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文献名1霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
文献名2第1篇 山陰の雪よみ(新仮名遣い)さんいんのゆき
文献名3第3章 頓智奇珍〔253〕よみ(新仮名遣い)とんちきちん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-04-09 16:29:27
あらすじ足真彦がついていくと、深山に似合わない大きな館に案内された。しかし館の男たちの口ぶりが、どうも足真彦を害そうと待ち構えていたようである。また、自分を連れてきた男は邪神・鬼熊彦であることがわかった。足真彦はそこで、とっさに聾唖のまねをして、一切の声が聞こえない振りをした。耳が聞こえない振りで、鬼熊彦の罠の誘いに気がつかない振りをして避け、逆に奇妙な質問をして鬼熊彦をはぐらかしてしまった。そこへ、絶世の美人が現れて宣伝使に一礼した。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月16日(旧12月19日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月10日 愛善世界社版20頁 八幡書店版第1輯 639頁 修補版 校定版21頁 普及版9頁 初版 ページ備考
OBC rm0603
本文のヒット件数全 3 件/山彦=3
本文の文字数2044
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本文  足真彦は、父子の請ひを容れ、やや不安の念に包まれながら、馬背に悠々と跨り馬の嘶き勇ましく、山路さして奥深く進みゆく。
 ここは鬼城山の美山彦が隠れ家にして、今宣伝使を誘ひ帰りし父と称するは、美山彦の部下なる鬼熊彦なりき。若きは鬼虎といふ邪神なり。行くこと数十町にして此の隠れ家に着きぬ。
 高山の谷間より漏れくる月の光に照し見て、この深山幽谷に似ず意外に広き館のあるに足真彦は心私かに驚きける。鬼熊彦は声張り上げて、門戸を叩き、
『オーイ、オーイ』
と呼はる。声に応じて門内より四五の男現はれ、ガラガラと音をさせ乍ら、黒き正門を開き、
『ヤア、鬼熊彦、鬼虎か』
と叫ぶや二人は、
『シイーツ』
と窃に制し止むれば、男は平身低頭し乍ら、
『ヤア、是は是は失礼なことを申し上げました。夜中の事とて召使の鬼熊彦、鬼虎と見誤り、誠に申訳ありませぬ。御主人様』
と言葉を濁したり。鬼熊彦は態と大声を発し、
『今日は許す、今後は斯る粗忽あるべからず』
といふ間もあらず、鬼虎は其の尾に次で、
『今日は母上の三年祭なれば、唯今の無礼は母の霊に免じて差許す』
と言葉を添へける。
 二人は揉手しながら、宣伝使に向ひ、
『何分山奥の事とて、万事不行届、そのうへ行儀作法も知らぬ山猿ばかり、何卒御心に掛けさせられず、ゆるゆる御逗留を願ひ奉る』
と慇懃に述べたり。
 足真彦は馬上の儘、門内に進み入り、馬繋の前にてヒラリと下馬したる時しも、何処よりか四五の男現はれ来り、
『鬼熊彦は偉い奴だ、今日の一番槍。もう斯うなつては、籠の鳥も同様、此方のものだ』
と口走りければ、鬼熊彦は驚きて、
『ヤイ気違ひ』
と叱咤しながら、又もや揉手をなし、
『実は今日妻の供養につき、あまたの行倒れ者や狂乱者を集めて能ふ限りの供養を致し居りますれば、かかる狂人の集つて、理由もなき囈言を申すので御座います。必ず必ず御心置なくゆるゆると御衣を脱し、草鞋脚絆を脱捨て、奥殿に休息し給へ』
と言ふにぞ、宣伝使は、いよいよ怪しみ、ここに意を決し、俄に聾者と化け変りけり。俄聾者の宣伝使は、彼らの導くままに、やや美はしき一間に座を占めたり。このとき例の禿頭の男は丁寧に叩頭しながら、
鬼熊彦『アヽ有難き宣伝使よ、よくも此の茅屋に入らせ給ひました。痩馬の事とて嘸御身体を痛め給ひしならむ。まづ御遠慮なく温泉の幸ひに湧き出であれば、ゆるゆる入湯されたし』
と勧むるにぞ、宣伝使は裸体になつては大変と、態と聞えぬ振りをしながら黙し居たり。
 鬼熊彦は幾度も幾度も入浴を勧めたり。されど聾者の宣伝使は、一言も答へざるのみならず、態と自分より言葉をかけ、
『アヽ此処には立派な火鉢があるのー、これは何といふ木で拵へたのかい』
と問ひかける。鬼熊彦は、この言葉を聞くより、頭を傾けながら独言、
『アハー、こいつは聾者になりおつたわい、生命の無い奴は眼玉から先に上るといふ事だが、此奴は耳から先に上つたな。いづれ今晩中の生命だ。美山彦の計略にウマウマと乗せられよつて、うまい事づくめを並べられて、此奴はうまく乗せられよつた馬鹿者だ、もう大丈夫だ』
と小声につぶやき居る。
 宣伝使はその悪言を少しも聞えぬ振りにて、さも愉快気に、にこにこ笑ひつづけ居たり。而してふたたび、宣伝使は、
『オイこの火鉢はどこの山の、何といふ木で拵へたのかい』
と又もや問ひかくるを、鬼熊彦は、
『エー邪魔臭い。耳も聞えぬ態しよつて、俺に聞いたつて何になるかい。人に物を聞くのは、耳の聞える奴のする事だ。此奴は手真似で一つ驚かしてやらう』
と、たちまち自分の鼻毛をむしり、火鉢に燻べて見せるを、宣伝使は、
『アヽさうか、鼻山の穴たの高き欅で造つたのかのー』
と空とぼけて見せるを、鬼熊彦は、
『聾者の頓智、面白いことを吐すワイ』
とまた笑ふ。
 宣伝使は一つ嬲つてやらうと思つて、
『オイ、この敷物覆ひはいつ拵へたのかい』
 鬼熊彦は、
『エー邪魔くさい、自分の生命が今晩終るのも知りよらずに、暢気らしい敷物覆ひまで尋ねよる、尻でも喰つて置け』
と、クルリツと宣伝使の方に後を向け、真黒の尻を捲つて、ポンポンと二つ叩いて見せたれば、宣伝使は、
『ウン、さうかい。後月の二日に拵へたのかい。道理で未だ新しい香がプンプンとして居るワイ』
 鬼熊彦は、その頓智に呆れかへる。宣伝使は又もや嬲りかけた。
『この押戸は、いつ拵へたかのー』
『エー邪魔臭い。蕪から菜種子まで差出よつて、もうけつが呆れる。差出なイ』
といふ言葉を形容に代へて、又もや宣伝使の方に向つて尻を捲くり、尺を突込みて見せたり。これは、「尺でな」といふ事なるを、宣伝使は又もや笑ひながら、
『ウン、さうかい。後月の差入れに拵へたのかい。アハヽヽ』
と笑ひ転ける。
 このとき絶世の美人は、淑やかに押戸を開けて入り来り、流目に宣伝使をチラリと見上げ、丁寧に辞儀をしたりしが、互に見合す顔と顔、二人の顔には、ハツと驚きの色現はれたり。この美姓は、果して何人ならむか。
(大正一一・一・一六 旧大正一〇・一二・一九 外山豊二録)
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