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文献名1霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻
文献名2第4篇 地異天変よみ(新仮名遣い)ちいてんぺん
文献名3第14章 声の在所〔659〕よみ(新仮名遣い)こえのありか
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-04-12 17:00:26
あらすじどこからともなく、赤子の声が聞こえてくる。幼児の鳴き声は、各人それぞれ違った方角から聞こえてきて、ばらばらの方角に探しに出たが、見つからない。気がつくと、四人は天狗岩の根元に寝ていた。四人は山を駆け下りるが、その途中で玉照彦を抱いて上がってくる言照姫に出くわした。テルヂーと谷丸は、それぞれ自分たちの陣営に玉照彦を賜るように、と言照姫に懇願した。言照姫は、互いに玉照彦の手を引っ張り合い、勝った方に玉照彦をやろう、と提案する。二人は玉照彦の手を引いて両側から引っ張り合うが、玉照彦が悲鳴をあげると、テルヂーは驚いて手を放してしまった。谷丸は勝利を宣言するが、玉照彦本人が口を利いて、自分が痛がっているのに手を引き続けたバラモン教に行くのはいやだ、と言い出した。谷丸は言照姫に審判を仰ごうとするが、言照姫の姿は消えてしまっていた。玉照彦は、こうなった以上は自分はどちらへ行くこともやめましょう、その代わり三五教の松姫という者が迎えに来るから、そちらに行くことにした、と語った。そこへ松姫がやってきて、玉照彦に背を差し出し、背負って帰ろうとした。ウラル教とバラモン教の四人は目配せをすると、松姫に襲い掛かって打ちすえ、玉照彦を奪って逃げてしまった。松姫はその場に気絶していたが、息を吹き返すと、そこには二柱の女神が立っていた。女神たちは、松姫に高熊山に行って玉照彦を奉迎するように、と言う。松姫が、玉照彦はウラル教とバラモン教に奪われてしまった、と言うと、女神たちは、彼らは貪欲に駆られて、石を玉照彦だと思い込んで運んでいったのだ、と明かした。松姫はすっかり暮れた夜道を高熊山に向かって進んで行き、来勿止の関所までやってきた。松姫は通してくれるように頼むが、門番の勝公と竹公は門を開けない。そこへ来勿止神がやってきた。松姫は平伏すると、来勿止神は、女神の報せによって、松姫が来るのを待っていたのだ、と伝えた。勝公は門を開いて松姫を通した。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月09日(旧04月13日) 口述場所 筆録者藤津久子 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年2月28日 愛善世界社版238頁 八幡書店版第4輯 118頁 修補版 校定版242頁 普及版111頁 初版 ページ備考
OBC rm1914
本文のヒット件数全 5 件/バラモン教=5
本文の文字数6332
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本文  谷丸、鬼丸、テルヂー、コロンボの四人は堺峠の天狗岩を後にし乍ら、山麓の老松の根元を越え、玉照彦の幼児の隠し場所に走り着いた。谷丸は、目を丸くして、此処彼処と探し廻し、三人は吾一の功名せむと、血眼になつて、谷丸の行く後に従ひ、捜索を始めた。忽ち聞ゆる赤児の泣き声、谷丸は立止まり、腕を組み、泣き声の何れより来るかを考へて居る。
