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文献名1霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
文献名2第2篇 天地暗雲よみ(新仮名遣い)てんちあんうん
文献名3第8章 不意の邂逅〔158〕よみ(新仮名遣い)ふいのかいこう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ壇上に上がった道貫彦は聖地の神々の失敗を挙げ、八王大神を擁護した。すると城内のどこともなく、八王大神の姦策に陥るな、という声が響き渡った。常世姫は怪しい声には注意を払わないようにと一同に呼びかけ、続いて八島姫が壇上に登った。八島姫も、南高山を逐電して常世の国に来て以来、いかに八王大神・常世姫が手厚い恩恵を与えてくれたかを諸神に語った。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月17日(旧11月19日) 口述場所 筆録者 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月30日 愛善世界社版49頁 八幡書店版第1輯 390頁 修補版 校定版53頁 普及版24頁 初版 ページ備考
OBC rm0408
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本文  道貫彦は常世姫の快諾を得て、中央の高座にのぼり満場の諸神司にむかひ一礼していふ。
『我はモスコーを管轄する八王道貫彦なり。今日はじめて常世彦の至仁至愛にして毫末の野心もなく、真個世界平和を欲求したまふ至誠のあまり今回の大会議を開催されたることと確信す。諸神司試みに現今地の高天原の状勢を見られよ。天地の律法は有つて無きがごとく、綱紀は弛緩し、邪神は至善至美至仁の仮面をかぶりて聖地に出入し、天使真心彦は糸竹管絃に心を奪はれ花顔柳腰に心魂をとろかし、つひには自決するのやむなきに立ちいたれり。天使の行動にして斯のごとしとせば、その他の神人の悪行非為や知るべきのみ。第一、天使長たりし沢田彦命は神命を軽ンじ、律法の尊厳を無視し、薄志弱行の心性を暴露し、聖地の紛糾混乱を余所に見て還天したるごとき無責任極まる行動を敢てし、ために聖地の秩序をみづから破りたるにあらずや。その片割たる真心彦の後嗣広宗彦は、やや反省するところあるもののごとく、神政経綸のため最善の努力を竭しつつありといへども、元来無責任にして放埒きはまる真心彦の血統を享けたる者なれば、言、心、行、常に一致せず、ために聖地の神人が日に月に聖地をはなれ、各地に居住を定め、邑に君となり、村に長となり、たがひに権勢を争ひ戦乱止むなき常暗の現代を招来したり。いかに智仁勇兼備の神将と称へらるる広宗彦といへども、今日のごとく敗亡の域に瀕せる聖地ヱルサレムの神政を恢興し、回天の大神業を遂行すること思ひもよらず、かつ聖地の勢力は至つて微弱にして、いつ顛覆の運命に遭遇するやも計りがたく、嵐の前の朽樹のごとき状態なり。このさい常世城の八王大神にして聖地の神政を根底より破壊し、おのれ取つて代り神政を管掌せむと計りたまはば、じつに焼鎌の敏鎌をもつて葱を刈り取るごとく易々たる業のみ。しかるに至仁至愛にして、世界の万有にたいし、恵みの乳房を抱かしめむとして苦心焦慮したまふ、常世彦のごとき至誠至実の神司は、はたして何処にか之を求めて得るものぞ。我々は八王大神御夫婦の万有に対したまふ平等なる大慈愛の大御心に対し奉りて感歎措くところを知らず、じつに八王大神は天来の救世主にして、国祖国治立命の股肱たるべき真正の義神なれば、我らは世界永遠の平和のために率先して、八王神の聖職を退き一切の権能を八王大神に奉り、一天四海の平和のさきがけを為さむ。諸神司はいかが思召したまふや、現にわが肉身の娘春日姫は永く大神の近側に奉仕し無類の慈愛に浴し、至善至愛の神司にゐませることを証言したるに見るも、一点八王大神を疑ひたてまつるの余地、寸毫も発見することあたはず。行成彦の主張のごときは、ほとんど歯牙にかくるに足らざる、短見的愚論にして耳をかすの価値なきものなり。諸神司にして吾が言ふところをもつて是としたまはば、直ちに起立をもつて賛成の意を表したまへ』
と陳べたて悠然として降壇したりける。常世姫以下二女は依然として壇上に立ち、その艶麗国色の誉れを輝かしゐたり。八王八頭その他の国魂をはじめ、諸々の神人は何の言葉もなく、黙然として呆気に取られ、眼球を白黒に転回させ、口をへの字に結び何人かの答辞を待ちゐたりける。
 このとき場の何処よりともなく、
『満場の神人たち、常世彦の奸策に陥るな、注意せよ。悪魔は善の仮面をかぶりて世を惑はすぞ』
と大声に呶鳴りしものあり。常世姫をはじめ列座の神人は、何神の声なるかと四隅を見渡したるが何の影もなかりき。常世姫は声を震はせ息をはづませながら、諸神司にむかつていふ。
『諸神司、よろしく心魂を臍下丹田に鎮めよ。好事魔多し、寸善尺魔とはただ今のことなり。天下を混乱せむとする邪神妖鬼の言に迷はさるること勿れ。良果には虫害多く善神と善人には病魔常につけねらふ。神界をして永遠無窮に至治太平ならしめむとするこの神聖無比の議会を根底より破壊せむとして、数万の悪鬼羅刹は場の内外に充満せり。寸毫といへども油断あるべからず。すみやかに諸神司は八王の撤廃に賛成されむことを望む』
と容色を柔げ笑を満面に湛へて述べ立てたり。諸神司は何ゆゑか口舌をしばられたるごとく一言をも発すること能はず、かつ全身麻痺して微躯とも動くを得ざりしがため起立して賛意を表すること能はず、ただおのおの目を円くしてギロギロと異様の光を放つのみなりけり。
 このとき壇上の八島姫は口をひらき、
『妾は南高山の八王大島別の娘なりしが、ある一時の心得ちがひより父母を捨てて城内をひそかに脱出し、それより世界の各地を漂浪し、零落して四方を彷徨せし折しも、至仁至愛なる常世彦の部下に救はれ、言舌につくしがたき手厚き恩恵に浴しその洪恩譬ふるにものなく、日夜感謝の涙に暮れゐたりしに、思ひきや、勢力徳望天下に冠絶せる八王大神夫婦の殊寵を忝なうし、今やかくのごとく畏れおほくも姫命の侍女として、春日姫と相ならび一日の不平不満もなく近侍し、二神司の神徳の非凡にして大慈大悲の救世主にましますことを覚り、洪恩の万一にも報いたてまつらむと寸時も忘るることなし。諸神司は妾のこの証言を信じて、一刻も早く原案に賛成され、もつて永遠平和の神と後世まで謳はれたまはむことを、天地の大神に誓ひて勧告したてまつる』
と述べ立つる。このとき会場の一方より常世姫に登壇の許可を請求せる八王あらはれにける。さて、この結末は如何になり行くならむか。
(大正一〇・一二・一七 旧一一・一九 出口瑞月
(第六章~第八章 昭和一〇・一・一九 於錦江支部 王仁校正)
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