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文献名1霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻
文献名2第4篇 神行霊歩よみ(新仮名遣い)しんこうれいほ
文献名3第22章 和と戦〔589〕よみ(新仮名遣い)わとせん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ熊野楠日の神(熊野樟日命) データ凡例 データ最終更新日2021-09-22 04:02:22
あらすじ言依別命一行は、神界探検の後、ウブスナ山の山頂指して進んで行く。斎苑館の門前で呼ばわると、八十猛神の長と名乗る、国武彦が出迎えた。斎苑館では、神素盞嗚大神は不在で、八島主(熊野楠日の神)、娘の愛子姫、幾代姫、亀彦、梅彦が留守をしていた。八島主らは一行を館の奥に招いて、歓迎の宴を開いた。そこへ八十猛神が慌しく現れ、バラモン軍の襲撃の急を告げた。そして国武彦が奮戦中だが、旗色が悪く、一行にコーカス山に退避するようにと注進した。しかし八島主を始め、招かれた言依別命ら一行も、まったく意に介せずに宴を続けている。亀彦と梅彦は、事態の急に押っ取り刀で防戦に出ようとするが、愛子姫に引っ掛け戻される。遂にバラモン軍の鬼雲彦が血のついた槍を持ったまま宴の場に現れて、一同に降伏を迫った。また鬼掴もやってきて一同を脅すが、八島主らは泰然として宴を続け、鬼雲彦と鬼掴の様子を笑いの種にしている。怒った鬼雲彦は、手下に下知して八島主らを襲わせるが、八島主はバラモン軍に霊縛をかけた。鬼雲彦らはその場に硬直して動けなくなっているところへ、国武彦と八十猛神が現れた。国武彦と八十猛神は、天より日の出神に率いられた神軍が現れて、形勢逆転し、バラモン軍は打ち負かされて倒れ伏している、と報告した。言依別命と八島主は、玉彦に命じて敵味方の負傷者を治療しに行かせた。厳彦と楠彦は、奥の間で硬直している鬼雲彦ら将卒たちに、宣伝歌を聞かせている。八島主は、腰から下だけ霊縛を解くと、バラモン軍は上半身が硬直したまま、その場を逃げ出した。
主な人物 舞台 口述日 口述場所錦水亭 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年12月5日 愛善世界社版276頁 八幡書店版第3輯 381頁 修補版 校定版273頁 普及版126頁 初版 ページ備考
OBC rm1522
本文のヒット件数全 1 件/ウブスナ山=1
本文の文字数6448
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本文  言依別命は不思議の事より神界を探険し再び正気に立ち復り給ひて、玉彦、厳彦、楠彦諸共に、駒に鞭ちしとしととウブスナ山脈を神素盞嗚大神の御舎指して進み行く。
 山上の御舎は何れも丸木柱を以て造られありぬ。用材は桧、杉、松、樅其他種々の木をあしらひ、余り広からず狭からず何とも言へぬ風流なる草葺の屋根、幾棟となく立ち並び居たり。一行四人は門前に到着し、馬をヒラリと飛び下りて大音声に、
『頼まう頼まう』
と訪なへば、
『応』
と答へて大の男三四人、門を左右にパツと開き、四人の姿を見るより、
『ヨー、これはこれは、能く入らせられました。只今高天原よりの急報に依り貴使等四人当邸に現はれますと承はりお待ち申して居りました。サアサ御這入り下さいませ、御案内致しませう。私は八十猛の神の長を勤むるもの、国武彦と申すもので御座います』
と言ひつつ先に立つてドスンドスンと地響きさせ乍ら奥へ奥へと案内したり。
