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文献名1大本史料集成 2 >第1部 明治・大正期の運動
文献名2第3章 幹部その他関係文書よみ(新仮名遣い)
文献名3第3節 大本神諭に照らされたる世界覆滅の大陰謀よみ(新仮名遣い)
著者浅野和三郎
概要浅野和三郎の著作
備考底本にはたくさん傍点が振ってあるがすべて省略した。
タグ データ凡例 データ最終更新日2019-05-14 05:53:46
ページ195 目次メモ
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本文の文字数20883
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本文    序
 教祖のお筆先の中に、露国に上りてをつた悪神の仕組云々の文句が、所々に見えますが、何のことだか判じ物のやうな感がないでもなかつた。然るに大正八年の初夏に、マツソン秘密結社の陰謀を曝露した印刷物が、日本の某重要官衙の手に入り、次いで我大本にもその一本が到来した。これが即悪神の筆先ともいふべき、其の結社長の演説草稿である。これで教祖のお筆先の謎がとけたのである、今回両者を対照して如何にも分り易いやうに編輯した人があるので、取りあへず叢書の一として出版することにした。この人は井上顧問の令息で、廿歳の青年ではあるが、頭脳の明敏な又、恪勤励精の好信者である。序でに其の労を推奨して、紹介の辞に代へておかうとおもふ。
大正九年三月浅野和邇三郎
一 総論
 私は大正八年十二月十五日号神霊界教主補様の随筆で、悪神の企みが雑誌「公論」紙上で曝露されたと拝読したので、早速同誌を神戸堂で購めた。
「人類共同の仇敵世界覆滅の呪咀A秘密結社の大陰謀」
 劈頭この大袈裟な見出しに先づ驚かされ乍ら読み初めた。
 滔々五十余頁に亘るマツソン結社の大企画!
 私は其陰謀の余りに浩大なると、其方法手段の余りに巧妙悪辣なるに、只々驚愕嗟嘆、頁を繰る手も為に打振ふのであつた。が、私は読み終つて更に更に驚くべき事実を発見した。
 即ち、此陰謀書が我大本神諭と全然合致して、恰も符節を合せたるが如くであるといふ事である。
 で、私はこれから両者を数項に分つて、比較対照して見やうと思ふのである。それには先づ此陰謀書、即ち此結社長の演説の稿本が如何なる性質なものであるかを究むるのが最も必要なことである。
 抑も、此秘密結社の最高幹部は猶太人によつて組織されて居て、金力と学力とを動力として巧妙毒悪なる画策を廻し、暗々裡に世界統一を九分九厘まで完成して居るのであるが、勿論こは単なる人為的の結社に非ずして、其後には邪神界の一大勢力の潜在せるは明白のことである。そは我皇道大本の背後には正神界の大勢力の厳存せると同じであらう、而して此邪神界の主宰神は大本神諭の「八尾八頭の大蛇神(露国の悪神)」と「金毛九尾白面悪狐」とである。
 此二邪神は神界にては国祖初め正神界の神々を圧倒駆逐して自ら地の神界(顕の幽界)の主宰神となり、遂には天の神界(幽の顕界)までも其の手を延べんとし、現界にては己が霊統をひける一猶太人に依つて全世界を統一せんとの企画を、泥海時代より起して居たのである。それは「其蛇神の目的は綾部の高天原を中心と致して置いて、自身が天へ上りて天から末代地界を守護致したいと云ふ思惑でありたなれど」(大正八年十二月十八日)
「利己主義の行り方でモウ一ツ悪を強くして、日本の国を平げて世界中を外国の世界に致して王の王になりて末代続かせる仕組をして居るから」(大正六年旧十一月廿三日)
の神諭によつて明かである。
 此結社は彼の悪神が、主として現界に於ける目的-世界統一-を達する為め、実行機関として造つたもので、国祖が現幽両界に亘る立替立直を遂行し、正神界の主宰神に坐します天照皇大神の霊統を継承し給へる我日本天皇陛下の下に、現世界を統一せんが為め皇道大本なる団体を造られたと同一であらう。
 然らば其機関の首脳者たる社長には此邪神の内何れかが憑依して居るのはモウ寸毫の疑を挾む余地もないのである。
「支那の帝政を覆し、露国の君主制を滅し、次で独逸其他の君主国を破壊したガガアールの悪神の霊魂は、米国に渡りてウイルソンの肉体を機関と致して世界を乱らし」(大正八年八月十二日)
 このガガアールと云ふのは八尾八頭の蛇神ださうだから、この社長には今一つの四足の頭が憑つてゐるのではあるまいか。
「四足の霊は唐天竺へも渡りて来て、国々の人民の守護神を我の自由に致して全然人面獣心国に致して、未だ此上に日本の国の王の○○○を自由に致す積りであるが」(明治四十年十月十六日)
 なる神諭と、世人が此結社の悪計に籠絡され、日本人の内にもかゝる人が年々歳々激増しつ』あるのとを対照して見ると、さうも考へられる様だ。
 正神界に変性男子の経役と女子の緯役とがあるからには、邪神界にも亦有るに違ひない。即ち此社長が経役、独帝ウイルソン等が緯役をやらせられて居るのではあるまいか。
 然らば、此演説の稿本はその憑依せる邪神の頭が社長の肉体を使つて書いたもの、即ち邪神界の神論と見做すことが出来るのである。
 是の稿本を霊的方面よりの観察で無しに、単に人為の結社長の目論見として見ても実に驚死すべき者で、世界人類殊に我々日本人は正に反覆熟読三省すべきものであるが、之を彼の悪神の頭の筆先として見たならば、更に更に驚くべき深意義が発見されるのである。 否私をして言はしむれば、然う解するに非ずんば、到底其真意義を極むることは出来ない。即大本神諭を国祖の神懸と考へずに、教祖が肉体で書かれたものとして解釈するも、少しも其真意を捕ふることの出来ないのと趣を同じくして居ると思ふのである。故にこの両者の比較は実に正邪両神界の神諭の対照である。
 吾人はこれによつて神界の御経綸の深遠広大なると、時期の大切迫と、大本神諭の絶対的権威とを、悟らざるを得ぬのである。
