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文献名1霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻
文献名2第3篇 予言と警告よみ(新仮名遣い)よげんとけいこく
文献名3第22章 神示の方舟〔222〕よみ(新仮名遣い)しんじのはこぶね
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ大江神はこの小天国の神王となった。蟹若と桃園王がその補佐となった。大江神は果実が実らない木を伐採し、方舟を多数作らせた。人々はいぶかったが、蟹若はただ、大江神を信じて従うのみ、と神人らを諭した。神人らの働きにより、三百三十三の方舟が完成した。舟には残らず果実や家畜、草木の種を満載した。すると、顕恩郷の東北に立っていた鬼武彦の石像が立つ棒岩は、音を立てて回転し、天に向かって伸張し始めた。これを天の逆鉾という。顕恩郷の人々は逆鉾の下に来て供え物をし、祝詞を唱えて顕恩郷の繁栄を祈願した。すると天の逆鉾から宣伝歌が聞こえ、そして沈黙した。後に地上の大洪水が起こったとき、この郷の神人らは残らず方舟に乗ってヒマラヤ山に難をのがれ、二度目の人間の祖となった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月09日(旧12月12日) 口述場所 筆録者井上留五郎 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年4月15日 愛善世界社版127頁 八幡書店版第1輯 562頁 修補版 校定版130頁 普及版57頁 初版 ページ備考
OBC rm0522
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本文  大江神は、小天国の神王として神人らより畏敬尊信され、その命令は遺憾なく実行された。
 ここに蟹若を擢んでて左守となし、橙園王を抜擢し、右守に任じ、この一小区劃は実に天国楽土の出現したるがごとくであつた。
 大江神は橙園山に登り、部下の神人を使役して真金を掘り出し、鋸、斧その他の金道具を製作した。そして橙園郷の果実の実らざる杉、檜、樟等の大木を伐採し、数多の方舟を造ることを教へた。
 神人らは何の意たるかを知らず、ただ命のまにまに汗水を垂らして方舟の製作や金道具の製作に嬉々として従事した。神人の中には方舟の何用に充つべきかを左守に向つて尋ねた。されど左守は、
『果して何の用を為すものか、吾は神王に一言半句も伺ひたることなし。ただ吾々は神王の命に服従すれば可なり。吾らの安全を計りたまうて天上より降りきたれる神王なれば、無益のことを命じたまふべき謂れなし。汝らもただ命のまにまに服従して一意専心に方舟の製作に従事せば可なり』
といひ渡した。
 凡て神のなす業は人間の窺知し得べき所にあらず。
『神は今の今までは何事も申さぬぞよ、人民はただ神の申すやうにいたせば、ちつとも落度はないぞよ』
と神諭に示されたるごとく、ただ吾々は下らぬ屁理屈をやめて、ただただ神命のまにまに活動すべきものである。
 然るに人々の中には、根から葉まで、蕪から菜種まで詮索しなくては、神は信ぜられないとか、御用は出来ないとかいつて、利巧ぶるものが沢山にある。いかに才能ありとて、学力ありとて、洪大無辺の神の意思経綸の判るべきものではない。また神よりこれを詳しく人間に伝へむとしたまふとも、貪瞋痴の三毒に中てられたる体主霊従の人間の、到底首肯し得べきものでない。ただただ神の言葉を信じて身魂を研き、命ぜらるるままに神業に従事せばよい。
 顕恩郷の神人らは衣食住の憂ひなく、心魂ともに質朴にして少しの猜疑心もなく、天真爛漫にして現代人のごとく小賢しき智慧も持つてゐなかつた。そのために従順に神の命に服従することを得たのである。聖書にも、
『神は強き者、賢き者に現はさずして、弱き者、愚なる者に誠を現はし給ふを感謝す』
とあるごとく、小なる人間の不徹底なる知識才学ほど禍なるはない。
 かくして神人らの昼夜の丹精によつて、三百三十三艘の立派なる方舟は造りあがつた。さうしてこの舟には残らず果物を積み、または家畜や草木の種を満載された。
 今まで平穏なりし顕恩郷の東北隅の山間に立てる棒岩は、俄に唸りを立てて前後左右に廻転し初めた。さうして鬼武彦の石像は、漸次天に向つて延長しだした。之を天の逆鉾と称へる。
 猿のごとき容貌を具へたる種族と、蟹面の種族は互に手を携へて相親しみ、この逆鉾の下にいたつて果物の酒を供へ、祝詞を奏し、かつ顕恩郷の永遠無窮に安全ならむことを祈願した。このとき天の逆鉾に声あり云ふ。
『月に叢雲花には嵐  天には風雨雷霆の変あり
 地には地震洪水火災の難あり  神人にはまた病魔の変あり
 朝の紅顔夕の白骨  有為転変は世の習ひ
 淵瀬と変る世の中の  神人心を弛めなよ
 常磐堅磐に逆鉾の  堅き心を立て徹し
 天地の艱みきたるとも  神にまかして驚くな
 昨日にかはる今日の空  定めなき世と覚悟して
 月日と土と神の恩  夢にも忘るることなかれ
 惟神霊幸倍坐世  惟神霊幸倍坐世』
と鳴りわたつたまま、逆鉾は遂に沈黙してしまつた。
 神人らは異口同音に覚束なき言葉にて、
『かんたま、かんたま』
と唱へた。
 天地は震動して、ここに地上の世界は大洪水となりし時、この郷の神人らは一柱も残らず、この舟に搭乗してヒマラヤ山に難を避け、二度目の人間の祖となつた。ゆゑにある人種はこの郷の神人の血統を受け、その容貌を今に髣髴として存してをる人種がある。
 現代の生物学者や人類学者が、人間は猿の進化したものなりと称ふるも無理なき次第である。また蟹面の神人の子孫もいまに世界の各所に残存し、頭部短く面部平たきいはゆる土蜘蛛人種にその血統を留めてゐる。
(大正一一・一・九 旧大正一〇・一二・一二 井上留五郎録)
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