対し、自分は元上司の鬼春別将軍であり、今は三五教の比丘となっていることを告げた。そして早く心を入れ替えるよう、厳かに呼ばわった。ベルとバットは治道居士の言霊に打たれて、「ハイ」と言ったきりその場にしゃがんでしまった。黒雲が破れて大空の月がパッと覗かせ給うた。一同の姿は昼のように見えてきた。一同が述懐の歌をそれぞれ歌っていると、天空に嚠喨たる音楽が聞こえ、月を笠にかぶりながら雲を押し分けて、神素盞嗚大神が悠々と下り給うた。大神は一同の前に声も涼しく一行の前に神訓を垂れ給うた。無限絶対無始無終、霊力体の大元霊と現れたまう真の神はただ一柱である。これを真の神または宇宙の主神という。この大神を真の父となし母となし敬愛し奉るべし。天之御中主大神と奉称し、また大国常立大神と奉称する。厳の御霊日の大神、瑞の御魂月の大神は、主神大国常立大神の神霊の御顕現にして、高天原の天国にては日の大神と顕れ給い、高天原の霊国にては月の大神と顕れ給う。愛善の徳に住するものは天国に昇り、真信の光徳に住するものは霊国に昇る。真の神は大国常立大神ただ一柱ましますのみであり、天津神八百万の神は皆天使であると知るべきである。国津神八百万ましませども、皆現界における宣伝使や正しい誠の司である。真の神は天之御中主大神ただ一柱、それゆえ幽の幽と称え奉る。真の神が変現し給いし神を幽の顕と称え奉る。天国における日の大神、霊国における月の大神はいずれも幽の顕神なり。いったん人の肉体を保って霊界に入り給いし神を、顕の幽と称え奉る。大国主之大神およびもろもろの天使および天人のことを言う。顕界に肉体を保ち、神の大道を伝え、また現界諸種の事業を司宰する人間を称して、顕の顕神と称え奉る。しかして真に敬愛し尊敬し依信すべき根本の大神は、幽の幽にまします一柱の大神のみである。その他の八百万の神々は、主神の命によりておのおのその神務を分掌し給うものである。愛善の徳に住し真信の光に住し、神を愛し神を信じ、神のために尽くすものは天界の住民となる。悪と虚偽とに浸って魂を曇らすものは地獄に自ら堕落するものである。かく宣りたまいて、従神たちを従えて紫の雲に乗り、大空高く月とともに昇られ給うた。一行はそれぞれ神訓についての述懐を歌った。ベルとバットは心の底から悔い改め、玉国別一行にしたがって聖地エルサレムを指して進むこととなった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年05月18日(旧04月3日) 口述場所教主殿 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年2月3日 愛善世界社版43頁 八幡書店版第11輯 278頁 修補版 校定版44頁 普及版64頁 初版 ページ備考
OBC rm6304
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本文の文字数7112
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本文  玉国別の一行は  スダルマ山の麓にて
 伊太彦徒弟に立別れ  焦つく如き炎天の
 音の名高き急坂を  汗をたらたら絞りつつ
 迦陵嚬伽の鳴く声に  慰められつ登り行く
 見渡す限り野も山も  緑彩どる夏景色
 眺めも飽かず頂上に  黄昏ちかき夕の空
 漸く辿りつきにけり。
真純『お蔭によつて此急坂を漸く無事に登つて参りました。今夜は月を枕に草の褥、蒼空の蒲団を被つて安けき夢を結びませう。天空快濶一点の暗雲もなく、星は稀に月の光は吾等一行を照らし守らせたまふ有難さ愉快さ、旅をすればこそ、こんな結構な恵の露に霑ふ事が出来るのですなア』
三千『本当に愉快だ。スダルマ山の峠の頂上に月の光を浴びて寝ると云ふ事は、実に爽快の気分に漂はされる。四方の山野は宏く遠く展開し、西南方に当つてスーラヤの湖は鏡の如く月に輝き恰も天国のやうだなア。先生是からは下り阪、今晩は此処で寝む事に致しませうか』
玉国『本当に有難い事だ。此処で一夜の雨宿り、恵の露を浴びて霊肉共に天国に進まう。併し乍ら先づ第一に吾々の務めを果し、神様に感謝の言葉を奏上し、それから悠りと話でも交換して華胥の国に入らうぢやないか』
三千『さう願へば実に有難いです』
と茲に一同は声も高らかに、スダルマ山の谷々の木魂を響かせ天津祝詞を奏上し、終つて蓮の実を懐より出し夜食にかへ四方八方の話に時を移し、且つ歌など詠んで楽しんで居る。

