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文献名1霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
文献名2第1篇 花鳥山月よみ(新仮名遣い)かちょうさんげつ
文献名3第2章 折衝戦〔1769〕よみ(新仮名遣い)せっしょうせん
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじキューバーは、大足別の使者と称してトルマン城にやってきて、スコブツエン宗に国を挙げて改宗しなければ、軍隊を差し向ける、と脅す。王をはじめ左守フーラン・右守スマンヂーら重臣が集まり、善後策を協議していた。王妃千草姫・右守は慎重派であったが、主戦派の王と左守は慎重論を受け入れない。右守はかえって王妃と不義の疑いを受けてしまう。そして王と左守は戦の準備を始めてしまったのであった。キューバーは護衛を引き連れて城の奥に入り来たり、返答を強要する。千草姫はキューバーをなだめ置いて時間を稼ぎ、一方右守は再び王と左守に慎重論を採るよう、説得に走る。しかし、右守は王の逆鱗に触れ、手打ちとなり絶命してしまう。千草姫は形成不穏を感じ、キューバーを釘付けにするためにキューバーを密室に伴った。
主な人物 舞台 口述日1925(大正14)年08月23日(旧07月4日) 口述場所丹後由良 秋田別荘 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版22頁 八幡書店版第12輯 397頁 修補版 校定版22頁 普及版11頁 初版 ページ備考
OBC rm7002
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本文  トルマン城の会議室には、王のガーデンを始め、王妃千草、左守司フーラン、右守司スマンヂーの首脳部が首を鳩めてヒソビソ重要会議を開いてゐる。
ガーデン『エー、左守、右守の両人、突然重大問題が勃発したので、汝等両人を急使を以て引寄せたのだが、其方の智慧を貸して貰ひたい。トルマン国にとつては国家興亡の一大事だから……』
 左守右守は一度にハツと頭を下げ、畏まつて、王の第二の発言を待つてゐる。王は目をしばたたき乍ら、
『外でもないが、昨夜半頃頻りに門戸を叩く者あり。門番のタマ、タルの両人よりの急使に仍り、寝所を立出で、応接間に至り見れば、大足別将軍の使者と称し、此頃淫祠邪教を、吾国内に布教宣伝致し居るスコブツエン宗のキユーバーと申す妖僧、吾面前をも憚らず威丈高となり、……貴国は従来ウラル教を奉じ、国政の補助となし居らるる由、最早命脈の絶えたるウラル教を以て、人心を収めむとするは危険此上なかるべし。此度大足別将軍、大黒主の大命を奉じ、印度七千余国をスコブツエン宗に改宗せしむとの御上意、天下万民を塗炭の苦より救ひ、安養浄土に蘇生せしめむとの有難き御心なれば、謹んでお受けなされ。万一違背に及ばば、仁義の軍は忽ち虎狼の爪牙を現はし、トルマン城を屠り、王を始め、一般民衆の目をさまし呉れむ。王の御答弁如何に依つて、国家の安危の分るる所、速に返答召され……との強談、其暴状は言語に絶し、立腹の余り卒倒せむ許りに存じたが、いや待て少時、何とか斯とか此場の言葉を濁し、汝重臣共に親しく協議を遂げ、其上諾否を決せむと、キユーバーに向ひ、三日間の猶予を与ふべく申渡せし所、彼妖僧の勢、仲々猛烈にして、首を左右に振り、……只今返答承はらむ……との厳談、仮にも一国の主権者が、僅一人の妖僧に圧迫さるべき理由なし。さり乍ら、只一言の下に叱咤せむか、彼は時を移さず、大足別の軍を率ゐて当城を十重二十重に取囲まむず鼻息残念乍ら、千言万語を費し、一日の猶予を請ひ、返答すべき事に致しておいた。左守右守殿、如何致さば可からうかな』
左守『何事かと存じ、取る物も取り敢ず、登城致し、承はれば容易ならざる出来事で御座ります。仮にも一天万乗の国王殿下に対し、素性も分らぬ怪僧の暴言、聞捨なり申さぬ。最早此上は折衝も答弁も無用で御座ります。速に国内の兵を集め、大足別の軍勢を殲滅致し、国家の災を艾除致したく存じます』
王『成程、汝が言、余の意に叶へたり。サア、一刻も早く募兵の用意を致せ。城内の兵士にも厳命を下し、防備の用意に取かからしめよ』
左守『ハイ、殿下の御上意、謹んで御受け致します。右守殿、貴殿は一刻も早く国内に伝令使を派し、国家の危急を救ふべく軍隊をお集めなさい』