 只憾むらくは、私の読み様の浅薄ながために此抄録を甚だ不完全杜撰な者としたことで、この点は深く謝する次第であります。
大本神諭とマツソン結社社長演述稿本との対照
(一)自由平等の権利
(マツソン)吾人が自由・平等・四海兄弟なる標語を民間に放つたのは、既に古代の事である。夫以来、此等の語は幾度といふ事なく鸚鵡返しに復習されてゐる。其鸚鵡は此好餌に飛び集り、之を咥えて去ると同時に、世界の幸福を破壊し、真正なる個人の自由を破壊した。所謂智識階級の猪口才な人は、此等の語の抽象であることを知らぬ。其意味の矛盾と調和とを知らぬ。又自然界には平等なく自由の有り得べからざることや、自然に於る智識才能の不平等が自然の大法則であることを知らぬ。
 自由・平等・同仁といふ言葉は、吾人の牒者が之を世界の隅々に宣伝した。幾千万の民衆は吾人の陣営に投じ来り、此旗を担ぎ廻つて居る。然るに、実際は此標語は到る処に平和と安寧とを破壊し、国家の基礎を顛覆して、欧米人の幸福を侵害する獅子身中の虫である。是が吾人の勝利を助長したと言ふことを、諸君は後日首肯せらるゝあらう。
 権利を愛する者を刺撃〔戟〕して権力を濫用せしむる為には、吾人は独立解放といふ我儘な主張を鼓吹して、あらゆる勢力を樹立せしめた。
 自由といふ抽象的な標語は、何者を民衆に与へたか。政府といふ者は、国家の持主たる人民の手代に過ぎないから、破れた靴の如く之を委棄交代せしめる事が出来るものだと云ふ観念を与へた。人民が代表者-政府の-を交代し得るといふ事が即ち吾人に其代表者を左右することの機会を与ふるものである。
 若し人間に自由を与へて或年月之に自治を許すならば、放縦に流れるに極つてゐる。其から内乱が起る、団体的戦争も起る。次第に国家は紛乱して、国家が無くなる。自由主義によつて、色々の権利が主張せられ、要求せらる。随つて国家と法律との力が段々減殺せられる。吾人はかゝる国家に新権利を獲得し、之を支配する。斯くして彼等は自由と我儘とによつて、実権を我等に明渡すことになり、我等は之を受取つて彼等を圧制してやるのだ。
 吾人は各国民に対しては極力自由主義を鼓吹するけれども、吾党の内では絶対的無言服従である。
 吾人の天下になつた時、国民学校で教へねばならぬことは、唯一の学問、学問中の学問である。其は何か。人生の組織と分業とを有する社会組織である。換言すれば、人間を階級に分たねばならぬと云ふことである。平等は有り得べからざる者であることを各自が記憶せねばならぬ。何となれば各自の行動の価値が異つて居るからである。
 真の自由は「自由は放縦な我儘をする権利ではなく、又人間の力と真価とは良心の自由平等などの如き破壊を主張する権利にあるのではない。又個人の自由とは烏合の集会場で駄弁を弄し、自他を混乱させる権利ではない。真の自由は公共生活の諸規則を守る人の不可侵権であり、又人の真価は自分の権利と同時に無権利を自覚するにあるもので、自己といふ問題にのみ没頭して空想を描いてはならぬ。」
(大本神諭)自由平等とか申すことは一寸と聞けば誠に結構な行り方の様であるが、日本の神国の御先祖様の道を外れて、外には自由も平和も来るものではないぞよ。日本には、天照皇大神様の万古不易の動かぬ神教があるから、此教を忘れて向ふの国の悪神の行り方いたしたら、到底世界は安心して暮すことは出来ぬから、日本の神国の人民は一人も残らず天照大神様の御血統を立て、麻柱の誠を貫いて行かねばならぬ、大きい天からの責任が有るのであるから、国の権力や神の稜威を無視するやうな悪神の計略にかゝらぬ様にして下されよ。(大正八年八月十一日)
 露国の悪神の霊魂が日本へ渡りて来て、他人の苦労で此世を盗みて、好き寸法の世の持方致して、日本魂の胤を無茶にいたして自己さへよけらよいと申して、栄耀栄華の仕放題の世の持方に……(明治三十三年二月十一日)
 世を立替へて了はんと上が下に覆りて居るので、斯世が思ふ様に行かんのであるぞよ。上は上の位、下は下に住みて物事に順序を立てねば誠の修りはつかんぞよ。(明治三十三年八月十三日)
 上は上、下は下相応の行を致して、区別を立てゝ何彼の規則を決めるぞよ。規則通りに致さねば向後の世は厳しくなるぞよ。これ迄とは天地の違に変るぞよ。(大正元年旧十月五日)
 今や、世は挙つて、自由平等に権利主張に狂奔し、苟も之に反対的口吻を洩らす者は、二、三世紀もおくれた者として早速に社会から葬り去られさうな勢である。而も、曷ぞ知らん此語は、A結社即邪神が既に古代より世界各国民に注射し、之を麻酔狂惑せしめ以て各国を紛乱倒壊せしめんとして居る麻酔薬であらうとは、誠にあきれるより外はないではないか。げにも自由平等にあこがるゝ者は、大本神諭の「放縦な好寸法な我良しの行方」に相違ない。此自由平等の標語は彼等にとつて最も大切な武器であるが、之が如何なる方面に如何にして使用せられ、如何なる効果を齎したかは、章を重ぬるに随つて判明する。
 又世の学者輩は、大本信者を以つて「所謂智識階級」と笑つてゐる。
 一方社長は彼等博学の士を指して、亦「所謂智識階級の猪口才な人」と嘲つてゐる。吾人は茲に非常なる滑稽と皮肉を見出すではないか。
(二)無神論物質文明科学の発達と金力崇拝
(マツソン)自由が若し敬神を根拠として四海同胞主義に根拠を有する時は、国民の幸福を阻碍することなく、国家組織は維持して行くことが出来る。斯る宗教と信仰とを持つて居る時は、人民は地上に於る神の摂理に従ひ、教会に統御せられ、甘じて温柔に精神の父なる牧師の命に従ふものである、夫故吾人は宗教の根底を覆し、世界人類の裡から神の観念を抜き取り、之に代ふるに打算と数理的要求とを以てせねばならぬ……。
 かくすれば社会を指導するものは唯打算、即ち金力のみになり、金力が与ふる物質的快楽の為に金力のみを崇拝することになるだらう。
 そうなると、各国の下層民は至善に勤むる為でもなく、又富の為でもなく、唯上流社会に対する憎悪から吾人に服従して、吾人の競争者たる上流社会の権力を奪はんとすることになるのだ。
