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文献名1霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻
文献名2第3篇 鬼ケ城山よみ(新仮名遣い)おにがじょうざん
文献名3第14章 空谷の足音〔625〕よみ(新仮名遣い)くうこくのそくいん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-02-28 18:39:24
あらすじ一方、青彦、夏彦、常彦は悦子姫らの後を追って、鬼ケ城に進んできた。しかし烈風に吹き煽られて、深い谷間に転落し、足腰を痛めて苦しんでいた。そこへ、宣伝歌の声が近づいて来る。三人は滑稽なやり取りをひとしきり行い、四つ這いになって険しい崖を上った。そこでは、悦子姫一行が、各々雑談に耽っていた。加米彦は、途中で姿が見えなくなった青彦の噂をし、丹波村のお節のところに行ったのではないか、と勘ぐっている。そこへ木の中から青彦が登場して、一行は合流する。青彦は、ウラナイ教から夏彦、常彦を引き抜いた顛末を一同に話す。一行はここで夜を明かしてから鬼ケ城に進むこととして、野宿した。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月23日(旧03月27日) 口述場所 筆録者東尾吉雄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年1月10日 愛善世界社版212頁 八幡書店版第3輯 602頁 修補版 校定版219頁 普及版95頁 初版 ページ備考
OBC rm1714
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本文  頃しも二月十五日  東の空を輝かし
 山の端出づる月影に  三五教の宣伝使
 色青彦の神司は  夏彦常彦ともなひて
 鬼ケ城山に立て籠る  八岐大蛇の分霊
 鬼熊別の一類を  言向け和し皇神の
 恵みの露に救はむと  比沼の真名井を後にして
 谷間の雪をみたけ山  川を飛び越え山の尾わたり
 立出でたまふ悦子姫  音彦、加米彦三人が
 あとを尋ねて走り来る  見渡す限り山と山
 日は黄昏に近づきて  塒たづぬる群烏
 熊鷹、鳶、百鳥の  各すみかへ帰り行く
 時しもあれや忽然と  吹き来る烈風に身を煽られて
 青彦、夏彦、常彦は  深き谿間に転落し
 足をいためつ腰を打ち  苦しみ悶ゆる折からに
 遠音に聞ゆる宣伝歌  木霊にひびきて三人が
 鼓膜をかすめ送り来る。
青彦『アヽ大変な事であつたワイ。レコード破りの烈風に吹き散らされ、千仭の谷間に陥落し少々腰を打ち、暫くは目を眩して居たが、宣伝歌の声が耳に微にひびき、これでどうやら此方のものらしい気分がして来た。夏彦、常彦、お前はどうだ。何処も怪我は無かつたか』
夏彦『其処ら一面真暗がりになつて、大蛇の奴、大空から大きな舌を出し、中天にぶら下つた時の恐ろしさ、それから後はどう成つたか、一向覚えて居りませぬが、どうやら足を挫いたらしい。踵がキクキクと痛み出した。一体此処は何処でせうな』
青彦『此処は矢張三嶽山の谷底ぢや。オイ常彦、お前はどうぢや』
