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文献名1霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻
文献名2第1篇 弥仙の神山よみ(新仮名遣い)みせんのみやま
文献名3第2章 厳の花〔630〕よみ(新仮名遣い)いずのはな
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-03-07 02:20:54
あらすじ爺の豊彦は、一行を自分のあばら家に案内した。豊彦の息子は真名井参りの途中でバラモン教にさらわれて、今は生死もわからないという。また娘は理由のわからない業病にかかり、十八ケ月も伏せっているという。先だってここを訪れた英子姫によると、これは病気ではなく妊娠だと言われたが、まったく心当たりがない。悦子姫が見立てて、確かに妊娠であることを確認した。十八ケ月前、夢で白髪の老人が五つの玉を与え、それをお玉に飲ませる夢を親子ともども見た後から、腹が膨れてきたのだという。悦子姫は、立派な神様の霊魂が宿っているのを見抜いた。そして、厳の御魂の大神がお生まれになる、と診断した。そのとたん娘のお玉は起き上がり、白髪の神様からも、「七人の女の随一、厳の御霊の誕生」を告げられた、と明かす。そして陣痛を訴え始めた。悦子姫が取り上げて、無事に女の子が生まれた。悦子姫は女児に、玉照姫と名前をつけた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月24日(旧03月28日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年2月10日 愛善世界社版33頁 八幡書店版第3輯 649頁 修補版 校定版34頁 普及版15頁 初版 ページ備考
OBC rm1802
本文のヒット件数全 13 件/悦子姫=13
本文の文字数3922
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本文  山と山との迫りたる  春野の花に右左
 白や紫黄金なす  男蝶女蝶の翩翻と
 常世の春を舞ひ遊ぶ  紫雲英の花の咲き満ちた
 山の麓の田圃道  景色も殊に悦子姫
 谷の水音潺湲と  遠音に響く音彦や
 加米彦夏彦諸共に  白髪親爺の豊彦が
 賤の伏屋へ徐々と  石の田楽橋を越え
 蒲公英の花を踏みすだき  半倒れた萱の家の
 漸う表門に着きにける。
 豊彦は、三月の菱餅の様になつた門口の戸を敲いて、
『オイオイ、お婆、お客さまだ、早う開けぬか』
婆『豊彦どのか、マアマア待つて下され、敷居も鴨居も斜になり、戸を噛みて一寸やそつとにや開きはせぬ。お玉はお玉で身体は自由にならず、爺どの、お前も外から力を添へて下さい。アーア貧乏すると戸までが嫌相に歪み出すなり、壁は身上の痩せたせいか骨を出すなり、情無い事だ、コンナ茅屋にソンナ立派なお客さまに来て貰うた処で、腰を掛けて貰ふ処もありやせぬワ』
 豊彦は婆アと共に内と外から年寄の金剛力を出し、左の方へグイツとしやくつた其途端に、半破れた古戸は敷居を外れてバタリと中へ転け込みたり。
豊彦『エーエ、気の利かぬ婆だ、戸倒しものだナ、サアサお客さま、ずつと奥へお通り下さいませ』
 加米彦は、
『お爺さま、奥へ通れと云つたつて何処に奥があるのだい、門口へ這入るなり、もう裏口ぢやないか、ウラナイ教なら奥の奥に奥があり、其又奥にも奥があるものだが、こら又何と狭い箱枕の様な家だなア』
 音彦は気の毒がり乍ら、
『コラコラ、加米、又はつしやぎよる、ちつと沈黙せぬかい失礼な』
加米彦『ハイ、如何も副守の奴、加米彦の命令を遵奉せないので困る、モシモシお爺さま、何卒気に障へて下さいますな、私の茅屋に這入つて居るお客が申したので御座います』