 吾人は文明進歩と云ふ一語を以て各国民を惑はせて大いに成功したではないか、各国民の内には物質文明の外進歩と称すべきもの無しと思ひ、進歩なる語が却て真理から彼等を遠ざける好餌たることを知るものはない。
 神様は、真理の保護者たる吾人の外誰にも真理が見えないやうに、巧に蔽ひ隠して了ふのである。
 吾人の世界統御策は歴史的の経験や、時々刻々の注意深い観察から来るのである。欧米一般の人々は公平なる史的実験を基礎としないで、唯理論的迷路を辿つて、其結果に対して少しも批判的態度をとらない。是彼等の恐るゝに足らざる所以である。
 彼等は当分歓楽に耽るがよい。新歓楽を空想するがよい。過去の追想に耽るがよい。又吾人が与へた科学の命令を金科玉条として遵奉するがよい。吾人は出版物の力を仮りて絶えず科学に対する絶対服従を鼓吹せねばならぬ。彼等の智識階級は其智識に誇るがよい、吾人の牒者が組立てた学問をば彼等に応用させるのだ。
 分り切つて居る虚偽な学説を吹聴して、吾人は各国の青年を惑乱させた。
 吾人は最も斬新に最も進歩的に見える学説の製造に人心を向はしめねばならぬ。
 昔宗教が国家を統べた時代もあつたが、現今は金力が支配者となつて居る。吾人の動力は金力である。
(大本神諭)今の世界の人民は此世に神は要らんものに致して、神を下に見降して、人民より豪い者はなきやうに思うて居るが、見て御座れよ。
立替の真最中になりて来ると、智慧でも学でも金銀を何程積みて居りても、今度は神に縋りて誠の神力でないと、大峠が越せんぞよ。(大正五年旧十一月八日)
 日本の人民欲に呆けて、学斗りに凝りて、利己主義の行方で理窟斗り申して、学力で弁解致して、我の悪を隠さうと企みて、一生懸命に学を勉強致して、人を下に見降して、我が上へ昇りて楽に暮すことを考へて居るが、之が外国の悪の行り方であるぞよ。日本の国は神力で、何事も行ける結構な国であるのに、外国のカラの教に従うて、日本の神の教を寸毫も用ひずに薩張誑されて居りて、外国にどんな仕組を致して居るといふことも解らずに居る、曰本の上下の人民は、今に天地の先祖様へ申訳のなきことが出来いたすぞよ。(明治三十六年四月一日)
 是迄は学力がありたなら、上へ登れたなれど、学力は九分九厘で霊の利かん様に仕組みてあるから、時節には勝たれんから、いろはから勉強いたさな、今の学では誠のことが分らんので、世が渡れんぞよ。物質と学との世の終りとなりたぞよ。(大正六年十月十六日)
 変性男子と変性女子との身魂が、誰もよう為ぬ辛抱を致して、此世には神は無きものと、学で神をないやうにして居りたのを、此世に神があるかないかと云ふことを、三千世界の天晴と天地の神をあらはして見せて、此先は日本の国は神力なり、外国は学力でどんな事でもいたすなれど、世の本の根本の生神の神力には敵はんから、今の中に海外の国の悪神のエライ陰謀を砕いて了ふから、一日も早く往生致すが得であるぞよ。(大正元年旧八月十九日)
 今の人民は一も金銀二も金銀と申して、金でなければ世が治まらんやうに取違したり…学さへ有りたら、世界は自由になる様に思うて、畜生の国の学へ深はまり致したり……
是も皆露国へ上りて居る悪神の霊の所行であるぞよ。(明治三十一年旧五月五日)
 これに見らるゝ如く、物質文明の隆盛及び其原因たる科学の発達は、皆世界統一の為めに、マツソン結社によつてなされたのである。其企画の深遠高大なる、真に驚くにたへたりと云ふべきではないか。
 併し、こは一見甚だ奇矯の説の如く、世人はなかなか信じないに違ひない。彼等は「科学者の総てがマツソン結社員でない以上、かゝることは有り得べからざることである」など云つて反対するだらう。
然らば、「吾人は文明進歩を云々」「吾人の与へた科学の命令」「吾人の牒者の組立てた学問」等は全然虚構のことであらうか。否々国祖の御筆先が毛筋の横幅の嘘もないと同様に悪神の頭の筆先にも偽は書いてない筈である。
 此の間の説明は、現界(物質界)のみを見た皮相的の観察では得られないので、どうしても一歩を進めて神界の奥を洞見しなければならないのである。
 抑も、此の露国の悪神と呼ばるゝ神、即ち八岐遠呂知は元は偉大なる肉体をもつてゐて、天然造化の現象をも自由になし得る、絶大な神力を発揮してゐたのであるが、其の巨躯は、古事記の「簸の川上」に於て、素盞嗚尊にょつて滅されて了つたのである。既に幽体のみとなつては、さすがの彼ももうそんな絶倫な神力を発揮することは出来ない。そこで彼は、其失へる神力に代ふるに学力を以つてし主として人間を機関とし正神界の元の活神(竜神)の神力に対抗しやうと試みたのである。
 かくて彼は部下の神々をして、後世科学者と呼ばるるに至つた人々に憑依せしめ、以つて科学を興したのだ。性質こそ邪悪なれ、驚くべき頴敏な智能を有する「悪賢い性来」の彼等の努力は決して空しからず、やがて科学は長足の発達をなし、今日の物質文明の隆盛を見るに至つたのである。
 即ち科学者の殆どすべては、皆此結社の後に控へて居る邪神の使徒となつてゐたので、取りも直さずマツソン結社の忠実なる社員である訳だ。
 是が「吾人の与へた科学」「吾人の牒者の組立てた学問」とある所以で、決して虚構の説でも誇張せられた言でもないのである。又国祖が科学万能主義を極力攻撃せられ、現代の文明を外観的な似而非文明と罵倒せらるゝ所以や、神諭中到る所に繰り返されてある。
「神力と学力との大戦」の意義も、かくて初めて闡明になるのである。
 それから茲にもあるが、此演説中には神様は吾人を保護する云々の語句が厦々繰り返されて居る。是も神界の消息に盲目な現代人には、一種の修飾語位にしか見えないだらうが、こは言ふまでもなく、彼蛇神以下の邪神を指すのである。是によつてもA結社が邪神界の「大本」なる所以が、首肯せられるだらう。
 以上の自由平等の標語、無神論、唯物的科学、物質文明の謳歌と、金力の崇拝、之が彼等外国の邪悪神人の最有力な武器であるのである。飜つて世界の現状は如何?
