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文献名1霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻
文献名2第3篇 神山霊水よみ(新仮名遣い)しんざんれいすい
文献名3第16章 水上の影〔583〕よみ(新仮名遣い)すいじょうのかげ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-01-17 17:35:10
あらすじ亀彦、梅彦ら五人は、神素盞嗚大神のあとを追って西蔵にやってきたところ、女神の導きによって高国別を救うようにと、岩窟にやってきたのだ、と語った。一行は、岩窟の中で鬼によって苦しめられていた老若男女を救った。さらに奥へ進んで行くと、岩戸の裏側に一人の女が縛められている。女は、愛子姫の従者・浅子姫であった。浅子姫は、岸子姫・岩子姫らと共に愛子姫らを追って西蔵にやってきたが、ウラナイ教の蠑螈別によって捉えられてしまったのだ、と語った。そして岸子姫・岩子姫の安否を気遣った。さらに進んで行くと池があり、岸子姫と岩子姫は、池に重りをつけられて投げ込まれ、苦しんでいた。梅彦と亀彦は池に飛び込んで二人を救出した。
主な人物 舞台 口述日 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年12月5日 愛善世界社版200頁 八幡書店版第3輯 354頁 修補版 校定版199頁 普及版91頁 初版 ページ備考
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本文の文字数7211
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本文  三男三女は神歌を謡ひ乍ら、潔く前進する。又もやトンと行当つた岩壁、
高国別『ヤア又しても岸壁だ、如何に一切万事行詰りの世の中だと云つても、此処まで行詰りの風が吹いて来て居るのか。吾々は誠の神力を以て此岩戸を開き、行詰りの世を開かねばなるまい。先づ先づ休息の上、ゆつくりと相談致しませう』
亀彦『臨時議会の開会はどうでせう』
梅彦『アハヽヽヽ、議会と聞けば、醜の岩窟を連想せずには居られない。歴史は繰返すとかや、一つゆるりと秘密会でも開催しませう』
と頃合の岩の上に腰打掛けた。三人の女性も同じく腰打かけ、
『アーア、有難い有難い、マア此処でゆつくりと休まして戴きませう』
高国別『エー、あなた方御一同はどうして此岩窟にお這入りになりましたか』
亀彦『吾々は神素盞嗚の大神が地教山を越え此西蔵の秘密郷にお出で遊ばしたと聞き、取る物も取り敢ず、お後を慕つて進み来る折しも、小さき雑草の丘の前に突当り、五人は息を休むる折しもあれ、何処よりともなく一人の女神現はれ来り、「此地底の岩窟には、活津彦根命御探険あれば、汝等は急ぎお跡を慕へ」との一言を残し、その儘姿は消えさせ給うた。傍を見れば暗き穴、ハテ訝かしやと覗き居る際、地盤はガタリと陥落し、七八間も地中に落込んだと思へば、此岩窟、……それより吾々一同はこの岩窟内を神歌を謡ひつつ、探り来る折しも、道に当つた古井戸、フト見れば何か怪しの物影、合点行かぬと思ふ折、井戸の底より貴下の声、……と云ふ様な来歴で御座いましたよ』
高国別『アヽそれは結構でございました。実は吾々が彼の井戸に陥りし刹那、失心致したと見え、広大なる原野を通過し、高山の頂きに登りつめ、五人の男女に巡り会ひしと思へば、ハツト気が付き、空を仰ぐ途端に、貴下ら一行のお姿………イヤもう実に不思議千万な事で御座います』
梅彦『吾々は昨夜の夢に、貴下にお目にかかりましたが、本日只今この岩窟内に斯うして休息して居る有様が、ありありと目に附きました。実に現幽一致、此世と云ふ所は不思議な所ですな』
