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文献名1霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻
文献名2第2篇 迷想痴色よみ(新仮名遣い)めいそうちしき
文献名3第13章 詰腹〔1802〕よみ(新仮名遣い)つめばら
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
アリナは、玄真坊が左守シャカンナを兄弟分と呼び、自分の罪を認めようとしないのに困って、シャカンナ本人に相談にやってきた。

シャカンナは、3人の泥棒を内々に自分ひとりで取り調べることとなった。

シャカンナは、かつて自分が山賊をしていたことが、今回のことで明らかになってしまうのではないかとひそかに思い悩む

昔、政変で城を追われたシャカンナは、国政再興を夢見て、山賊となって力を蓄えようとした。しかし彼の悲願であった国政再興は、武力ではなく、娘のスバールが開明的な太子に見初められ、また自分を追放した政敵の息子=アリナの協力を得たことによって実現したのであった(第六十七巻第三篇から第六十八巻参照)。

シャカンナの前に引き出された3人は昔のことを並べ立て、無理難題をふっかけてシャカンナをゆする。

シャカンナは、昔の部下の有様に責任を感じ、金を与えて放免する。しかしその後すぐに、自分は遺書を残し、神前で切腹して果てた。

昔の義理によってしたこととはいえ、罪人を自分の一存で放免することは国法違反であり、その責任を取っての詰め腹であった。アリナは王・王妃に、シャカンナの遺書とともに事の顛末を報告したのであった。
主な人物 舞台 口述日1926(大正15)年01月31日(旧12月18日) 口述場所月光閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1929(昭和4)年2月1日 愛善世界社版170頁 八幡書店版第12輯 562頁 修補版 校定版178頁 普及版83頁 初版 ページ備考
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本文  左守の司の館の離れ座敷には、戸障子を密閉して右守、左守が何事か秘々密談に耽つて居る。
右『左守様、此間は広小路の大火によりまして大変にお気を揉ましましたが其後何のお変りもありませぬか。あの混雑にまぎれ込み、賊がお館に忍び込みなど致しまして大変御心配で御座いませう』
左『イヤ御親切に有難う御座る。ヤ、もう年は取り度ないものだ。かうして床の間の置物のやうに左守の司となつて居るが、心許り焦るのみでやくたいも無い事で御座る。谷蟆山の谷間に居つた時は何とかして再び元の左守となり、国政の改革をかうもやつて見よう、あゝもやつて見ようと十年の間心胆を砕いてゐたが、実地に当るとどうも甘く行かぬものだ。自分の心では確りして居るやうに思ふが、何とはなしに耄碌したと見えるわい』
右『左守様、何を仰有いますか、貴方の御名声は大変な人気で御座いますよ。この右守も貴方の御威光によつて歪みながらも御用を勤めさして頂いて居りますが、行き届かぬ事許りでさぞお目だるい事で御座いませう。国王殿下は未だ御若年でもあり、左守様に気張つて貰はねば到底タラハン国は支へられますまい』
左『賢明なる国王殿下と云ひ、聰明なる其方と云ひ、タラハン国の柱石はもはやビクとも致すまい。吾は老年、気許り勝つて思ふやうに体が動かない、困つたものだ。政務一切を其方に打ちまかして誠に済まないと思ふが、若い時の辛労は買ふてもせいと云ふからどうか一つ気張つて下さい。自分は床の間の置物で居るのだ』
右『何を仰有います。青二才の吾々、何が出来ますものか、皆左守様のお指揮によつて、どうなりかうなり御用が勤まつて居るので御座いますから。時に左守様、広小路の大火災の夜お館へ忍び込んだ泥棒について昨日取調べました処、大変な事を申ますので取調を中止し牢獄につないでおきましたが、又しても左守様のお名を引き合ひに出しますので陪臣の手前誠に困つて居ります。如何致せば宜敷う御座いますか』
左『此左守を引き合に出す泥棒とは一体何者で御座るかな』