 本宅と覚しき館の玄関口に佇み、国武彦は、
『アア八島主様、言依別命御一行がお出でになりました』
と言葉終ると共に玄関の襖はサラリと開かれたり。
国武彦『サアサアこれが命様の御本殿で御座います、御遠慮なく御上り下さいませ』
と案内する。
『然らば御免』
と一同は奥へ奥へと進み入る。容色麗しき二人の美人此場に現はれしを能く能く見れば愛子姫、幾代姫なりき。
言依別『アア貴神は顕恩郷に坐ませし尊の御娘子、愛子姫、幾代姫様では御座らぬか』
『ハイ、左様で御座います、能くマアお越し下さいました』
『妾は仰せの如く幾代姫で御座います、何卒御悠りと御休息下さいませ。妾の父は天下蒼生の為めに、ここ十日許り以前に館を立ち出で、常世の国さして行くと申して出られました。折角のお訪ねで御座いまするが父は生憎の不在なれども、妾が兄八島主父の代理として留守を致して居りますれば、何卒ゆるりとお話し下さいます様に』
言依別『アヽ左様で御座るか、之は惜しい事を致した。イヤ先程御父上に地の高天原に於て拝顔を得ました』
 愛子姫、幾代姫一度に、
『エ、父にお会ひで御座いましたか、それは何れの地方に於て』
言依別『ハイ、地の高天原に於て三十五万年の未来に麗しき御尊顔を拝しました』
『アヽ左様で御座いましたか、それはそれは都合の好い事で御座いましたナア。父は何と申しましたか』
言依別『イヤ吾々には未だ現界に於て尽すべき神務あれば、三十五万年の昔に立ち復り現界的神業を尽せよとの御厳命で御座いましたよ。イヤもう罪の深い吾々、容易に高天原へ参る事は出来ませぬ』
 玉彦、厳彦、楠彦、三人一度に、
『オー貴女は神様の御娘子で御座いましたか、私共は言依別の命様の御供致すもの常世の国に於て生れましたる、はした者に御座います。何卒以後はお見捨なく御昵懇に御指導を願ひ上げ奉ります』
と慇懃に挨拶する。
『御挨拶は却て痛み入ります、妾は、たらはぬ女の身、何卒御見捨なく何時々々迄も御昵懇に願ひ度う御座います』
と頭を下ぐる。此時、眼清く眉秀で鼻筋通り口許しまり桃色の顔、鼻下の八字髭及び下顎の垂髯を揉みつつ徐々と入り来り、一行の前に端坐し、叮嚀に会釈し乍ら、
『私は八島主で御座います。貴使は噂に高き言依別の命様、遠路の処遥々能く御越し下さいました。吾父が在しましたならばどれ程喜ぶ事で御座いませう』
と目を瞬き、そつと涙を拭ふ。一同は何となく八島主の態度につまされて哀れを催し涙の袖を絞り居る。此時菊子姫は二人の侍女を伴ひ、
『御一同様、御飯の用意が出来ました、何卒此方へ御越し下さいませ』
と挨拶する。主人側の八島主を始め四人は菊子姫の後に従つて奥の別室に進み入る。別室の入口には亀彦、梅彦、愛子姫、幾代姫の四人が叮嚀に端坐し頭を下げ一行を迎へ居る。ここに一場の晩餐会は催され、果実の酒に心勇み一同は代る代る小声に謡を唄ひ、菊子姫は長袖しとやかに舞曲を演じて興を添へにける。
 日は漸く西に没れて夕暮告ぐる諸鳥の声、淋し気に聞え来たる。時しもあれ、慌しく此場に現はれたる八十猛の神は、
『八島主の命様に申し上げます、只今バラモンの大棟梁鬼雲彦なるもの、鬼掴を先頭に数多の魔軍を引率し、当館を十重二十重に取囲み雨の如くに矢を射かけ、又決死隊と見えて数百の荒武者男、長剣長槍を閃かしドツと許りに攻め寄せました。当館の猛将国武彦は館内の味方を残らず寄せ集め、防戦に力を尽して居りますれど、敵の勢刻々に加はり味方は僅かに二十有余人、敵の大軍は衆を恃んで鬨を作り、一の館、二の館、三の館は最早彼等の占領する処となりました。国武彦は群がる敵に長剣を引き抜き立ち向ひ、縦横無尽に斬りたて薙たて防ぎ戦へども、敵は眼に余る大軍、勝敗の数は歴然たるもの、御主人様、此処に居まし候ては御身の一大事、一時も早く裏門より峰伝ひにビワの湖に逃れ出で、コーカス山に忍ばせ給へ、敵は間近く押し寄せました。サアサ早く御用意あれ』
