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文献名1霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻
文献名2第1篇 神慮洪遠よみ(新仮名遣い)しんりょこうえん
文献名3第2章 鶍の嘴〔647〕よみ(新仮名遣い)いすかのはし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-03-30 17:14:07
あらすじ魔窟ケ原の岩屋で、高姫、黒姫、高山彦は、青彦らの首尾を待っていた。そこへ様子伺いに行っていた梅公は、辰公、鳶公を従えて息せき切って戻ってきた。梅公の様子を見て、門番をしていた寅若は、不首尾を悟ってあざ笑う。青彦らの戻りが遅いので、高姫は心配するが、黒姫は自分が信任した青彦たちをかばう。黒姫は夫の高山彦に同意を求めようとするが、高山彦も青彦たちに対して懐疑的なため、黒姫と喧嘩になり、高姫にたしなめられる。そこへ、寅若に連れられて梅公たちが入ってきた。黒姫は首尾を尋ねるが、梅公たちははぐらかしてはっきり答えない。高姫が、青彦たちは三五教へ返ったのだろう、と問うと、ようやく梅公はその事実を認めた。それを聞くと高姫はさっさとフサの国へ帰ろうと、鳥船指して由良の港へ走って出て行ってしまった。高山彦は、このままでは高姫に合わせる顔がないと、世継王山に単身乗り込んで、玉照姫を奪おうと駆け出した。黒姫も高山彦の後に続いた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月06日(旧04月10日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年2月28日 愛善世界社版19頁 八幡書店版第4輯 35頁 修補版 校定版19頁 普及版7頁 初版 ページ備考
OBC rm1902
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本文  足踏む隙も夏草の、生茂りたる魔窟ケ原、山時鳥悲しげに、血を吐く思ひの岩窟の中、高姫、高山彦、黒姫の三人は、奥の一室に鼎坐して、紫姫や青彦の、消息如何にと待ち居たる。頃しもあれや梅公は、辰、鳶二人を従へて、息せき切つて馳せ帰りきぬ。
寅若『ヨオ、梅公ぢやないか、何処へ行つて居たのだ。甚う顔の色が晴れ晴れして居ないぢやないか、何時も快活なお前に似合はず、どこともなく影が薄う見えて仕方がないワ』
梅公『エヽ、何でもない、お前の出る幕ぢやないから柔順しく待つて居ろ』
 寅若はニタリと笑ひ、
寅若『ヘン、やられよつたな、鼈に尻をやられたと云はうか、嘘を月夜に釜を抜かれたと云ふ為体、又も違つたら梟鳥が夜食に外れたと云ふ塩梅式だな、黒姫さまもよい家来をお持ちになつて仕合せだワイ、イヒヽヽヽ』
梅公『エヽ喧敷う云ふな、其処退け、ソンナ狭い入口に貴様が立つて居ては這入る事も出来やしないワ』
寅若『ハヽヽヽ、可成這入らぬが好からうぜ、御注進申上げるや否や形勢不穏、大地震でも勃発してみよ、此岩窟はガタガタだ。此寅若は御信任が無いから駄目だが、併し紫姫さまや、青彦さま、それに次で梅公と来たら豪いものだよ。一つ今回の失敗、否、お手柄話を聞かして貰はうかい、何時も黒姫は目が黒いと仰有る、間違ひはあるまい、此眼で一目睨みたら些とも違はぬと仰せられるのだからなア、アハヽヽヽ』
と頤をしやくつて入口に立ち塞がり、きよくつたやうな笑ひをする。奥の一室には高姫、高山彦、黒姫三人、鳩首謀議の真最中なりける。
高姫『これ黒姫さま、紫姫や青彦が出立してから、もう一週間にもなるぢやありませぬか、それに今になつて、猫が嚔をしたとも、膿ンだ鼻が潰れたとも云ふ便りが無いぢやありませぬか、貴女のお眼識に叶つた許りか、選抜してお遣りになつたのだから、如才はありますまいが、万一あつては大変だと気に懸つてなりませぬワ』
 黒姫は稍不安の面持にて、
『何分突飛な談判に遣つたものだから、摺つた揉ンだと、毎日問題が次から次へと提出され、家庭会議でも開いて連日連夜小田原評定に時を費やして居るのでせう。早く成るものは破れ易く、遅く成るものは破れ難し、大器晩成と云つて暇の要る程脈があるのですよ、一年にすつと伸びて花の咲く草木は秋が来れば萎れて仕舞ひます。梅桜、桃椿などの喬木になると、二年や三年に花は咲かない代りに、天を衝くやうに其幹は成長し、毎年々々花も咲く、私の眼識に叶つた紫姫、青彦の事ですから、よもや寝返りを打つと云ふ事はありますまい、ナア高山彦さま』