右『何でも天来の救世主、天帝の化身、第一霊国の天人、天真坊だとか申して居ります。そして左守様とは兄弟分だと主張しますので、一応伺ひました上取調をせうと思ひまして、態々お伺ひ致した次第で御座います』
 左守は当惑さうな顔をし乍ら、
『右守殿、大方それは発狂者で御座らう。兎も角拙者が明日取調べて見ませう。どうか誰も来ないやうにして下さい』
右『ハイ畏りまして御座います。夫からもう二人の泥棒も天真坊と同様に左守殿の御名を引き合に出し、左守の親分に会せと主張致して居ります』
左『其二人の泥棒の名は何と云ひましたかな』
右『ハイ、一人はコブライと云ひ、一人はコオロと申て居ります』
左『ハテナ、谷蟆山の岩窟に……』
と云ひかけて俄に言葉を切り、
左『長らくの間拙者も谷蟆山の奥深く世を忍んで居つたものだから様子も分らず、又如何なるものが自分の顔を見知つて吾名を騙つて居るかも知れますまい。何は兎もあれ三人の泥棒を右守殿、そつと吾館へ呼んで来て下さいますまいか、内々取調べたい事が御座るによつて……』
右『左守様の仰せとあらば、仮令掟に背いても呼んで参りませう』
左『いや白洲で調べるのが規則であれど、この左守は知らるる通りの老体、到底足が続かないから、吾館で取調べて見たいと思ふのだ。左守は一国の宰相、吾家で調べやうと、白洲で調べやうと些つとも差支へはない筈だ。かかる例は先王の時代から幾度もあつた事だから』
右『これはえらい失言を致しました。然らば明日はこれに引き立てて参りますから、篤りお調べを願ひます。左様なら』
と慇懃に挨拶を述べ己が館へ帰り行く。後に左守は脇息にもたれ、吐息をつきながら独語。
『アヽ人間の行末位果敢ないものはないなあ。臥薪甞胆十年の艱苦を凌いでヤツと目的を達成し、元の左守となつて国政を改革し、新王殿下の政治の枢機に参与する身分となつたと思へば寸善尺魔の世の中、奸侫邪智に長けたる玄真坊が泥棒となつて入り込み、右守に迄も吾古創を羅列して聞かしたであらう。アー情ない。どうして今日の地位が保たれやうか、困つた事になつたものだ。自分は心より泥棒の親分となつては居なかつたが、タラハン国を思ふ余り手段を選まなかつたのが吾身の不覚だ。そして今度の国政の改革について二百の部下は妨げにこそなれ、力になつた奴は一人もない。あゝ世の中は正義公道を踏まねば末の遂げられないものだなア』
 左守は来し方行末の事など思ひ浮べて、其夜は一目も得眠らず夜を明して了つた。
 烏は塒を放れて嬉しげに太平を歌ひ、雀はチユンチユンと愉快気に軒に囀つて居る。左守は之を眺めて又もや独語、
『あゝ私は何故あの烏に生れて来なかつたらう。自由自在に大空を何の憚る事もなく前後左右に翺翔する様はまるで天人のやうだ。雀は無心の声を放つて千代々々とないてゐる。それにも拘らず、神の生宮と生れた人間の吾身、何故まアこれだけ苦しみの深い事だらう』
と吐息を漏らして居る処へ、玄真坊、コブライ、コオロの三人は獄吏に護られ大手を振り乍ら裏門を潜つて左守の居間の庭先へやつて来た。左守は玄真坊の姿を見るよりアツと許りに打ち驚き卒倒せむとしたが、吾と吾手に気を取り直し、
『やア獄卒共御苦労であつた。三人の者はこの左守が預かつておく。早く帰つて呉れ』
獄卒『ハーイ』
と云ひ乍ら獄卒は逸早く此場を立ち去つた。傍に人なきを見済した玄真坊は遠慮会釈もなくツカツカと座敷に飛び上り、左守の前に胡座をかき黙然として左守の顔を睨めつけて居る。コブライ、コオロの両人も玄真坊の左右に胡座をかき、無雑作に控へて居る。
左守『ヤアお前は玄真坊ぢやないか、何処を迂路ついて居たのだ。さうしてダリヤ姫は手に入つたのか、其後の経過を話して呉れ』
玄真坊『ハヽヽヽヽ、ダリヤはどうでもよいがオイ兄貴、随分山カンが当つたものだのう。綺麗な娘を持つたおかげで、一国の宰相と迄なり上つたのだから、些つとはおごつて貰つても好かりさうなものだ。此間もタラハン市の火事と聞くより兄貴の家が険呑と思ひ、この両人と共に救援に向つたところ、訳のわからぬ雑兵どもが泥棒と間違へ牢獄にぶち込みよつたのだ。お前も俺の危難を聞かんでも無からうに、素知らぬ顔とはあまり虫がよすぎるぢやないか。そしてあの右守の青二才奴、俺に対して無礼の言をほざきよつた。どうだ兄貴、兄弟の誼で俺の云ふ事を聞いて呉れないか』
