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文献名1霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻
文献名2第3篇 太平洋よみ(新仮名遣い)たいへいよう
文献名3第14章 怒濤澎湃〔314〕よみ(新仮名遣い)どとうほうはい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-04 17:58:21
あらすじ船客たちが四方山話にふける一方、船中に歌を歌う女(奇姫)があった。それは、遠く常世の国へ旅立った男を思う歌であった。その歌を聴いて、白雪郷から来た長髪の荒男(国彦)は、その女が自分の息子の恋人であることを知った。男の息子(高彦)は、この恋愛が白雪郷の規則を破ったかどで、村を追放されていたのであった。男は女に、息子の居場所を教えてくれ、と頼み込んだ。そのとき、突然嵐がやってきた。すると女は荒れ狂うに身を投げてしまった。男は女を助けようと自らに飛び込んだ。そんな中、暗中に静かに宣伝歌が響き聞こえてきた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年01月31日(旧01月04日) 口述場所 筆録者高木鉄男 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年5月31日 愛善世界社版82頁 八幡書店版第2輯 65頁 修補版 校定版86頁 普及版35頁 初版 ページ備考
OBC rm0714
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本文  船戸の神はガラガラと錨を釣上げたり。折から吹き来る東風に真帆をかかげ風を孕まして、果しもなき大原を船底に鼓を打たせながら、波上静かに辷り行く。日は西のの端に舂きて水面を金色に彩りぬ。東の山の端より昇る玉兎の光に照されて日はに隠るとも、その名は光る日の出神。この世の幸を祝ふ祝姫、連なる浪の面那芸彦、空は一面の星光粗らに輝き、月光波間に浮き沈み、常世の春の波の上、夜を日に踵いで進み行く。この船には三人の宣伝使を始め国々の沢山の人々が四方山の話に耽り、波路の憂さを払ひ慰めてゐたり。船中の一方より白髪交りの長髪の大男、赤黒き面をヌツト出し、
『おい船頭、ここは一体なんといふ処だ』
『此処かい、ここはといふ処だよ』
は極つて居るワイ。何ンといふぢや』
『此処かい、ここは乳のぢや』
『フン分つた。生の父上母さまは何処に如何して御座るやら、生命の際に唯一目、会うて死にたい顔見たい、といふかい』
甲『何処の奴か知らぬが縁起の悪い事を吐かすない。一寸下は水地獄だぞよ』
男『貴様こそ縁起の悪いことを云ふ、水地獄なンて俺は大の嫌ひだ。瑞の霊が探険して来たやうな恐ろしい処が、このの底の方に在るかと思へば、船乗も嫌になつてしまふワ』
 このとき船の一方より涼しい女の歌ふ声聞えきたる。
女『山より高き父の恩  より深き母の恩
 山ととの恩忘れ  この原を打ち渡り
 常世の国に身を隠す  恋しき男に会はむとて
 此処まで来たは来たものの  長き浪路に倦き果てて
 もと来し国へ帰り行く  その術さへも波の上
 父母棄てて恋慕ふ  男に付くか恋慕ふ
 夫を捨てて山の  深き恵みの父母の
 御側に帰り村肝の  心をつくし仕ふるか
 善と悪との国境  進むも知らに退くも
 成らぬ苦しきの上  月は御空に輝けど
 妾は思案に暮の鐘  故郷を思ふ恋しさの
 心の空も掻き曇る  吁如何にせむ千尋の
 深き路に身を投げて  親に背きしこの罪を
 天と地との神々に  心の底より謝罪せむ』
と歌ひ始むるや、長髪の男はその女の手をグツト握り、
『オイ待て。今の歌で様子は判つた。俺の忰は貴様の為に結構な白雪郷に居る事も出来ず、たうとう里人より刎ね出されて仕舞つて、この前の月に常世の国に逐電し、夫れがために俺のところは大変な迷惑だ。大切な忰は白雪郷の規則を破つて、村は逐ひ出され、俺も浮世の義理で勘当はしたものの、如何しても忘れられぬは親子の情愛だ。年寄つた俺が遥々この浪路を渡つて忰の後を追ふも子故に迷ふ親心、俺の女房は夫れを苦にして死ンで了ひよつたぞよ。お前も夫れほど俺の忰を慕つて、この原を渡つて行かうと云ふ親切は、俺が忰を思ふも同じことだ。思へば実に有難い。清いお前の志、俺の可愛い忰を愛して呉れるお前と思へば、如何したものか今までの腹立もスツカリと水の泡沫のやうに消えて了つて、今は一層憐なやうな心持がして来た。何ンでも堅い約束をして居るのであらう。お前に聞けば常世の国の何処に居るといふことは判つて居らう筈、どうぞ包まず親ぢやと思うて、俺に逐一知らして呉れ。俺が何ほど山野を駈廻つて探したとて、このよりも広いダダツ広い常世の国を、十年や二十年探したとて、探し当らるるものではない。忰の在処を聞かして呉れたら、俺もお前と親子に成り、親子三人睦まじう、常世の国の何処の端でも厭はず、暮す考だ』
とさしも頑丈の荒男も、子ゆゑの暗に鎖されて四辺かまはず蚕豆のやうな涙をボロボロと溢すその憐さ。
 今までさしも晴朗なりし大空も忽ち黒雲蔽ひ、一望模糊として電光閃々、雷鳴轟き、凄然として風荒れ狂ひ、雨は沛然として降り来り、怒濤澎湃実に惨澹たる光景となりぬ。今まで四方山の話に喧噪を極めたる一同の乗客は、顔色蒼白となり得もいはれぬ不安の念に満たされけるが、アツと一声叫ぶよと見る間に、麗しき女の姿は荒れ狂ふ浪に向つてザンブと許り身を投じたり。長髪の男は声を限りに、
『ヤアわが娘、いな他処の女、何故に投身したぞ。助ける術は無いか、皆の者救へ救へ』
という声も、猛り狂ふ浪の音に遮られて、一同の耳には通はざりける。男は天に向つて合掌し暫し何事か祈ると見えしが、またもや身を跳らして中にザンブとばかり飛込み、水煙を立てて姿は跡白浪と成りにける。心なきの面は怒濤の山岳凄じく、船を木葉のごとく翻弄するのみ。
 黒白も分かぬ深黒の面に、一道の光明船を目がけて射照し来るあり。天には電光時々閃き渡り、雷鳴轟き惨また惨。一同何れも決死の覚悟。否ただ口々に忍び忍びに何物をか祈りゐたりけり。
『浪風荒き原も  虎狼の咆き叫ぶ
 荒野の原も何のその  神の教に任す身は
 心も安き法の船  御世を救ひの宣伝使
 風も吹け吹け浪荒れよ  鳴る雷も轟けよ
 仮令この身は底の  藻屑となりて果つるとも
 などや恐れむ竜宮の  尊き神の御守りに
 開く稜威も高天原の  聖地に救はれ永久に
 春の弥生の花の頃  心の清き益良夫が
 暗路を光り照すてふ  日の出神の宣伝使
 風も悪魔も祝姫  荒き面面那芸の
 凪て目出度き和田の原  凪て目出度き和田の原
 千尋のに身を投げし  吾身の罪を久比奢母智
 姫の命の真心は  天と地とに貫きて
 今に原凪ぎ渡り  鏡のごとく成りぬべし
 実にも尊き神の道  神の恵みは弥広き
 大原の如くなり  大原の如くなり』
と暗中より声も涼しく宣伝歌響き来たりぬ。
(大正一一・一・三一 旧一・四 高木鉄男録)
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