 嗚呼人類の咽喉は、将に此等の兇器によつて突き貫かれんとして居るではないか、今や実に世界人類の覚醒す可き時である。日本神民の奮起す可き秋である。
(三)善の仕組と悪の仕組
(其源深し、何れも九分九厘)
(マツソン)今日諸君に報告したいと思ふのは、吾人の目的が早や完成に近づいた事である。剰す所は僅少だ。神秘的の蛇論を完成せんとして居る。此輪が結び付いたならば、欧洲諸国は最も強靱な「たが」で締めつけられた様になるのだ。
 世界列国の同盟が一時は我等に対して対抗し得るかも知れぬ。が、是も敢へて恐るゝに足らぬ、何となれば吾人は、二千年もかゝつて、各国民の間に抜くことの出来ない分離の根を張らせて置いたのだ。
 世人が事の真相を知らば、事の未だ成らざる内に、兵力に訴へて吾人を攻撃するだらうと言ふかも知れぬが、其れに対しても準備がしてある。
 如何なる勇士をも戦慄させる恐ろしい計画がある。是は地下鉄道だ、地下鉄道は遠からず各国の首都に通ずる。国家の政治機関と書類とは一時に爆発されて了ふだらう。
 吾人の牒者は上流、下流、呑気な行政官階級、著述家、出版業者、本屋番頭、職工、馬車屋、家僕、其他のもの共である。
 吾人は世界各国に調査、感化の機関たるA座を設ける。各座には革命主義や自由主義の分子を悉く糾合する。座員は各階級から集める。彼等は政治的陰謀を起すものである。吾人の手中には現代の一大威力たるもの、即ち金力がある。二日間でもつて、吾人は如何なる大金でも秘密金庫から取出すことが出来る。
 各国の重なる言論機関は既に吾人の掌中にある。吾人は之を丈夫な手綱で操縦する。
 今や、吾人の権力外に二、三の権力が残つてゐる斗りだ。他は悉く掃除して了つた、現に吾人の道路には何の障害もない。吾人の超越政府は正に超帝権の資格を具備して居る。目下吾人は世の立法家と云つて差支ない。裁判と警察権とを行つて、活殺自在である。
(大本神諭)天地の先祖をなくして悪の行方で世界の頭となりて、此先を悪をモウ一つ強く致して、まぜこぜでやりて行かうとの、初発の目的通りに、此処までは、トントン拍子に、面白い程上りて来たなれど、此の日本には、神の深い経綸が世の元から致してありて、日本の仕組通りに九分九厘まで来たぞよ。
 悪神の仕組も九分九厘までは来たなれど、モウ輪止りとなりて前へ行くことも出来ず、後へ戻ることも出来んのが、現今のことであるぞよ。仕放題の利己主義の行方で、末代此世を悪で立てゝ行くことの目的が、今迄は面白い程昇れたなれど。(大正四年旧十二月二日)
 外国の悪神の企みは、神界にては三千年余り前から、仕組を悪神が致して居りたなり、外国の人民を使うて斯世を乱しにかゝりてからでも、二千年になる永い経綸であるから、世界隅々までも、山の谷々までも、水も漏らさぬ仕組を致して居るぞよ。(大正八年八月十一日)
 初発の世界の泥海の折から、末代の企を為て居りた極悪神の身上は、日本の元の大神が詳く知りて居られるから、日本にも、初発から深い仕組が為てありての、今度の神と神との大戦であるぞよ。外国の悪の頭は、何うなりと日本へ上る企をして居るなれど、日本の国へは上げられんから、露国の先祖としてありたなれど、悪の強い奸賢い性来であるから、何の様にしてでも、目的を立てねば、途中で邪魔をいたすと云ふ邪神であるから、天地の根本の大神は、茲まで悔しい残念を堪り詰めて、悪神の仕組の九分九厘と成るまでの、永い間の堪忍をいたして、悪神の頭の目的を立てさして置いたが、モウ一ツ目的を立て居るのを、日本の元の大神がよく知りて居るから、日本の神国には、外国の御魂の能うせん事が仕組であるから、九分九厘まではトントン拍子に出て来たなれど、モウ悪の仕組の輪止りが来たから、フクロ鳥の宵企みとなりて、此先では夜食に外れて難しき顔を致さなならん様に、時節が参りたぞよ。明治廿五年から知らしてあることが、皆其通りに出て来るぞよ、斯世が出来てから未だない、末代に一度外為られん二度目の世の立替であるのに、何も判らぬ悪神の仕組は、我良しの弱肉強食の行方であるから、我の血統と親族と眷属とさへよかりたら、何時までかゝりて居りても、奪れた折に奪りたら良いと云ふ悪神の仕組は、楽な行方であるぞよ。そんな仕組をして居る方の云ふやうに相手になりて居りたら、此世が泥海となることが見透いて居るから、昔の元から日本の国には、悪神の方からは見えも判りも致さず、学力でも智慧でも外の身魂では出来ん経綸がしてあるから。……(大正六年旧十一月廿三日)
 日本の国は二度目の天の岩戸開を致して、日本は日本の御血統で、元の天照大御神様の神政に捻ぢ直して、世の大本からの御血統で、万古末代世を建てゝ行く世が参りたから、体主霊従身魂の世の末であるから、好い加減に往生いたすが徳であるぞよ。ここまで日本の国を四ツ足の自由にしられて、実地の大本を無いも同様にいたして置いて、末代の世を、未だ此儘で行りて行かうとの悪智慧を搾り出して、前後構はず一生懸命に気張りて居るが、到底成就は九分九厘の所で致さん、気毒なものであるぞよ。(大正七年旧一月廿三日)
 公論記者は次のやうに云つてゐる。「露国は倒れた。独墺は倒れた。英国や伊太利は労働問題に、無政府主義に、苦しみつゝある。嗚呼A結社の所謂神秘的蛇論の首と尾とが結ばれる時が来るだらうか。斯う考へると欧州諸国は随分危い。此際に当つて断然として立つて国家を維持し、如何なる陰謀にも毒計にも更に動かないものは、我日本帝国でなければならぬ。神秘的蛇論は現代の八岐大蛇だ。其首を刎ねるのは大和民族の任務である。」この八岐の大蛇と断じた所は偶然か、記者の霊覚か、大本神諭と一致して居る。素盞嗚尊の働を言霊解すれば、雄しき益良夫の団体の働となる、之は教主補の御話である。
 八岐大蛇は八人之姫の内七人まで併呑んで了つた。彼は只一人残された櫛稲田姫をも呑まうとして居る。それが現今であるのだ。
 大和益良夫蹶起の時は来た。酒甕の智謀と、十拳の神劔の武勇とによつて、大蛇を寸断する秋は来た。吾人の責は重且大である。嗚呼思ふだに吾人の血は湧き吾人の肉は躍るではないか。
(四)立憲政治共和政体の不可と君主神権政の優越
(マツソン)吾人は自由主義なる毒を吾人の敵なる諸国に注射した、諸国は不治の病にかゝつて今煩悶して居る最中だ、リベラリズムから憲法政治が生れた。此政体も運用の方法を巧みにしないと、唯紛擾し争論する無益の学校となつて了ふ。議会の辯論は刊行物以上に王者の行動と勢力とを殺ぐものだ。
 浜の真砂の様な饒舌家は国会と政府とを舌戦場と化して了つた。大胆な新聞記者、無遠慮な政論客は毎日行政官を攻撃する。五里霧中な群集の為結局万事は顛倒するだらう。吾人は民衆の為、名のみで実のない権利を憲法に入れた。吾人が食卓の上から投げ与へるパンの切れと、吾人の命令との外に下層の人民は憲法政治から何者を得ることが出来たか?民衆と云ふものは、つまらない意地や、迷信や、或は小供に等しい理窟に囚はれて、動もすると党争を惹き起して、分り切つた事にでもなかく一致しないものである。彼等は政治上の秘密を知らないから、何でも多数決といつたやうな愚にもつかない事で決議をして、無政府の種を蒔くものである。
