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文献名1霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
文献名2第2篇 深遠微妙よみ(新仮名遣い)しんえんびみょう
文献名3第14章 鵜呑鷹〔604〕よみ(新仮名遣い)うのみだか
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-02-05 18:08:18
あらすじ高姫を拘束した亀彦・鬼武彦は、高姫が取引の場として指定した田辺の港にこぎ寄せた。しかし港に着くと高姫と青彦はひらりと舟から飛び降りて、闇の中に姿をくらましてしまった。亀彦はがっかりして由良の港へ帰っていく。鬼武彦は高姫らを捜索すると言ってどこかへ姿を消してしまった。亀彦の体たらくを見た従者たちは密かに非難を浴びせている。秋山彦の館に戻ると、亀彦はこのたびの不始末を詫びるとして、切腹してしまう。秋山彦や英子姫が悲嘆に暮れていると、表門から高姫・青彦を捕らえた鬼武彦が入ってきた。切腹したと見えたのは、亀彦に扮した白狐であった。本物の亀彦は鬼武彦とともに、高姫を捕らえて帰ってきたのであった。奥には秋山彦が用意した祝宴の席が設けられていた。高姫は捕らえられながらも悪口雑言をしきりに発している。そしてやおらに如意宝珠の玉をとりだすと、餅のように軟らかくして飲み込んでしまった。そして、宇宙の縮図たる如意宝珠の玉を飲んだ自分は宇宙と同体であるから、崇めよ、と一同を睥睨する。怒った亀彦、秋山彦が猛烈な勢いで高姫に斬りかかると、高姫は白煙と化して逃げてしまった。鬼武彦がその後を追う。残された青彦はその場に震えていた。一同は神前に祝詞を上げると、英子姫、悦子姫、亀彦の三人は秋山彦に別れを告げ、由良川をさかのぼって聖地に上ることになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月15日(旧03月19日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年12月25日 愛善世界社版167頁 八幡書店版第3輯 462頁 修補版 校定版172頁 普及版75頁 初版 ページ備考
OBC rm1614
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本文の文字数7784
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本文  亀彦は艪を漕ぎ乍ら、海風に向つて、
亀彦『田辺見たさに松原越せば、田辺隠しの霧がこむ』
と船唄面白く、遂に竹島、博奕ケ岬、目の白黒岩を越え、松原を右手に眺め、蛇島、広島左手に眺めて、やうやう十七夜の黄昏過ぐる頃、田辺の湊に安着したり。咫尺を弁ぜぬ宵闇の空、高姫、青彦は、船の横着けになるを待ち兼ね、ヒラリと飛上り、暗に紛れて姿を隠しける。
亀彦『ヤア高姫は居らぬか、青彦は何処ぞ……鬼武彦様どう致しませう』
 暗がりの中より、青彦、高姫の声、
『アハヽヽヽ、オホヽヽヽ、大きに憚りさま、此玉渡してなるものかい、……皆さま、アバヨ、アリヨース』
と冷嘲的怪声を漏らし、何処ともなく、闇に紛れて消え失せたり。鬼武彦、亀彦は直ちに船を飛びあがり、
『アー失敗つた、由良の湊へ着けさへすれば、コンナ事も無かつたらうに、……高姫の言に従ひ、田辺へ着けたのが此方の不覚……エー仕方がない、後を追つかけようにも真の暗、一先づ秋山彦の館に立帰り、御相談を致しませう』