谷丸『慥に此処に、お寝かせ申して置いた筈だ、それに形跡だに残つてゐないのみならず、御声は聞えて居るがトント方角が分らない。東に聞える様でもあるし、西の様でもあるし、西かと思へば南に聞えるし、南かと思へば、北に聞える様だし、ハテナ、こいつは、狐の奴、玉照彦様を啣へて、其処中を迂路ついて居やがるのだな、オイ俺は東を探すから、鬼丸、貴様は西の方を探して呉れ。そして、テルヂー、コロンボ二人は、南、北に手分けして捜索して下さい。其代り誰が見付けても共有だから其お積もりで願ひますよ』
テルヂー『其約束は間違ひありませぬなア。イヤ面白い。さあコロンボ、貴様は南に行け、俺は北の方を探して見る』
 不思議にも、幼児の泣声は、谷丸の耳には東に最も高く聞えて来る。鬼丸には西の方に聞える。コロンボの耳には南に聞える。テルヂーの耳には慥に北の方から聞えて来る。
 四人は東西南北に、慌しく、声を尋ねて駆け出した。四人の耳に聞ゆる猛烈な泣き声、各自前後左右より響いて来る。四人は其声に、耳を引張られる様に、体をキリキリ舞ひさせ、目を廻して四人共、バタリと倒れた。一時許り四人の呼ぶ声も、風の音も鎮まり閑寂の幕が下ろされた。夜はそろそろと明け放れ、東の空の雲押し分けて昇り給ふ天津日の御影に照され、各一度に目を醒せば、豈計らむや、四人は天狗岩の根元にヅブ濡れになつて眠りゐたりき。
谷丸『アヽ何だ、夢見て居たのか、矢張天狗岩の傍だから鼻高の奴、俺達を一寸チヨロマカしやがつたのだな。それにしても、肝腎の、玉照彦様は何処にお出でになつたのだらう。アヽ此処に御座つた、有難い有難い、玉照彦様どうぞ許して下さいませ。貴方お一人をこんな岩の上に、御寝かし申し、吾々は前後も知らず寝込んで了ひました』
と云ひつつ傍に寄り、抱き上げむとしたるに、玉照彦の全身は冷切つて氷の如くに冷たくなつて居る。
谷丸『オイ鬼丸、玉照彦様は冷たくなつて居らつしやる、こりやマア何うしたら宜からうかなア』
鬼丸『そりや夢の中に見た通り石ぢやありませぬか』
谷丸『ヤア如何にも、此奴は夢の通り矢張石だつた』
 テルヂー、コロンボ一度に、
テ、コ『アハヽヽヽ、誠に誠に、御挨拶の仕様も御座いませぬ、もう斯うなつた以上は何程泣いても悔んでも石が物云ふ例は御座いませぬ、どうぞ鄭重に弔うて上げて下さい。さあコロンボ、夢の処へ行くのだ』
と駆出す。谷丸、鬼丸も続いて駆出したり。
 坂の中程迄下り来る折しも、水の滴る如き一人の美人、玉照彦を抱いて上り来るに出会つた。
テルヂー『モシモシ、貴方は言照姫様では御座いませぬか』
美人『ハイ左様で御座います。今玉照彦の神様を保護して此処迄参りました』
テルヂー『変な事を申しますが、何卒ウラル教の神様として大切に致しますから、吾々に下さいますまいか』
言照姫『ハイ何誰かに貰つて貰はねばならないのですから、お望みとあれば、何うとも致しませう』
 斯かる処へ、谷丸、鬼丸は追かけ来り、
谷、鬼『ヤア玉照彦様で御座いましたか、大変にお慕ひ申し探して居りました。サアサア何卒谷丸へお越し下さいませ。私が抱いて上げませう』
言照姫『お前は、谷丸さまぢやないか。私の不在中に、岩窟の中から盗み出し、大切にする事か、あのやうな茨室へ蓑を敷いて、捨子同様にして置きなさつたぢやないか。どうして貴方に、此尊い玉照彦様を安心してお預け申す事が出来ませうか』
谷丸『イヤ誠に済みませぬ。何を云つても、ウラル教のテルヂーが狙つて居るのですから、取られちや大変と、茨の中とは知らず、朧月夜の事とて間違ひ、お寝かせ申したのです。どうぞ私に下さいませ』
言照姫『斯う両方から懇望されては、一方を立てれば一方に済まず、処置に困ります。そんなら斯う致しませう。玉照彦様は御生れ遊ばしてからまだ百日にもなりませぬが、ちよいちよい物も仰有る、立歩みもなさいますから、ウラル教のテルヂーとバラモン教の谷丸とお二人で両方の手を握つて、玉照彦様を引張合ひして下さい。引張つて勝つ方に上げませう』