 俄に何処ともなく、阿鼻叫喚の声、響きわたる。高国別はツト立ち上り、
『ヤア皆さま、何か此岩窟内には変事が起つて居ますよ。サアサア早く早く探険と出かけませうかい』
と云ひつつ、岩壁を力に任せてグツと押した。岩の戸はパツと開いた。見れば数十人の老若男女、何れも高手小手に縛しめられ、中央に朱の如き赤き面した鬼神四五人、鉄棒を提げ、足の先にてポンポンと男女を蹴り苦しめて居る。
高国別『ヤア各方、此処は冥土の地獄の様だ。ヤア何れも方、飛込んで救うてやりませう』
と身を躍らして先に立つた。五人はあとに引つ添ひ、声を揃へて言霊を奏上する。鬼の姿は追々に影うすく、遂には煙の如くなつて消え失せたり。数多の老若男女の姿を見れば、高手小手に縛められ居たりと見えしは、幻なりしか、各自に双手を合せ、岩窟の前に端坐して、
一同『神素盞嗚の大神、一時も早く地上に現はれ給ひて、吾等を救ひ給へ』
と一生懸命、側目もふらず拝んで居るのであつた。六人の姿を見るより、一同の老若男女は、此方に向き直り、合掌し乍ら、
『ヤア有難し有難し、勿体なし、あなた様は神素盞嗚の大神の御眷属様ならむ』
と嬉し涙に咽ぶ。
高国別『ヤア最前より様子を聞けば、汝等一同の者、神素盞嗚の大神の御出現を祈り居る有様、汝の至誠は天に通じ、只今カナンの家に尊は御逗留遊ばすぞ。一時も早く此岩窟を立出で、仁慈の大神の尊顔を拝せよ』
と宣示したれば、一同は此言葉を聞いて大に喜び、
『ヤア大神の御再臨、有難し辱なし』
と嬉し腰を脱かし、のたくり廻り、歓ぎ喜ぶ。高国別は一同に向ひ、天の数歌を称ふれば、今迄痩衰へたる数十人の老若男女は、俄に肉付き、顔色麗しく、元気恢復し、忽ちムクムクと立ち上り、手を拍つて、前後左右に踊り狂ひ、大神の再臨を心の底より感謝する。而て一同はイソイソとして、大麻を持てる男を先頭にゾロゾロと帰り行く。後見送つて高国別は、
『アヽ可愛らしい者だ。これ丈の善男善女が心を一つにして、信仰を励むのを見れば、何とも彼とも知れぬ良い心持ちがする。尊に於かせられても、嘸御満足に思召すであらう。嗚呼、惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』
 高国別一行は、奥へ奥へと進み行く。日は西山に没せしと見え、岩窟の中は俄に暗くなつて来た。六人は探り探り進み行くにぞ、傍に怪しき呻声が聞えゐる。耳ざとくも、愛子姫は其声を聞き、
『もしもし皆さま、何だか怪しき声が聞えるではありませぬか』
亀彦『ヤアそれは、あなたの神経でせう。岩窟の中は音響のこもるものですから、大方最前の祝詞の声が内耳深く潜伏し、反響運動を開始して居るのでせう』
愛子姫『イエイエ祝詞の声ではありませぬ、苦悶を訴ふる、しかも女の声、悪神の巣窟たる此岩窟、如何なる惨事の行はれ居るやも図られませぬ。皆さま一同に立止まり、耳を澄ませて聞いて下さい。世界を救ふ神の使の吾々、苦悶の声を聞き逃し、ムザムザと通過も出来かねます』
亀彦『ヤア如何にも苦しさうな声だ。もしもし高国別様、暗さは暗し、余り軽々しく進むよりも、一つ此声を探り当てませうか』
高国別『ホンに如何にも妙な声が致しますな』
と言ひつつ、傍の岩壁をグツと押した途端に、不思議や、岩の戸は案外に軽くパツと開いた。能く能く見れば、白き影、岩窟内に横たはり苦しさうに唸つて居る。
亀彦『ヤア怪しいぞ怪しいぞ、此暗がりに、何だか削りたての材木の様な者が唸つて居る。これは大方、白蛇であらう』
梅彦『白蛇にしては、太さの割に余りに丈が短いではありませぬか』
亀彦『白蛇の奴、どつかで半身切られて来て、九死一生苦悶の態と云ふ場面だらう。……オイオイ白蛇の先生、どうしたどうした』
白き影『アーア恨めしやなア、妾は姫君様の御後を慕ひ、此処まで来るは来たものの、ウラナイ教の曲津神、蠑螈別が計略にかかり、手足を縛られ、岩窟の中へ押込まれ、逃れ出づる方策もなし、アヽ何とせう、恨めしやなア』