と力無げに物語りつつ、由良の湊を指して、テクの継続をなし、由良の湊の少し手前まで一行帰り来る折しも、東天を照して昇り来る十七夜の、楕円形の月松の木の間に姿を現はし、一同を冷笑し給ふ如く見えける。凩まがひの寒風は容赦なく向う面に突き当り、四辺の木々は時ならぬ笛を吹き立て、一行の失敗を囃すが如く聞え来たりぬ。
亀彦『アー怪体の悪い、丸で高姫のお伴をした様なものだ。仮令高姫天を翔り、地を潜るとも、彼女の所在を探ね、如意宝珠の玉を取返さで置くべきか』
と大道の正中に地団駄踏み、遂には胡坐をかいて動かなくなりぬ。鬼武彦は、
『ヤア亀彦殿、斯うなる上は、悔みても復らぬ事、草を分けても彼等が行衛を探し、玉を取返すより外に途は御座らぬ。併し乍ら吾れは秋山彦に会はす顔なし、是れよりお暇申す』
と云ふより早く、白煙となつて姿を隠しぬ。秋山彦が家の子十数人は当惑の態にて、如何はせむと、各自双手を組み、歎息の声暫しはやまざりにけり。
甲『もしもし亀彦さま、あなたが左様気投げして貰つては、吾々はどう致したら宜いのですか、館へ帰つて御主人に、何と言つてお詫を致しませうやら、報告の仕方がありませぬ』
亀彦『有態の通り報告すれば良いぢやないか。俺はモウ是れ限り、秋山彦の館へは帰らない。早く帰つて主人夫婦を始め、英子姫、悦子姫に此由伝へて呉れよ』
甲『夫れは又あまり、……ご主人様や、二人の女宣伝使が首を長うして待つて居られます。後は兎も角も、一度御帰り下さいませ』
亀彦『………』
乙『夫れだから、三五教の宣伝使は腰抜だと、俺は何時も言ふのだよ。ウラナイ教の宣伝使の敏捷い事を見たか、岩の中で、閉ぢこめられて居ても、あれ位な談判をしよる。喉元に刃を突き付けられて居乍ら、逆様に其刀で、押へた奴の首を切る様な妙案奇策をやつたぢやないか。亀彦なぞと、コンナ我羅苦多宣伝使に従いて行くものだから、生れてから無い様な赤恥を天地に曝させられたのだ。アーア、どうして是れが、主人に顔が会はされよう』
丙『ソンナ事を言つたつて仕方がない。死んだ子の年を数へる様なものだ。何事も諦めが肝腎だ。悪人の栄え善人の衰へる世の中だもの、善人が瞞されるのは無理もない。俺達は益々三五教の正しい事に感心した。サア亀彦様、ソンナ事を仰有らずに早く帰りませう』
亀彦『サア行かう、お前達が如何な意見を持つてるかと思つて、一寸探つて見たのだよ。ナアニ玉位奪られた所で、どつかに匿してある。滅多に地獄の底迄隠しても居るまい。ウラナイ教の本陣へ乗込みて、有無を言はせず、とつ返して呉れる。兎も角是れは時日の問題だ。皆の者、何事も亀彦に任せよ。心配致すな。サア行かう』
と先に立ちて勢よく、直日に見直し、聞直し、宣り直しつつ、由良の湊の秋山彦が館を指して、一行十五六人、スタスタと帰り着きける。亀彦は先に立ち、表門を力無げに潜り入らむとする時、門番の銀公は此場に現はれ、
『ヤア亀彦の宣伝使様、お手柄お手柄、あなたのお蔭で、一旦敵に奪られたる如意宝珠の珠も、鍵も、首尾能く手に入りまして、さぞ御主人様も御喜びで御座いませう。主人も喜び、奥様もお喜び、第一あなたのお喜び、従いて往つた奴等の喜び、共に私もお喜びだ。流石は三五教の宣伝使、ヤアもう感じ入つて御座います。奥には貴方の成功を祝する為、海山河野種々の馳走を拵へ、旦那様が御機嫌麗しく、お待兼で御座います。吾々も御同慶に堪へませぬ』
とイソイソと、肩をゆすぶり、はしやいで居る。亀彦は軽く目礼し、トボトボと奥を指して進み入る。