玉国別『大空に輝く月も安々と
  傾きたまへば軈て明けなむ。

 此景色天津御国か楽園か
  何に譬へむ術もなければ』

真純彦『スダルマの山の尾上に来て見れば
  いよいよ高き月の輝く。

 真澄空星はまばらに輝けど
  月のみ独り世を知し召す』

三千彦『大空に星はみちけり三五の
  月の光も天地にみちぬ。

 みちみちし神の御稜威を只一人
  頂きにけり三千彦の胸に。

 さりながら天津御空に照り渡る
  玉国別の恵忘れじ』

治道『三五の神の司と諸共に
  伊都のみやこに行くぞ楽しき。

 村肝の心に宿る曲神も
  逃げ散りにけり月の光に』

デビス姫『師の君の御跡慕ひて背の君と
  漸く登りぬ恋の山路を。

 見渡せば吾故郷は霞みけり
  テルモン山の雪のみ見えて』

治道『ベル、バット軍の司は今いづこ
  早や泥棒となり果てし彼』

三千彦『吾が寝ねし隙を窺ひ抜足に
  近よりバット首を掻かなむ。

 心して今宵一夜は眠るべし
  ベルとバットの曲のありせば』

玉国別『ベル、バット如何に力は強くとも
  吾には神の守りありけり。

 身の外の仇に心を焦すより
  吾身の中の仇を恐れよ』

デビス姫『皇神と吾師の君の在す上は
  何か恐れむ露の夜の宿も』

真純彦『いざ来れベルもバットも曲津見も
  生言霊に服へて見む。

 大空に輝く月の影見れば
  吾心根の恥かしくなりぬ』

 斯く互に歌ひ終り、蓑を敷き雑談に耽つた。
治道『拙者の部下に使つて居たベル、バット其外の連中が軍隊を放れて猛悪な泥坊となり、四方に放浪して数多の人間を苦しめるのを思へば、早や私は立ても居ても居られないやうな苦しい思ひが致します。どうしても人間は境遇に左右せらるるものと見えますなア。吾々は自分の罪は申すも更なり、部下一同の罪を贖ふために将軍職を廃し、治国別様の御教によりて三五教の教の子となり、比丘となりてビクトル山に根拠を構へ同僚三人と共に交る交る天下を遍歴して居ますが、思へば思へば神様に対し恥かしい事です。かう云ふ部下が出来たのも全く私の罪で厶います』
と述懐を述べ、吐息をついて涙に沈む。玉国別は気の毒さに堪へやらぬ面持にて言葉静かに、
『治道居士様、必ず御心配なさいますな。現在親子の間でも、体は生んでも魂は生みつけぬと云ふ譬が厶います。決して貴方の罪では厶いませぬ。其人々の心の垢によつて種々と迷ふのですよ。吾々人間の精神といふものは、いつも健全なものでは無い。時々一時的の変調異常が起るものでこの異常には五つの型があるやうです。
先づ
 第一は利欲に迷ふた時だ。利欲に迷ふた時は誰人も冷静な判断と周密な考慮を失ひ易いものだから、利を以て釣らるる事が多いものだ。たとへば他人の物品を預かつて居るやうな場合にフト「是が自分のもので在つたらなア」と云ふやうな心が浮ぶと、責任観念などが無くなり、それを自分が使つた場合の状態などに眩惑されて自分のものに為たり、また平生から欲しい欲しいと思つて居るものが眼の前にあると前後を考へる暇がなくなつて万引をしたりするやうに成る、これは言ふまでも無く副守先生の発動で、利益のために理智を塞がれ健全なる働きをせないといふ事に原因するものです。
 第二の型は、強い強い刺戟に接した時だ。単純な蔭口位ゐ聞いても心を乱さない様な人間でも、面と向つて手酷しく痛罵されると、吾身を忘れて予期しなかつた行為をしたり、また普通の異性に対しては普通の態度が保たれ得る人間が、美しく化粧した異性の誘惑的な嬌態に接すると日頃の平静を破られやすいと云ふ様に同じ刺戟でもその程度によつて精神に異常な影響を与へる事がある。無論是等はその人間の先天的性質や後天的教養によつて程度の差が在ることは云ふまでもないが、副守先生の活動に原因する事が最も多いのである。又異常なる強烈な刺戟が人間の精神を異常ならしむると云ふ事は間違ひの無い事実だ。
 第三の型は、焦心したり狼狽した時に起る精神の状態だ。こんな時には精神の活動が安静を欠いで居るので精神的の作業にしても、又肉体的の作業にしても過失や失敗を招き易いものだ。少々許りの失策を隠さうと為たために却て、その失策を大きくしたり、又少々の損失に狼狽した結果、大損失を招くやうな事をした事実は、能く世にあることだ。こんな時には副守先生の最も煩悶を続けて居た際である。
 第四の型は、失意の時と得意の時だ。失意の時には精神の能率が減退して因循になり、消極的になつて努力を厭ふやうな傾きになり、得意の時には其反対に精神の能率が増進して快活になり、積極的になつて努力を惜まぬやうになるものです。従つて事業の成功と身体の健康慰安のある時と無い時、名誉を得た時と恥を受けた時とは其精神に及ぼす影響は全く正反対だ。そして精神が極端に沮喪した時は余り消極的になる結果、次第々々に社会生活の敗残者となり、極端に精神を発揚した時は積極に進み過ぎた結果、実力以上に仕事をするやうに成つて冒険的や独断的に走るやうに成るものだ。これも副守先生の活動の結果と云つても良い位なものです。