と注進するを、八島主は少も騒がず、
『ホー、汝八十猛の神、能きに取計らへよ、吾は遠来の客を待遇さねばならぬ。汝は国武彦と共に防戦の用意を致すが宜からうぞ』
『これは主人様のお言葉では御座いまするが、危機一髪の此場合、左様な呑気な事を申して居られませうか。最早第三の館まで敵に占領され、又国武彦は身に数槍を負ひ苦戦の最中で御座います。味方は大半討死致した様で御座います。何卒一時も早くお客さまと共に此場をお逃れ下さいませ』
『アツハヽヽヽ、面白い事が出来たものだ、御父の留守を窺ひ、弱身につけ込む風の神、高が知れたる鬼雲彦の軍勢、仮令百万騎、千万騎一度に攻め来るとも、八島主が一本の指先の力にて、縦横無尽にかけ悩まし一泡吹かせて呉れむ、汝は表に駆け向ひ、汝としての力限りを尽せよ。ヤアヤア皆様、敵軍の攻め来り騒ぐ有様を酒の肴と致して、ゆるりと飲みませう、時にとつての一興、何もお慰みで御座います。敵の襲来なりと見物して御心を慰め下さいませ』
 言依別命は、
『アツハヽヽヽ、ヤア面白い事が出来ました、もう少し近寄つて呉れますれば見物に都合が宜しいが、此処は確か八つ目の御館、まだ四棟も隔てて居りますれば先づ先づ安全地帯、乍然一利あれば一害あり、危険な目に遇はねば面白い事は見られませぬ哩、アハヽヽヽ』
 亀彦、梅彦肩を怒らし臂を張り、顔色物凄く呼吸を喘ませ乍ら、
『これはこれは八島主様、言依別様、お二方は狂気召されたか、此場に臨んで何を悠々と、お酒どころの騒ぎぢや御座いますまい。サアサ防戦の用意をなさいませ。吾々は生命を的に奮戦致し、攻め来る奴輩を片端より斬りたて薙散らし、一泡吹かせて呉れむ』
と言ふより早く長押の長刀、梅彦はおつ取り表へ出でむとす。亀彦は長剣を引き抜き、亦もや行かむとす。愛子姫は二人の足にヒラリと綱をかけ後に引いた。行かむとする勢に、力は上半身に満ち下半身は蝉の脱け殻の如くなつた足許を引掛けられ、スツテンドウと座敷の真中にひつくり覆りける。
亀彦『千騎一騎の此場合、何を悪戯遊ばす、猶予に及ばば御身の一大事、サアサ姫様達は一刻も早く裏門より落ちのびなさい。菊子姫殿、幾代姫殿、サアサア早く早く。吾は之より表に駆け出し、細腕の続く限り奮戦せむ』
と又もや起き上り、勢こんで表に行かむとす。
 八島主は悠然として、
『アハヽヽヽ、皆様、敵の騒ぎを見ずとも味方の狂言で沢山で御座います哩。ヤアヤア亀彦、梅彦先づ一杯召し上れ』
と盃をつき出す。梅彦はかぶりを振り乍ら、
『エーエ、又しても気楽な御主人様、ソンナ処で御座いませうか、サアサ早く逃るか進むか、二つに一つの間髪を入れざる場合で御座れば、何れへなりと御覚悟あつて然るべし』
と言ひ捨てて二人は表を指して韋駄天走りに進み行く。最早敵は第五の館を占領し第六に向はむとする時なりき。
 八十猛の神は又もや血相を変へて顔面に血を流し乍ら走り来り、
『申し上げます、最早敵は第六の館に迫りました、勝敗の数は已に決す、一時も早く御落ち延び下さいませ。吾等は生命のつづく限り奮戦し相果つる覚悟で御座います』
 八島主は平然として、
『ヤア八十猛か、御苦労であつたのう、先づ、ゆつくり酒でも飲んで働くが宜からうよ』
 八十猛は息を喘ませ乍ら、
『ソヽヽヽそれは何を仰しやります、酒どこの騒ぎですか、国家の興亡此瞬間に迫る、酒も喉が通りませぬ』
言依別『アハヽヽヽ、八島主の命様、随分貴使の御家来には勇将猛卒が居りますね、勇将の下に弱卒なし、イヤもう感心致しました』