銀公『オイ岩公、市公、どうぢやつた。随分面白かつたらうな』
 岩公肩を聳やかし、
『きまつた事だよ。天下無双の剛力男の岩公のお出だもの、高姫の一疋や二疋は、屁のお茶だ。併し乍ら三五教の宣伝使も良い加減なものだよ。とうと玉を奪られやがつてなア……』
銀公『ナニ? 玉を奪られたとは、それや本当か』
岩公『ウン、奪られた……でもない、マア……奪つたのだ』
銀公『どちらが奪つたのだい』
岩公『マアマア奪つた奴が奪つたのだ。奪られた奴が、奪られた……と云ふ様なものかいナ』
銀公『高姫は、折角奪つた玉を、フンだくられやがつて、妙な顔しただらうな』
岩公『ウンさうだ。……何分一の暗みの事で、鼻摘まれても分らぬ位だから、ドンナ顔したか知らぬが、一方は意気揚々、一方は意気消沈、屠所に曳かるる羊の如しだ。お気の毒なりける次第なりけりだ』
銀公『マアマア結構だ。如意宝珠の玉及び鍵が戻つた以上は、今晩はお祝酒でもドツサリ戴けるかなア』
市公『あまり大きな声では言はれぬが、サツパリぢや』
銀公『何がサツパリぢや』
市公『兎も角サツパリコンと、蛸があげ壺喰つた様なものだよ、アフンと致して、梟鳥が夜食に外れた様なむつかしい顔を致すと云ふ……是れからが幕開きだよ』
 一同は急いで、奥を指して進み入る。秋山彦夫婦を始め、英子姫、悦子姫は玄関に、亀彦を出で迎へ、
秋山彦『是れは是れは多大い御心配をかけました。様子は如何で御座いまするか』
亀彦『ハイ、左様、然らば逐一報告致しませう』
英子姫『一時も早く嬉しき便りを聞かして下さいナ。今か今かと時の経つのを、一日千秋の思ひで待つて居ました。何事にも抜け目の無い亀彦さまの事、鬼武彦の神様も伴いて居られる以上は、滅多な不調法はありますまい。……大勝利……大万歳……サア早く面白い顛末を仰有つて下さいませ』
亀彦『只今詳細に言上仕る』
と云ふより早く、両肌を脱ぎ、両刃の短刀抜く手も見せず、左の脇腹に、グサと突立て抉り始めたり。英子姫は驚いて其手に取りすがり、
『ヤア亀彦殿、早まり給ふな』
 亀彦、苦しき息の下より、
『早まるなとはお情無い、神素盞嗚大神様の唯一の御宝をば、オメオメとウラナイ教の高姫の為に欺き奪られ、会はす顔が御座いませぬ。最早死を決した某、なまじひに止め立てして苦めて下さるな。委細は岩公、市公、磯公にお聞き下され。拙者は此失敗の申し訳に、腹掻き切つてお詫申す。何れもさらば』
と云ふより早く、力を籠めて一抉り、忽ち息は絶えにけり。英子姫、悦子姫は『ワアツ』と計り、亀彦が死骸に取つき、前後も知らず泣き伏しぬ。秋山彦夫婦も目をしばたき、黙然として、悲歎の涙に袖を絞る。此時表門より現はれ出でたる一人の男、此場を指して韋駄天走りに駆け来る。見れば鬼武彦は高姫、青彦の二人を左右の手に、猫を提げた様な体裁にて出で来り、
『ヤア何れも様、高姫、青彦の両人を引つ捉へ参りました。玉は確に高姫の懐中に御座れば是れより拙者が詮議致して取返し呉れむ。何れも様、御安心有れ……』
 秋山彦夫婦は二度ビツクリ、
『ヤア鬼武彦様か、能うマア来て下さいました。それは誠に有難い、さは然り乍ら、今の今迄元気能く居らせられた亀彦さまは、腹を切つてお果てなされました』
と泣き伏せば、鬼武彦はカラカラと打笑ひ、
『ヤア皆様御心配なされますな、亀彦の宣伝使は頓て此場に現はれませう』
『エーツ』
と驚く一同。亀彦の死骸はムクムクと起上り、見る見る尨犬の如き毛を全身に生じ、灰色の虎とも見えず、熊とも見えず、怪獣となつてノソリノソリと這ひ出し、表門指して帰りゆく。一同は夢に夢見る心地して、一言も発せず、暫しは互に顔を見合せ居るのみなりき。斯かる所へ現はれ来る正真の亀彦はニコニコし乍ら、
