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文献名1霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻
文献名2第3篇 天岩戸開(三)よみ(新仮名遣い)あまのいわとびらき(三)
文献名3第26章 秋月皎々〔522〕よみ(新仮名遣い)しゅうげつこうこう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-12 01:07:56
あらすじ十握剣の分霊である秋月姫は、高倉別を高楼に登らせ、防戦の合図の鼓を打たせた。竜山別は敵の正体を認めようと馬に乗って偵察に出た。合図の鼓で集まってきた館の人数は、わずかに四十八人であった。高倉別は到底敵の大軍を防ぐことができないことを悟り、一同に呉竹の宮の前で祝詞と宣伝歌を唱えさせた。秋月姫は高殿に登り、寄せ来る敵に向かって祝詞を唱えると、宣伝歌を歌いかけた。高倉別は秋月姫に戦況を報告し、敵軍が撞の御柱大神の御子・天津彦根神に率いられていることを告げた。そして、敵軍による島人たちの殺戮と、見方の劣勢を報告すると、その場で自害をしようとした。そこへ竜山別が飛んできて、短刀を叩き落した。竜山別に諭されて、自分の不甲斐なさを悔いた高倉別は、秋月姫のいる高殿に登り、共に神に祈願をこらそうと登って行った。天津彦根神が秋月姫の館に迫り来ると、奥殿の高殿から一弦琴の荘厳な音とさわやかな天津祝詞が聞こえてきた。天津彦根神は祝詞の声に茫然とし、にわかに武具を投げ捨てると、共に神言を奏上し始めた。兵士たちは将軍のこの挙動を見て驚いたが、ともに武具を投げ捨て、端座して神言を奏上し始めた。時置師神、行平別神は神軍の後方から、宣伝歌を歌い、面白おかしく舞った。秋月姫が高倉別、竜山別を従えて現われ、しとやかに歌い舞った。神々は敵味方なく、手拍子足拍子を揃えて踊り狂った。このとき天上の黒雲は晴れ、日がこうこうと輝き始めた。素盞嗚命の疑いはまったく晴れ、天津彦根神は天教山に凱旋して行った。時置師神、行平別神は伊吹の狭霧を施し、殺された島人を再生させ、負傷者を治して回った。また天の数歌を歌って焼けた林を元の青々とした山に戻した。高光彦の神も密かにこの島に上陸しており、森林の中に身を潜めて、天の数歌を歌ってこの惨状を平和に鎮めた。秋月姫は高光彦と夫婦となり、この島に留まって神業に従事した。また、弟の玉光彦は深雪姫を娶り、万寿山に帰って父・磐楠彦の後を継いで永遠に神業に奉仕した。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月11日(旧02月13日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年9月30日 愛善世界社版219頁 八幡書店版第2輯 707頁 修補版 校定版233頁 普及版96頁 初版 ページ備考
OBC rm1226
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本文  心も広き琵琶の湖  中に漂ふ竹の島
 神素盞嗚大神の  瑞の御霊と現れませる
 十握剣の分霊  秋月姫の神司は
 島の頂上を搗き固め  珍の御舎千木高く
 仕へ奉りて皇神の  瑞の御霊を朝夕に
 斎き奉らせ天地に  塞がる四方の村雲を
 払ひ清めて麗しき  神の御稜威を照さむと