 欧洲の諸国にも漸く共和時代が現出した。政治上の畸形児たる大統領が出来る。大統領は吾人の手足たる民衆に選挙させるから、結局彼も吾人の命を奉じて働かねばならぬやうになるのだ。吾人は大統領に新憲法を制定させ、吾人の掌中に立法能力を収めて了う。
 共和制は貧乏人にとつては痛々しい皮肉ではないか。何となれば、日々の衣食に追はれるから自分の権利を利用することが出来ないで、雇主或は仲間の罷工に左右せられて、確実な常収入を失ふことになるから。
 唯独裁君主のみが諸般の計画を統一し国家機関の上に按配し、秩序をたてゝ処理することの出来るものである。故に国家の利益になる政治は、責任ある独裁主権者の掌裡に帰しなければならない。吾人の主君は神意によつて定められたものであり、理智ではなく、寧ろ性情によつて統治する。
 将来政権が吾人の手に帰る時、一切の憲法を除去する階段として諸制度を一つ一つ取り除いて置くのである。そして憲法政治の変更を提議する。尤も吾人の独裁政治は立憲制破壊以前に承認されるかも知れぬ。
(大本神諭)日本の為政者流が外国之施政方針模擬を敢行心酔て、全然皇国天立神権君主を偶像視して、自己栄達主義之暴政であるから、日本の国の現今の下民嘗塗炭之状態であるぞよ。
 日本の天立君主神権政治を立憲君主政体に変更して、至尊様の天権を束縛して了うた故に、人民の中の偽善高官までが、神皇を蔑視して居るぞよ。共和政体立憲君主政体は、日本には絶対的不適当ぞよ。(大正元年旧七月四日教主義訓)
 外国の真似斗り致して、是が開けた世の行り方と申して居るが、何処が開けたのか。肝心の開くべき処は二重三重に塞いで了うて、開いてはならぬ神国の宝を破乱して、二進も三進も行かんやうになりて、途中の鼻高が毎年一処へ国々から集つて来て、豪い結構な御相談や言論を致して御座るが、下の何も知らん人民はよい面の皮じやぞよ。(大正六年旧十一月廿三日)
 世界中を桝掛を引いて、世界を、大本を創造へた天と地との先祖の誠の王で、万古末代善一つの神国の王で、世を治めて、口舌のない様に致すぞよ。天は至仁至愛真神天照大神様の神の王也。地の世界は根本の大国常立尊の守護で、日本の神国の万古末代動かぬ神の王で治めるぞよ。
 此世界は一つの神の王で治めんことには、人民の王では治まりは致さんぞよ。日本の王は神の王であるぞよ。(大正五年旧十一月八日)
 憲法政治は国家を破壊するに効果の最も顕著な否欠くべからざる唯一の有力な武器の自由主義から生れたのだ、即ち出発点よりしてマンマとマツソンの戦略にかかつて居るのである。其の不可なるは言ふまでもない。 読者諸君はくだらぬ理論ー社長の所謂「子供に等しい理窟」を棄てゝ、過去の決算報告帳たる歴史に徴して判断せられよ。
 ナポレオン皇帝の下に統べられたフランス帝国は、国威隆々としてよく全欧州に号令し得た。而して彼の帝政が倒れて、自由民権を標榜して居る現今のフランス共和国となつてからは如何?外には忽ちプロシヤに粉砕せられ、内政も亦思はしからず、其国力の消長隆替の甚しきは殆ど同日の談ではないのだ。之を上古に求めんとするならば、君主専制の権化たるスパルタと自由民主の標本たるアテネとを比較せられよ。近くに求めんとするならば、征旅数千里、燎原の火の如き勢を以て遠く欧洲の野まで躁躍し去つた元帝国と、現今の中華民国とを対照せられよ。更に万世不易の我帝国と興亡定りなき世界各国とを比較して見られよ。
 又理窟家は専制政治は為政者に勝手な暴戻を許し、下民は甚だ不幸であるなど云ふかも知れぬが、現今レイニン、トロツキー等が口に民主、共産を唱へ乍らなしつゝある暴虐は、之を何れの帝王何れの君主に見出されるだらうか。
 桀紂は酒池肉林の淫楽に耽りし故に、ネロは美姫を焼き基督教徒を犬に喰はせた故に、暴君の模範とせられたが、斯くの如きは、今日数千人の罪なき老者小児を虐殺し毒殺し餓死せしめ、活として顧みない、彼らの暴戻に比しては殆ど物の数にもならないのだ。
「先見の明ある王者と盲従的な国民とが合する時は、吾人にとつて最も恐しい敵である」と云ふ社長の言に、是等の活事実を照らして見たなら一切は明々白々である。
 之を更に具体的に説明すれば、マツソンは先づ自由平等なる標語を以て、行政権を少数の帝王より多数の民衆の手にわたし、次に此の麻薬を益々つよくし盲目な山羊(民衆)を駆つて帝王を倒させ、世界が紛々擾々回収すべからざるに至るを待つて、暗中に磨いて居つた毒爪を顕はし、之を一網打尽的に征服し統一の目的を達成せんとするのが、其最初からの計画であるのだ。此第一段が即ち憲法政治となり、第二段が民主共和政とあらはれ、第三段でマツソン大帝国の出現なる最後の結果に到達するのだ、であるから、憲政を採用するのはやがてマツソンに隷属するに至る行程に立つたものであつて、民主、共和国の如きに至つては事実上既に其属国と云つてもよいのである。
 故に国家の滅亡を防ぐべく吾国民の取るべき道はどうしても万世一系の御天職を翼賛し奉り、皇室中心主義の下に国民は只管勅令をかしこみ、上下一致して忠君愛国の至誠を披瀝し、以てこの大敵に当らねばならぬのだ。
 かくして初めて正神界の神々の大加護は来り、其絶大なる神力は第二の神風となつて一挙にして外国の悪神の経綸を粉砕して了はれるのだ。
 今日の学者の如く少しも其の由つて来る所を窮めずして、徒に自由民主を鼓吹するが如き学説を流布して得々たるは、自ら亡国の種子を蒔き、マツソンの世界統一を助成するもので、所謂盗に糧を資し冠に兵を仮すの愚に等しいのだ、余は我国の学者輩の猛省を切に希望してやまない。
 普選問題の如きもこゝより見れば、我国にとつて如何に危険なものであるかは明白である。是も勿論マツソンの仕組んだもので、社長は次の如く堂々と言明して居る。
「吾人が希望の革命を完成した暁には、次のやうなことを云はう。
『君達の困苦の原因、即ち民族、国境、貨幣の差を研究しよう。是に対して諸君は、否定的の宣告を為されるかも知れぬが、其れは自由である。然し吾人が諸君に与へんとするものを試みないで否定するのは食はず嫌の譏を免れることは出来ない』と。斯く言ふなら、彼等は心中から喜んで、異口同音に吾人を讃美するに相違ない。
 吾人が天下掌握の武器と恃む普通選挙は、人類同士をして団体集合や協定などの習慣を作らしめ、遂に吾人の提議を否決する前に、其れを研究しようといふことに一致させる。之が為には階級の区別なしに何人にも発言権を与へて絶対多数を得なければならぬ。」
 嗚呼惑はされたる国氏よ!須く直ちに迷夢より醒めて警戒せよ!然らずして猶軽挙を敢へてし盲動を続くれば、次に来るものは只亡国あるのみ、マツソンの専制ヘの隷属あるのみ!