 第五は迷信に陥つた時に起る精神状態だ。不健全なる信仰を持て居る人間は其他の方面の事物に就ては普通の判断を誤ることが無いにも拘らず、信仰の方面になると著しい誤解を来たすものです。従つてそれが難病治癒に関する場合であつても又利欲に関して居る場合であつても、冷静な判断や、前後の考へも廻らす余裕がなくなつて遂に、幼者を誘拐したり、死体を発掘したり、或は七夕の夕に七軒の家から物を盗む様になるのです。以上の外に婦人が妊娠、月経などの生理的原因に基いて、一時的に精神に異常を来すことは言ふまでも無いことです。それだから凡ての人間は狂人の未製品だ予備品だ、と言つたのだ。伊都の教祖や美都の教主而己が突発性狂人では無い。本正副守護神さまの容器たる人間は実に不可思議なものです』
治道『有難う御座います。貴師の御説に由つて拙者も漸く安心致しました。人間と云ふものは実に困つたものですなア』
三千『治道様、貴方も先生のお説で御安心なさつたでせう。私も一寸得心致しました。併し乍ら突張の無い蒼雲の天井の下に寝るのですから、何時頭の上に月が落ちて来て目を醒ますか、ベル、バットがやつて来て、玉を取るか分りますまいが、そこは惟神にまかして寝みませうか。比丘さまは経が大事、拙者は明日が大事だ』
治道『アハヽヽヽ。然らば御免蒙つて寝みませう』
 茲に一同はスダルマ山の峠の頂上に、河も無きに白河夜船を漕いで眠つて仕舞つた。一塊の黒雲天の一方に起るよと見るまに忽ち満天に急速力をもつて拡がり、今迄皎々と照り輝いて居た月も星も皆呑んで仕舞つた。かかる所へ峠をスタスタと登つて来た二人の覆面頭巾の男があつた。此男は云ふ迄もなく、ベル、バットの泥棒である。二人は鼾の声を聞きつけ小声になつて、
ベル『オイ、バット、何だか暗がりに、フゴフゴと云つたり、粥を炊くやうにグツグツグツグツと云ふやつがあるぢやないか、こんな所に畚売りも登つて来る筈もなし、お粥を炊く婆も居る道理が無い。一体何だらうな、余りバットせぬぢやないか』
バット『これや、ベル、大きな声でシヤーベルない、バットせないのが俺達の豊年だ。此奴はどうしても人間の鼾だよ。一つそつと枕探しでもやつてボロつたらどうだ。こんなよい機会は又とあるまいぞ』
ベル『枕探しと云つても、こんな山の上に枕をして寝て居る奴も無いぢやないか、探さうと云つても真暗で一寸先も分りやしない。どうしたらよからうかなア』
バット『真暗の中を探すからまつくら探しだ、暗がりに仕事が出来ないやうな泥棒が何になるかい』
 治道居士は横になつた儘一目も寝ず、玉国別一行の保護の任に当つて居た。夫故ベル、バットの囁き声を残らず聞いて居る。そんな事とは知らぬ両人は声低に尚も囁きを続けて居る。
バット『オイ、鬼治別将軍も、随分耄碌したものぢやないか。あれだけ権要な地位を放り出して身窄しい比丘となり、昨夜も昨夜とて祠の森に寝て居たぢやないか。いい馬鹿だなア。大方彼奴は発狂したのかも知れないねえ』
ベル『そんな事は云ふだけ野暮だよ。喇叭を法螺貝にかへ三千の部下を棄て、只一人墨染の衣を身に纒ひ殊勝らしく乞食に廻ると云ふのだから大抵極つて居るわ。あいつは治国別と云ふ極道宣伝使に霊をぬかれ、呆けて仕舞つたのだよ』
 治道居士は一つ喝かしてやろうと、法螺貝を口に当て、ブウブウと吹き立てた。寝耳に水の法螺の声に二人は驚きドスンと其場に尻餅をつき慄い戦いて居る。治道居士は闇の中から細い作り声をしながら、
『諸行無常是生滅法、生滅滅已寂滅為楽』
と称へてみた。
バット『オイ、ベル彼奴は法螺の化者だ、俺達にわざをしようと思うてあんな事を吐きやがる。一つ此方にも武器があるのぢやから対抗せなくてはなるまい。かう云ふ時には悪事災難除けに大自在天大国彦命様のお助けを蒙るために陀羅尼を称へるに限つて居る』
ベル『泥棒が陀羅尼を称へても神様は聞いて呉れるだらうかなア』
バット『きまつた事だ。是から俺が化物に対抗して見るつもりだ。
 イテイメー イテイメー イテイメー
 イテイメー イテイメー ニメー
 ニメー ニメー ニメー
 ニメー ルヘー ルヘー
 ルヘー ルヘー スッヘー
 スッヘー スッヘー スッヘー
 スッヘー スヷーハー』
ベル『そりや何と云ふことだい。妙なことを吐くぢやないか。痛いわい 痛いわい 痛いわい なアんて』
バット『これは陀羅尼品の文言だ。是を義訳すれば、「是に於て 斯に於て 爾に於て 氏に於て 極甚に我無く 吾無く 身も無く 所無し 倶に同じくす 己に興し 己に生じ 己に成じ 而して住し 而して立ち 亦住す 嗟嘆 亦非ず 消頭大疾加害を得る無し」と謂つて有難い御経だ。大病にも罹らず一切の難を受けないと云ふ呪文だ。今の比丘比丘尼どもは、「いでいび、いでいびん、いでいび、あでいび、いでいび、でび、でび、でび、でび、でび、ろけい、ろけい、ろけい、ろけい、たけい、たけい、たけい、とけい、とけい」と囀つて居るのだ。恰度油蝉が樹上に鳴いて居る様に聞こえるから、サンスクリットで唱えたのだ。アハヽヽヽ』