亀彦『ヨウ大蛇だと思へば、何だか分らぬ事をほざいて居るワ。もしもし高国別様、一寸調べて下さいな』
『イヤあなた御苦労乍ら一寸探つて見て下さい、どうやら人間らしう御座いますよ』
亀彦『滅相な、あた嫌らしい、此暗がりに、コンナ白い者が、どうしてなぶられませうか……オイ梅サン、お前は平素より大胆な男だ。一つ此処らで侠気を出して、幾代姫様に英雄振をお目にかけたらどうだ』
梅彦『イヤ吾々も吾々だが、亀彦サンも亀彦サンだ。菊子姫様に英雄振をお見せになつたらどうでせう、余り厚かましう致すのも御無礼で御座る。あなたには先取権が御座る、どうぞ御遠慮なく、とつくりと、頭から足の先までお調べなさいませ。菊子姫様の手前も御座いまするぞ』
亀彦『アーア、偉い所へ尻平を持つて来られたものだ。ナニ、材木が動いて居るのだと思へば良い、……コラコラ材木、その方は何者だ』
白き影『アヽ恨めしや』
亀彦『ナヽ何だ、ウラナイ教か、幽霊か、何だか知らぬが、材木の幽霊は昔から聞いた事はないワイ。素盞嗚の大神が御退隠遊ばしてより、山川草木に至る迄、言問うと云ふ事だが、やつぱりこの材木も其選に漏れないと見えて、何だか言問ひをやつてゐる、……コラ材木、起きぬか起きぬか』
 梅彦は、白き影を目当に、スウツと撫でまわし、
梅彦『ヤアこれは人間だ、しかも肌の柔かき美人と見える、高手小手に縛められて居る。おほかた悪神の奴に虐げられて、此岩窟に幽閉されたのであらう』
と言ひ乍ら、スラスラと縛を解いた。白き影はスツクと立ちあがり、懐剣逆手に持つより早く、
『ヤア、ウラナイ教の悪神、蠑螈別の手下の者共、モウ斯うなる上は、妾が死物狂ひ覚悟を致せ』
と六人のほのかな影を目当に短刀をピカつかせ乍ら、前後左右に暴れ狂ふ。
亀彦『ヤア待つた待つた、吾々は三五教の宣伝使だよ』
『ナニツ、三五教の宣伝使とは、まつかな偽り、浅子姫が死物狂ひの車輪の働き、思ひ知れよ』
と飛鳥の如くに飛び廻る。
高国別『ヤア汝浅子姫とは、顕恩郷に現はれたる愛子姫の腰元ならずや。吾は愛子姫の夫高国別なるぞ』
浅子姫『執念深き悪魔の計略、其手に乗つて堪らうか、浅子姫が手練の早業、思ひ知れよ』
と又もや短刀を暗に閃かし暴狂ふ。愛子姫は、
『そなたは浅子姫に非ずや、先づ先づ静まりなさい、愛子姫に間違御座らぬ』
浅子姫『ヤアさう仰有るお声は、正しく愛子姫様』
愛子姫『そなたは擬ふ方なき浅子姫の声、夜目にもそれと知らるる其方の姿、嬉しや嬉しや、思はぬ所で会ひました』
 浅子姫は稍落着きたる声にてハアハアと息をはづませ乍ら、
『そ、そ、そう仰有るあなたは擬ふ方なき愛子姫様、お懐しう御座います』
とワツと許りに其場に泣き伏しぬ。此時何処よりともなく、一道の光明サツと輝き渡り、一同の顔は昼の如く明かになり来たりぬ。
浅子姫『これはこれは何れも様、不思議な所でお目にかかりました、能うマア危き所をお助け下さいました。是れと云ふも、全く木花姫の御守護の厚き所』
と合掌し、後は一言も得言はず、嬉し涙に掻き曇るのみ。勇みを附けんと高国別は、浅子姫の背中を、平手に三つ四つ打ち乍ら、
『浅子姫殿、しつかりなさいませ。是には深き様子有らむ。吾々も此先に於て、大に覚悟せなくてはなりませぬ。あなたを斯くの如く岩窟に押込めし以上は、当岩窟には数多の悪神の巣窟あらむ、此処に立到られし仔細を詳さに物語られよ』
と声を励まして問ひかくれば、浅子姫はハツと心を取直し、