『さうだらう、私の茅屋に這入つて来たお客の一人だ、さう八釜しく云ふと娘の身体に障ります、ちつとお静にして下さい』
 加米彦、小声になつて、
『ハイ、承知致しました、然し余り軽蔑して下さるな、斯う見えても娘の身体に障る様な不躾な事は致しませぬワ』
豊彦『コレコレ婆や、座蒲団を出さぬかい、お茶を酌まぬか、モシモシお姫さま、何卒お腰をかけて下さいませ』
婆『皆さま、よう来て下さいました。早速乍らお尋ね致しますが私等夫婦は誠に運の悪いもので御座いまして、一人の息子に嫁を貰ひ、比沼の真名井山へ参拝をさせました其途中に、大江山の鬼雲彦とやら云ふ悪人の手下共に掻攫はれ、生きて居るか死んで居るか。今に便りが御座いませぬ、それに又一人の妹娘は、一年半ほど前から身体が変になりまして、酢い物が食ひ度いと云ひ出し、腹は段々、日に日に太り出し、最早十八ケ月にもなりますのに、脹満でもなければ子でもない様な、訳の分らぬ業病に罹つて苦みて居ります。かう云ふ山奥の一つ家、娘は元来臆病者で、十八才の今日まで親の側を半時だつて離れた事はありませぬ、それだから子の宿る筈もなし、腹を抑へて見れば大きな塊がゴロゴロと動いて居るなり、何が何ぢややら訳が分らず、天にも地にも只一人の娘の為めに、年寄夫婦が泣きの涙で暮して居ります。それに合点のゆかぬは、此間も三五教の宣伝使の英子姫さまとやら云ふお方が、立派な家来をお伴れ遊ばして此茅屋へ立寄つて下さいまして、娘の容態をつくづくと眺め、これは妊娠だから大切にせよとの御言葉、妊娠なれば遠うの昔に生れて居らねばなりませぬが、もう十八ケ月にもなりますのに何の音沙汰も無し、英子姫さまの仰しやるには四五日の間に立派な宣伝使を遣してやるから、それに頼みて無事に子を生まして貰へとの事でした。相手も無いのに子が出来ると云ふ様な事が昔からあるものでせうか』
悦子姫『アヽそれは御心配でせう、一寸妾が見てあげませう』
とお玉の側に寄り添ひ、腹を撫で、
『ア、これは全く妊娠です、然し乍ら決して、人間と人間との息から出来た子ではありませぬ、何か心当りは御座いませぬか』
豊彦『さう聞けば無い事もありませぬ、一昨年の秋の初め、私の夢に白髪異様の老人が此茅屋に訪ねて御いでになり、立派な水晶とも瑠璃とも譬方ない玉を五つ下さいまして「之をお前にやるから娘に呑ましてやれ」と仰しやいました。そこで私は「承知致しました、然し乍ら斯んな硬いものが呑めますか」と尋ねましたら、その方の云はれるのには「俺が呑ましてやらう、決して呑み難い物ではない」と仰しやつてお玉の身体をグツと抱へ、胸の辺りに無理に押し込みなさつたと思へば目が覚めました。さうすると娘のお玉がウンウンと魘されて居るので、揺り起こしてやりますと、お玉の身体は一面、汗びしよ濡れになり、私の見た夢と同様の夢を見た、それから身体が何となく苦しくなつて堪らぬと云ひました。何れ夢の事だから明日になつたら苦しいのも癒るだらうと云つて、その晩寝みました。夜が明けて見ればお玉は矢張ウンウンと呻つて居ります。それつきり十八ケ月の今日まで、腹が段々膨れる許りで、身体の自由も利きませず、不思議な事があればあるもので御座います、何か悪神の所作ではありますまいかな』
悦子姫『ヤ、心配なされますな、悪神どころか立派な神様のお霊魂が宿らせられていらつしやいます。厳の御霊の大神が御生れになるのでせう。妾が今神様にお願を致します』
と何事か小声になつて頻りに祈願を凝らしつつある折しも、お玉は『ウン』と一声諸共に初めて起き直り夢中になつて、
『ア、有難う御座います、これで私も助かります、七人の女の随一、厳の御霊の御誕生だと何時やら見えた白髪の神様が仰しやいました、何卒、とり上げの用意をして下さいませ、強い陣痛が催して来ました』
 豊彦夫婦は吃驚し、
『ヤア、それは大変ぢや、早く湯を沸かさねばなるまい』
悦子姫『お爺さま、お婆アさま、貴方等は此処にぢつとして居て下さい、これ加米彦や夏彦さま、早くお湯を沸かしなさい』
