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文献名1霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
文献名2第5篇 百花爛漫よみ(新仮名遣い)ひゃっからんまん
文献名3第34章 森林の囁〔427〕よみ(新仮名遣い)しんりんのささやき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-06-23 23:45:39
あらすじ間の森に現れたのは、照彦の宣伝使であった。森を見張っていた村人たちが照彦を取り囲んだが、その威勢に押されて取り押さえることができない。取り巻いている村人たちが馬鹿話をしている間に、駒にまたがった春山彦が到着した。春山彦は、宣伝使の神力があまりにも強いと叫んで、村人たちに退散するようにと言い渡した。それでも何人かは、このことを聞いて恐ろしさに腰を抜かしてその場に留まってしまう者たちがいた。春山彦は照彦に、歌に託して自分が松・竹・梅の三宣伝使をかくまっていることを伝えた。照彦は春山彦の意を覚り、春山彦に降参した振りをして、一緒に駒にまたがった。これを見た村人たちは、照彦が春山彦の威勢によって降ったと思い込んだ。春山彦は照彦を伴って館へと帰って行った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月17日(旧01月21日) 口述場所 筆録者高橋常祥 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月5日 愛善世界社版262頁 八幡書店版第2輯 368頁 修補版 校定版273頁 普及版110頁 初版 ページ備考
OBC rm0934
本文のヒット件数全 1 件/戸山津見の神=1
本文の文字数2691
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本文  宵闇の月は御空に照彦の、すたすた来る宣伝使、折柄降り来る村時雨、息を休めむと間の森に立寄つて雨宿りしながら、
『月は照る照る常世は曇る  間の森に雨が降る』
と歌つてゐる。木蔭に潜む四五の若者、
『ヤアまた出たぞ、宣伝使だ。夜前出て来た奴は幽の字に霊の字だつたが、今夜の奴は力のある声で歌つてゐるワ。到底此奴は吾々の手に合はぬ。村中が総出して此処を通さぬやうにせぬことには、鷹取別神さまに、貴様達は咽首に居つて、何故ウカウカと宣伝使を常世の国に入れたかと言つて、村中のお目玉、また春山彦の司に何のやうに叱らるるかも知れぬ。それぢやと云つて吾々五六人では、到底捕捉まへることが出来ぬ。早く貴様ら各自手配して村中の者を招んで来い。俺は此処に見張りをしてゐる。』
『よし来た』
と、五六人の若者は東西南北に袂を別ち、月の光に照され家々を叩き廻る。照彦の宣伝使は、悠々として木株に腰打下し、
『アヽア、何時見ても月の光は心持ちの好いものだ。况して森の木の間を洩れる月の影は一層気味の好いものだな。併しながら、この間の国は常世へ渡る咽首だ。今までのやうにウカウカとしては居られぬ。前後左右に心を配り、敵の奸計に陥らぬやう、神様にお願ひをいたさうかな。オーさうぢや』
と独語ちつつ拍手の音を木霊に響かせ、音吐朗々として神言を奏上する処へ、さしもに広き森林を縫うて幾百とも知れぬ提燈の光瞬き来る。見る間に照彦の周囲は黒山の如く、提燈の火は夏の螢の如く、遠巻きに巻きゐる。されど彼らは宣伝使の威勢に恐れてか、一人として近寄り来るもの無く、一方の木蔭に押し寄せたる男、
甲『オイ今度の奴は中々手硬いぞ。何うしても春山彦の司がお出でにならなくちや、マア六ケしいなあ』
乙『ソウ心配するな、今に栗毛の駒に乗つてお出で遊ばすのだ、チヤンと報告がしてあるからのう』
甲『さうか、それなら大丈夫だ。早く来て下さるとよいがなあ』
丙『春山彦の神さまは智慧もあり力もあり、情深いお方だが、昨夜も昨夜とて、それはそれは美しい松竹梅とかいふ三人の娘を、甘いこと自分の家へ引張り込んで、御利益ごかしに鷹取別にお渡しになつたと云ふことだ。俺はつひよう行かなかつたが、隣の八公がさう言うてゐたよ』
甲『そんなことは、俺も昨夜三人の娘が送られて行く時に見てをつたのだ。別嬪だといつても大したものではないよ。まあ俺の女房に比べたらチヽヽちーと位なものだ』
