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文献名1霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
文献名2第4篇 天地転動よみ(新仮名遣い)てんちてんどう
文献名3第27章 阿鼻叫喚〔177〕よみ(新仮名遣い)あびきょうかん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ行成彦があらためて武備撤廃を呼びかけると、議場の神々の六割が賛意を表明し、議決してしまった。行成彦は、平和を願うのであればまず常世城の神々から武備撤廃を実現せよ、と呼びかけた。常世姫は歯噛みしたが、形勢はいかんともすることができなかった。モスコーの従神森鷹彦は壇上に登ると、有翼の獅子の正体を表し、自ら翼をもぎ取って範を示した。鷹住別が壇上から武備撤廃を呼びかけると、神々は自らの武器を剥ぎ取り、また常世城の神々の駐屯所に侵入して、武備撤廃を行い始めた。この騒ぎに真正の八王大神は驚いて、病気の身ながら神々を止めようとしたが、森鷹彦によって威嚇され、進むことができない。また偽八王大神の道彦が突然声を発し、武備撤廃を妨害するのは偽の八王大神である、と呼ばわった。八王大神・常世姫はどうすることもできず、こつぜんとして城内から姿を消してしまった。
主な人物 舞台 口述日1921(大正10)年12月24日(旧11月26日) 口述場所 筆録者桜井重雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年3月30日 愛善世界社版170頁 八幡書店版第1輯 433頁 修補版 校定版179頁 普及版76頁 初版 ページ備考
OBC rm0427
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本文  行成彦は、ふたたび立つて壇上に現はれ、さも快活なる面色にて諸神人にむかひ、
『ただ今、高山彦の周密精細なる主張と、賢明仁慈なる常世姫の演説について、諸神人は全会一致をもつて賛成せられたることを、吾々は聖地ヱルサレムの天使長広宗彦の代理として本心より歓迎するものであります。これまつたく諸神人が誠心誠意国祖大神の聖慮を奉戴し、神界の平和を熱望さるる結果と信じて疑ひませぬ。ついてはただ今常世姫は各神人の武装撤廃については、その必要なきを詳論されましたが、私はこの際武装の撤廃を断行したいと思ひます。諸神人の御感想を承はりたし。賛成の諸神人はすみやかに起立を願ひます』
 この提案に対して、満座の神司らは六分まで起立して賛意を表しける。行成彦はこれを見て、
『御承知のごとく、過半数の賛成を得ました。ついては速やかに実行にかかられむことを希望します。武装の撤廃の方法については、竜神はその玉を取り、獅子、虎、熊、狼などの眷属はその羽翼を全廃し、鰐、鯨および海竜はその針毛を撤廃し、白狐は堅き金毛銀毛および鉄毛を撤廃し、中空を翔る鳥族はその咽下の毒嚢を排除せざれば、真正の平和を永遠に維持することはできないと考へます。この件については、まづ第一に常世城の神司らより模範を示されむことを希望します』
と述べ終り、悠々として降壇し、自席につきぬ。常世姫の顔色は、にはかに失望落胆の影浮び出でぬ。八王大神は莞爾として高座に控へ、操り人形のやうに首を上下に振り、賛成の意を形容に表しゐたりける。
 この様子を見たる常世姫、大鷹別一派の神司らは歯噛みをなして口惜しがりたれど、議場内の形勢は如何ともするに由なかりける。
 このとき、森鷹彦は両肱を張り、拳固を固め勢よく登壇し、満座の壇上にてその正体を露はし、巨大なる獅子となり、矢庭に右の手をもつて左の羽翼をメリメリとむしりとり、壇下の神人の前に投げ捨てたり。今度は左手を背中にまはして、右の羽翼を顔をしかめながら又もやメリメリとむしりとり、その羽翼を口にくはへ、壇下を目がけて山岳も崩るるばかりの唸り声を立て巨眼を光らせ、雄叫びしぬ。神人らの顔色はサツと変りぬ。
 このとき、春日姫とともに常世城に逃れゐたる鷹住別は、立つて壇上にのぼり、
『アヽ諸神人よ、言説よりも実行をもつて第一とす。神人は言心行一致をもつて精神とす。貴下らは国祖大神より神人の神格を賜ふ。この場に臨みて女々しく躊躇逡巡するは決して名誉ある神人の度量に非ざるべし。まづ常世城より実行されむことを希望す。常世城の神人にしてモスコーの従臣森鷹彦に倣はずば、吾々は進ンで諸神人の武装を排除し奉らむ。八王大神においては御異存ありや』
と向き直りて問ひつめたり。
 八王大神はさも愉快さうなる面色にて首を上下にしきりに振り、大賛成の意を表したり。常世姫は憂ひ悲しみ、内心狼狽の色面に表はれたり。行成彦は満座の諸神人にむかひ、
『諸神人よ、一斉に本城の神人らの屯所に出張し、武装撤回を監督されよ』
と、さも得意気に命令的に述べ立てたり。
 血気にはやる神人はまづ自分の羽翼を除り、あるひは牙を抜き、その場に投棄し、猛然として神人らの駐屯所に侵入したり。しばらくあつて、叫喚の声、咆吼怒号の雷声は城内に響き渡りける。八王大神はこの声に驚き、病躯を提げ壇上に馳せ上り、武装撤回中止を厳命したり。森鷹彦は巨大なる獅子に還元したるまま眼を怒らせ、牙を立て八王大神目がけて飛びかからむとする猛勢を示し、ときどき雷のごとく咆吼し、八王大神を威喝しつつありける。神人らは自席より口々に、
『偽八王大神を引ずり落せ。今となつて、卑怯未練に諸神人の決議を無視するは、吾々を侮辱するの甚だしきものなり。現に常世城の城主八王大神の黙許を得たり。何れの痴漢ぞ、速やかに退去せよ』
と口をそろへて呶鳴り立てたり。
 森鷹彦の獅子はまたもや後来の八王大神に向つて唸り立てたれば、場内はあたかも戦場のごとく修羅道のごとき光景とたちまち変じたりける。このとき三猿主義をとつて壇上に控へたる聾唖痴呆と思ひし道彦の偽八王大神は、猛然として立ち上り、満座を一瞥し、
『ただ今これに控へたるは八王大神と称すれども、彼は容貌吾に似たりといへども、その実はモスコーの八王に仕へたる道彦といふ発狂者なり。諸神人はかかる発狂者の言に耳をかたむけず、すみやかに武装撤回を断行されよ』
と言ひければ、真正の八王大神は歯噛みをなして口惜しがれど、身から出た錆の如何ともするに由なく、主客顛倒したるこの大勢を挽回することは到底不可能なりける。このとき八王大神は猫に出会ひし鼠のごとく、萎縮して何処ともなく姿をかくしたり。常世姫の影は忽然として消え失せたり。神人らの叫喚の声は実に物凄く、寂寥身に迫り、聞く者をして肌に粟を生ぜしむるにいたりける。
 たちまち天の一方より峻烈骨を裂くごとき寒風吹ききたるよと見る間に、王仁の身は高所より深き谷間に顛落したりけるより、目を開けば、身は高熊山の岩窟に寒風にさらされて横様に倒れゐたりける。
(大正一〇・一二・二四 旧一一・二六 桜井重雄録)
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