高山彦『サア、何とも保証の限りではないなア』
 黒姫、目に角を立て、
『エヽ何と仰有る、高山彦さま、余り紫姫や、青彦を見損つてはいけませぬよ。お前さまの身魂は昔鬼城山にあつて木常姫さまに悪い事を教へ、今度は南高山の宝取りには道彦の為に大失敗を演じ、今又ウラナイ教へ帰つてくると云ふ身魂だから、ソンナ考へが出るのだよ、自分の心を標準として青彦や紫姫の心を測量なさるとは、些と残酷と云ふものだワ』
 高山彦は少し声を高うして、
『昔は昔今は今ぢや、身魂に経験を積みて来て居るから、大概の人の心の底はよく分つて居る。何時も俺は柔順しくして不言実行主義を採つて居れば、貴様は何時も先に出て何から何迄、掻いて掻いて掻き廻し、一言云へば直ちに眉を逆立て鼻息を荒くし、口から泡を飛ばすぢやないか、俺は五月蠅いから何時も黙つて居るのだ。今日は幸ひ高姫様の前だから、俺の思つて居る事を忌憚なく吐露したのだ』
黒姫『そりや何を云ひなさる、貴方は此家の主人ぢやないか、私の云ふ事を聞くやうな素直な身魂ですかいな、何でも彼でも一つ一つケチをつけねば置かぬ因果な身魂だから』
高山彦『今度の青彦、紫姫を派遣したのはお前の発案だらう、其時俺は貴様に剣呑だからそつと寅若でもつけてやつたら何うだと云うたぢやないか、其時貴様は首を振り、大変な荒びやうだつた、アヽ、又毎度の病気が出た哩と思つて辛抱して居たのだ。此奴は屹度不成功、否不成功のみならず、青彦、紫姫は三五教の間諜だつたに違ひない』
黒姫『何を云ひなさるのだい、マア見て居なされ、屹度今に分る。玉照姫を連れて青彦が帰つて来ますよ。若し連れて帰つて来なかつたら、二度とお前さまにも高姫さまにもお目にかかりませぬ哩なア』
と頤をしやくり、上下の歯をぐつと噛みしめ、前に突き出して見せける。高山彦はムツとしたか蠑螺のやうな拳骨を固めて黒姫の横面を撲らむとする。スワ一大事と高姫は仲に割つて入り、
『ヤア待つた待つた、犬も食はぬ喧嘩をすると云ふ事がありますか、些と心得なさい。お前さま二人はウラナイ教の柱石たる重要人物ぢやないか、ソンナ事で皆の者に教訓が出来ますか』
黒姫『ハイハイ、左様で御座います、何分宅のがヒヨツトコですから』
高山彦『こりや黒、ヒヨツトコとは何だ。俺がヒヨツトコなら貴様はベツトコだ』
高姫『コレコレ、お二人とも詔直しだ詔直しだ、言霊をお慎みなさらぬか』
 斯かる所へ寅若を先頭に、梅、辰、鳶の三人は現はれ来り、
寅若『黒姫様、三人の、私へ隠してのお使が偉い勢なくして帰つて参りました、何卒詳しくお聞き取り下さいませ』
黒姫『お前は梅公、辰公、鳶公、首尾は何うだつたな、紫姫、青彦を旨くやつたらうなア?』
梅公『ヘエヘエ、流石の青彦、紫姫で御座います、梅いことをやつて、此三人ぢやないが鳶辰やうにトツトと凱歌を奏して、何々の何へ向つて帰りましたワ』
黒姫『アヽ、さうかさうか、それは御苦労であつた。サア早く玉照姫様のお居間のお掃除を為し、皆様の御飯やお酒の用意をして置きなさい』
梅公『ヘイ、根つから其必要は認めませぬがなア』
黒姫『そりや梅公、お前何と云ふ事を云ふのぢや、必要を認めるの認めないのと何故私の云ふ事を聞かないのかい、これこれ辰公、鳶公、お前も御苦労ぢやつた。どうぞ詳しく高姫さまの前で、青彦や紫姫さまの天晴功名した事を聞かして下さい』
鳶公『エー、もう余りの事で申上げます事も出来ませぬ』
辰公『何と云つても六日の菖蒲、十日の菊、何が何ンだやら薩張神様の御都合を頂いて来ました』
寅若『アハヽヽヽ、此奴余程弱つて居やがるな、御都合と云ふのは卑怯者の適当な遁辞だ。モシモシ黒姫さま、こいつは屹度ものにならなかつたのですよ、蛸の揚壺を食つて帰つたとより見えませぬな』
黒姫『これ寅若、お前に誰が物を尋ねたかい、弥仙山へ往つて失敗をして帰つて来たやうな男だから、今度の事は彼是云ふお前には資格がない、一段下りて庭へ下がつて其処の掃除でもしなさい。これこれ梅公早く云ひなさいよ』
 梅公は左の手で頭を三遍ばかりも、つるつると撫でながら、