亀彦『ヤア鬼武彦様、偉い御心配を掛けました。暗夜の事と言ひ、何れに潜み隠れしやと一時は周章狼狽致しましたが、お蔭様で十七日の月は東天に輝き給うた、弥勒様のお蔭で、ヤツとの事、目的物が手に入り、コンナ有難い事は御座いませぬ。……アヽ秋山彦夫婦のお方、英子姫、悦子姫殿、御安心なさいませ』
秋山彦『ヤア何よりも結構な事で御座いました。誠に偉い骨折をさせました。サアサア奥に馳走の用意がして御座います。皆さまどうぞ奥へ入らつしやいませ』
 鬼武彦は高姫、青彦を玄関にドサリと下したり。
高姫『アヽ鬼武彦殿、御苦労であつたのう、お蔭でお土も踏まず、宙を駆けつて楽に参りましたよ。ホヽヽヽ、玉は確に此処に一つ御座います。一つで足らねば、青彦が金色の玉を二つ持つて居ります。是れで三つ揃うた瑞の御霊……ホヽヽヽ』
亀彦『コレコレ高姫さま、お前さまも随分意地の悪い人だネ』
高姫『意地の悪いは、ソリヤお前の事だよ。折角二人が如意宝珠の玉を手に入れ、次に金剛不壊の玉を奪らうとする最中に、大きな岩で桶伏せに会はしたり……三五教の宣伝使として、人を助ける身であり乍ら、ソンナ意地の悪い事をして宜いものか。チツト反省みなされ。此高姫は決して鍵を盗みたのでも、玉を掠奪したのでもないワ、日の出神様の御命令に依つて、竜宮の乙姫さまから受取りに行つたのだ。それをお前達が、アタ意地の悪い、邪魔に来よつたのだ。素盞嗚尊も偉いが、日の出神さまは、ドンナ方だと思うて居る。竜宮の乙姫さまも、永らく海の底のお住居であつたが、此の高姫の生宮に、今度は残らず綺麗薩張とお渡し遊ばす世が参つたのだ。変性女子の下らぬ教を聞きかぢつて、神界の御経綸の邪魔をすると、頭を下にし、足を上にして歩かねばならぬ事が出来て来るぞよ。アンナ者がコンナ者になると云ふ神の教を、お前は一体、何と考へなさる……此高姫は詰らぬ女の様に見えても、系統だぞへ、変性男子の……切つても切れぬ御系統だ。亀彦なぞと、何処から来たか知らぬが、元は……偉相に言うても……ウラル教の宣伝使ぢやないか。竜宮洲へ渡つて、飯依彦の様な蛸爺に泡吹かされて逃げ帰り、途中で日の出別の神に助けて貰うたのだらう。ソンナ事は此腹の中で日の出神が、チヤンと仰有つて御座る。醜の岩窟の中で、井戸の中へ陥つたり、種々惨々な目に逢うて、ヤツとの事で宣伝使になり素盞嗚尊の阿婆摺れ娘を女房に持つたと思つて、余り威張らぬが宜からう。何処の馬の骨か牛の骨か、素性も分らぬ様な代物に、肝心の娘を呉れてやると云ふ様な紊れた行方の素盞嗚尊が、何が、夫れ程有難いのだい。日の出神の側へ出したら、素盞嗚尊は、猫の前の鼠の様なものだ。さうぢやから昔からの因縁を聞いて置かぬと、まさかの時にアフンとせねばならぬと、神様が仰有るのだよ』
亀彦『エーソンナ事は聞きたく有りませぬワイ。又庚申待の晩にでも、ゆつくり聴かして貰ひませうかい』
高姫『それは不可々々、どうでも斯うでも因縁を説いて聴かして、根本から改心させねば承知をせぬのぢや。此月は日の出神さまの教を、耳を浚へて菊の月ぢやぞへ。竜宮の乙姫と日の出神との尊い御守護のある此肉体だ。亀公位が百人千人束になつてきた所で何の効が有るものか、効と言つたら、堅い堅い、邪魔になる亀の甲位なものだよ。ゲツヘヽヽヽ』
秋山彦『お話は酒宴の席で承はりませう。サアサア奥へお越し下さいませ。玄関口でお話は見つとも良う御座いませぬから……』
高姫『お前が秋山彦ぢやな、道理で、一寸見ても飽きの来さうなお顔立だ。紅葉姫さまも、コンナ夫を持つてお仕合せだ、オツホヽヽヽ』
