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文献名1霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
文献名2第7篇 崑崙山よみ(新仮名遣い)こんろんざん
文献名3第24章 蛸間山の黒雲〔124〕よみ(新仮名遣い)たこまやまのくろくも
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-08 11:31:20
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年11月20日(旧10月21日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月3日 愛善世界社版141頁 八幡書店版第1輯 311頁 修補版 校定版145頁 普及版63頁 初版 ページ備考
OBC rm0324
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本文  蛸間山には銅色の国玉を鎮祭し、吾妻別を八王神に任じ神務を主管せしめ、妻には吾妻姫を娶はし内面的輔佐を命じ、国玉別を八頭神に任じ国玉姫を妻として神政を輔助せしめられ、駒世彦を宮司となし駒世姫をして祭事に従事せしめられたりしなり。しかるにこの蛸間山には、かねて地の高天原より、言霊別命神命を奉じて国魂の神を鎮祭し、荘厳なる宮殿まで建立しあれば、つまり二個の国魂を並べ、祭祀さるることとなりぬ。ここに二つの国魂の霊現はれて互ひに主権を争ひたまへば、蛸間山は常に風雲たちこめ、時に暴風吹きおこり強雨降りそそぎ樹木を倒し、河川の堤防を破壊し、濁水地上に氾濫して神人その堵に安ンずること能はず、神人の嫉視反目は日に月に激烈の度を加へ、東天より西天にむかつて真黒の雲橋かかりて天地は為に暗黒となり咫尺を弁ぜず。ここをもつて常夜ゆく万の妖ことごとく起り、国土間断なく震動し、草の片葉にいたるまで言問ふ無道の社会を現出し、所々に大火あり大洪水あり疫病蔓延して神人まさに滅亡せむとし、また銅能宮は日夜震動して妖気を吐き、国魂の宮また同時に大音響を発して百雷の一時に轟くかと疑はるるばかり凶兆しきりにいたり、神人ともに心安からず、戦々兢々として纔に日を送る状態を馴致したりける。
 国魂の神よりしてすでに斯くのごとく互ひに主権を争ひ、ほとンど寧日なきの有様なりければ、その霊精また一は八王神に憑依し、一は八頭神に憑りてつねに狂暴の行為多く、ことに八頭神には前の国魂神憑依して、八王神の命令に一々反抗し、たがひに権利を主張して相譲らず、犬猿もただならず氷炭相容れず、混乱紛糾ますます甚だしく、神人塗炭の厄に苦しみ、荒ぶる神人の言騒ぐその声は、五月蠅のごとく群がりおこりて修羅道を現出し、動乱止むことなく饑饉相次ぎ、虎狼、豺狼、毒蛇、悪鬼、妖怪なぞの邪霊は地上に充ち満ちたり。このことただちに国祖の御耳に入り、国直姫命の口をかりて、大八洲彦命に神教を伝へしめたまひける。
 国祖の御神教の大要は、
『天に二日なく地に二王なきは天地の神則なり。汝らさきに蛸間山に国魂の神を鎮祭しおきながら、国魂神には何の通告もなさず、新に同じ神山に二個の国玉を奉斎せるは、おのづから秩序を紊乱し争乱の種をまくものなり。彼ら八王神八頭神は名利にふけりて争ひ憎み、たがひに怒りて天下を騒擾せしむるの罪軽からずといへども、要するに一所の霊山に二体の国魂を鎮めたる失敗の結果にして、ただちに二神を懲戒すべきに非ず、このたびの出来事はすべて汝らの一大責任なるぞ。神は神直日大直日に見直し詔り直し、もつて今回はその罪を問はざるべし。一日も早く改言改過の実をあげ、蛸間山を境として国土を南北に両分し、その持場を決定し、騒乱を鎮定し国祖の大神に復命せよ』
とおごそかに宣りたまひける。
 大八洲彦命は恐懼措くところを知らず、みづからの不明不徳を謝し、大足彦とともに蛸間山に向つて出発したまひけり。
 大八洲彦命は八王神に、大足彦は八頭神にむかつて神示を説き諭し神恩の忝なく尊きことを慇懃に宣り伝へける。八王神はただちに天使長の懇篤なる説示を承り、翻然として前非を悟り、かつ国魂の神のもつとも恐るべき威力に感じ、正心誠意をもつて神業に厚く奉仕し、かつ如何なる神勅なりとも、今日かぎり断じて違背せじと、心底より誓約をなしたりにける。
 これに引替へ、大足彦は八頭神なる国玉別にむかひ順逆の道を説き、神の威徳をさとし言辞を竭して説示したるが、国玉別は天使の教示を聞くやたちまち顔色獰猛の相をあらはし、口をきはめて反抗し容易に屈伏せず、ほとンど捨鉢となりて天使大足彦の面上に噛みつかむとせるを、大足彦は、心得たりと両手の指を交叉し鎮魂の姿勢をとり、ウーと一声発くその言霊に、国玉別は地上に仰天し倒れ伏し、口中よりは多量の泡沫を吐きだし悶え苦しみけり。天使はなほも一声言霊の矢を放つや、八頭神の体内よりは、にはかに黒煙立ちのぼるよと見るまに、金毛八尾の悪狐の姿現はれ、雲をかすみと西の空めがけて逃失せにけり。
 国魂神の嫉妬的発動の狂態を洞察したる常世国の邪神は、貪・瞋・痴の迷につけ入り、たちまち憑依の目的を達し、進ンで八王神を倒し、八頭神を失墜せしめ、蛸間山を攪乱せむとしゐたりしが、八頭神は始めて覚醒し、天使にむかつて以前の無礼を謝し、我が精神空弱にして意志強からず、つひに邪神の容器となり、神を無視し長上を侮蔑し、天地の律法を破りたる大罪を悔い、低頭平身罪に処せられむことを願ひけり。大足彦は、
『国魂の神ある上に重ねて再び、国魂の神を斎りたるは天使長以下の経綸を誤りたる結果なれば、その責任は吾らも同様なり。されど仁慈ふかき大神は、この度の事件に関しては寛大なる大御心をもつて、神直日大直日に見直し聞き直し詔り直したまひて、吾らがたがひの大罪を忘れさせたまひたり。心安く思召されよ』
と満面笑をうかべて宣り聞かせたるに、国玉別は神恩の尊く忝なさに涙を滝のごとく流し、衷心より改悛の情をあらはし、八王神に忠実に仕へける。それより天地和順し上下よく治まりて、松の神代の常永に時津風枝も鳴らさぬ聖代を招来したりける。
 今まで天空に橋状をなして横たはりし黒雲は、次第に散乱して拭ふがごとく、天明らけく地清く、神人和楽の極楽浄土を現出したるぞ目出度けれ。これより二個の国魂を南北に分ち祭られ、国土を二分して、北方は八王神吾妻別これを主管し、南方は八頭神国玉別これを主管することとなりぬ。君主的神政の神界の経綸も、ここにいよいよ民主的神政の端を啓かれたるぞ是非なけれ。
(大正一〇・一一・二〇 旧一〇・二一 午後八時東の天より西の天に向つて一条の怪しき黒雲横たはり、天を南北に区劃し、天地暗澹たる時、竜宮館において、加藤明子録)
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