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文献名1霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
文献名2第2篇 恋火狼火よみ(新仮名遣い)れんかろうか
文献名3第8章 帰鬼逸迫〔1732〕よみ(新仮名遣い)ききいっぱく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
大火災はタラハン市の過半を焼き払い、城内にまで飛び火、茶寮一棟を全焼した。市内には不逞首陀団、主義者団が横行し、目も当てられぬ惨状を呈した。全消防隊、目付け侍を繰り出し、ようやく消化、暴徒の鎮撫を見た。

左守は邸宅を焼かれ、部下を指揮して騒動の収拾にあたっていたが、騒動が収まったのを見て、大王の間に伺候した。するとすでに王は、この騒ぎに驚きのあまり発熱し、人事不省に陥っていた。

左守はこの事態に際して太子に指揮を仰ごうと、太子殿にやってきた。左守は自分の辞任と息子アリナの行く末を頼み込む。

太子(アリナの変装)は、自分は父王の危篤に際して自分が動くことはできないと説く。そして王に代わって左守の職を解き、復興院の総裁に任じた。そして他の重臣と協議の上、復興に力を尽くすように諭す。

左守が帰った後、シノブがやってきて、化けの皮がはがれるのを心配するアリナに気合を入れる。シノブが下がると、入れ違いに右守がやってくる。

右守は、臨終の床の王から太子を呼ぶように言われて、太子を王の床に連れて行こうとやってきたのであった。太子は後からすぐに行くと言って先に右守を返すが、ここで途方にくれてしまう。

そこへシノブがやってきて、太子が帰ってきたことを伝える。太子は父王が臨終であることを聞くと、狼狽のあまり、労働服を着替えるのを忘れてしまう。部屋に戻ってからそれに気づくが、右守が再び父王の臨終を告げに来ると、我を忘れて汚れた労働服のまま、病床に駆けつけてしまう。極度の近眼の右守も、太子の身なりに気がつかなかった。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年01月29日(旧01月6日) 口述場所月光閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年9月30日 愛善世界社版110頁 八幡書店版第12輯 191頁 修補版 校定版110頁 普及版69頁 初版 ページ備考
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本文  タラハン市の大火災は市の過半を焼き払ひ、遂には城内迄飛火して茶寮一棟を烏有に帰した。城の内外は阿鼻叫喚の地獄と化し、不逞首陀団や主義者団が一致協力して、強盗、強姦、殺人等の悪業を逞しふし目も当てられぬ惨状を演じた。消防隊全部、並に目付侍迄も繰出して、漸くに火を消し止め暴徒の乱業を喰ひ留むる事を得た。左守は吾邸宅を焼かれ、命辛々部下を指揮して騒擾鎮撫に努めて居たが、やうやく騒動が治まつたので蒼皇として大王の居間に伺候し見れば、大王は老病にて臥床中城下の大変を耳にし、驚きの余り発熱甚しく遂に人事不省に陥つて了つた。かかる混雑の際とて、医者も思ふやうに駆けつけず、重臣は困り切つて大王が病室に首を鳩め前後策を講じて居る。左守は最早此上は太子の君に拝謁して指揮を仰がむものと、禿頭をテカテカ照らし乍ら、太子殿に奉伺したのである。