『イヤ、さう言はれては返す言葉も御座いませぬ、彼等の周章狼狽の醜態、お目に懸けまして誠に恥入る次第で御座います。吾々は敵の攻撃に任せ無抵抗主義をとるもの、元より勝敗の数は歴然たるものに御座いますれば、何程慌た処で結果は同じ事ですよ、先づは刹那心を楽しみませう。一刻先は分つたものぢやありませぬよ、アヽヽヽ』
 又もや酒をグビリグビリと飲んで居る。日頃狼狽者の玉彦、厳彦、楠彦も神界旅行の経験を得てより何となく心落ち着きしと見え、此騒動を殆んど感知せざるものの如く、悠々として箸をとり、贐の酒に舌鼓を打ち私かに鼻唄を謡つて居る。愛子姫は一絃琴をとり出し声も淑やかに謡ひ出した。
『菊子姫さま、幾代姫さま、貴女一つ舞うて下さいな。遠来の御客様に余り殺風景な処をお目に懸けて済まないから、一つ花やかな処を御覧に入れて下さい、妾が謡ひませう』
 菊子姫、幾代姫は、
『あい』
と答へて仕度にとりかかり淑やかに舞ひ始めたり。表は修羅道の戦ひ。奥の一室は悠々たる春の花見の如く、秋の夜の月見の如く静まりかへつて、笑ひの声屋外に洩れ居たり。
 鬼雲彦は血糊の着いた槍を扱き乍ら阿修羅王の如く此場に現はれ来り、
『ヤア斯くなる上は最早敵ふまい、サア尋常に切腹致すか、但は此方が槍の錆にして与らうか、サアサア返答は如何じや』
と息巻いて居る。鬼雲彦に続いて鬼掴は此場に又もや現はれ来り、
『さしも豪傑と聞えたる八十猛、国武彦は吾手にかかつて脆くも討死致したれば、最早叶はぬ百年目、サア尋常に切腹致すか、但は此方が手を下さうか、サア返答致せ』
八島主『アツハヽヽヽ』
言依別『オツホヽヽヽ、何と面白い芸当では御座らぬか、千両役者も跣足で逃げ出します哩、ワツハツハヽヽヽ』
玉彦『ヨー、鬼雲彦の御大将、バラモン教は随分強い方が居ますな、吾々は三五教の宣伝使、いや、とてもとても貴方のお相手は余り馬鹿らしうてなりませぬ哩、アツハツハヽヽヽ』
厳彦『ヤア鉛で造つた仁王の様に随分立派なスタイルですな、ワツハヽヽヽ』
楠彦『ホー立派な者だ、節くれ立つたり、気張つたり、閻魔の庁からやつて来たお使の様だ。ヤア酒の肴に面白い事を見せて頂きます哩、ハツハヽヽヽ』
愛子姫『オホヽヽヽ、あの鬼雲彦さまとやらの、立派のお顔わいな、鬼掴サンのあの気張り様』
『ホヽヽヽ』
 鬼雲彦、座敷の真中に突立ち乍ら団栗眼をグリグリ回転させ、
『此場に及んで何を吐かす、其方は気が狂うたか、哀れ至極の者だ、ワツハツハヽヽヽ』
と豪傑笑ひをする。鬼雲彦は肩を揺り乍ら又もや、
『ワツハヽヽヽ、チエツヘヽヽヽ、心地良やな、バラモン教の運の開け口、此館が手に入るからは、最早三五教は寂滅為楽、扨も扨も、憐れな者だワイ、ワツハヽヽヽ』
と無理に肩をしやくり豪傑笑ひを続けて居る。八島主命は右の食指をヌツと前に突出し、
『ヤア鬼雲彦一同の者共、能つく聞け、両刃の長剣の神の生身魂、熊野楠日の神とは吾事なるぞ、八島主とは此世を忍ぶ仮の名、サアサア一時も早く改心致すか、返答は如何ぢや』
 鬼雲彦、大口開けて高笑ひ、
『ワツハヽヽヽ、吐かしたりな吐かしたりな、此期に及んで何の繰言、引かれ者の小唄とは汝の事、エー面倒だ、片つ端から血祭りに致して呉れむ、ヤア者共、之等一座の男女の木つ端武者を討ち滅せよ』
と下知すれば、
『ハツ』
と答えて四方より魔軍の将卒駆け集まり前後左右に詰めかくる。八島主は右手を伸ばし、
『ウン』
と一声、言霊の力に鬼雲彦始め一同は将棋倒しにバタバタと其場に倒れ、身体硬直して石地蔵の如く硬化したり。
八島主『ワツハヽヽヽ』
言依別『ヤア面白い面白い、廃せば良いのに入らぬチヨツカイを出しよつて、此有様は何事だ。サア玉彦、厳彦、楠彦、汝等は彼等に向つて宣伝を致すが良からう』