乙『何を吐かしよるのだい。あのやうな立派な天人娘と、貴様の嬶と比べものになつて堪るかい。大神楽鼻の、鰐口の、出歯の、兎耳の、団栗眼みたやうな、碾臼に菰巻いたやうな醜態な嬶を持ちよつて、ちーと好いの、悪いのつて、よう呆けたものだな。云うと済まぬが、河豚の横跳びのやうな嬶でも、貴様の目には柳のやうに見えるのだらう。俺達の手では一抱へに抱へられぬやうな胴腹をして、やがて臨月だとか云うて、昨日も俺ん所へ貴様の嬶が出て来をつて、すつぽんに蓼を噛ましたやうに鼻をペコつかせ、フースーフースーと苦しさうな息づかひをして居つたが、俺あ、その時に鍛冶屋の鞴にでもしたら調法だと思つた位だ』
甲『馬鹿にすな。
 一抱へあれど柳は柳かな
だ。貴様のやうな部屋住が女の味を知つてたまるかい。なに程綺麗な御姫さまでも自分の自由にならねば、別嬪でも何んでもないワイ。自分の専有物にしてこそ立派な女だよ』
丙『よう、偉い権幕だなア、もうよう言はぬワ、フヽヽヽヽ』
 斯く雑談に耽る折りしも、駒の蹄の音かつかつと馳せ来る一人の男あり。
村人『ヤア、春山彦の司だ。アヽこれでもう吾々も安心だ。ヤー進め進め』
と虎の威を借る狐の勢ひ、俄に肩臂をいからしながら、宣伝使の方に向つてチクチクと四方八方より近づき迫つて来る。照彦は声を張揚げて、
『神が表に現はれて  善と悪とを立別る
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 曲津の神は世に亡ぶ  月は照るてる常世は曇る
 間の森の雨晴るる』
と歌ひ出せば、馬上の一人は宣伝使に向ひ、
『ヤアヤア、汝は三五教の宣伝使、此処を何と心得てをらるる。勿体なくも常世神王の御領分、鷹取別が管掌の下に、ウラル教を以て教を樹つる間の国。御上意だツ。神妙に手を廻されよ』
 照彦はカラカラと打笑ひ、
『われこそは三五教の宣伝使、戸山津見の神なるぞ。悪逆無道の鷹取別に諂び諛ひ、この世を曇らす悪魔の部下、耳をさらへてわが宣伝歌を聴け』
『ヤアヤア村人達、この宣伝使は不思議の魔力を以て、宣伝歌を歌ひ、汝等が身体を鉄縛りにいたす魔神であるぞ。われこそはウラル山の大神の神力を得て、神変不思議の術を得たれば少しも怖るることなし。汝らは力の弱き臆病者なれば、生命の惜しき奴は早くこの場を立去れ。汝らが遁げ去りし後は華々しき竜虎の争ひ、春山彦が生命を取らるるか、宣伝使を生擒りにして馬に乗せ、縛つてわが家へ連れ帰るか、二つに一つのこの場の境、足手纏ひにならぬうち早く立去れ』
と大音声に呼はれば、群衆は各々提燈の火を吹き消し、雲を霞と遁げて行く。この言葉に驚いて肝を潰し、腰をぬかした弱虫共は、彼方に三人此方に五人と戦いてゐる。春山彦は又もや、
『ヤア村の者ども、残らず遁げ去つたか。グヅグヅいたせば険難だぞ』
 彼方此方の森蔭より、
『モーシモーシ腰が抜けました、ニヽヽヽヽヽ遁げられませぬ。どういたしませう』
 春山彦は小声で、
『ヤア困つた奴だな。腰は抜けても、耳は利いてゐる。コリヤ、迂闊したことは言はれない』
と呟きながら、
『ヤア三五教の宣伝使、この春山彦が現はれし上は、千変万化の秘術あるとも到底叶ふまじ。速かにわが馬に乗つてわが館に来れ、取調ぶる仔細あり。

 久方の天津月日の照る中に
  情けを知らぬ人のあるべき』

と歌ひかけた。腰の抜けた弱虫連中はこの歌を聞いて、
甲『オイ、何だ、春山彦の司は……久振りに、つきもののついた化物奴、人は知らぬと思ふか情けない、と仰有つたぞ』
乙『偉いな、流石は春山彦の司だ』
 照彦はこの歌を聞いて、暫し頭を傾け考へゐたりしが、

『昇る日に消えしと見えし星影は
  消えしにあらずかくれたるなり』

と答へけるに、春山彦は宣伝使のわが意を悟りし事を悦び、
『汝三五教の宣伝使、今の言葉に依れば往生せしと見えたり。サア、早くこの駒に乗つてわが館に来れ』
と呼ばはる。宣伝使は、
『われは天下の宣伝使、汝が如き悪魔の家に伴はれ行くは汚らはしけれど、衆生済度のために汝が馬に乗つて遣はすべし』
と云ふより早くヒラリと跨り、春山彦と轡を列べて、蹄の音高らかに館を指して走り行く。
(大正一一・二・一七 旧一・二一 高橋常祥録)
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