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文献名1霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
文献名2第5篇 百花爛漫よみ(新仮名遣い)ひゃっからんまん
文献名3第37章 凱歌〔430〕よみ(新仮名遣い)がいか
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-12-24 01:44:16
あらすじ一同が来て見れば、護送されていったはずの照彦が高笑いをしている。その場にやってきた一同に対して、照彦は自分の素性を明かした。照彦は、月照彦(大八洲彦命の後身)の再来であった。月照彦の照彦は、木花姫命の御心により、桃上彦の部下となって、三姉妹を守護していたのだ、と明かした。一同は霊妙な神の仕組みに言葉もなかった。そこへ、鷹取別の部下・遠山別が部下を率いて訪ねて来た。春山彦の三姉妹を常世神王の側に出仕させるように、という鷹取別の命令を伝えて、月・雪・花の三姉妹を迎えに来たのであった。親子三姉妹は常世神王の命令を受諾し、別れを告げ、三姉妹は駕籠に乗せられて常世城へと出立して行った。しかしまたしても不思議にも、連れて行かれたはずの三姉妹は、無事に春山彦の館に居るのであった。春山彦は、またもや鬼武彦に救われたことに気づき、一同はオリオン星座に現れた救いの神への感謝の宣伝歌を歌った。この後、宣伝使一行は、月・雪・花の三姉妹を伴い、春山彦夫婦に別れを告げて、目の国指して進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年02月17日(旧01月21日) 口述場所 筆録者河津雄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月5日 愛善世界社版288頁 八幡書店版第2輯 377頁 修補版 校定版299頁 普及版122頁 初版 ページ備考
OBC rm0937
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本文  朝日は空に照彦の、神の命の宣伝使、戸山津見と改めて、情も深き春山彦の、館に着くや、一息つく間もあらず、中依別の捕手の駕籠に乗せられて、怯めず臆せず、宣伝歌を歌ひながら、数多の人に送られつ、駕籠にぶらぶら揺られ行く。後に照彦は、窓の戸押し開き、大口開いて高笑ひ。
『ワアハヽヽヽヽヽ、よくも化されよつたなア。それにつけても雄々しきは、鬼武彦が白狐の働き、アヽ面白し面白し。ヤアヤア駒山彦、松、竹、梅の宣伝使殿、春山彦御一家の方々、これへお越し遊ばされよ』
と声高々と呼ばはれば、心轟く駒山彦、千騎一騎の胸も春山彦夫婦、親子は一時にこの場に現はれ、松代姫は言葉しとやかに、
『ヤア、そなたは照彦殿、何うしてマア無事に免れましたか。斯う云ふ間にも心が急く。またもや鷹取別の手下の者共、そなたの所在を探ね、引返し来るも計り難し。早くこの場を落ち行けよ』
『ワアハヽヽヽヽヽ、何さ何さ、たとへ鷹取別、鬼神を挫く勇ありとも、吾また神変不思議の神術を以て、幾百万の曲津見を、千変万化に駆け悩まし、言向和し麻柱の、神の教に帰順せしめむは案の内、必ず心配あらせられな。吾は今まで照彦となつて、ヱルサレムの桃上彦命が僕となり、日に夜に汝ら三人を守護り居たるは、天教山に現れませる木の花姫の御心にて神政成就の先駆をなし、黄泉比良坂の戦闘を治め、常世国に塞がれる八重棚雲を吹き払ひ、隈なく照らす月照彦の神の再来、照彦とは仮の名、今は尊き天の数歌、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十。十の名に負ふ戸山津見の神、如何なる曲霊の来るとも、吾身のこの世に在らむ限りは、案じ煩ひ給ふ事勿れ』
と初めて明かす身の素性。春山彦を始めとし、松竹梅や雪月花、駒山彦や夏姫も、思はず顔を看守つて、何の辞もなかりける。またも聞ゆる人馬の物音、はて訝かしやと、窓押し開けて眺むれば、黄昏の暗を照して、こなたに向かつて進み来る高張提燈旗差物、遠山別が紋所、白地に葵の著く、風に揺られて瞬きゐる。
『あの旗印は擬ふ方なき遠山別、この場の秘密を窺ひ知つて、又もや捕手を向けたるならむ。ヤア、方々、片時も早く裏庭を越え、巌室に忍ばせ給へ。春山彦の神力に依て、如何なる敵をも引受け申さむ。早く早く』
と急き立つれば、
『アイ』
と答へて七人の女達、裏庭指して出でて行く。
 照彦、駒山彦は突つ立ち上り、
照彦『ヤア、面白し面白し、曲津の張本遠山別、たとへ幾百万の軍勢を引連れ攻め来るとも、この照彦が言霊の、伊吹の狭霧に吹き散らし、言向和すは目のあたり。春山彦殿、必ず懸念ひなされますな』