常彦『いや何うも斯うも有りませぬ哩、痛いと云つても、苦しいと云つても、コンナ非道い目にあふのなら、矢張黒姫の御用をきくのだつたに、丹波村で別れた時、黒姫の奴大きな目をむきよつて、嫌らしい笑ひ顔をして行きよつたが、その笑ひには確かに貴様等俺に叛くと、谷底へ落ちてエライ目に会ふぞよといふ、言はず語りの色が見えて居つた、アーアー膝節が抜けた様だ。ウラナイ教の大神様、誠に心得違ひを致しました。どうぞお赦し下さいませ』
青彦『アハヽヽヽ、よう精神の動揺する奴ぢやなア、貴様の信仰は、砂上の楼閣、風前の灯火同様だ』
夏彦『こいつは風前の灯火では無うて風後の変心ですよ。アハヽヽヽ。モシモシ青彦さま、三五教の宣伝歌が益々近寄つて来るぢやありませぬか。此方から一つ大きな声を出して合図をしたらどうでせう』
青彦『あれは確かに悦子姫さまの御一行らしい。コンナ谷底へ吹き飛ばされ、名自に怪我をしてみつともない。自分の怪我は自分が処置せなくては成るまい。卑怯未練にも人の救ひを求めるとは、男子の恥づ可き処だ。それよりも此方から声を尋ねて出かけたらどうだ』
常彦『出かけると云つた処で、膝が脱けて了ひ、コンパスの使用不可能と成つて居るのにどうして歩けませうか』
夏彦『馬鹿云ふな、俺だつて足は痛い、青彦さまだつて腰の骨を挫いて御座るのだ。コンナ処で弱音を吹いて耐るものかい。何事も精神で勝つのだ。七尺の男子が、身体の一箇所や二箇所怪我したと云つて、屁古垂れるといふ事が有るものか。蛙や蜥蜴を見い、身体の半分位切られても、平気でピヨコピヨコ飛ンで居るではないか。兎角人間は精神が第一ぢや、サアサア行かう』
常彦『ソンナ事云つたつて、動かぬぢやないか』
夏彦『俺の様な腰の曲つた中年寄が、足を怪我してもこれ丈けの元気だ。それに何だ。若い屈強盛りの身を以て、モウ動かぬの動けぬのと、弱い事を言ふない』
常彦『ハヽヽヽ、俺は天下無双の豪傑だ、信仰心は磐石の如く、チツトも動かぬ。誠生粋の日本魂だ。如何なる難局にブツカツても動揺しないと云ふ代物だからな』
夏彦『ヘン、口許り黒姫仕込みだけあつて、仰有います哩。貴様の信仰はガタガタ震ひの動揺震ひだが、動かぬのは親譲りの交通機関許りだらう。グズグズ吐すと邪魔臭いから、谷底にホツトイてやるぞ。サアサア青彦さま、此奴は矢張黒姫党だ。見捨てて参りませうか』
青彦『常彦さまの足の起つやうに、鎮魂を願ひませうか』
夏彦『イヤもう結構、コンナ奴に鎮魂して、足でも起つたが最後、又もや黒姫の処へ信仰逆転旅行と早変り、膺懲の為めに、御筆先通り、改心致さぬと谷底へ落すぞよ。落して行きませう』
常彦『アハヽヽヽ、嘘だ嘘だ、ドツコも鵜の毛で突いた程も怪我は無いのだよ。完全無欠ネツトプライスの完全体だ。大きに色々と御心配をかけました。サアサア参りませう、お二人のお方、私の後に跟いてうせやがれ』
夏彦『ヤイ常彦、俺に何程汚い言葉を使うても、友達の仲だから構はないが、ソンナ事を言うと、青彦さまに御無礼ぢやぞ。速かに宣り直さぬかい』
常彦『初めのは青彦さまに対して御叮嚀に申上げたのだ。跟いてうせやがれと言うたのは御註文通り貴様に言つたのだ。アハヽヽヽ』
夏彦『俺もお蔭で蚤が喰た程も怪我は無い。大きに御心配をかけました』
青彦『アヽ私も大丈夫だ。サアサア行かう』
常彦『モシモシ青彦さま、貴方最前、腰が抜けたと仰有つたぢや有りませぬか。あれは嘘でしたか。宣伝使たるものが、仮りにも嘘を吐いて良いのですか』
青彦『腰が抜けかけたと言うたのは、常彦さまの信仰の腰が抜けさうだと言つたのだよ。まかり違へばまたもやウラナイ教に逆転する処でしたね』