 四人一度に、
『さう願へば公平で結構です』
 言照姫は玉照彦を坂道の真中に下ろした。玉照彦は左右の手を両方に差し延ばし、
玉照彦『サア坊の手を引張つて下さい。勝つたお方の方へ参ります。然しソツと引いて下さいや』
『承知致しました』
と谷丸、テルヂーの二人は、左右に立ち現はれ、腰を跼めて、背の低い玉照彦の手をグツト握り力を極めて、
『サア玉照彦様、私の方へ来て下さい』
と、一生懸命、腕が抜ける程引張る。
玉照彦『アヽ痛い痛い、痛いわいなア』
と顔を顰め泣き出す。テルヂーは此声に驚いて、思はず手を離した。
谷丸『サア愈こちらの物ぢや。玉照彦様、御苦労乍ら、今日から、バラモン教の神様になつて下さい』
 玉照彦、首を振り、
玉照彦『イヤイヤ テルヂーの方に御世話になります』
谷丸『そりやあ約束が違ふぢやありませぬか』
玉照彦『貴方は、私が悲鳴を上げて痛がつて居るのに、構はずに引張つたぢやありませぬか、あの時にテルヂーが放して下さらなかつたら、私の体は二つに千切れて居るのです。愛情の深いテルヂーに御世話になります』
谷丸『小難かしい事を仰しやいますなア、チト位辛抱して下さつても宜いぢやありませぬか。モシモシ言照姫様、どうぞ生みの御母様の貴方からよく云つて下さいな』
と振り向き見れば、こは如何に、言照姫の姿は最早影も形もない。
玉照彦『私は最う斯うなる以上は、どちらへも参る事は止めませう。今ウラナイ教の松姫さまが、お迎へに来て下さるから、そちらへ行きます』
 此時トボトボと坂を登つて来る一人の女がありしが、玉照彦は嬉しさうに、
『ヤア、其方は松姫か、よう迎へに来て呉れた。サアサア連れて行つておくれ』
松姫『これはこれは玉照彦様、焦れ慕うて参りました。サア私が御負して進ぜませう』
と背中を突き出す。四人は目と目を見合せ乍ら、松姫を前後左右より取り巻き、鉄拳を以て擲きつけ、悲鳴を上げて倒れるのを見済まし、玉照彦を引攫へ、四人は林の茂みに姿を隠したり。
 松姫は暴漢に乱打され忽ち気絶して坂道に倒れ居たりしが、其日の夕暮頃フト息を吹き返し、四辺を見れば、麗しき二柱の女神、儼然として其前に立ち給ふ。
女神一『汝は高城山の松姫であらう。サア、妾に従つて是より、高熊山の岩窟に参りませう』
松姫『何れの神様か存じませぬが、ようマア助けて下さいました。私は悪者に虐げられ気絶をして、遠い遠い彼の世の旅行をやつて居ました。処が二人の女神様が現はれて、コレ松姫、此処は何と心得て居る、幽界の入口であるぞや。汝はまだまだ幽界に出て来る時でない、サアサア妾が送つてやるから、と仰有つたと思へば気が付きました。見れば幽界で見た女神様と、寸分も間違ひのない御二方様、お蔭で命を助けて戴きました』
と手を合せ感謝の涙にくれて居る。
女神二『サア松姫どの、高熊山の玉照彦様をお迎へに行きませう』
松姫『あの玉照彦様はたつた今、悪者に攫はれて行かれました。最早、高熊山には居らつしやいますまい』
女神一『オホヽヽヽ、今朝ウラル教とバラモン教の宣伝使が来たでせう。彼等は貪欲心に絡まれ、眼暗み、石くれを玉照彦様と思ひ違へ、喜んで逃げ帰つたのです。サアこれから、貴女は気を取り直し、単身岩窟に進み、言照姫にお逢ひなされて、玉照彦様をお連れ申してお帰りなさい。妾は来勿止迄送つて上げませう。それから奥は貴女一人のお働きです。妾達二柱、お手伝ひ申すは易き事乍ら、それでは貴女の御手柄にはなりませぬから、心丈夫に以てお出でなさいませ』
松姫『何から何迄、有難う御座います。お言葉に甘へて来勿止迄送つて頂きませうか。さうして、貴女様の御神名は何と申します』