加米彦『ハイ(妙な声で)ナア夏彦、どうで碌な事ぢや無いと思うて居つた、コンナ山奥へ出て来てお産の湯まで沸かさして頂くとは、思ひも寄らぬ光栄ぢやないか』
夏彦『ソンナ勿体ない事を云ふものぢやない、結構な神様が御出産遊ばすのぢや、その御用の端に使うて貰ふのは余程の因縁ぢや無くちや、コンナ御用が仰せ付かるものかいヤイ、あら有難い辱ない』
お玉『ウンウン』
音彦『サア早く、加米彦、夏彦、湯を沸かして上げぬかい』
『ハイハイ』
と破れ鍋に水を盛り、閉蓋をチヤンとのせ、薪をポキポキ折つて火鉢の火を吹き点け、座蒲団で風をおこし、湯沸かしに全力を注いで居る。忽ち聞ゆる赤子の声、
『ほぎやア ほぎやア ほぎやア』
『アヽ目出度い目出度い、サア腹帯を締めてあげよう』
悦子姫は甲斐々々しくお玉の後に廻り、グツと腹帯を締め、
『サア之でもう大丈夫です、お爺さま、お婆アさま、ご安心なさいませ』
爺、婆『ハイハイ、有難う御座います、とりあげ迄させまして誠に何とも恐れ入つた事で御座います』
『サア湯が沸いた様です、どれどれ私が湯を浴せてやりませう、ヤア何と長い事腹の中に居られたせいか、立派なお子さまだワイ』
と音彦は赤子を両手に抱へ、湯の手加減をした上、悦子姫と共に行水をさせる。赤子は盥の中で、火でも身体に焦ついた様に真赤な顔をして泣き立て居る。
 悦子姫はいそいそとして、
『ア、立派な丈夫なお子さまだ。お爺さま、お婆アさま、お玉さま、御安心なさいませよ』
 三人黙然として涙を零し俯向き居る。
『何と不思議な事があるものぢや無いか、ナア夏彦、十八ケ月で子が出来るとは前代未聞だ。俺達は節季が来ると何時もたらい(不足)で泣くが、此赤ン坊は、ほンのりと温う暖まつて矢張たらい(盥)で泣くのだな、アハヽヽヽ』
夏彦『コラコラ加米、又そンな大きな声を出しよると、お玉さまの身体に障つたら如何するのだ』
『さはるのは加米とはお役が違ふ哩、悦子姫さまがさはつて御座るぢやないか、アハヽヽヽ』
音彦『コラコラ両人、静にせぬか』
『ハイ畏まりました』
お玉『皆様、いかい御世話になりました。生けた子は男で御座いますか、女で御座いますか』
音彦『オヽ、さうさう、あまり嬉しうて調査するのを失念して居た。アア折角乍ら割れて居ますワ』
豊姫『エ、又女で御座いますか、矢張私の家は養子でなければ治まらぬと見えます。伜に嫁を貰つて後を継がさうと思へば、最前申した通り行衛は分らず、矢張妹のお玉に養子をせねばなりませぬ、今度生れた総領も養子を貰ふ様になりました』
 加米彦、又もやはしやいで、
『お爺さま、お目出度う、これで貴方の家の運も開ける、養子が三代続けば長者になると云ふ事だ、お喜びなさい、私も嬉しい、お目出度い、手の舞ひ足の踏む所を知らずだ。どつこいしよ どつこいしよ』
と跳上り田楽橋を踏み外し、小溝の中へバサリと落ち、
加米彦『ヤア折角の着物を濡らして仕舞つた』
夏彦『ハヽヽヽ、狼狽者だな』
悦子姫『もうこれでお案じなさる事は要りませぬ、大丈夫です。名はおつけなさいますか』
豊彦『誠に済みませぬが、貴女様のお世話になつた子供で御座いますから、何卒お名をやつて下さいませ』
悦子姫『承知致しました、ソンナラ妾が名をあげませう、玉照姫とつけませう』
 豊彦、豊姫、お玉、一時に口を揃へて、
『有難う存じます』
悦子姫『サアサア私は之からお山へ参拝を致して参ります。又帰りがけに悠くり伺ひます、左様なら』
と早くも門口を跨げる。三人は何も云はず手を合して悦子姫の方に向つて拝ンで居る。音彦は、
『サア、加米彦、夏彦出陣だ』
悦子姫の後に従ひ旧来し道に引返し、四人は又もや道に這ひ出た急坂の木の根の段梯子を渡つて奥へ奥へと登り行く。
(大正一一・四・二四 旧三・二八 北村隆光録)
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