常彦『三五教に入信つてから、三嶽山の吹き放しを歩いて居つた時、大変な大風、脚下はヨロヨロ、両方は千仭の谷間、これやテツキリ三五教ぢやない、アブナイ教ぢやと思つて、怖々歩いて居ると、忽ち一陣の烈風に吹き捲られ、空中を幾回となく逆転して遂にこの谷底へ無事着陸、これ丈け逆転の修行をすれば、モウ此上は逆転も懲り懲りです。御安心して下さいませ』
夏彦『常彦の安心して呉れも可い加減なものだ。常平常から心の定らぬ奴で、狐の様に嘘許り言ふから、同僚間から、彼奴は狐彦だと言つて居るのを知らぬのか』
常彦『狐彦でも狸彦でも、お構ひ御無用、サアサア狐彦は山中は勝手をよく知つて居ります。狐の後から馬が来るのだよ』
青彦『アハヽヽヽ』
 三人は月夜を幸ひ、四ツ這ひに成つて嶮しき山腹を駆け登る。こちらには悦子姫の一行、皎々たる満月を眺め、山上の岩に各腰打ち掛け、雑談に耽り居る。
音彦『今日の暴風といつたら何うだらう、真黒けの雲の中より、大蛇の奴、乙な芸当を演じやがる。風は吹いて吹いて吹き捲くる。イヤもう落花狼藉、修羅道の旅行のやうだつたね。加米彦が二百十日だなぞと、大風呂敷を拡げるものだから、アンナ事が突発したのでせう。何事も言霊の幸ふ世の中、言霊は慎まねばなりませぬなア』
悦子姫『さうですとも、言霊の天照る国、言霊の助くる国、言霊の生る国ですもの』
加米彦『ヤア悦子姫さま有難う。只今限り、悪の言霊に停電を命じます。どうぞ今日のところ見直して下さいませ。それについても青彦はどうして居るのだらう。三嶽山の登り口まで跟いて来よつたが、林の中へ小便にでも行くやうな顔をして、それきり姿を見せぬぢやありませぬか。大方丹波村のお節さまの処へでも往つたのぢや有るまいかなア。青彦は此の間、真名井ケ原の珍の宝座の前で、お節の顔を穴のあく程眺めて居た。さうしてお節さまは良い女だ、良い女だと、口癖のやうに執着心を発揮して居たから、大方今頃は、お節の膝を枕に、夜中の夢でも見て居るのでせう』
音彦『ナニ、ソンナ事が有るものか。深山の事だから、吾々一行の姿を見失ひ、迷うて居るのかも知れない。都合に依れば、吾々よりも先に行つて居るかも分らない。さう断定的判断を下すものぢやないよ』
加米彦『貧乏人の材木屋だ。ワルぎを廻すのだ。アハヽヽヽ。青彦の青瓢箪彦、実際何をして居るのだ。何だか知らぬが、俺は胸騒ぎがして、猿の小便ぢや無いが、きにかかつて仕方がない』
 青彦、木の茂みより、
『加米彦さま、ご心配有難う』
加米彦『ヤア、何ぢや、姿も無いのに声許り聞えてゐるぞ。ハヽア判つた、途中に於て鬼熊別の部下の奴等に、岩窟へ投り込まれ、散々にさいなまれて生命を奪られ、幽霊に成つて化けて来よつたのだ。杜鵑ぢやないが、声は聞けども姿は見えずぢや、エーイ、ケツタイの悪い夜だ。音彦さま、確りせぬと青彦が青い青い顔をして、ヒユードロドロとやつて来ますぜ』
音彦『加米彦、お前は随分元気な男ぢやが、死んだ者が何故そのやうに怖いのか。怖いものは此の世の中に人間許りだ。人間位怖い者は無いぞ。仮令幽霊が出たつて、人間の死んだのぢや無いか。マア気を落ち着けたらどうだ、何をビクビク震うて居るのだ』
 木の中より夏彦の声、
『夏、夏、夏、夏彦の幽霊ぢや。青彦は青い火を灯して、谷の底で幽霊に化つて居るわいのう。加米さまが恋しいから、今お目にかかる。夏彦一足先へ行つて偵察をして来いと仰有つた。ヒユードロドロ ドロドロ』
と腰の屈みた夏彦は加米彦の前に髪をサンバラにし、妙な手真似をして現れた。加米彦は、
『キヤツ』
と一声腰を抜かし、