 左守は例の如く二拍手しながら、垂簾の前に低頭平身し、稍慄ひを帯たる声にて、
『太子殿下に申上げます。本日は微臣の不注意より城下に大火災起り、不逞首陀団や主義者団其他の暴徒、暴威を逞ふし火を放つて都の大半を烏有に帰し、尚飽き足らず、強盗、強姦、殺人など、所在暴逆を逞ふし、タラハン市は蚊の鳴くが如き憐れな有様で厶います。大王様も御心配のあまり俄に病気新まり、いつ御昇天遊ばすやも計られない悲惨事が湧出致しました。かかる惨状を招来致しましたのも、全く小臣等が輔弼の任を全ふせざりし罪で厶いますれば、天下万民に代り闕下に伏して罪を謝し、今日限り骸骨を乞ひ奉りますれば、何卒、時代に目醒めたる新人物をば登庸遊ばされ、国事の大改革を断行されむ事を希望いたします。左守が職を辞するに当りまして、太子殿下にお願ひ致して置きたい事は、悴の身の上で厶います。微臣も老齢加はり、殿中に入内致しますにも、かくの如く杖を持たねばならぬやうな廃物で厶いますから、大王殿下の後を追うて何時国替をするやらも分りませぬ。何卒悴の身の上をよろしくお願ひ申上げます』
 アリナはわざと荘重な声にて、
『ヤ左守殿、大変な事であつたのう。嘸人民が困つて居るであらう。汝は国家危急の此場合に当つて、骸骨を乞ふなどとは不心得千万にも程がある。日頃高禄を与へておいたのは斯様の際に尽させむ為めの父大王の思召ではないか。併し乍ら、不能をもつて能を強ふるは君たるものの道ではない。汝は幸ひに時代に目醒め余が意思をよく悟りをる賢明なる悴あれば、彼アリナを汝と思ひ重く用ふるであらう。必ず心配いたすな。さうして汝の家は無難であつたかのう』
左『ハイ御親切によくお尋ね下さいます。仁慈のお言葉、何時の世にかは忘却致しませうや。吾邸宅は不逞首陀団の為に包囲され、第一着に焼きつくされて了ひました。併し乍ら、ウラルの神様の御加護によりて生命は助けて頂きました。それよりも恐れ多いは、大王様がいつも愛玩してお出になりました、古今の珍器を集めた茶寮の一棟、惜くも焼き失せました。大王家歴代の重宝は此茶寮に納めてありました。実に此一事にても微臣は責任を帯びて骸骨を乞はねばなりませぬ。何卒、おゆるしを願ひ奉ります』
ア『や、左守其方の申す言葉も一応道理があるやうだ。汝は是より此処を引取り、他の重臣共と相談の上復興院を創立して、再び元のタラハン市に復帰すべく勉めて呉れ。太子、汝左守の職掌を父に代つて免除する。臣間の事業として復興院の総裁となれ』
左『殿下の御台命誠にもつて有難く感謝に耐へませぬが、世に後れたる禿頭をもつてどうして、今日の世の中の人心を治め復興の目的を達成する事が出来ませうか。此儀は何卒お許し下さいませ。実の所は玉の原の別荘に安臥中、火事と聞いて驚き石段より転げ落ち、大変な負傷を仕りました。これがつけ入りとなつて、微臣も遠からぬ中帰幽いたさねばなりますまい』
ア『ヤアそれは思ひも寄らぬ気の毒な事を致した。アリナが居れば其方の介抱をさせたいのだが、火災が起ると共に殿内を飛び出し、未だ何の消息も無いのだから、どうする事も出来ぬ。余も斯る際には泰然自若として軽挙妄動を謹み、万一の時には父王殿下の後を継がねばならぬ。どうか其方より右守其外一同によきに伝へて呉れ』
左『ハイ、重ね重ね御親切なお言葉有難う厶います。そして悴のアリナは未だ帰らないと承はりましたが、もしやあの騒動に紛れ人手にかかつたのでは有りますまいか。但しは火に囲まれて焼死でも致したのでは厶いますまいか』
と涙声になる。
ア『父上、いやいや父王殿下の御大病とあれば余は茲に謹慎を守つて居る。アリナも可愛さうだが、彼の事だから滅多に命を捨つるやうな事はあるまい。安心したがよからう』