 秋山彦、稍機嫌の悪さうな顔付し乍ら、
『ハイハイ、どうで碌な者ぢや有りませぬワイ、三五教に現を抜かす代物ですから、善ばつかりに呆けまして、ウラナイ教の様な、他人の家の鍵を持出して、平気で業託を並べる様な、謙遜な善人は居りませぬ、アハヽヽヽ、サアサア奥へお出なさいませ』
高姫『三五教は、善に見せて悪、ウラナイ教は悪に見せても善、マアマア奥へ往つて、トツクリと妾の諭しをお聴きなさい』
と立ちあがる。秋山彦を先頭に、一同はドシドシと奥の間目がけて進み入る。鬼武彦は最後の殿を勤め乍ら、高姫、青彦の身体に目を配り、奥へ従いて行く。
 八尋殿には、山野河海の珍肴、所狭きまで並べられありぬ。高姫は遠慮会釈もなく最上座に座を占め、紙雛の様に袖をキチンと前に畳み、手を臍の辺りにつくね、仔細らしく構へ込みたり。亀彦は高姫の傍に座を占めむとするや、高姫柳眉を逆立て、
『ヤア亀彦、お前は身魂が低い。三段下がつてお坐りなされ。抑も霊は上中下の三段の区別が有る。上の中にも上中下が有り、中の中にも上中下の三段があり、下の中にも、亦上中下の三段が有る。お前は、下の中位な霊魂ぢや。上の上の生粋の大和魂の日の出神の生宮の前に坐ると云ふのは、身魂の位地を紊すと云ふものだ。それだから、身魂の因縁が分らぬ宣伝使は困ると云ふのだよ。如意宝珠の玉は、上の上の身魂が持つべきものだ。下の中身魂位では到底手も触れる事は出来ぬ……鬼武彦ナンテ、力は強いが、多寡が稲荷ぢやないか、四足の親玉ぢや、稲荷は下郎の役を勤めるものぢや、コンナ座席にすわると云ふ事が有るものか。天狗や、野狐や、狸、豆狸の霊は、ズツトズツト下の下の座にお直りなされ』
亀彦『神界には、正神界と邪神界が有つて、正神界にも上中下三段があり、邪神界にも亦上中下の三段が有る、さうして段毎に又三段がある。吾々は仮令下の中か知らぬが、正神界だ。お前は上の上でも、邪神界の上の上だから、是れ位悪党はないのだよ、月と鼈、雪と炭程違う。邪神界の身魂は、正神界と席を同じうする事は出来ない。お下りなされ』
高姫『仮令正神界でも、邪神界でも、上は上に違ない。下はヤツパリ下ぢや。上といふ字はカミと云ふ字ぢや。カミのカミが上の上ぢや。カミに坐るのは高姫の身魂の因縁性来……オホン誠に済みませぬナ、亀彦チヤン……』
亀彦『チヨツ、善悪の区別を知らぬ奴に掛つたら仕方がないワ………アーア折角の玉を邪神界の身魂に汚されて仕舞つて残念な事だワイ』
高姫『妾が邪神界なら、モウ此玉は用が無い筈……ソンナラ高姫が更めて頂戴する』
と懐より如意宝珠を取出し、手の掌に乗せて、手に唾液を附け、一生懸命に両の手の掌で、揉みて揉みて揉みさがし居る。此玉は拡大する時は宇宙に拡がり、縮小する時は鷄卵の如くになる特色のある神宝なり。堅くもなれば、軟らかくもなる、高姫は揉みて揉みて揉みさがし、鷄卵の如く縮小し、搗きたての餅の様に軟らげ、
高姫『亀彦さま、秋山彦さま、お狐さま、改めて頂戴致します。オツ』
と云ふより早く大口を開けて、目を白黒し乍ら、蛇が蛙を呑む様に、グツト一口に嚥み下したり。
亀彦『アヽ大変な事になつた。……ヤイ高姫、玉を返せ』
高姫『ホヽヽヽ、分らぬ身魂ぢやナア、呑みて了うた物が、どうして手に渡せるか、お前も、モチツと物の道理が分つた方ぢやと思うて居つたのに、子供よりも劣つた人ぢやナア』
亀彦『腹を裂いても、取戻して遣らねば置かぬぞツ、馬鹿に致すな』