(五)労働問題と食糧問題
(マツソン)今日一般の人民は自分の暗黒と吾人が故意に助長する迷論に動かされ、自分より上の階級に対して敵意を抱いて居る。此敵意は経済上の恐慌によつて一層高められる。吾人は自己の掌中にある金力と陰謀とによつて、経済的恐慌を起してやることに準備して居る。即ち時を期して一時に労働者が注むに家なき有様を来らしめる。さうすると彼等は日頃から憎んで居る富豪の血を吸はうと思つて馳せ集り、富豪の財産を掠奪することになるのだ。
 吾人は各国の工業を破壊する方法を予め設けてをる。吾人が鼓吹した所の贅沢的要求を益々ひろげる。又益々労銀を騰貴せしめる。この労銀は労働者にとつては何の利益も与へないものである。何となれば農業畜産の衰微を名として日常品の価格を引き上げるから、吾人の謀計を中途で以て悟られないやうに、表面上労働階級を助け、吾党の経済学者の主張して居る経済原則を擁護するかの如く装うて、吾人の本心を蔽ひかくさねばならぬ。
今日食物の欠乏は、各国民をして何んでも斯でも吾人の奴隷たることを甘んじさせねばならなくなる。
(大本神諭)悪神の先祖の企みで、薩張り世の持方を誤されて了ふて、上下運不運の激しき世になりて、上下の守護神人民が、内輪喧嘩斗りで日を暮し、ストライキなど起さなならんやうに、国と人民の心とを乱されて居りて、チツトも気の附かん厄介な人民斗りであるから。(大正八年八月十一日)
 食物は段々と欠乏になる也、菜の葉一枚でも大事なことに、今になりて来るぞよ、何程金を貯めて歓んで居りても、正勝の時には金銀では命が継げんぞよ。百万円の金よりも一握の御米の方が大切な世が廻りて来て。……(大正六年旧十一月廿三日)
結構な田地に木苗を植ゑたり、色々の花の苗を造つたり、大切な土地を要らぬことに使うたり致して。人民の肝腎の命の親の米、麦、豆、粟を何とも思はず、米や豆や麦は何程でも外国から買へると申して居るが、何処までもさうは行かんことがあるから、猫の居る所にも五穀を植ゑ付けねばならぬ様になりて来るぞよ。(明治卅六年旧十一月九日)
 嘗て大本時報紙に神諭さへ読めば労働問題の如きは、勿ち解決されると、あつたのを、或新聞が巣鴨式だとか云つて笑つてゐたが、労働問題の如きはマツソンが多数の下層民を利用して己が強敵なる各国の帝王、資本家、地主の権力を失墜せしめんが為に起したもので大本神諭によつて容易に解決せられるのである。
「この大本には、三千世界の大気違やら大化物が現れて、世の立替立直の御用を致して居るから、普通の人民の目からは見当は一寸、とれ難いなれど、世界の大本に現はれた大気違の申したことは一分一厘違のない、チト実のある気違であるぞよ。神から見れば今の日本の人民は真正の狂人斗りで、言ふことも為ることも皆間違だらけであるぞよ」。(大正七年十二月二十二日)
 A結社が世界統一の武器とたのんでゐる普通選挙を一生懸命に後援し、時勢に順応せぬばならぬと叫び、ヤレ階級制度廃止、ソレ自由民権と、マツソンの思ふ笑壷に、忠義立をしてゐる新聞記者こそ、大神の御目には真の巣鴨式に見えるだらう。
(六)贅沢の禁止
(マツソン)吾人が世界を統一した暁には、吾人は贅沢品の製造を制限する。
(大本神諭)上の人民が贅沢なから、下までが見習うて又贅沢をいたすが、何時までもこんな行方では続かんぞよ。
 天地の先祖が構ふ世になれば、今までのやうな贅沢な行方を根本から変へねば、此儘で行り放題にさして置いたら、上も下も総潰となりて、この世が立たんことになるぞよ。(大正六年旧九月三十日)
 巌に松の動かぬ固い神世になるから、今迄のやうな人民の行方なり贅沢三昧は如何しても出来ぬ様に厳しく変るぞよ。(大正七年旧二月廿六日)
斯く両神の世界改造後の施政方針に一致点が甚だ多く見出される。
 (後章参照)こは蓋し両神の非常なる達見が最善の方法を取るに一致したものと思はれる。
(七)原始的政治
(マツソン)吾人の政治は原始的で、為政者は親権を以て人民に臨み後見するのである。国民は為政者を見ること父の如くであらう。さうなると臣民は平和安寧の生活を送るには、為政者の親切と指導とに便るの外はないと観念する。斯くすれば殆ど神を敬するに近い尊敬を以て、吾が為政者を仰ぐことになる。
(大本神諭)元の昔に世を返すぞよ。(明治二十五年正月)昔の神世に立替る時節が来たぞよ。(明治三十三年…月…日)
 猶此項につきては(四)(六)(十二)を参照せられたし。
(八)戦乱飢餓悪疫の猖獗
(マツソン)吾人は各国に於て政府と国民との関係を紛糾せしめ、内訂、怨恨、争闘、困苦、飢餓、病毒伝播、生活難等の武器を以て絶えず民衆を攻め抜かねばならぬ。さうなると彼等はどうしても、吾人の全力と独裁権とに服従して来る他に、道は無くなるのである。(大本神諭)露国へ昔から上りて居りた悪神の頭が、露国を無茶苦茶に致して、モ一ツ向ふの国ヘ渡りて、外国の隅々までもワヤに致して、金の費るのは底知れず、人の命をとるのも底知れず、行きも戻りも出来んやうにいたして、食物も無い所まで致して、終には日本の神国へ攻めて来て、世界を我の儘に致す、ドエライ好計を致して居るが。……(大正六年旧十一月廿三日)
 行き放題の行りカンボウでは、トンと行き詰りた折には、人民が皆飢餓に及ぶことが出来て来るぞよ。
 畜生国のやうに、終には人民を餌食に為んならん様なことが出来やうも知れんが、何程窮りて来ても日本の国は友食と云ふ如うなことは出来んぞよ。(大正七年旧正月廿三日)
 病神が其辺一面に覇を利かして、人民を残らず苦しめ様と企みて、人民の油断を狙ひ詰て居りても、神に縋りて助かる事も知らずに、外国から渡りて来た、悪神の教へた、毒になつても薬にはならぬヤクザものに、沢山の金を出して、長命の出来る身体をワヤに為られて居りても、夢にも悟らん馬鹿な人民斗りで-…(明冶三十一年旧五月五日)
餓鬼が段々殖えるぞよ。思はね国替を致す人民も沢山あるぞよ。医者と坊主と葬式屋の豊年は続くぞよ。(大正七年十二月二十五日)
 一昨年末来、獰猛を極め全世界至る所死体の山を築かめした、西班牙風邪の手品の種も是によつて明かされた。皆此結社の世界覆滅の所業である、誠に驚くべき哉ではないか。併し、かう云つても彼等の手に企まれた唯物科学に惑乱されて、大本神諭の「盲と聾者」になり切つて居る現代人には、容易に了解されないかも知れぬ。何となれば、直接此「病毒伝播」の衝に当つてゐるのは、人ではなくて神であるからである。私は総論に於て此結社の後に邪神界のあることを説いた。その眷族共がやつてゐるのである。