右守『これはこれは左守殿のお言葉とも覚えぬ。左様な無謀な戦を致して、天壤無窮のトルマン国を亡ぼす左守殿の拙策。最早かくなる上は、暫時キユーバーの意見に従ひ、王家を始め、国民一般、彼が唱ふる宗旨に帰順せば、天下は無事泰平、国民は塗炭の苦より免れ、仁君と仰がれ給ふで御座らう。万々一雲霞の如き大軍を向方へ廻し、全敗の憂目に会はば万劫末代取返しのつかざる大失敗で御座らう。殿下を始め左守殿、此所をトクとお考へ下され。王家の為、国家の為、右守身命を賭して諫言仕ります』
王『此場に及んで、卑怯未練な右守の言条、国帑を消費して、平素軍隊を養ひおきしは何の為だ。かかる国難に際し、挙国一致的活動をなし、外敵を防ぐべき用意の為ではないか。かかる卑怯未練な魂を以て、優勝劣敗の現代、殊に七千余国の国王は各軍備を整へ、虎視耽々として、国防に余念なき此際、祖先伝来のウラルの神の教を放擲する如きは神の威厳を損ひ破り、御無礼此上なく、却て国家の滅亡を早めるであらう。此トルマン国はウラルの神の厚き守護あり、何を苦んで、かかる妖教に腰を曲げむ。しつかりと性根を据えて、所存の臍を固めよ』
右『君の仰せでは御座いまするが、此際余程冷静にお考へを願はねばなりませぬ。取返しのつかぬ事で御座いますから』
王『然らば汝の意見は、何うせうと云ふのだ、腹蔵なく申して見よ』
右『ハイ、恐れ乍ら申上げます。敵は目に余る大軍、城下近く押寄せ来る此際、遅れ走せに軍隊を召集すればとて、何の役に立ちませうぞ。城内の守兵は僅に五百人、敵の総勢三千騎、国内全部の兵員を集めた所で、漸く二千五百人では御座らぬか。五百人の兵を以て三千人の精鋭に当るは、恰も蟷螂の斧を揮つて竜車に向ふがごときもので御座ります。国内の総動員を行ひ、いよいよ戦闘準備の整ふ迄には、何程早く共三日間の時日を要します。さすれば、既に既に戦争の済んだ後、六菖十菊の無駄な仕業と存じます。かかる見易き道理を無視し戦ふに於ては、国家の滅亡、風前の灯火よりも危う御座います。何卒此際右守の進言を御採用下さらば、国家の為、実に幸福と存じます』
千草姫『王様を始め左守右守殿の御意見を承はれば、何れも御尤も千万、併し乍ら妾は右守の説を以て、最も時宜に適した方法と考へまする。殿下何卒、右守の説を御採用あらむ事を御願ひ致しまする』
王『馬鹿を申せ、其方迄が夫の説を抹殺せむと致すか。其方の平素の挙動は腋に落ちぬと思つてゐた。国家滅亡の原因は女性にありといふ事だ。殷の紂王が国を失ふたのも矢張女性の横暴からだ。女童の知る事でない、下がり居らうツ』
と百雷の一時に落下したる如き怒声、千草姫は縮み上つて顔色蒼白となり、其場に慄ひつつ倒れて了つた。王は此有様を目にもかけず、尚も言葉を続けて、
『ヤ、左守、最早かうなる上は、余と汝と両人力を併せ、外敵を殲滅致さう。余は之より陣頭に立ち、三軍を指揮するであらう。サ、左守、其準備に取かかれよ』
左『年は寄つても、武術を以て鍛へた此腕つ節、仮令大足別の軍勢、百万騎を以て押寄せ来る共、何かあらむ、盤古神王の御神力を頭に頂き、八岐大蛇の悪魔の守る大足別が軍勢を、千変万化の秘術を以て駆け悩まし、奇兵を放つて殲滅し呉れむ。いざ右守殿、用意を召され』
右『これは心得ぬ、御両所のお言葉、薪に油を注ぎ、之を抱いて火中に投ずる如き危険極まる無謀の抗戦、いかでか功を奏せむ。先づ先づ思ひ止まらせ給へ』
王『左守、右守の如き逆臣を相手に致すな。千草姫は平素余が目をぬすみ、右守と……を結んでゐるといふ事は、某々等の注進によつて、一年以前より余は承知してゐる。かかる逆賊を城内に放養するは、恰も虎の子を養ふに等しからむ。一時も早く縛り上げよ』
千草『王様のお情ないお言葉、決して決して妾は左様な疑を受けやうとは夢にも存じませぬ。良薬は口に苦く、忠言は耳に逆ふとかや。右守殿は王家の為国家の為、命を捧げて居りまする。時代の推移を明知し、政治の大本を弁へ居る者は、右守をおいて外には御座いませぬ。今日の世の中は、余程変つて居りまする。徒に旧套を墨守し、国家を立てむとするは愚の骨頂で御座います。何者の誣言かは存じませぬが、妾に対して不義の行為あるが如く内奏致すとは、言語道断、不忠不義の曲者、かかる乱臣賊子の言に御耳を傾け給はず、妾が進言を冷静に御考へ下さいませ。最早かくなる上は周章狼狽も何の効果もありますまい。落ちついた上にも落ついて、国家百年の大計をめぐらさねばなりますまい』
王『汝こそ、金毛九尾の霊に魅せられたる亡国の張本人だ。綸言汗の如し、一度出でては再び復らず。汝が如き亡国の世迷言、聞く耳持たぬ』