附記 註解

   陀羅尼品

経語    義訳   梵語
伊提履  (於是)  イテイメー
伊提泯  (於斯)  イテイメー
伊提履  (於爾)  イテイメー
阿提履  (於氏)  イテイメー
伊提履  (極甚)  イテイメー
泥履  (無我)  ニメー
泥履  (無吾)  ニメー
泥履  (無身)  ニメー
泥履  (無所)  ニメー
泥履  (倶同)  ニメー
楼醘  (己興)  ルヘー
楼醘  (己生)  ルヘー
楼醘  (己成)  ルヘー
楼醘  (而住)  ルヘー
多醘  (而立)  スッヘー
多醘  (亦住)  スッヘー
多醘  (嗟嘆)  スッヘー
兜醘  (亦非)  スッヘー
〓兜  (消頭大疾無得加害)  スッヘースヷハー

    ○

 法螺貝の声は益々高くなつて来る。玉国別外一同は直に夢を破られバットが称ふる陀羅尼の声を興味をもつて聞いて居た。治道居士頓に大きな声で、
『拙者は月の国ハルナの都に名も高き、バラモン教の神司、大黒主の神の幕下、鬼春別将軍のなれの果、今は三五教の信者治道居士と申す比丘であるぞよ。汝ベル、バットの両人早く心を入れ替へ、神の正道につけ』
と厳かに呼ばはれば、二人何となく其言霊に打たれて、『ハイ』と僅かに云つたきり其場に跼んで仕舞つた。黒雲の帳をやぶつて大空の月はパツと覗かせたまふた。一同の姿は昼の如く見えて来た。