 即ち狐狸等の四ツ足霊、及び悪亡霊が黴菌を携ヘて人体に憑依し、其黴菌を植ゑつけて保護蕃殖せしめ、協力して肉体を忽ちに死に至らしめるのである。今度の流感が全世界隈なく猖獗を極め、如何なる寒村僻地をも見逃さなかつた所以は、一は実に茲にあるのである。
 勿論之とても、私が独決めの妄説臆想でもなんでもなく、上に掲げた大神の明示と鎮魂帰神の神法の結果得た千百の実験ー是等悪霊の自白等ーによつて確証せられたことである。
 這の事が解れば、此度の感冒が、壮者殊に軍人社会に多く、俗に「今度の風邪は老人小供を嫌らう」と云つてゐるのや、死亡率の年一年と高くなる理由も、亦自ら解決されるであらう。即ち「日本を一コロに取る企み」を為て居る邪神界にとつては、国家の干城たる壮丁を一人でも少くした方が都合がよいからである。
 一方正神界に於ては、今は之に対して傍観的態度をとつて居られる。
 然し是とても決して袖手して我不関焉で居られるのではない。
 改心せる人又は見込のある人、換言すれば神縁の有る身魂には、厚い冥護を与へられて居るので従つて、是等の人々は、決して斯る悪病に犯されることなく、仮令犯されても、生命には毫も危険はないのである。故に今度死する人は悉く一部の因縁ない身魂のみと云ひ得るのである。
 即ち邪悪分子が掃除されるのである。詳言すれば、我が大神は彼等邪神共を掃除人足に使はれてゐるので、所謂毒を以て毒を制すの妙策を取られて居られるのだ。
 然しこんなことを知らない邪神界では、感冒位で満足せずに、もつヘちちうとトコトンまで行り抜かうとするに相違ないやうに思はれる。さうすると、世界の前途は此点のみよりしても、弥々益々暗澹となる訳である。今この毒手より免れ得る方法は一つある。而して唯一つに限られてゐる。
 其は発根と改心して、原の大和魂に立ち復り、以て大本大神の大加護を仰ぐ、この一途のみである。是れ無くして、即ち体主霊従の四ツ足心を改めずに置いて、何程神前で頓首叩頭しても、何程御百度詣りや千度詣りをしても、そんな病直しの身欲信心は所詮駄目である。又現代の医学の無効なるは云ふまでもない。
 何となれば黴菌の持参者後援者たる、本尊の悪霊を処理することを知らずに、其れが肉体を死滅せしめんとする方法、行為が肉体に顕はれた状況のみに捉はれ、全然本末を顛倒して居るからである。
 論より証拠、今回の感冒でざへも、現代の医学は其無能を遺憾なく曝露して居るではないか。
 世界に亘る飢饉状態についても明細に予言警告してある。
 吾人が、小説によつてやつと想像し得た、人肉販売は既に露懊に於て行はれて、新喰人蛮族は、所謂文明の中心地たる欧洲の所在に簇生した。大本神諭の現実化の的確にして、分厘の誤差なきに敬服して居る吾人は、我国の前途につき深憂に堪へぬものがあるのである。
(九)無気力と軽佻浮薄
(マツソン)吾人にとつて最も危険なものは、独断専行である。各国民をば如何しても、無気力に教育させなければならない。秘密結社に喜んで加入するものは、大抵饒舌家射倖者、即ち概ね軽佻浮薄の人間である。
 彼等を利用するのは少しも六ケ敷ない、彼等を利用して吾人の計画の機関を運転するのだ。
(大本神諭)此方も我で失策りた神であるから、我は出されん世であるぞよ。
今度の事は我が些つとも無くては不可んぞよ我も無くては、斯んな御用致すには柔順斗りでも間に合はんぞよ。我はなるたけ膳下丹田に鎮めて置いて、従来の心を全然棄てゝ、元の大和魂になりて下されよ。(大正三年旧九月十九日)
 大本の元の御用致さうと思ふ人は、陽気浮気では勤め上らんぞよ。
(大正元年旧七月四日)
 これから天地のビツクリ箱が開くから、是丈知らしてあるのに、未だ陽気浮気で居る守護神は、モウ此行く先では、黙りて居りて神界の帳を切りて、霊の利かんやうにして了ふぞよ。(大正三年旧九月十七日)
(十)煽動
(マツソン)吾人の煽動に乗る国民は屹度政権争奪の闘争を惹起し自滅する……。
 吾人は彼等を自由に頤使することが出来る。
(大本神論)人の口車に乗るとスコタンに転覆ぞよ。(明治二十三年旧八月十一日)
(十一)商工政策と投機。世界統一後に於けるマツソンの課税制度ー金貨本位の不幸と金融逼迫
(マツソン)富と云ふものを大仕掛に独占するのは吾人の目的である。列席の経済家諸君希くばこの仕掛の意味を実行せられよ。吾人は地租を高めて貴族を破産せしむると同時に、商工業、殊に投機買占を保護奨励しなければならぬ。
 工業によつて吾人は土地から人と資本とを奪ひ、投機の世界を経て満天下の黄金を悉く吾人の手中に収める、各国民は下層に沈倫して、吾人の足下に拝伏するより外に方法がなくなつて了ふ、世界統一の暁には吾人は工業家の私有資本を覆す為に家族的工業を復活させる。是は極めて必要なことだ。何となれば工業家はよし無意識にせよ、群集の心理を政府と反対に左右することが出来るから。人民即ち家族工業家は無仕事と云ふことを知らぬ。是が即ち主権に服従する所以である。
 吾人の天下になつた時は自衛の原則に基き、民衆を抑ふるに課税を以てする、但し吾人は父であり保護者であることを忘れない。
 税金の償却を税金累課から始めるのが最良方法である。斯くすれば税金は何等の苦痛なしに又破産の恐れなしに、財産率に応ずることになる。
 貧乏人へ課税することは、革命の種子であつて、国家にとつては損失である。如何となれば小物を追ふて大物を逸するから。之に反して資本家課税は、吾人に各国民に対抗する 為に、個人の手に集中して置いた富を、個人的に増加させないことになる。
 財産率に随つて増加する税は、目下の人頭税などよりは、遙に多くの収入を与へるものである。人頭税などは各国民に動揺と不平とを起させる為にのみ必要なものだ。
 吾人の王者の頼みとする力は均衡と平和の保証とである。之が為には資産家が国家機関の安全運転の為め、自分の収入の一分を割かねばならぬ。国費は苦痛を感じないものから出すべきである。斯くすれば、富者に対する貧者の憎悪が無くなり、富者を以て国家財政の補助者と見做し、平和安寧の整頓者と見るやうになる。
 金貨本位は国家の為不幸の一因たることは、諸国の了解せる所である。
 如何となれば吾人は出来る限り、金を融通界から取上げたから、金貨は紙幣の消費を満すに足らないのだ。