左『一体どうせいと云ふのだ』
玄『外でもない、あの右守を免職さしてその後釜にこの玄真坊を直すか、それも叶はずば、兄貴が右守となり、俺を左守に推薦するか、二つに一つの頼みを聞いて貰ひてえのだ』
左『外の事なら何でも聞いてやるが、オーラ山で泥棒をやつて居つたお前を、左守の司に推薦する事は到底叶ふまい。殿下のお許しが無いに定つて居るからのう』
 玄真坊は大口あけて高笑ひ、
玄『ハヽヽヽヽ、オイ兄貴、そりや何をいふのだ。俺はオーラ山に於て三千人の泥棒の大親分だぞ、兄貴は僅かに二百人の小泥棒の親分ぢやないか、二百人の親分が左守となつて、三千人の大親分が左守になれないと云ふわけがあるか。それはチと勝手な理窟ぢやないか』
 左守は「ウン」と云つたきり、黙念として頸垂る。コブライは膝をにじりよせ、
『もし親分、貴方は目的を達したらお前を重臣に使つてやらうと仰有つたな。なア コオロお前だつてさうだらう。毎日々々日課のやうに聞かされて居つたのだからのう。俺だつて泥棒をして居たい事はないが、何分親分の命令を忠実に守つてやつて来たのだから、親分が出世すりや俺達も出世するが当然ぢやないか』
コオ『ウン、そりやその通りだ。もし親分、いや左守さま、この瘠つ節を買つて下さるでせうなア』
左守『そりや確にお前達にも其の約束はしておいた筈だ。併し今日ではその約束を実行出来ないのを遺憾とする。仮令吾館へ応援に来てくれたにもせよ、護衛兵の目を忍び裏門から忍び込み、宝庫の錠前を捻切らうとして居たのだから誰の目から見ても泥棒としか認められない。今日は最早お前方を罪人と認める。心易いは常の事、タラハン国の掟は枉げる事は出来ない。三人共死罪に処すべきが掟なれ共、兄弟分や主従の誼で俺が見逃してやらう。サア一時も早く裏門から姿を隠したらよからう。此上タラハン城に迂路つけば再び捕縛せらるるであらう、さうすりやもう俺の手には及ばない』
玄『エヽ仕方がない、今日はおとなしく帰つてやらう、併し左守随分金が溜つたらう、ちと土産にくれないか、金なしには何所へ行くわけにも行かないからな』
左『そんなら仕方がない、お前が忍び込もうとしたあの庫の中の有金をすつかりやるから、それを持つて早く姿を隠してくれ。後は私が何とか始末を付けて置くから』
玄『ヤ、実の処はお察しの通り其金が欲しかつたのだ。遉は兄貴だ』
コ『ヤア遉は親方……金さへあれば名も位も何も要ぬぢやないか』
コオ『親分有難う、そんなら遠慮なしに三人分配して帰ります』
 これより三人は山吹色の小判をしこたま身につけ裏門より木の葉茂れる密林を縫ふて、何処ともなく姿を隠した。後に左守は料紙を取りよせ、筆の跡も麗々しく国王、王妃両殿下を初め右守に当てたる書置を残し、自分は白装束となつて、三五の大神の祭りある神前にて腹掻き切り立派な最後を遂げた。
 かかる事とは夢露知らぬ右守の司は、様子如何にと再び左守の館を訪ひ、案内もなく離棟の座敷に行つて見れば左守は紅に染つて縡れて居た。そして其処に三通の遺書が認めてあつた。アリナは取るものも取りあへず自分宛のを封押し切つて読み下せば左の通りであつた。

一、拙者事、国王殿下のお見出しに預り日頃の願望を達し、国政に参与の栄を担ひ居り候処、今日玄真坊、コブライ、コオロの無頼漢、左守たる拙者に向ひ無礼の言を吐き候も、これを咎むるの権威なく、止むを得ず金銭を与へて逃げ帰らし申候。斯の如き左守の処置は国王殿下の発布されたる法律を無視し、且蹂躙せる大罪にして、到底此儘職に留まるべき資格なく、国家の大罪人なれば、両殿下を初め、右守殿其他国民一般に対し謝罪のため、皺腹切つて相果て申候。今後は何卒々々殿下を輔け奉り、タラハン国の基礎を益々鞏固ならしむべく、奮励努力あらむ事を願ひ申候
      国家の大罪人 シヤカンナより
   右守殿 参る

と認めてあつた。アリナは之を見るより驚き乍らもわざと素知らぬ顔を装ひ、城中に参内して両殿下に事の顛末を詳細に言上し、二通の遺書を捧呈した。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一五・一・三一 旧一四・一二・一八 於月光閣 加藤明子録)
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