『ヤイヤイ、貴様は幽霊の乾児か。アヽもう仕方が無い。青彦に能う言うて呉れ、お目にかかつたも同然ぢや。御親切は有難いが、今では無事に暮して居る。黄泉へ行つたらもう仕方が無い。俺に執着心を起さずに、トツトと神界へ行けと伝言をして呉れ、何だ、お前の腰はよう曲つて居るぢやないか、幽霊のお爺さまだらう、サアサア、トツトと去ンだり去ンだり』
悦子姫『ホヽヽヽヽ』
紫姫『ホヽヽヽヽ』
加米彦『エーエー、イヤらしい声を出して、コンナ山の上で、おいて下さいな』
 青彦この場にヌツと現はれ、
『アハヽヽヽ、これはこれは悦子姫様、お待たせ致しました。ヤア音彦さま、加米彦さま、済まなかつた。見なれぬ御女中や沢山のお伴が居られますが、何れの方ですか。これはこれは初めてお目に懸ります。どうか御昵懇に願ひます』
加米彦『アハヽヽ、オイ青彦、貴様谷底へ風に吹き飛ばされて、蟄居して居よつたのだな、お節は何と言つた。加米さまに宜しう、どうぞ一時も早く鬼ケ城の魔神を言向け和し、優しい加米さまのお顔を拝まして下さいと、伝言をして居つただらう』
音彦『オイ加米彦、何うだ、俄に元気づいたぢやないか』
加米彦『あまり退屈なから、一つ臆病者の演劇をして、悦子姫さまなり、紫姫さまのお慰みに供したのだ。アハヽヽヽ』
 一同声を揃へて笑ひこける。
青彦『悦子姫さま、音彦様にお願ひが御座います。どうぞ御聴き届け下さいませぬか』
悦子姫『これは又改まつたお言葉、お願ひとは何事で御座います』
青彦『ハイ、犬の子を二匹拾つて来ました』
音彦『其の犬は何処に居るのだ』
 青彦は、
『ハイ』
と言ひ乍ら、夏彦、常彦を指さし、
『これで御座います』
夏彦『エイ、殺生な』
常彦『青サン、余り馬鹿にして貰ふまいかい。ソンナ事を云うと、お節の事を素破抜かうか』
青彦『ハヽヽヽ、お前達両人に対し只今より嵌口令を施く。暫く沈黙するのだよ』
加米彦『ワハヽヽヽヽ、何だか意味ありげな此の場の光景だ。ナニ、加米彦が許す。二匹の犬とやら、充分吠て吠て吠立てるのだよ』
青彦『エヽ喧しい。俺が口切りする迄、黙つて聞いて居らう。エヽ悦子姫さま、実はこの男二人は、ウラナイ教の黒姫が四天王と呼ばれたる、其中の二人で、夏彦、常彦と云ふ豪の者で御座います。さうした処が黒姫の内幕をすつかり看破し、三五教の教理の優秀なる事を、心の底より悟りまして、どうぞ入信させて呉れいと、犬つく這いになつて、低頭平身嘆願致しますので、物の哀れを知る吾々、さう無情に見捨ても成らず、貴方がたにお目玉を頂戴するかも知れぬと、恐る恐る此処まで連れて参りました。然し乍ら何時今の固い信仰がグラツイて、元の古巣へ尾を振つて去ぬかも知れませぬ、その段は保証出来ないので、イヌものと覚悟し、二匹の犬と申上げました』
加米彦『オイ青彦さま、言霊が悪いぞ、宣り直せ宣り直せ』
悦子姫『オホヽヽヽ』
音彦『直に真似をしよるなア、アハヽヽヽ、夜は追ひ追ひと更けて来ました。今から行けば途中に夜が明けますまいから、一同此処で悠くりと休息し、明日の黎明を待つて、鬼ケ城へ立向ふ事に致しませうか』
悦子姫『アヽそれが宣しからう。紫姫さま、妾の側でお休み下さい』
紫姫『有難う御座います』
と、一同は肱を枕に、月の光を浴びて、蓑を敷きゴロリと横たはる。忽ち聞ゆる鼾の声、無心の月は、一行の頭上をにこにこ笑ひ乍ら射照らし居る。
(大正一一・四・二三 旧三・二七 東尾吉雄録)
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