 二人の女神はニコリと笑ひ、
『何れ分る時節が参りませう。此処では一寸申し上げ兼ねます』
と先き立ち、足早に、山奥指して進み給ふ。松姫は、二女神の後に従ひ、心いそいそ歩み出したり。
二女神『もう二三丁先が、来勿止の関所で御座います。吾々は此処でお別れ致します。何れ改めてお目にかかる事が御座いませう。左様なら』
と云ふかと思へば二女神の姿は忽ちかき消す如く見えなくなりぬ。松姫は盲人が杖を失つた如く、暗夜に提灯取られた如き心地して、重き足を、希望の車に乗せられ、引摺つて行く。日は既に黄昏れ、十七夜の月はまだ昇り給はざる一の暗み時、来勿止の神の関所に着いた。此処は厳格な関門が築かれてある。
松姫『モシモシ私は霊山へ詣る者で御座います。何卒、此門お通し下さいませ』
 門番の一人甲は、横門を押し開け出で来り、
甲『何誰か知りませぬが、此一の暗に、此門あけいと云ふ者は碌な者ぢやありませぬ。何時も何時も狐や狸に誑られて、馬鹿を見通しだから、今日は何と云つても開けませぬ、否通過させませぬ。出直して明日の朝お出なさい』
松姫『左様では御座いませうが、決して怪しい者では御座いませぬ。どうぞ通して下さいませ。玉照彦様の御誕生地へ至急詣らねばなりませぬから』
 乙此声を聞いて、
乙『オイ勝公、此暗がりに、アタ厭らしい、そんな白い装束を着た女を相手に何を揶揄つて居るのか、早く這入らぬか、又例の奴に定つて居るぞ』
勝公『そうだと云つて此の方が是非玉照彦様に参拝したいから、通過させて呉れと、懇願なさるのだもの、無情に断る訳にもゆかぬぢやないか』
乙『何だ、又貴様、日の暮れ紛れに、女を掴まへて、愚図々々云つて居やがるのだな、余程、勝手な奴だ。男が尋ねて来ると、何時も、慳もほろろに、木で鼻こすつた様な応待をするクセに、今日は言葉付迄、優しく出やがつて、貴様の面つたら、大方崩壊して居るのだらう。暗夜でマア仕合せだ。昼であつて見よ、好い化者だぞ』
勝公『俺の顔が化者なら、貴様の顔は何だい。鯰が沸茶を浴ぶせられた様な面をしやがつて、人さんの御面相迄、批評すると云ふ資格がどこに有るかい』
乙『何と云つても貴様は女にかけては五月蠅い奴だ、俺が来なんだら、優しい声を出しやがつて何々を、何々する、何々だつたらう。エライ邪魔物が飛び出しまして済みませぬなア、アハヽヽヽ』
松姫『モシモシお二人様、今日は特別の御憐愍を以てお通し下さいませ。どうしても今晩の中に参拝致さねばなりませぬから』
乙『大胆至極な、女の分際として此山奥に只一人踏み込み来り、此怖ろしい岩窟へ参詣し様なんて、そんな大野心を起しても駄目ですよ。屹度途中で、狼にバリバリとやられて了ふのは請合だ。此門潜るや否や、地獄の八丁目だから、悪い事は云はぬ。お前の身の為ぢや。いつ迄も絶対通さないとは申さぬから、明日来て下さい』
松姫『御注意は有難う御座いますが、私は神様に何事もお任せ申した身の上、命なんかどうなつても宜しいから、何卒心よう通して下さいませ』
乙『イヤイヤ、命が惜しくない様な、ド転婆を通す事は愈以てなりませぬ哩、来勿止の神様に又どんなお小言を頂戴するか知れやしない。此頃は此門番も失策だらけで、薩張り鼻べちやで威勢が上らない。それと云ふのも、勝公が心の締りがないものだから、いつでも俺達が巻添へを食ふのだ。オイ勝公、サアこんな命知らずの強者を相手にせずと、トツトと奥へ這入つてそれから門を閉めて、警戒を厳重にせなくちやならぬぞ。サア這入らう這入らう』
勝公『それだと云つてこれ程熱心に、お頼みなさるのに、どうして刎ね付ける訳にゆくものか。貴様這入りたければ、勝手に這入つて勝手に閉めたが宜からう。俺は仕方がないから、日頃覚えた、ぬけ道を伝うて此御方を背中に背負つて上げるのだ』