と立上り、弓矢を執つて、左守と共に立出でむとする。斯かる所へ、スコブツエン宗の妖僧キユーバーは数十人の武装せる兵士に守られ乍ら、悠々と現はれ来り、
『スコブツエン宗の大棟梁キユーバー、大黒主の命により、大足別の軍を率ゐて向ふたり、速に返答致せツ』
と呼はつてゐる。千草姫、右守司は矢庭に玄関に走り出で、
千草『これはこれは、御神徳高き救世主様、よくこそお越し下さいました。仁慈無限の大黒主の思召、何条以て反きませう。祖先以来のウラル教を、放擲し、貴僧のお言葉に従ひ、スコブツエン宗に国内挙つてなりませう。どうか軍隊を以て向はせらるるは穏かならぬ御仕打、兵を引上げ下さいませ。妾が身命を賭して、御請合申上げます』
キユ『アハヽヽヽヽヽ、流石頑強なガーデン王も往生致したか、左守はどうだ。異存は無からうか、両人の確なる降服状を渡して貰ひたい。さもなくば大黒主様大足別に対しても、愚僧の言訳が立ち申さぬ。サ、早く屈服状を御渡し召され』
 斯く話してゐる内に、ガーデン王、左守は兵営に走り行き、数多の将士に厳命を伝へ、敵を撃退すべく準備に取かかつてゐた。キユーバーは王を始め左守は奥殿に戦慄し、蚤の如く虱の如く寝所に忍んでゐるものとのみ慢心して気を許し、降服状を受取らむと応接の間にどつかと尻を卸し、椅子にかかり茶を啜りつつ、
『アハヽヽヽ、これこれ千草姫殿、右守殿、大黒主の御威勢は大したもので御座らうがな。其方の計らひ一つによつて、此トルマン城も無事に助かり、耄碌爺のガーデン王も、左守のフーランも先づ之で首がつなげると云ふもの、まづまづお目出たう存ずる』
 千草姫は王や左守の主戦論者たる事を悟られては一大事、何とかして二人の我が折れる様と、心中深く祈りつつ、素知らぬ顔にて、
『キユーバー様、貴方はトルマン国に対し、救世の恩人、億万年の後迄も此御恩は決して忘れませぬ。これこれ右守殿、王様始め左守其他の重臣に、此由を御伝へ下さい。キユーバー様は妾が御接待申して居るから……』
 右守は千草姫の心を推知し、此間に王及左守の心を和らげ、後は兎も角此場合キユーバーを欺いて、帰順した如くに見せかけ、徐に策をめぐらさむと、王の居間に入つて見れば藻脱けの殻、コラ大変と、軍務署へかけつけて見れば、既に城内の兵士は武装を整へ、王も亦甲冑をよろひ、槍を杖について、今や、一斉に総攻撃に出でむとする間際であつた。
右守『若し若し殿下、話は甘く纒まりました。どうか暫く御待ち下さいませ』
王『キユーバーが降服致したのか、如何纒まつたのだ』
右守『ハイ、キユーバーは数十の精兵を引連れ、厳然と控へて居りまする。それにも拘らず、大足別の大軍は今や返答次第によつて、本城を屠らむとして居りまする。一時敵を欺いて、油断させ、其間に国内の総動員を行ひ、城の内外より挟撃にするのが、軍術の奥の手と存じ、詐つてスコブツエン宗に降伏致しておきました。何卒々々武装を解き、左守殿と共にキユーバーにお会ひ下さいませ』
 王はクワツと怒り、
『不忠不義の曲者右守奴、吾許しも無く勝手に左様な国辱的行動をなすとは、鬼畜に等しき其方、最早勘忍ならぬ、覚悟せよ』
と言ふより早く、槍をしごいて、右守の脇腹に骨も徹れとつつ込めば、何条以て堪るべき、右守は其場にドツと倒れ伏し、虚空を掴んで息絶えて了つた。
王『アハヽヽヽヽ、首途の血祭に国賊を誅したのは幸先よし。サ、之より千草姫、キユーバーの両人を血祭にせむ』
と云ひ乍ら、左守に軍隊を監督させおき、自ら数十名の精兵を従へ、応接間を指して勢猛く出でて行く。
 千草姫は何となく、形勢不穏の気がしたので、キユーバーに対し、秋波を送り乍ら、密室に伴ひ、ドアの錠を中から卸し、声を忍ばせ乍ら、王始め左守の強硬なる意思を伝へ、キユーバーの身の危険なる事を告げた。千草姫は決して右守司と醜関係を結んでゐなかつた。只国家を思ふ一念より、時代を解する彼を厚く信じてゐたのみである。智慧深き千草姫は仮令一時キユーバーを亡ぼす共、後には大足別控へ居れば、最後の勝利は覚束なし。若かずキユーバーの歓心を買ひおき、国家の安泰を守らむには……と、自分が国内切つての絶世の美人たるを幸ひ、彼を薬籠中の者として了つたのである。暴悪無道のキユーバーも千草姫の一瞥に会ふて骨迄和らぎ、まんまと姫の術中に陥つたのは幸か不幸か、神の審判を以て処決さるるであらう。
(大正一四・八・二三 旧七・四 於丹後由良秋田別荘 松村真澄録)
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