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文献名1東京朝日新聞
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3昭和10年12月9日 朝刊よみ(新仮名遣い)
著者
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-01-29 18:14:39
ページ 目次メモ
OBC NPTAc19351209A2
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本文 邪教撃滅へ 当局強硬
まず両総本部を閉鎖
大本教解散を命ぜん
国体と相容れぬ思想

大本教幹部三十名の検挙は八日早暁の活動で一段落の形であるが、東京八名、島根二名の身柄も夫々三四日中に京都に護送される筈である、大本教信徒は全国四十万と號してゐるが事実は二十万人位で、検挙は幹部にのみ及び、現在の所信徒に及ぶ模様はない、検察当局では同教の此種の行動が二回目の事とて極めて強硬な態度を持し、不敬罪を構成することは今の所間違ひなく証拠の蒐集に基いて近日中に断乎同教の解散を命じて、邪教大本教の根絶を計るものと見られてゐる、この大検挙を断行した根本的態度は大本教教義の内容──文字に現れた形式ではなくその字句に盛られた思想内容に絶対に我が国体と相容れぬものがあるとの確信から出発してゐるものでその証拠固め着手迄には絶対に秘密を厳守する必要を生じ京都府警察部では刑事課長にさへ知らさず唯一名の敏腕刑事をして数カ月の永きに亙り同教本部の内偵を行はしめ信徒でも絶対に窺知を許されぬといはれてゐた同教最高幹部の『神庭会議』にまで追及を進めた結果この会議こそ大逆罪を除くあらゆる皇室に対する罪を敢てしてゐた世にも奇怪な存在である事を突止めるに至つたもので、教義の精神はもとより王仁三郎の言説その他、不敬な紋章を制定し、又自分及び妻女澄子の名称並に綾部、亀岡等の地名に不敬な文字を僭称し或ひは信徒総会を王仁三郎が白馬にまたがつて閲し内に在つては多数の女を侍らして近侍と称する等総ての不穏不遜の行動はこの会議の結晶であつた事が察知されたがこれが『神庭会議』を一歩出る時は実に巧妙に不敬な点をカムフラージユされてゐた
【京都電話】今回の大本教大検挙については内務省の方針として亀岡天恩郷並に綾部総本部の建物そのものは証拠物件として警察当局が厳重なる管理下に置く必要あり断乎閉鎖せしめると同時に信者や日勤奉仕者を解散せしめることに一決し入洛中の内務省警保局事務官兼警務官永野若松氏並に杭迫京都府特高課長は八日午後自動車で亀岡及び綾部に主張し同夜七時に至り日勤奉仕の信者に対し綾部総本部並に亀岡天恩郷の出入禁止を厳命し綾部、亀岡両町居住者で楼閣内に籠つてゐるものは全部閣外に追出し当局の占拠するところとなつた

神庭会議を衝く
検挙の実効に苦心

今回の大本教不敬事件は去る大正十年出口王仁三郎、浅野和三郎、吉田裕定等が検挙された第一次大本教不敬事件と比較し更に一層の度を加へたものらしく検察首脳部もその不敬振りの甚だしいのに愕然とし殊に第一次大本教不敬事件は大審院に上告中大赦令が渙発せられて去る昭和二年五月十七日時の大審院長横田秀雄博士から免訴の言渡しがあつたとは云へ、その際諄々として将来を戒められてゐるのに拘らず、又々当時に輪をかけた不敬事件を敢てした事に憤然とし遂に最検挙の大鉄槌を加へたものであるが、今回の検挙は大正十年の第一次検挙の如く教主出口王仁三郎のみを中心目標とせず、王仁三郎及び彼を取巻く同教最高幹部の組織する『神庭会議』に重点を置いたのは最大特色である
第一次検挙も今回同様不敬罪として検挙したのであつたが常人でない被告に法律的責任はないと無罪を故花井博士等が大審院で主張して精神鑑定を申請、今村外二医博の鑑定が殆んど完成出揃はんとした際に大赦令渙発を見、免訴となつた為に遂に実態判決を得られなかつた、その後大和の天理研究会教主大西愛次郎の不敬事件も亦精神鑑定が問題となり遂に大審院で無罪となつた事がありまた明道会(詐欺)事件では医学博士岸一太氏が予審中矢張り精神鑑定によつて之は予審免訴となつてゐる
よつて検察当局は兎角精神鑑定の一点から崩れ易く邪教撃滅の実効を薄くする虞がありとして検挙方針に多大の苦心を払い、別項の如く神庭会議の秘密を掴むと共に、茲に同会議に検挙の中心目標を置くに至つたのである、即ち神庭会議は大本教の最高首脳部数十名が教主王仁三郎を中心として教義その他について重要議決を行ふ一種の執行委員会であり、仮に教主王仁三郎が憑霊作用を受けた精神異状者であつてもこれと協議しその言説に賛同協力する神庭会議出席者は常人であるから当然刑事責任を負ふべきで神庭会議を目標に検挙すれば事件は崩れる虞もなく検挙の実効も挙げ得られるといふのが検察当局のねらひどころである