 財産破綻には金融界から貨幣を取り上げて了ふのだ。是は吾人が各国に仕組んだものだ。国家から金を引上げたから巨額の資本が渋滞した。
 堂々たる国家が吾人に国債を仰がなければならない破目になつた。此等の国債は利子の支払で十分国家を苦しめ、残る元金で其国家が自ら奴隷
になる。そして企業家の手に経営せられる工業は、国民の膏血と国家の富とを吸ひ尽した。
(大本神諭)現今の世は金銀為本で治まるやうに思うて居るが、金は世の滅亡の本であるぞよ。根本から立替へるぞよ。お土から上りたものを大切にいたさねば、貨幣では世が治らんぞよ。酒も造れる、煙草も造りて喫める、心安き世にかへるぞよ。(明治二十五年)
 金銀を余り大切に致すと、世は何時までも治らんから、艮の金神の天晴守護になりたら、天産自給其国々の物で活けるやうに致して、天地へ御目にかける仕組が致してあるぞよ。(明治二十六年旧七月十二日)
 此世が来た折には、世界中の困難となりて、何方の国にも金銀の要るのは程知れず、金融は段々逼迫になるし、どう為やうも無きやうに、一旦世界中は火の消えたやうになるから……。(大正元年旧十月五日)
 金は引上になるぞよ。(明治三十三年閏八月一日)
 商工業の方面にもかゝる綿密な仕組がしてあるのは、流石はマツソンである。
 が、一方正神界の方では、こんな事には殆んど一顧をも与へて居られないやうである。是は、国祖は「地震、雷、火の雨ふらし、外国を往生さすぞよ」とある如く、最後の審判は、之を元の活神たる竜神の絶倫なる神力によつてなされるのだから、斯る竜体の神の無い邪神界のするやうな姑息な、手段を採られる必要は少しも無いからである。
 又国祖の御仕組では、立替後は金銀為本経済組織、即ち貨幣制度は全廃されるのだから、課税問題の如きも自ら消滅するわけである。
 前掲「酒も造れる」云々は之を説明するもので、大本神諭中に課税制度に関することがすこしも書いてないのは此の為である。是が改造後に於る正邪両神界の政策中の唯一の、そして最も大きい差異である。工業家の私有資本を覆すに、家族的工業の復活を以てするとよ面白い。
 国祖は「世界を自由にする」てふ、吾人の想像にも及ばない偉大な神力を有せられるのだからたまらない。
「予言所か確言斗り」と裏の神諭にあるが誠に其通である。
 正神界の御筆先たる大本神諭は、邪神界のそれなるA秘密結社の陰謀書によつて、何物も動かすことの出来ぬ裏書を与へられた。
 見よ、誰一人知るものゝ無かつたー彼の社長自身も「吾人の謀計は巧妙出没で誰にも知られる筈はない」と放言せるマツソン結社の驚死すべき陰謀は、殆ど目に一丁字もなかつた、丹波の一老婆の教祖の筆の先に細々と描き出されて剰す所はないではないか。
 嗚呼大本神諭の権威はかくも絶大である。
 之を古にしては古事記、今にしては大本神諭、此二神鏡の明光は柄乎として宇内を照徹して居るのである。世の軽々大本神諭を笑ふ者よ。君はかくても未だ笑はんとするのか。、
 然らば君はマツソンの使徒である。八岐大蛇の眷属である。君の後には君を操る邪神が亦君を笑つてゐるのだ。
 猶この比較抄録よりして、皇道大本が正神界のマツソン結社で、マツソン結社は邪神界の皇道大本なることを看取せられた諸君は、皇道大本が宗教に非ざる所以も同時に悉知せられたであらう。我大本は宗教の如き狭隘な無力なものではなくて、実に世界改造の実行中府であるのである。マツソン結社も亦同様で、従つて両者の間に共通点の多くあるのは、上に見らるゝ通りである。
 我れ世界を統一せんとすれば、彼も亦同じ目的を有し、彼が施政方針を陳ぶれば、そは亦我に一致する。我は正彼は邪(性質)我は神力彼は学力、(実行手段)この二差と之に随伴する条件とを除けば、両者は何等の差異もない者となつて了ふのである。
 今や帝国の内外は紛糾纏繆、赤三角の黒手によつて企まれた内憂外患は交々至りつゝある。A結社の魔手は津々浦々までも延されんとして居る。このまゝで置いたならば、我帝国ば彼等猛太族の為に蹂躙せられて了ふより外はないのだ。而も其暁には火中の栗を拾はされるとも知らずして、理想社会建設の愚夢に恋々として居つた民主、社会、虚無、主義者、自由平等を唱へて新人がつてゐた軽薄者流は、最も皮肉な報酬をうけるのだ。握飯と柿とを取られた上に背まで潰された蟹の二の舞をするのだ。即ち彼等は如何なる人も自由にする権利はないと云つてゐる、生命をとられるか、島流の刑に処せられるか、するのだ。
 見よ!彼の社長は、「今迄存在して居る結社は、すつかり吾人が之を知つて居る。彼等のうちに吾人に対して忠義を尽したものもあり、又今尽しつつあるものもある。其れ等を区分して之を欧洲から遠い大陸に移してしまう。秘密を沢山知つて居るものは、前述の如く処理し(死刑也)吾人が特に慈悲を加へて残して置くものは流罪にして了う。つまり吾人の秘密結社に加入して居た者共をば、政府の中心たる欧州から追放する法律を設けるのだ」と云つてゐるではないか。
 帝国の危急存亡の秋至る。人類の危機迫る。最早かく叫ぶだけでも愚かである。
嗚呼今此毒悪神人結社の大陰謀を根底より破壊し、其毒頷より累卵の帝国を救ひ、世界人類を真正光明世界に導くものは、世界広しと雖も、天照皇大神を皇大御神と仰ぎ奉り、武勇絶倫なる大国常立尊始め元の活神の大守護の下に、敬神尊皇愛国の旗幟を翻せる我皇道大本を措いては絶無であるのだ。
 這般の消息は是非好悪の念を去つて、以上の比較抄録を熟読せられたのみで、蓋し思ひ半ばに過ぐるであらう。
 既に時期は切迫に切迫を告げた、神秘的蛇論が完成するか?素盞嗚尊によつて両断せらるゝか?其最後の刹那は将に来らんとしてゐるのだ。苟くも此事を知つて猶晏如たる者あらば、そは腰抜と笑はれ、国賊と罵らるゝも又如何にせん。
 醒めよ、我六千万同胞よ!
 若し君の血管に一滴の大和民族の赤き血液の燃ゆるあらば、否極言すれば、ヂウ族の奴隷たることを欲せずんば、来つて皇道大本の大傘下に集れ!
 敬神尊皇愛国の神剣を揮つて彼の八岐大蛇を寸断せよ!
 是より世界統一権の表象たる草薙の宝劔を得て、我 現津御神陛下に捧呈せよ!
 以上言辞少しく不遜独断、弱冠の余の言としては、或は生意気の謗をうけんも、一片の国を憂へ同胞を憐むの至情黙し難く、敢へて蕪辞をつらね、以て世人に警告せんとすと云ふ。
(大正九年八月十二日大本教団所蔵)
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