梅公『ハイ、私は紫姫、青彦その他一行の後を見え隠れに監視して参りました。さうした処流石の青彦さま、綾彦お民の両人を前に出して豊彦爺をアツと云はせ、ヤアお前は綾彦であつたか、お民であつたか、ヤア父さまか、母さまか、妹か、兄さまかと一場の悲喜劇が現はれ、其処へ平和の女神然たる紫姫さまが、おチヨボ口をぱつと開いて仰有るには、何事も皆神様のなさる事、豊彦さまも斯うして若夫婦が帰つて御座つた以上は、神様へ御恩返しにお玉さま始め、玉照姫様を神様に奉らねばなりますまいと、さも流暢な弁で談判になりますと、豊彦爺は、喜ぶの喜ばないのつて、首を滅多矢鱈に振つて振つて振りさがし、千切れはせぬかと思ふ程首肯いて、仕舞の果にはドンと尻餅を搗き、眼を暈しかけました。マアさうして爺の云ふのには、アヽ結構な事だ、嬉しい時には欣喜雀躍、手の舞ひ足の踏む所を知らずと云ふ事だが、俺は余り嬉しくて目のまひ、家のまひ、身体の居る所を知らずぢや、と云ひまして、それはそれは大変喜びましたよ。あれ位喜びた事は生れてから見た事も、聞いた事もありませぬワ』
黒姫『アヽ、さうだらうさうだらう、喜びたらうな、これ高山さまどうですかい、これでも文句がありますかい、高姫さま、もうこれで、大きな顔で本山に帰つて貰はうと儘ですワイ、オホヽヽヽ、サア其次を梅公云ひなさい、瞬く間も待ち遠しいやうな心持がする』
梅公『サア、これから先は時間の問題ですな、云はぬ方が却つて先楽しみで宜しからう。オイ鳶、辰、貴様も些と云はぬかい』
辰公『ヘン、よい所ばつかり食つて糟粕ばつかり人に食はさうと思つたつて駄目だよ、貴様が報告した後に……サアサア其次を諄々と掛け値の無い所を申上げてお目玉を頂戴するのだな』
梅公『エヽ何も彼も大将になると責任が重い、エイエイ仕方がない、ソンナラ私が申上げます、黒姫さま喫驚なさいますな』
黒姫『何喫驚するものか、喫驚するのは高山さまぢや、余り嬉しいて喫驚する者と、余り阿呆らしくて会はす顔がなくて喫驚する者と出来ませうぞい』
梅公『エヽ、紫姫、青彦はお玉、玉照姫様を連れて意気揚々と、吾々を何々し、何々の何々へ何々して仕舞ひました』
黒姫『これ梅公、アタもどかしい、早く云はぬかいナ、いつ迄私を焦らすのだい』
梅公『イエイエ、決して焦らすのぢやありませぬ、知らすのですよ、知らず識らずの御無礼御気障、知らぬ神に祟りなし、どうぞ私だけは今日の所は帳外れにして下さいませ』
黒姫『怪体な事を云ふぢやないか、さうして青彦の一行はいつ帰つて来るのだい』
梅公『それはいつになるとも判然お答へが出来ませぬなア、是も矢張時の力でせう』
高姫『黒姫さま、青彦初め、紫姫は三五教へ帰つたのですよ』
梅公『マア マア、高姫さまの天眼力にて御観察の通り、誠に以てお気の毒千万、青彦、紫姫其他は共にグレンをやりました。今頃は世継王山の麓で祝ひ酒でも呑みて居るでせう』
と頭を抱へ小隅にすくみける。
黒姫『エヽソンナ青彦ぢやない、又紫姫も紫姫ぢや、三五教へ行くなぞと、そりや大方副守護神を放かしに往つたのだらう、屹度戻つて来る確信がある』
高姫『黒姫さま、もう駄目だ。高山彦さま、お前さまも立派な奥さまを持つて御満足でせう、この忙しいのに永らく逗留してお邪魔をしました。エライ馬鹿を見せて下さいましたナ、アーア、併しこれも何かの御都合だ。左様なら、帰ります』
高山彦『どうぞ私も連れて帰つて下さい』
高姫『お前さまの勝手になされ、黒姫さまを大切にお守りなさるがお徳だらう、左様なら』
と、大勢の止むるをも聞かず、額に青筋を立て、偉い気色で表へかけ出し、鶴、亀来れと二人を伴ひ魔窟ケ原を驀地に、由良の港を指して走り行く。
高山彦『こりや大変』
と捻鉢巻、七分三分に尻からげ、細長いコンパスに油をかけ、飛び出さうとする。黒姫はグツと袂を握り、
黒姫『高山さま、血相変へて何処へお出るのだえ』
高山彦『定つた事だ。肝腎の玉照姫は申すに及ばず、青彦、紫姫迄三五教に取られて、どうして高姫さまに申訳が立つか、是より此高山彦が世継王山の悦子姫の館にかけ込み、玉照姫を小脇にヒン抱き帰らで置かうか、愚図々々致せば高姫さまは飛行機に乗つてフサの国へお帰りだ、それ迄に玉照姫様を手に入れてお詫をせにやならぬ、邪魔ひろぐな』
と蹶飛ばし、突飛ばし、一生懸命にかけ出したり。黒姫も声を限りにオーイオーイと髪振り乱し、帯を引きずり乍ら高山彦の後を追ひ、足に任せて走り行く。
(大正一一・五・六 旧四・一〇 加藤明子録)
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