四十名護送
亀岡から京都へ

【京都電話】亀岡天恩郷の周囲は百余名の警官を以つて堅め天恩郷内部に捜査本部を置き八日午後三時頃に検挙された大本教の幹部級は約六十名で略々取調べつきたるもの約四十名を京都へ護送した

忘れたのかあの訓戒
第一次裁判長の横田博士談

第一次大本教不敬事件当時大審院長として事件の重大性に鑑み自らその裁判に当つた横田秀雄博士は八日夕刻中野区小瀧町五一の自邸で『またやりましたか……』と静かにその頃を追憶しながら次の様に語つた
あの事件は裁判所が判断する前に大赦があつた為め結局免訴を言渡したのですが、その免訴を言渡すに当つて自分は被告に対して「若し被告が真に意識あつて不敬を敢てしたとすれば忠義を本義とする我国体に於て断じて許す事が出来ない、又意識なき憑霊作用だとするも今後断じて改めねばならぬ、若し改めぬとすれば将来この宗教は禁止せねばなるまい、再び心得違ひのない様固く申渡して置く」と諄々と説いて聞かせた、その時の王仁三郎は首をたれ黙つて聴いてゐた、私の考では彼も帝国の臣民である以上再びそんな事はすまいと思つてゐた、今では正道を踏んでゐるのかと思つてゐたのに、それが又しても前にも増した大不敬事件を捲起したと聞いては誠に遺憾に堪へない

感慨無量の底
護送の教主
京都警察署に入る

【京都電話】八日払暁松江市赤山の大本教山陰本部で逮捕された出口王仁三郎(63)は内務省警保局保安課永野事務官、京都府警察部高橋警部、松江警察署松浦警部補等制私服十余名の警官隊に守られて八日午前五時十七分揖斐駅発列車の二等室に乗り京都に向つた、出口は茶色竪縞の紬袷を着し例の白髪交りの長髪をグルグルと頭上に巻いてその上から毛糸の帽子をスツポリと被りソワソワと坐つたり横になつたりして落着かずしきりに煙草を吹かしてゐたが綾部駅で大本教信者二名が車窓から着替を包んだ風呂敷包みを差出すやニツコリ笑つて受取り涙ぐむ信者に無言の会釈をした、列車は亀岡には停車しなかつたが車窓遥の右手に聳える天恩郷をながめて流石に感慨無量の面持でしばし黙祷し懐中から手拭を出してソツと赤くなつた目頭を抑へた、二条駅近くで茶縞の紬の上に鉄無地のお召と茶色の羽織を着、毛糸帽の上から更に黒ペオラの中折帽を目深に被りインパネスに身を包んで午後一時二十五分二条駅に下車自動車で中立売警察署に向ひ同一時三十分同署留置場保護室室に入つた

検挙の幹部

【京都電話】検挙された主なる幹部の姓名は左の如くである
△出口王仁三郎(現在大本教総統兼昭和神聖会統監)
△栗原白嶺(62)(現在大本総務兼内事課次長)
△藤原万象(前昭和神聖会遊説員)
△高木鉄男(62)(大本統理補兼昭和神聖会参謀)
△桜井八洲男(45)(大本編輯課長兼昭和神聖会遊説部員)
△東尾吉雄(48)(大本統理補)
△瓜生茂実(58)(綾部本部庶務課長)
△吉野花明(50)(丹州時報新聞記者兼史実課長)
△桜井同吉(60)(昭和神聖会三丹本部長)
△岩田久太郎(62)(綾部本部内事課長)
△山口利隆(北支宣伝使)
△杉本晋一(60)(綾部工芸課長)
△出口日出麿(39)(昭和青年会長兼武道宣揚会長)
△細田東洋男(40)(昭和神聖会遊説部員)
△比村中(37)(丹後竹田愛善郷詰指導員)
△藤津進(47)(大本地方宣伝課長)
△笹岡安夫(37)(近頃松岡と称していた)
△井口鉄外(64)(王仁三郎の画友)
△上野春明(56)(大本宣伝課次長)
△出口直日(三代教主)
△徳重高嶺(大本庶務課次長兼昭和神聖会三丹本部次長兼昭和青年会三丹支会長)
△岩佐一男(昭和神聖会何鹿支会長)
△雨森松吉(大森会計課長)
△桐山謙吉(史実課書記)
△出口宇知麿(33)(昭和神聖会副統監)
△広瀬義邦(40)(昭和神聖会庶務課長)
△深町霊陽(大正十年事件当時の決死隊長)
△出口澄子(二代教祖)(九日午前三時留置)
△大谷敬裕(45)(昭和神聖会遊説員)
△石田鎮彦(45)(弓道部長現在大本特派員で北海別院に在勤中)
△井上亀五郎(62)(大本本部庶務課主任元昭和神聖会参謀)
△細田正治(38)(昭和神聖会遊説員)
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