『実に有難き戸山津見の御仰せ。さりながら、吾らも間の郷の司神、女々しくも、助太刀を受け、敵を悩まし、卑怯未練と笑はれむより、吾は心を神に任せ奉り、生命の続く限り、吾言霊の有らむ限り言向和し、それも叶はぬその時は、この細腕の動く限り、剣の目釘の続くだけ、縦横無尽に斬り捲り、潔く討死仕らむ。貴神は暫く控へさせ給へ』
『ヤア、勇ましし勇ましし、照彦は奥庭に身をしのび、貴神が働き見物仕らむ。羽山津見来れ』
と徐々と裏口開けて出でて行く。門の戸打破り、乱れ入り来る遠山別、家来の面々引連れて、遠慮会釈もなく座敷に駆け上り、
『ヤア、春山彦、松竹梅の宣伝使を鷹取別に送られしは天晴あつぱれ、さりながら、汝には、月、雪、花の三人の娘ありと聞く。万々一替玉にあらずやとの鷹取別の御疑ひ、照山彦、竹山彦の証言もあれど、念のため、汝が娘三人を一度常世へ伴れ帰り、真偽を糺せよとの思召、君命拒むに由なく、遠山別、使者として罷り越したり、速かに三人の娘を渡されよ』
と言葉鋭く居丈高、肩臂怒らし睨み入る。春山彦は、ハツと胸を衝きながら、決心の色を浮べ、
『天にも地にも掛替なき三人の娘なれど、誰あらう鷹取別の御仰せ、否むに由なし、謹しんで御旨を奉戴し、娘をお渡し申さむ。暫く待たれよ』
と語る折しも、月雪花の三人は、美々しきみなりの扮装にてこの場に現はれ、三人一度に両手をつき、
『これはこれは遠山別様、この見苦しき荒屋へ、よくこそ入来せられました。妾は仰せに従ひ、唯今より参りますれば、何分宜敷く御願ひ申します。アヽ、父母様、妾は往つて参ります。人間は老少不定、これが長のお別れにならうも知れませぬ、随分無事で、夫婦仲よく暮して下されませ』
と、三人一度に声を曇らせ泣き沈む。
『ヤア、天晴々々、さても美しいものだ。春山彦殿、遠山別が良きに計らはむ。そなたは好い子を有たれたものだ。この娘を常世神王の小間使に奉らば、汝夫婦が身の出世、お祝ひ申す。アハヽヽヽ、ヤア、家来の者ども、この三人の娘を一時も早く駕籠にお乗せ申せ』
『ホーイ』
と答へて家来の大勢、三挺の駕籠を担ぎ来り、三人の娘を乗せて後白浪と帰り行く。
 春山彦は娘の駕籠を、月に透かして打眺め打ながめ、青息吐息つく折しも、照彦を先頭に妻の夏姫、松竹梅の宣伝使、月雪花のわが娘、駒山彦も諸共に、一度にこの場に現はれ来るぞ不思議なる。
『ヤア、そなたは秋月姫、深雪姫、橘姫か、どうして此処へ帰り来りしぞ。警護厳しき駕籠の中、ハテ合点がいかぬ』
と両手を組み、頭を垂れて思案顔。
『ヤア、春山彦殿、千変万化の白狐が働き、最早この上は大丈夫、心を落付けられよ』
と、言はれて驚く春山彦。
『アヽ、有難や、又もや鬼武彦の御身代り』
と、両手を合せ、神前に向つて手を拍ち声も静かに神言を宣る。神の仕組の引合せ、三男七女の水晶の御魂も揃ふ十曜の神紋、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十と、天の数歌うたひながら、男女五人の宣伝使、親子五人は一斉に、心いそいそ宣伝歌を歌ふ。
『厳の御魂や瑞御魂  十曜の紋の現はれて
 常世の国はまだおろか  高砂島や筑紫島
 豊葦原の瑞穂国  島の八十島八十国に
 三五の月の御教を  残る隈なく宣べ伝へ
 天地の神の神業に  仕へ奉らむ吾らの天職
 あゝ面白し潔し  間の国を立出でて
 青葉も茂る目の国や  常世の国の常世城
 ロッキー山に蟠まる  八岐大蛇や醜神を
 言向和し千早振る  神の御国に復し見む
 かへす常磐の松の世を  五六七の神の現はれて
 千代も八千代も万代も  天津日嗣の動ぎなく
 月日の如く明けく  輝き渡る神の国
 輝き渡る神の稜威  厳の御魂の大御神
 瑞の御魂の大御神  月日を添へて十柱の
 十曜の神旗勇ましく  天津御風に靡かせつ
 曲の砦に攻め寄せむ  この世を造りし神直日
 心も広き大直日  直日に見直し聞き直し
 七十五声の言霊に  天地四方の民草を
 靡かせ救ふ勇ましさ  日は照る光る月は盈つ
 三五の月は中空に  輝き渡り天地を
 支へ保てるその如く  太き功を三ツ星や
 北極星を基として  数多の星の廻転るごと
 百の御魂を言向け照し  オリオン星座に現はれし
 救ひの神に復命  申さむためのこの首途
 曲津の猛ぶ黄泉島  黄泉軍を足曳の
 山の尾の上に蹴り散らし  河の瀬毎に吹き払ひ
 払ひ清むる神の国  千秋万歳万々歳
 堅磐常磐の松の世の  神の功ぞ尊けれ』
 斯く歌ひ終り、宣伝使は月雪花の三人を伴ひ、春山彦夫婦に別れを告げて、声も涼しく宣伝歌を歌ひながら、メキシコ指して進み行く。
(大正一一・二・一七 旧一・二一 河津雄録)
(昭和一〇・三・三〇 王仁校正)
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