乙『とうとう尻尾を現はしやがつたな、アハヽヽヽ、随分女にかけては腰抜けなものだ』
勝公『エヽ竹公の唐変木奴、貴様に女が分つて堪るかい。女で苦労して来た者でないと女人心理は解らないぞ。さう毒々しく無情な事を云ふものぢやないワ。人間は堅い許りが能ぢやない。砕ける時は砕けて、世の中の人々の為に便利を計るのが人間の務めだ。况して此館に泊めて呉れと仰有るのでもなし、通してさへ上げれば宜いのぢやないか』
竹公『貴様が何と云つても、一旦男の口から、通さぬと云つたら通さぬのだ』
勝公『モシモシお女中、今お聞きの通り同僚役があの通りの頑固者ですから、無理にお通し申しても、後でどんな難題を吾々両人にふきかけるやら分りませぬ。さうすればお互の迷惑ですから、どうぞ貴方も折角此処迄お出でになつたのですから、お気の毒で堪りませぬが、今晩は一旦、引返して下さいませぬか』
松姫『どうぞ、方角だけなつと教へて下さいませ。送つて貰つては大変な、貴方の御迷惑になつては済みませぬから』
勝公『実の処は、これだけ厳しく門番も今迄は云はなかつたのですが、二三日前に、バラモン教の、谷とか鬼とか云ふ奴がやつて来て、来勿止神様を始め、吾々をチヨロまかし、トウトウ大切な、玉照彦様を盗んで帰つたものですから、其後と云ふものは大変に警戒が厳しくなつて、暮六つ下れば、老若男女にかかはらず、一切通してはならぬと云ふ、来勿止神様の厳しき御命令で御座います。それ故、今の男があんな無情な事を云うたのですが、然しあゝ見えても彼奴は極めて平常から親切な男ですよ。言葉つきこそ、穢ふ御座いますが、それはそれは心の美しい男ですよ。屹度腹の中では涙をこぼして居たに違ひありませぬ。どうぞ、竹公は無情な奴だと恨んでやつては下さいますな』
松姫『イエイエ決して決して何の恨みませう。お役目大切にお守りなさる処を、私が御無理を申しますのですから、何と仰有られても是非はありませぬ。併し今貴方のお言葉によれば、玉照彦様はバラモン教の方が盗んで帰つたと仰有いましたが、それは事実ですか』
勝公『盗んで帰つたのは事実ですが、併し乍ら御神徳高き高熊の霊山、不思議な事には盗まれたと思つた玉照彦様は、依然として御機嫌麗はしく、言照姫様に抱かれて居られます。本当に妙な事があつたものです』
松姫『それ聞いて安心致しました。私にも成程と諾かれる点が御座います』
 斯く話す折しも石の本門はガラリと開いた。灯火をとぼし、現はれ来る、白髪異様の老人の姿が、松明に照されて、明瞭と松姫の目に映つた。
 松姫は思はず、ハツと地に平伏した。
勝公『これはこれは来勿止神様、何処へお出ましになります』
来勿止神『ヤアお前は勝ぢやなア。此処へ一人の女が来る筈ぢや。未だ出て来ないかな』
勝公『ハイ、それは何と云ふ方ですか。松姫ぢや御座いませぬか』
来勿止神『アヽさうぢや、其松姫が来る筈だ。二時ばかり以前に、玉照彦様よりお使が見えて、此処へ松姫と云ふ女が一人来る筈だから、夜分でも構はぬ故、通してやつて呉れとの御命令であつた』
勝公『その方なら、今此処に居られます。サア松姫様、御心配なさいますな。今お聞きの通りですから』
 松姫頭を上げ、
松姫『勝さまとやら、御親切有難う御座いました。して貴方が来勿止神様で御座いましたか。罪深き妾なれど、どうぞ此御門を通して下さいませ』
来勿止神『サアサア遠慮は要りませぬ、ズツとお通り下さいませ。貴女のお登りを、岩窟の大神様が大変に御待ち遊ばして居られます。サアサアこちらへ』
と松姫の手を把り門内に導き入れたり。
(大正一一・五・九 旧四・一三 藤津久子録)
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