高姫『宇宙の縮図たる如意宝珠の玉を、わが腹中に納めた以上は、高姫の体は即ち宇宙……宇宙には天神地祇、八百万の神が集まり給ふ。今までの肉体は、日の出神と竜宮の乙姫の生宮であつたが、最早唯今より、天の御三体の大神様を始め、天地八百万の神が高姫の身体に神詰り遊ばすのぢや、サア神に仕へる宣伝使の身を以て、此肉体に指一本触へるなら、さへて見よツ』
亀彦『どこまでも馬鹿にしやがる。モウ量見ならぬ、破れかぶれだ。……ヤイ高姫、貴様の生命は俺が貰つた、覚悟致せツ』
高姫『ホヽヽヽ、此方が馬鹿にしたのぢやない、生れ付の馬鹿が、馬鹿な事を仕たのぢや、誰に不足を言うて行く所もあるまい、自業自得だよ。覚悟致せとは……ソラ何の事、虫一疋殺す事のならぬ三五教の教ぢやないか。其教をする宣伝使が、勿体なくも天の大神様の御霊の現に納まり給ふ肉体を悩めやうとは、盲蛇に怖ぢず、馬鹿に附ける薬は無し、ハヽヽヽ、困つたものぢや、イヤ気の毒な者ぢや。親の在る間に直して置かぬと、不治難症ぢや。サア今から改心をして、亀彦は申すに及ばず、英子姫、悦子姫、秋山彦、紅葉姫、鬼武彦、其外の厄雑人足共、ウラナイ教の御趣旨を遵奉するか、サアどうぢや、返答聞かう……』
亀彦『モシモシ秋山彦さま、此奴ア、居すわり強盗ですナア、一層の事、踏ン縛つて、海へでも放り込みてやりませうか』
秋山彦『あまりの事で、私も腹が立ちます。併し乍ら如意宝珠の玉が納まりある以上はどうする事も出来ませぬ。困つた事になりました』
高姫『サアサア皆の神々共、只今より、天の御三体の大神の生宮の高姫へお給仕を致すが可からうぞ、又と再び、コンナ結構な生宮に、お目に掛る事も出来ねば、お給仕さして頂く事も出来ぬぞや。今日は特別を以て、祝意を表する為にお給仕を差許す』
亀彦『エーツ、何を吐しよるのだ、モウ斯うなつては天則違反も何も有つたものじやない、両刃の剣の御馳走だ』
と一刀スラリと引き抜き、斬り掛らむとするを高姫は、
『ギヤツハヽヽヽ、ギヨツホヽヽヽ、短気は損気、マアマア静まれ、急いては事を仕損ずる。後で後悔せぬがよいぞ』
と澄してゐる。
亀彦『後悔も糞もあつたものかい、……貴様も讎敵の端くれ……』
と云ひ乍ら、青彦の頭を、足を上げてポンと蹴り倒し、又もや両刃の剣を閃かし、生命を的に突いて掛れば、流石の高姫も、
『如何に立派な神でも、無茶には叶はぬ。……サアサア青彦、一先づ此場を逃げたり逃げたり』
と促す。青彦は狼狽へ騒いで、逃路を失ひ、同じ所をクルクルと廻転して居る。亀彦は益々激しく突つかかる。秋山彦は、
『エー斯うなれば、破れかぶれだ。……紅葉姫、薙刀を執れツ』
と下知すれば、鶴の一声、紅葉姫は長押の薙刀執るより早く、
『悪逆無道の高姫、覚悟せよ』
と斬つてかかるを高姫は、右に左に身をかはし、暫くは扇を以てあしらひ居たるが、衆寡敵せず、忽ち白煙と化し、天井窓より一目散に、西北の天を目蒐けて、中空に雲の帯を曳き乍ら、逸早く姿を隠したりける。後に青彦は、青菜に塩した如く、ビリビリと慄ひ居たり。
亀彦『エー、コンナ弱虫を相手にしたつて仕方がない。助けてやらう。サアサア早くこの場を立去れツ』
 折角の御馳走も、踏んで踏んで踏みにぢられ、台なしになつて了ひける。鬼武彦は忽ち白煙と化し、又もや天井の窓より、帯を曳きつつ、西北の天を目蒐け、高姫の後を逐ひて中天に姿を隠しける。
 秋山彦夫婦を始め、亀彦、英子姫、悦子姫は、神前に恭しく天津祝詞を奏上し、宣伝歌を謡ひ終り、茲に別れを告げて、三人の宣伝使は由良川を遡り、聖地に向ふ事となりにけり。
(大正一一・四・一五 旧三・一九 松村真澄録)
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