治道『黒雲に包まれたまひし月影も
  誠の光あらはしたまひぬ。

 ベル バット心の雲を押し除けて
  玉の光を研き照らせよ』

と詠みかけた。二人は恐る恐る慄ひ声にて、

バット『村肝の心の闇を照らすため
  神の恵の燈火ともさむ。

 今迄の深き罪咎赦せかし
  元津御霊にかへる吾身を』

ベル『盗みする心は露もなけれども
  醜の鬼奴に使はれけるかな。

 鬼春別軍の君の御前に
  拝む吾を赦させたまへ。

 三五の清き教の神司
  吾を許せよ神のまにまに』

治道『村肝の心の暗の晴れぬれば
  その身も明かく清まりぬべし』

玉国別『ベル、バット二人の男子に言告げむ
  神は誠の恵なるぞや』

バット『有難し司の君の御言葉に
  胸は晴れけり心澄みけり。

 吾心バット明るくなりにけり
  神の教の燈火に遇ひて』

ベル『大空の月に心を照らされて
  心恥かしくなりにけるかな。

 今迄は醜の曲霊にさやられて
  黒白も分かず踏み迷ひけり』

治道『大空に輝く月の御姿を
  心となして世を渡れかし』

三千彦『スダルマの山の尾上に仮寝して
  今日はうれしき夢を見しかな』

真純彦『村肝の心の空は真純彦
  かかるくもなき今宵の嬉しさ』

デビス姫『あら尊月の恵の輝きて
  二人の御子の蘇生りぬる』

 斯く話す所へ天空に嚠喨たる音楽聞え、月を笠に被りながら一行が前に雲押し分けて悠々と下りたまうた大神人がある。玉国別一同はこの神姿を見るより忽ち大地に平伏し感涙に咽んで居る。この神人は月の御国の大神に在しまして産土山の神館に跡を垂れたまひし、三千世界の救世主、神素盞嗚の大神であつた。大神は一同の前に四柱の従神と共に輝きたまひ、声も涼しく神訓を垂れたまうた。一同は拝跪して感謝の涙に暮れながら一言も漏らさじと謹聴して居た。
 神素盞嗚の大神が山上の神訓

一、無限絶対無始無終に坐しまして霊力体の大元霊と現はれたまふ真の神は只一柱在す而已。之を真の神又は宇宙の主神と云ふ。
 汝等、この大神を真の父となし母と為して敬愛し奉るべし。天之御中主大神と奉称し、又大国常立大神と奉称す。
一、厳の御霊日の大神、瑞の御魂月の大神は、主の神即ち大国常立大神の神霊の御顕現にして、高天原の天国にては日の大神と顕はれ給ひ、高天原の霊国にては月の大神と顕はれ給ふ。
一、愛善の徳に住するものは天国に昇り、信真の光徳に住するものは霊国に昇るものぞ。
一、此外天津神八百万坐しませども、皆天使と知るべし。真の神は大国常立大神、又の名は天照皇大神、只一柱坐します而己ぞ。
一、国津神八百万坐しませども皆現界に於ける宣伝使や正しき誠の司と知るべし。
一、真の神は、天之御中主大神只一柱のみ。故に幽の幽と称え奉る。
一、真の神の変現したまひし神を、幽の顕と称へ奉る、天国に於ける日の大神、霊国に於ける月の大神は何れも幽の顕神なり。
一、一旦人の肉体を保ちて霊界に入り給ひし神を顕の幽と称え奉る。大国主之大神及び諸々の天使及び天人の類を云ふ。
一、顕界に肉体を保ちて、神の大道を伝え、又現界諸種の事業を司宰する人間を称して顕の顕神と称へ奉る。
 而して真に敬愛し尊敬し依信すべき根本の大神は幽の幽に坐します一柱の大神而已。其他の八百万の神々は、主神の命に依りて各その神務を分掌し給ふものぞ。
一、愛善の徳に住し信真の光に住し、神を愛し神を信じ神の為に尽すものは天界の住民となり、悪と虚偽とに浸りて魂を曇らすものは地獄に自ら堕落するものぞ。

 斯く宣り終へたまひて以前の従神を率ゐて紫の雲に乗り大空高く月と共に昇らせたまふた。

玉国別『素盞嗚の瑞の御霊の御恵に
  教の泉湧き出でにけり。

 昔よりためしも聞かぬ御教を
  居ながらに聞く事の尊さ』

治道『水火の中をかい潜り  求ぎて往くべき道芝の
 恵の露に濡れながら  スダルマ山の頂上に
 聞くも嬉しき御教  あゝ惟神々々
 神の恵を赤心に  留めて感謝し奉る』

三千彦『大空ゆ瑞の御霊の下りまして
  生命の清水与へたまひぬ』

デビス『夜の露うけて寝らう身の上に
  注がせたまひし恵の御露』

真純彦『大空の雲押し分けて輝きつ
  真澄の水の教を賜ひぬ』

治道『あら尊誠の神の御姿に
  謁見まつりし吾ぞ嬉しき』

ベル『村肝の心の闇の晴れ往きて
  誠の神の光に遇ひぬ』

バット『限りなき神の恵を悟りけり
  悔改めて正道に入らむ』

 茲にベル、バットの両人は心の底より悔改め、玉国別一行に従ひて聖地エルサレムを指して進む事となつた。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一二・五・一八 旧四・三 於教主殿二階 加藤明子録)
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