左『ハイ、有難う厶います。失礼な事をお尋ね致しますが、殿下には此頃お声の色がお違ひ遊ばすやうで厶いますが、お風でもお召し遊ばしたのでは厶いますまいか。尊貴の御身の上、何卒お大切にお願ひ致します。人間は衛生が第一で厶いますから』
 アリナは此言葉にギヨツとし乍ら飽迄図々しく空呆け、
ア『イヤ、別に病気でも何でもない。実は青春の時期だから声変りが致したのだ。そして余も昨夜の大火事に些しばかり気を揉んだものだから、声が少しく変つたのだらうよ。必ず必ず心配して呉れるな。又汝の悴アリナも屹度無事で居るだらう』
左『ハイ、有難う厶います。どうか衛生に御注意下さいませ。偏にお願ひ申上げます』
ア『爺、否左守心配致すな。人間の生涯を衛生の二字に威喝されて、自分から半病人になるやうな事は致さない。人間は気の持ちやう一つで病気なんか起るものではない。其方も気を確に持つて長生をしたがよからうぞ』
左『何彼とお取込みの中、いつ迄お邪魔を致しても済みませぬから、微臣は引き下りませう。此際御自愛あらむ事を懇願致します』
と云ひ捨て、恭しく敬意を表はし乍ら杖を力に下り行く。左守は道々思ふやう、
『どうも殿下のお声変り、これは何かの原因が有るだらう。どこともなしに今迄とは荘重を欠き、さうして今日は懸河の弁舌、ハテ合点の行かぬ事だなア。あの口調は悴のアリナにそつくりだ。然し何時もアリナが悪智慧をかうものだから、言葉づき迄が殿下に感染したのだらう。恐れ多い事だわい』
と独語ちつつ帰り行く。
 アリナはほつと一息し乍ら、
『アヽ危ない事だつた。又しても爺に訪問され肝玉がでんぐり返つて仕舞つた。幸ひ爺は胡麻かしたが、やがて右守がやつて来るだらう。こいつは困つたものだなア』
と腕を組んで思案の折柄、足早に簾を上げて入り来るは夜前情約締結を終へたシノブであつた。
シノブ『殿下、御心配なさいますな。あの調子なれば大丈夫で厶いますよ。現在の父上でさへも化の皮を剥ぐ事が出来ず、スダルマン太子と信じ切つて帰られた位ですから右守位は何でもありませぬ。そして右守は名代の近眼で厶いますから御心配なさいますな』
アリナ『いや誰かと思へば、汝は女中頭のシノブぢやないか。今日の場合陽気な事は云つて居れない。居間に下つて来客の接待でも致したが好からうぞ』
シ『ホヽヽヽ、殿下よう白々しいそんな事が仰せられますなア。妾はどこ迄も殿下のお傍は離れませぬ。殿下の挙措動作は一々次の間から調べて居りますから』
ア『大変な警戒線を張つたものだなア、まるきり監視附のやうなものだわい。アヽ太子の役も窮屈なものだなア』
シ『一国の王者にならうと思へば少々位の窮屈は忍ばなければなりますまい。茲二三日は特別訪問者が多う厶いませうから、確りして居て下さいませ』
ア『アヽ、スダルマン太子は何だつて帰つて厶らぬのだらう。「半日でよいから代つて貰ひたい」と仰有つたが、こんな所へ右守や重臣がどしどしやつて来ら終ひには化けの皮が現はれて了ふがなア』
シ『これだけの騒動、如何に呑気の太子様だとて悠々スバール姫に現を抜かしてお出になる筈はありませぬ。もう帰つてお出になるでせうから、もう暫く辛抱して下さいませ。天下分目の関ケ原、王者になるか、平民に下るかの分水嶺ですから』
ア『それもさうだ。誰が来るか分らないから、其方は早く簾の外へ罷り下つたがよからう。余は心配でならないわ』
シ『ホヽヽヽ、「余は心配でならないわ」などと、たうとう本当の太子に言葉つきだけはなつて仕舞はれましたなア。左様なれば邪魔者は罷り下るで厶いませう』
