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文献名1霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
文献名2第3篇 正邪混交よみ(新仮名遣い)せいじゃこんこう
文献名3第21章 敵本主義〔171〕よみ(新仮名遣い)てきほんしゅぎ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ常世会議も八王撤廃論も「国祖の御心」と強弁した八王大神に、聖地の神々も舌を巻いていたが、幸か不幸か、にわかの病で八王大神は退場を余儀なくされてしまった。大鷹別は、このように紛糾する会議を聖地で開いては、かえって国祖の神威を汚す、と常世会議を正当化する演説をぶった。斎代彦は八王大神の退場に、いったん今日は会議を解散することを提案し、賛成を得た。またしても会議は要領を得ないまま閉会となった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月22日(旧11月24日) 口述場所 筆録者 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月30日 愛善世界社版136頁 八幡書店版第1輯 421頁 修補版 校定版144頁 普及版62頁 初版 ページ備考
OBC rm0421
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本文  八王大神常世彦の堂々として毫末も抜目なき、真綿で首を締め付るごとき手痛き雄弁に列座の諸神司、ことに直接の関係ある八王は、我身の境遇と、その責任に省みて、鷺を烏といひくるめたる巧妙なる言論にたいし、抗弁反駁の余地なく、たがひに顔を見あはせ当惑至極の体にて青息吐息、五色の息を一時にホツと吐き、さすが雄弁の行成彦も猿田姫、出雲姫、斎代彦その他の神司も悄気かへりて、
『八王大神め、よくも吐したり』
と心中に驚異しつつ形勢いかになり行かむかと、とつおいつ、諸行無常是生滅法の因果をつらつら思はざるを得ざりける。
 連日の諸神司が至誠一貫全力を傾注して、神界のために舌端火花を散らして奮闘したるその熱誠と猛烈なる大々的攻撃も、沖の鴎の諸声と聞き流したる八王大神が、敵の武器をもつて敵を制するてふ甚深なる計略と、その表面的雅量とによりて、国祖の聖慮を云為し、敵の弱点を捕へ、鼠を袋に入れて堅く口を締めたるごとく、咽元に短刀を突付けたるがごとき、辛辣なる手腕に、いづれも敬服するの止むなきに至らしめ、満座の諸神人を小児のごとく、内心に見くびりさげしみながら、綽々として無限の余裕を示したるその威容は、常世城の大会議における檜舞台の千両役者としての価値、十分に備はりにける。
 幸か不幸か、八王大神はいま一息にして、その目的を達せむとする折しも、突然として発病したれば、彼我の諸神人は周章狼狽し、懇切に介抱しつつありき。常世城の従臣、春日姫、八島姫は驚きながら、城中奥深く八王大神の病躯を扶けて、その艶姿を議場より没したりける。
 この突然の出来事に、城内は上を下へと、大騒ぎの真最中、突然登壇したる神人は、大自在天の重臣たる大鷹別なりき。
『アヽ満場の諸神人よ、本会議の主管者たる八王大神は、御承知の通り急病のため退席の止むなきに立到られましたことは、相互に遺憾の至りであります。しかしながら、吾々はこの大切なる会議を、中止することは出来なからうと思ふのであります。吾々は八王大神のあまりに天下の平和について、造次にも顛沛にも忘れたまはざる、至誠の心魂ここに凝つて、つひに病を発したまふたのではあるまいかと、推察する次第でありますが、諸神人は如何の御感想を保持したまふや。思ふに吾々はじめお互ひに、八王大神の御熱誠なる訓戒的お宣示にたいして、一言の辞なきを思ひ、実に、汗顔の至りに耐へませぬ。直接の関係者たる八王各位においても、腹の底をたたけば何れも同じ穴の狐、疵もつ足の仲間と云はれても、答弁の辞はなからうと思ひます。いづれも神定の天職を全うされた神司らは、あまり沢山には、この席に列なる方々には、失敬ながら有るまいと断言して憚らないのであります。諸神司の間には斯のごとき重大なる会議は、国祖の御許容を得て、神定の聖地ヱルサレム城において、開催するが至当である、徒に常世城において会議を開くことをもつて、自由行動、天則違反の甚しきものと主張さるる神司らもありましたが、諸神人、胸に手をあてて、冷静に御熟考をして戴きたいのであります。万々一、前日来のごとき紛乱の議会を聖地において開いたとすれば、第一、大神の聖地を汚し神慮を悩ませたてまつり、吾々は天地の神明に対して謝するの辞がありますまい。賢明卓識の八王大神は、今日の結末を事前に感知して止むを得ず、この地において会議を開き、聖地を汚さざらしめむと、苦心されたる、その敬神の御心と天眼力は、吾々凡夫の企及すべからざる所であります。諸神人は八王大神の理義明白なる御主張に対し、すみやかに御賛成あらむことを希望いたします』
と述ぶるや、末席の方より、
『ヒヤヒヤ』
『ノウノウ』
の声湧き起り、中には、
『ヒヤヒヤ冷やかなノウノウの能弁者』
と叫ぶものもあり。
 この時、緊急動議ありとて、登壇したるは例の斎代彦なり。斎代彦は、例のごとく右手をもつて鼻をこぢ上げ、両眼を撫で、洟を手の甲にて拭ひ、その手を右側の着衣にて拭ひながら、
『今日は、八王大神の御急病なればこれにて解散いたし、明日あらためて開会せばいかん、諸神人の御意見を承はりたし』
と大声に呼ばはりければ、満座の諸神人は、八九分まで手を拍つて賛成したり。
 ここに、当日の会議もまた不得要領のうちに幕を閉ぢられたり。アヽ今後の八王大神の病気および、会議の結果は如何に展開するならむか。
(大正一〇・一二・二二 旧一一・二四 出口瑞月)
(第二〇章~第二一章 昭和一〇・一・二一 於八代駅長室 王仁校正)
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