 朝な夕なに真心を  籠めて祈願の神嘉言
 市杵嶋姫神司  夜も呉竹の宮の奥に
 天津祝詞の太祝詞  宣らせ給へる折もあれ
 眼下に響く鬨の声  沖の嵐か波の音か
 穏かならぬ物音と  足もいそいそ高楼に
 上りて真下を眺むれば  思ひも掛けぬ戦士
 雲霞の如く群がりて  鋼鉄の鉾を打振りつ
 島に住まへる百人を  当るを幸ひ斬りまくる
 その勢に辟易し  右往左往に逃げ惑ふ
 その惨状は中々に  他所の見る目も憐れなり
 処狭きまで茂りたる  小笹の籔に火放てば
 折から吹き来る潮風に  火は煽られて濛々と
 破竹の音も騒がしく  宛然修羅の戦場と
 忽ち変る神の島  見るに忍びぬ次第なり。
 秋月姫は立ち上り、
『ヤアヤア、敵軍間近く押寄せたり。高倉別はあらざるか、竜山別は何処ぞ』
と呼はる声に、高倉別は目を擦り乍ら忽ちこの場に飛むで出で、
『只今お召しになつたのは何の御用で御座いますか』
秋月姫『汝高倉別、速に高楼に上り相図の鼓を打てよ』
 ハツと答へて、高倉別は飛鳥の如く高楼目がけて馳上り、
『神聖無比のこの嶋に向つて攻め来る大軍は果して何者ぞ。ウラル姫の部下の魔軍か、但は天教山の神軍か。何は兎もあれ、防禦の用意』
と其儘ヒラリと一足飛び、
『ヤアヤア竜山別はあらざるか。敵軍間近く押寄せ来り乱暴狼藉、竹藪に火を放つて只一戦にこの神嶋を屠らむとする憎き計画と覚えたり。ヤアヤア諸人共、防禦の用意』
と呼はれば、竜山別は声に応じてこの場に現はれ来り、
『思ひ掛けなき敵の襲撃、敵は何者なるや、一先づ偵察仕らむ』
 高倉別は早く行けよと下知すれば、ハイと答へて竜山別は、栗毛の馬に跨り、八十曲りの坂道を手綱を掻い繰り、シトシトと阪下さして進み行く。高倉別は館の内の人数を残らず招集めたるに、集まるもの男女合せて僅に四十八人。
『ヤア皆の者共、雲霞の如き大軍本島に攻め寄せたり。斯くなる上は衆寡敵せず、体を以て体に対し、力を以て力に対する時は勝敗已に明々白々たり。如かず、汝等は口を清め手を洗ひ、呉竹の宮の前に致つて恭しく神言を奏上し、宣伝歌を唱へて神の守護を受け、寄せ来る敵を言向け和せよ。我はこれより奥に進み秋月姫の御身の上を守護し奉らむ』
と言ひ捨て奥殿目がけて進み入る。一同は命の如く身体を清め呉竹の宮の前に端坐し声も朗かに天津祝詞を奏上したりける。秋月姫は高楼に登り、寄せ来る敵に打向ひ悠々迫らざる態度を以て声淑かに天津祝詞の神嘉言を奏上し、終つて天地に向ひ祈願の言葉を奏上し給ふ。
秋月姫『仰げば高し久方の  天津御空を知食す
 神伊邪那岐の大御神  大海原を知食す
 神伊邪那美の大御神  神素盞嗚大神と
 現れ出でませる大空の  光も清き月照彦の
 神の命や足真彦  少名彦神、弘子彦の
 神の霊の幸ひに  醜の軍を言向けて
 この竹嶋に寄来る  百の仇をば平けく
 いと安らけく鎮めませ  十握の剣の威徳にて
 勢猛り進みくる  荒ぶる神も程々に
 生言霊の御光に  照し給ひて天が下
 四方の国には仇もなく  穢れも罪も枉事も
 薙払へかし神の風  神が表に現はれて
 善と悪とを立別ける  善を助けて悪神を
 言向け和す神の道  唯何事も人の世は
 直日に見直し聞直し  世の枉事は詔り直す
 誠の神の在しまさば  嶋に塞がる村雲を
 霽して誠の日月を  照させ給へ逸早く
 此世を造りし大本の  皇大神の御前に
 畏み畏み祈ぎ奉る』
と歌ひ終り、高楼より降り来る折しも、高倉別は馬に跨り急ぎ館に立帰り、