と、つんと立ち、ぷりんとして畳をぽんぽんと二つ三つ蹴つて一間の内に姿をかくした。それと入れ違ひに慌ただしくやつて来たのは右守であつた。右守は型の如く二拍手し、頭を床に下げ乍ら、
『恐れ乍ら右守の司、太子殿下に申上げます。昨夜以来城下大混乱の状況は左守の司より上申致したで厶いませうから、私は重ねて申上ませぬ。殿下におかせられても御壮健の御顔を拝し右守身に取つて恐悦至極に存じ奉ります。就きましては大王様の御容態俄に新まり、幽の息の下より「殿下を呼べ」と仰せられます。どうか一時も早く大王のお居間迄御賁臨を願ひ奉ります』
 アリナは一つ脱れて又一つ、
『アヽ偽太子もつらいものだ。大王殿下の傍には沢山の看病人も居るだらう、重臣共も居るだらう。そんな所へ往かうものなら忽ち秘密が露見して、フン縛られて了ふかも知れない』
と心に非常な驚きを感じたが、横着者の事とてわざと素知らぬ顔をして、
『何と申す、父王殿下が御危篤と云ふのか。それでは早速参上致さねばなるまい、余は是より衣服を着替へ神様に拝礼致し父王殿下の平癒を祈り直ちに参上いたすによつて其由を父王に伝へて呉れ』
右守『殿下のお言葉で厶いますが、錦衣のお着替へも結構、神様へのお祈りも結構で厶いますが、最早御臨終で厶いますから、直ちにお越し下さいませ。私がお供を致します。早く親子の御対面を遊ばしませ。後で如何程お悔やみ遊ばしても返らぬ事で厶いますから』
アリナ『余は直に参る。サ早く其方は余に構はず父のお側に行つて呉れ。余はどうしても神に祈らねば気が済まぬ。早くこの場を立ちのき父王の傍に行かぬか』
と声に力を籠めて呶鳴りつけたり。右守は鶴の一声に止むなく立つて帰り行く。後にアリナは、
『アヽ困つた事が出来たものだ。やつぱり左守の悴のアリナで居る方がよい。アヽどうしてこの難関を切り抜けようか』
と項垂れて居る。そこへ女中頭のシノブが走り来り、
『もし、アリナ様、殿下が帰られました。サアサア早く衣裳をお着替へなさいませ』
『何殿下がお帰りか、それや結構だ。や、助け船が帰つたやうなものだ。何処に居られるか』
シノブ『労働服を着た儘裏口に立つて居られます』
 アリナは急いで裏口に走り出で、
『ヤ殿下、よう帰つて下さいました。今や私の化の皮の現はれむとする所、父王殿下には今や御臨終で厶います。サア早くお会ひ下さいませ。さうして私は錦衣を脱ぎ捨て元のアリナに帰つて了ひます。今が危機一髪の正念場、サ早く錦衣にお着替へ下さいませ。何時重臣共が来るかも分りませぬ』
 太子は父の臨終と聞き着物を着替へる事を忘れ、又アリナも狼狽の余り、太子に錦衣を着せる事を忘れて了つた。太子はそのまま駆けつけ火鉢の前に坐つて見た。
太『ヤ、これや大変だ。労働服の儘だ。何とかして早く錦衣と着かへねばなるまい。オイ、アリナその錦衣を早く持つて来い』
と呼べど叫べどアリナは狼狽の余り錦衣を女中部屋に投げ捨て、トランクの中より有合せの寝衣を取り出して着替へ、便所の中に潜んで慄つて居た。一方太子は如何はせむと焦慮して居る。其所へ慌ただしく右守の司がやつて来て、簾の外より泣声を絞り乍ら、
『殿下早くお出下さいませ。御臨終で厶います』
 この声に太子は父の臨終と聞いて何も彼も打ち忘れ、汚い労働服の儘、右守の後に跟いて大王の病床に駆けつけたり。右守は近眼の事なり余り慌てて居るので、太子の労働服が目につかざりけり。
(大正一四・一・六 新一・二九 於月光閣 加藤明子録)
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