 三人は、
『ハア』
と答へて起ち上り、バツタリと倒れて身動きもならず苦しめる鬼雲彦、鬼掴の前に突立ち、
『アハヽヽヽ、アヽ愉快な事じや、否気の毒なものだな』
 三人は頸から上の霊縛を解いた。鬼雲彦、鬼掴を始め数多の勇将猛卒は頸許り前後左右に振り廻し、何事か頻りに呟いて居る。此時表の方より国武彦、八十猛の両人現はれ来り、
『御主人に申上げます、雲霞の如き大軍に味方は僅二十有余人、暫時は挑み戦ひしが、衆寡敵せず、進退維谷まり味方の敗亡瞬時に迫る折から、天の一方より巨大の火光降り来り、敵の軍中に落下するよと見れば、思ひきや日の出神の宣伝使、数多の神軍を引率して忽然として現はれ、群がる敵に言霊の爆弾を浴びせかけ給へば、敵は獲物を大地に投げ捨て「頭が痛し、胸苦し」と叫び乍ら残らず大地に打倒れ身体硬直した儘、操り人形の如くに首を打振る可笑しさ、いやもう結構な御神徳を戴きました。ホー此処にも大将株が倒れて居りますね、これはしたり、妙な事もあればあるもので御座る哩、アハヽヽヽ』
言依別『吾々は天下無敵主義を標榜するもの、彼等と雖も矢張天地の神の御水火より現はれ出でたる青人草、一人でも悩め苦しむる事は法の許さぬ処、万々一敵軍の中に於て一人たりとも負傷者あらば助けてやらねばなりますまい』
八島主『御尤もで御座る、サア御苦労乍ら玉彦様、貴方一人で結構ですから一度敵味方の負傷者の有無を調べて下さい』
 玉彦は、
『承知致しました』
と早くも起つて表へ駆け出し、彼方此方に負傷して血を流し苦しむ軍卒を片つ端から数歌を謡ひ乍ら、残らず癒やし廻りぬ。而して玉彦は一同の前に声を張り上げて宣伝歌を謡ひ聞かしけるに、何れも歌の耳に入るや、悪の守護神の頭に厳しく応へしと見えて益々苦悶の呻り声高くなり行く。奥の一室には鬼雲彦、鬼掴其他の猛将勇卒に向つて厳彦、楠彦は宣伝歌を宣り聞かしゐる。鬼雲彦は此歌を聞くより益々苦悶し始め流汗淋漓、青息吐息を吹き立て目を剥き藻掻く可笑しさ。
言依別『如何しても身魂の因縁と言ふものは争はれぬものだナア。何程結構な教を聞してやつた処で、身魂があはねば帰順させる事が出来ぬと見える。人には人の食ふ食物があり、牛には牛、獅子には獅子、猫には猫、糞虫には糞虫の食糧が惟神的に定つてる様に、教の餌も其通りだと見える。人間の食ふべき食物を牛馬に与ふるのは却て彼等を苦しめる様なものだ。縁なき衆生は済度し難し、悪神は悪神相当の安心を以て居るでせう、何程彼等を救ふてやり度いと思うてもこれは到底駄目でせうよ、再び敵たはぬ様にして帰して与りませうかい』
八島主『貴使の御説、御尤もで御座る。然らば腰より上は暫らく元の硬直状態にして置いて足のみ自由を許して与りませう』
と言ひ乍ら八島主は立ち上り示指をグツと前に差し出し空中に円を描いて、
『半日の間、腰から上は霊縛を加ふ、腰から以下は自由を許す』
との声の下より今迄氷柱の如くなつて居た手足はくの字に曲りムクムクと起つて、首を据ゑたまま、手を垂直したもの、片手を振り上げたもの、種々様々の珍姿怪態の陳列場を開設し、一目散に門外さして先を争ひ逃げ出す。玉彦は此態を見て吹き出し、
『ヤア此奴は良い工夫だ。オイ数多の魔軍共、之より一日の間、腰より上は霊縛を加へ置く、腰より下は汝等が勝手たるべし、許す』
と云ふ言葉の下に彼等の足は動き出したり。一同は足の自由となりしを幸ひ腰から上は材木の様にビクともせず、足のみ忙しく門外さしてウンともスンとも得言はず、コソコソと此場を逃げ去りにけり。
(大正一一・四・四 旧三・八 於錦水亭 北村隆光録)
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