『秋月姫神に申し上げます。当山の寄せ手はウラル彦、ウラル姫の魔軍ならむと思ひきや、撞の御柱大神の珍の御子なる五柱の一神、天津彦根神、鋼鉄の鉾を打揮ひ竹藪に火を放ち、狼狽へ騒いで逃げ廻る嶋人を一人々々引捕へ、見るも悲惨なその振舞、建物を破壊し生物を屠戮し乱暴狼藉至らざる無く、群がる数万の軍勢に対し、味方は僅に老若男女を合して四十余人、人盛なれば天に勝つとやら、もう斯うなる上は是非に及ばず潔く自刃を遂げ、名も無き敵の奴輩に殺されむは末代の恥、我より冥途の魁仕らむ』
と早くも両肌を脱ぎ、短刀を脇腹に突き立てむとする一刹那竜山別は、宙を飛むでこの場に現はれ来り、高倉別が短刀を矢庭に引奪り声を励まして、
『ヤア高倉別殿、貴神は尊き神に仕ふる神司、この場に及ンで神より受けし貴重なる生命を自ら捨てむとし給ふは何事ぞ。今の今迄全心全力をつくし、力およばずして後に運命を天に任さむのみ。是人を教ふる我々の採るべき道には非ざるか。少時思ひとどまり給へ。善悪邪正を鏡にかけし如く明知し給ふ誠の神はいかで吾等を捨て給はむや。自殺は罪悪中の罪悪なり。貴神は何故に斯かる危急の場合に臨みて神に祈願せざるや』
高倉別『アヽ貴神は竜山別殿、俄の敵の襲来に心も眩み一身の処置に迷ひ、神を忘れ道を忘れたるこそ我不覚、恥かしさの限りなれ。然らば仰せの如くこれより高楼に登り、天地の神に祈願を凝らさむ』
と悠々として高楼目がけて登り行く。
 天津彦根神は数万の神軍を率ゐて勝に乗じ表門に迫り来たる。館の老若男女は悲鳴をあげて前後左右に逃げ廻るにぞ勝誇つたる神軍は潮の如くに門内に乱れ入る。奥殿の高楼には荘厳なる一絃琴の音爽かに天津祝詞の声清々しく響き居る。天津彦根神は祝詞の声に心和ぎ茫然として耳を傾け聞き入りぬ。暫くにして太刀、弓矢を大地に投げ付け両手を拍つて共に神言を奏上する急変の態度に数多の戦士は、大将軍のこの挙動に感染しけむ、何れも武器を捨て大地に端坐して両手を拍ち天津祝詞を声高々と奏上する。
 時置師神、行平別神は宣伝歌を歌ひながら神軍の後方に立つて面白可笑くし手を振り足を轟かし歌ひ舞ふ。秋月姫は高倉別、竜山別を従へこの場に現はれ、長袖しとやかに、
『とうとうたらりや、とうたらり、たらりやアたらり、とうたらり』
と扇を開いて地踏み鳴らし舞ひ狂ひ玉ふ。高倉別、竜山別を初め神軍の大将天津彦根命、時置師神、行平別神は中央に現はれ、秋月姫と諸共に手拍子足拍子を揃へ、敵味方の区別も忘れて狂ふが如く踊り廻る。
 この時天上に群がれる黒雲は科戸の風に吹き散りて、天日の光晃々と輝き始め素盞嗚命の疑は全く晴れ渡つた。天津彦根神は喜び勇むで数多の将卒を引連れ、琵琶の湖を渡りて天教山に凱旋せり。後に残りし時置師神、行平別神は、或は殺され或は負傷に悩む嶋人に一々伊吹の狭霧を施し、死したる者を生かし傷つける者を癒やし、焼けたる林は天の数歌を歌ひ上げて再旧の如く青々と緑の山に化せしめける。
 茲にまた高光彦の宣伝使は時置師神、行平別神と共に窃にこの嶋に現れ来り、森林の中に身を潜めて天の数歌を歌ひこの惨状を平和に治めたる勇神なり。秋月姫は高光彦と結婚の約を結び、永くこの島に留まりて神業に参加し給ひぬ。又、中の弟玉光彦は瀬戸の海の一つ島なる深雪姫を娶り、万寿山に立ち帰り父磐樟彦神の後継者となりて永遠に神業に参加し給ひけるとなむ。
(大正一一・三・一一 旧二・一三 北村隆光録)
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