『是れには深き仔細が御座いまする、一先づ妾が物語お聞き下さいませ。天の太玉命、顕恩郷に現はれ給ひ、バラモン教の大棟梁鬼雲彦を神退ひにやらひ給ひ、妾は愛子姫様と共に、顕恩城を守護しまつる折しも、天照大神様、天の岩戸に隠れ給ひしより、太玉命は急遽、天教山に登らせ給ひ、その不在中、愛子姫様と妾は城内を守る折しも咫尺暗澹として昼夜を弁ぜず、荒振神は五月蝿の如く群がり起り、鬼雲彦は又もや現はれ来りて、暗に紛れて暴威を逞しうし、妾主従は生命も危き所、闇に紛れて城内を逃れ出で、エデンの河を生命からがら打渡り、何の目的も時の途、進み行く折しも、暗を照して現はれ来たる日の出神にめぐり会ひ、愛子姫様、菊子姫様、幾代姫様は、神素盞嗚尊の御後を慕ひ、西蔵に難を遁れさせ給ひしと聞くより、妾は岸子姫、岩子姫と共に、夜を日に継いで、山野を渉り、大河を越え、漸くラサフの都に来て見れば、姫君様に奇の岩窟にて面会を得させむと、木花姫の夢のお告げ、妾三人は勇み進んで、小高き丘の入口より、岩窟に進み来る折しも、ウラナイ教の曲神蠑螈別、幾十ともなく数多の邪神を引き連れ、妾三人を前後左右に取囲み、後手に縛り上げ、此岩窟に押込めたり。嗚呼、岸子姫、岩子姫は、如何なりしぞ、心許なや』
と又もや涙の袖を絞る。
高国別『これにて略様子は判然致しました。……ヤア一同の方々、岸子姫、岩子姫の身の上心許なく御座れば、急ぎ在処を尋ね、救ひ出さねばなりますまい』
『然らば進みませう』
と、一同は四辺に耳を欹て、目を配り乍ら、急ぎもせず、遅れもせずと云ふ足許にて、奥深く進み行く。隧道は俄に前方低く、板を立てたる如き急坂になつて来た。一行七人は、一足一足力を入れ乍ら、アブト式然と、坂路の隧道を下つて行く。行く事七八丁と覚しき所に、比較的広き水溜りがある。薄暗がりに透かし見れば、何だか水面に人の首の様なものが漂うて居る。亀彦は目ざとくもこれに目を注ぎ、
亀彦『ヤア此奴ア又、変挺だ。岩窟の中に池があると思へば、円い顔の様な物が浮いて居る、鴛鴦にしては少しく大きいやうだ。ヤア目鼻が付いて居る。悪神の奴、酒に喰ひ酔つて、瓢箪に目鼻をつけ、此池に放り込みよつたのではあるまいか。瓢箪ばかりが浮物か、俺の心も浮いて来た。サアサア浮いたり浮いたりだ、アハヽヽヽヽ』
梅彦『亀サン、あれを能く御覧なさい、女の首ですよ。ナンダか、つぶやいて居るぢやありませぬか』
幾代姫『ヤア彼の顔は、岩子姫、岸子姫ではなからうか』
亀彦『エー何を仰有います、鴨かナンゾの様に、女が首ばつかりになつて、池の中に浮いて居ると云ふ事がありませうか。あなたは視神経の作用が、どうか変調を来して居るのでせう。腐り縄を見て蛇と思つて驚いたり、木の欠杭を見て化物と思ふ事が往々有るものです。マアマア気を附けてください、変視、幻視、妄視の精神作用でせう、コンナ所に棲息する者は、キツト河童か、鰐か、まかり間違へば人魚ですよ。人魚と云ふ奴は、能く人間に似て居るものだ、それで、人の形をした翫弄具を人形サンと云ふのだ。アハヽヽヽヽ』
 池の中より女の首、苦しき声を絞り乍ら、
『ヤア、あなたは幾代姫様、菊子姫様、愛子姫様では御座いませぬか。夜目にはしかと分りませぬが、お姿が能く似て居ります。妾は悪神に捉へられ、手足を縛られ、重き石錨をつけられて苦んで居ります、岩子姫、岸子姫の両人で御座います。どうぞお助けくださいませ』
亀彦『ヤア金毛九尾の同類奴、馬鹿にするない、何程化たつて、モウ駄目だ。手を替へ品を換へ、結局の果には池の中に姿を現はし、吾等を水中に引込まむとの水も洩らさぬ………否水責めの汝の計略、其手に乗つて堪らうかい』
岩子姫『イエイエ、決して決して妖怪変化では御座いませぬ、どうぞお助け下さいませ』
亀彦『もしもし高国別様、どうでせう、彼奴は本物でせうか。偽物の能く流行する時節ですから、ウツカリと油断はなりませぬぜ、………コラコラ化の奴、新意匠をこらし、レツテルを替へて、厄雑物を突付けても其手には乗らぬぞ、意匠登録法違反で告発をしてやらうか』
高国別『アハヽヽヽ、何は兎もあれ、亀彦サン、高国別の厳命だ、あなた真裸となつて救うて来て下さい。高国別が神に代つて命令を致します』
亀彦『滅相な、どうしてどうして、是ばつかりは真つ平御免、アーメン素麺、トコロテン、ステテコテンのテンテコテン、テンデ話になりませぬワイ、テンと合点がゆきませぬ、是ればつかりは平に御断り申す。斯く申すは決して亀彦の肉体では御座らぬ。亀彦が守護神の申す事で御座る』
