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文献名1霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
文献名2第1篇 山陰の雪よみ(新仮名遣い)さんいんのゆき
文献名3第2章 瀑布の涙〔252〕よみ(新仮名遣い)ばくふのなみだ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-04-09 16:25:55
あらすじ足真彦は鬼城山の麓にやって来た。鬼城山はかつて、棒振彦らが拠点として大八洲彦命ら天使に反抗し、大足彦とも大いに戦った邪神の住処である。とぼとぼと歩く足真彦を後から呼ばわりながら追ってくる者がある。見れば、馬にまたがった老人と若者の連れであるが、怪しい素振りが見える。若者は、宣伝使に母の三回忌の供養をして欲しいので呼び止めたのだ、という。魔神の住処の山中で行き暮れた足真彦は、これも神様のご縁と、怪しい主従について一夜の宿を借りることに決めた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月16日(旧12月19日) 口述場所 筆録者井上留五郎 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月10日 愛善世界社版14頁 八幡書店版第1輯 637頁 修補版 校定版16頁 普及版6頁 初版 ページ備考
OBC rm0602
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本文  名も恐ろしき鬼城山、曲の棲処と聞えたる、棒振彦や高虎の、醜男醜女の砦を造り、悪逆無道の限りを尽し、あらゆる総ての生物を、屠りて喰ふ枉神の、朝な夕なに吹く息は、風も湿りて腥く、さしもに広き、鬼城河、紅に染りて汚れはて、地獄ならねど血の河と、流れも変る清鮮の、水は少しもナイヤガラ、一大瀑布を右に見て、足を痛めつ身は長雨にそぼ濡れて、この世を救ふ真心の、両つの眼より迸る、涙は雨か滝津瀬か、響く水音轟々と、この世を呪ふ鬼大蛇、曲津の声と聞ゆなる、深山の谷を駆上り、黄昏近き寒空に、とぼとぼ来る宣伝使、大足彦の成れの果、疲れて足も立ち悩み、大地にドツと安坐して、息を休むる足真彦、面壁九年の其れならで、見上ぐる斗りの岸壁を、眺むる苦念の息づかひ、この世を救ふ神人の、心の空はかき曇り、黒白も分ぬ黄昏の、空を眺めて独言。
足真彦『嗚呼吾は闇の世を照らさむと、心の駒に鞭撻つて、駆廻りたる今日の旅、行衛も知らぬ月照彦の、神の命の御舎を、尋ぬるよしもナイヤガラ、心は急せる大瀑布、滝津涙も汲む人ぞ、泣く泣く進む常世国、弥々ここに鬼城山、若や魔神に吾姿、美山の彦の現はれて、天の逆鉾うち振ひ、進みきたらば何とせむ。嗚呼千秋のその恨み、いつの世にかは晴らすべき、疲れ果てたる吾身の宿世、饑に苦しみ涙にかわき、一人山路をトボトボと、迷ひの雲に包まれし、世の蒼生を照らさむと、心をこめし鹿島立、今は仇とはなりぬるか。山野に暮せし年月を、天教山に現れ坐せる、野立の神や木花姫の、神の命に復り言、申さむ術もナイヤガラ、轟く胸は雷霆の、声にも擬ふ滝の音の、尽きせぬ思ひ天地の、神も推量ましませよ』
と宿世を喞つ折からに、はるか前方にあたつて騒々しき物音が聞え来たりぬ。
 足真彦は、つと身を起し、耳を傾け、何者ならむと思案に暮るる折しも、馬の蹄の音戞々と近より来るものありける。
 見附けられては大変と、心を励まし疲れし足を運びながら、渓路さして下り行かむとする時しも、後方よりは老いたる神と見えて、嗄れ声を張揚げながら、
『オーイ、オーイ』
と呼ばはりける。その言霊の濁れるは、正しき神にあらざるべし。
 疲れ果てたる今の身に、魔神に襲撃されてはたまらじと、運ばぬ足を無理やりに、一歩一歩走り行く。
 駒牽きつれし枉神は苦もなく追着きぬ。進退これ谷まりたる足真彦は、わざと元気を装ひ、剣の柄に手を掛けて、寄らば斬らむと身構へ居る。
 このとき薬鑵頭の爺、両手をついて宣伝使に向ひ、
『貴下は天下の宣伝使と見受け奉る。吾に一つの願あり。願はくば宣伝使の諸人を救ひ給ふ慈心によつて、吾一生の願を叶へ給はずや』
とさも慇懃なり。宣伝使は、
『願とは何事ぞ』
と、やや緊張したる顔色にて問ひ返せば、禿頭の男はただ袖を以て涙を拭ひ、大地に平伏するのみなりき。中にも稍若き、額の馬鹿に突出たる、福助頭の黒い顔の男は、人形芝居の人形の首の様に器械的に顔を振りながら、涙を拭ふ真似をして、
『旅のお方に一つの御願があります。今ここに平伏して居るのは吾父であります。不幸にして三年以前に妻に別れ、今は老木の心淋しき余生を送る身の上、せめて今日は妻の三年にあたる命日なれば、その霊を慰むるため、この難路を往来する旅人に供養をなし、妻の追善のため四方に家僕を派遣し、往来に悩む旅の人を助け、醜き吾茅屋に一宿を願ひ、宣伝歌を霊前に唱へて、其霊を慰め給はるべき御方を求めつつあるのであります。しかるに如何なる宿世の因縁か、宣伝使たる貴下の御姿を拝し、嬉しさに堪へず失礼を省ず、御迹を追うてここまで到着いたしました。父のためには妻なれど、私のためには肉身の生の母の三年祭、父子は共に宣伝使の往来を待つて居ました。どうぞ一夜の宿泊を願ひます』
と、真しやかに洟啜りながら、声までかすめて願ひ入る。
 油断ならずと宣伝使は、やや思案に暮れながら、無言のまま佇立して彼らの言葉を怪しみつつありける。
 父子は口を揃へて、
『誠に貴下のごとき尊き神人を吾茅屋に宿泊を願ふは、分に過ぎたる願でありますが、袖振合ふも多生の縁とやら、今日妻や母の三年祭に当り、聞くも有難き宣伝使に邂逅し奉るは、全く妻の霊の守護する事と信じて疑ひませぬ。かかる草深き山中の事なれば、差し上ぐべき馳走とてはありませぬが、鬼城山の名物たる無花果の果実や香具の果物および山の芋などは、沢山に貯へて居りますから、どうぞ吾々の願を叶へて此痩馬に御召しくださらば、お伴仕ります』
と頼み入る。
 足真彦は道に行き暮れて宿るべき処もなく、かつ腹は空しく足は疲れ、悲観の極に達した際の事なれば、やや顔色を和げ、……エー、どうならうと儘よ。木花姫の神勅には、決して一人旅と思ふな、神は汝の背後に添ひて守らむと仰せられたれば、是も全く神の御繰合せならむ……と心に決し、直に承諾の旨を示した。
 嗚呼この父子は何者ならむか。
(大正一一・一・一六 旧大正一〇・一二・一九 井上留五郎録)
(第二章 昭和一〇・一・二八 於筑紫別院 王仁校正)
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