梅彦『アハヽヽヽ、巧い事を言ひよるワイ、融通の利く副守護神だ、斯うなると副守先生も重宝なものだなア』
亀彦『亀彦の守護神が、神素盞嗚の大神の命に依つて、梅彦に厳命する………梅彦、速かに真裸となり、水中にザンブと許り飛込んで、二人の妖怪を救ひ来れ。万々一、彼にして大蛇の変化なれば、汝は一呑みに蛇腹に葬られむ。然る時は、汝が霊を引抜き、至美至楽の天国に救ひ、百味の飲食を与へ遣はす、ゆめゆめ疑ふ事勿れ』
梅彦『ウンウンウン』
亀彦『コラコラ、偽神懸は厳禁するぞ、亀サンの審神を暗まさうと思つても、天眼通、天耳通、宿命通、自他心通、感通、漏尽通の六大神通力を具備せる、古今無双の審神者のティーチヤーに向つて、誤魔化しは利かぬぞ、速かに飛込め』
 池中に浮かべる二つの首は、苦痛を忘れて、思はず、『ホヽヽヽヽ』と笑ひ出せば、
亀彦『それ見たか、俺の天眼通はコンナものだ。此寒いのに池の中に投り込まれ、人間なら、何気楽さうに笑ふものか、とうとう化物の正体を現はしよつた。アツハヽヽヽ』
幾代姫『亀彦様、梅彦様、あなたは分らぬお方ですな、………アーアコンナ方を二世の夫に持つたと思へば恥かしいワ』
亀彦『コレコレ嬶左衛門殿、何と御意召さる。親子は一世、夫婦は二世で御座るぞ』
二女『夫婦二世と云ふ掟を幸ひ、あなたの様な、臆病神との契を解き、第二の夫を持ちませう。ネー愛子姫様、決して天則違反では御座いますまい』
 亀彦、梅彦、両手を拡げて、
『アヽ待つた待つた、如何に女権拡張の世の中ぢやとて、姫御前の有られもない其暴言、これだから、新しい女を女房に持つのは困ると言ふのだ。エー仕方がない、俺も男だ………サア梅サン………ヤア亀サン………一イ二ウ三ツだ』
と云ふより早く、真裸となり、ザンブと飛込んだ。
『ヤア比較的浅い池だワイ………オイオイ二つの生首、かぶりついちや不可よ、俺一人ではない、俺には彼の通り立派な奥方がお二人も随いて御座るのだ。一度死んだから二度とは死なないから、吾々は生命位は何ともないが、後に残つた菊子姫、幾代姫の悲歎の程が思い遣られる……コラコラ助けてやるから生命の恩人だと思つて、かぶり付いてはならぬぞ』
と言ひつつ、コワゴワ頭髪をグツと握り締めた。
岩子姫『アイタタ、痛う御座んす、どうぞ、妾の腰の辺を探つて見て下さい』
亀彦『女の分際としてあられもない事を言ふな、立派な奥様が大きな目を剥いて監督をして御座るぞ、腰のあたりを触つて堪るものかい』
岸子姫『イエイエ、腰の辺りに、可なり大きい紐で大きい石が縛りつけて御座います。三つも四つも、重い石に繋がれて居ます、どうぞ其綱を切つて助けて下さい』
亀彦『アーア、偉い事になつて来たワイ、神が綱を掛たら放さぬぞよ、アハヽヽヽ』
岩子姫『冗談仰有らずに、どうぞ真面目にほどいて下さい』
 二人は水中に手を下し、腰のあたりを探つて見て、
『ヤア甚い事を行つて居る……やつぱり鱗でもなければ、羽でもない、人間の肌だ』
と云ひ乍ら、ほどかむとすれど、綱は膨れてどうする事も出来ぬ。
『アーア仕方がない』
と再び岸に這ひ上り、双刃の剣を口に啣へ、バサバサと飛込み、プツツと綱を切り、二人を肩にひつ担ぎ乍ら上つて来た。高国別および三人の女性は、
『アーア結構結構、好い所で助かつたものだ』
浅子姫『岩子さま、岸子さま、あなたは酷い目に会ひましたな、妾も御主人様に救はれました……アヽ結構結構、これと云ふも、大神様の全く御守護で御座いませう』
と浅子姫は、今更の如く嬉し涙に暮れて水面に向つて合掌しゐたりける。
(大正一一・四・三 旧三・七 松村真澄録)
(昭和一〇・三・二三 於花蓮港支部 王仁校正)
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