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文献名1霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
文献名2第3篇 男女共権よみ(新仮名遣い)だんじょきょうけん
文献名3第12章 奇の女〔686〕よみ(新仮名遣い)くしびのおんな
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-05-14 18:51:58
あらすじ竜国別は宣伝歌を歌いながら、大谷山の谷深く進んで行った。年老いた松の木立の下で一夜の雨露を凌ごうと立ち止まった。ふと傍らを見ると、小さな祠がある。竜国別は天津祝詞を奏上し、宣伝歌を歌った。祠の社の下で横たわっていると、夜更けに女の泣き声で眼を覚ました。数人の男が一人の女をこの場に連れてきた。男たちは、女にアルプス教のカーリンスの奥方になるように、と無理強いしている。しかし女は強気で男たちに食ってかかり、要求を断固として拒否している。女は物怖じせずに男たちを痛罵した。男たちは怒って、無理やり女を連れ去ろうとする。竜国別は祠の後ろから、大自在天だと言って怒鳴りつけた。驚いた男たちは走り去ってしまう。女は静かに社に進み来ると、何事か暗祈黙祷している。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月20日(旧04月24日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年4月5日 愛善世界社版206頁 八幡書店版第4輯 340頁 修補版 校定版212頁 普及版93頁 初版 ページ備考
OBC rm2112
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本文  竜国別は小声に宣伝歌を歌ひながら、大谷山の谷深く進み入る。
 夕べを告ぐる鐘の声、諸行無常と鳴り響く。空に烏の幾千羽、塒求めてカアカアと物憂げに啼き立つる。身に沁む風は樹々の梢を七五三に揺つて居る。竜国別は年古りたる松の木立に立ち寄りて一夜の雨露を凌がんと、傍を見れば小さき祠がある。
竜国別『アヽ有難い、何れかの神様のお社が建つて居る。大方、山口の神様が祭つてあるのだらう』
と独言ちつつ神前に恭しく拍手叩頭し、天津祝詞を奏上し、宣伝歌をうたつて祠の後に横はる。其歌、
『三五教の宣伝使  玉治別や国依別の
 神の使と諸共に  津田の湖辺に到着し
 鷹依姫が力とも  杖とも頼む秘密文
 ふとした事より手に入れて  敵の配置を悉く
 手に取る如く探索し  茲に間道潜りつつ
 山野を伝ひて来るうち  日は漸くに暮れ果てて
 行手も見えずなりければ  千引の岩の岩が根に
 そつと立ち寄り降る雪を  凌ぎて一夜を明かすうち
 現はれ来る妙齢の  花をあざむく一婦人
 赤子を胸に抱きつつ  寒気に閉ぢられ手も足も
 儘にならねば一夜の  我に暖気を与へよと
 身辺近く襲ひ来る  我は此世を救うてふ
 神の教の宣伝使  高春山の曲神を
 言向け和し帰るまで  女に肌は触れまじと
 唯一言に断れば  女は又もや手を合せ
 火を焚き呉れよと願ひ入る  ふと傍に目をやれば
 天の与へか枯小柴  忽ち燧を打ち出でて
 火を点ずれば炎々と  四辺は真昼の如くなり
 女の顔はありありと  生地迄スツカリ見えて来た
 男尊女卑の言論と  女尊男卑の弁舌に
 天の瓊鉾(舌)を磨ぎ澄まし  火花を散らして戦へば
 女もさるもの中々に  我言霊に怖れない
 既に危く見えし時  彼方此方の谷々の
 木霊を響かせ進み来る  法螺貝吹いた大男
 忽ち此場に現はれて  魔性の女を一睨み
 女は驚き抱きし子を  直に火中に投げ捨てて
 雲を霞と逃げて行く  我は睡魔に襲はれて
 夢路を辿る折柄に  揺り起されて目を開き
 四辺きよろきよろ見廻せば  大江の山に現はれし
 鬼武彦の白狐神  続いて言依姫神
 我が眼前に現はれて  急場を救ひ給ひつつ
 妙音菩薩の音楽に  連れて此場を消えたまふ
 竜国別は唯一人  巌を背にうとうとと
 睡りながらに明けを待つ  雪は頻りに降り来り
 道も塞がり進退の  自由を失ひユキ詰まる
 中をも厭はず荒魂  勇気を鼓してザクザクと
 進む折しもむくむくと  雪の中より現はれし
 不思議の女に手をひかれ  破れた小屋に伴はれ
 種々雑多の問題を  吹きかけられて困り入り
 如何はせんと思ふうち  傘のやうなる目を剥いて
 パツと消えたと思ひきや  忽ち変る大白狐
 山路を目蒐けて駆出だす  よくよく見ればこは如何に
 五尺有余も積りたる  雪の山路はいつとなく
 消えて僅かな薄雪に  不審の胸を抱きながら
 ふと傍を眺むれば  豈図らんや岩の根に
 くだらぬ夢路を辿りつつ  心の眼を閉ぢて居た
 朝日の光を身に浴びて  此処を立ち出でスタスタと
 雪に印した足跡を  索ねて進む折もあれ
 雪踏み分けて駆来る  野猪に出遇ひ暫くは
 道に佇み眺め入る  空を掠めて何処よりか
 白羽の征矢の飛び来り  猪の頭に突き立てば
 猪は驚き右左  前や後に狂ひつつ
 峰の尾上を打ち渡り  谷間に身をば隠したり
 鳥獣の末までも  救ひ助くる神の道
 これが見捨てて置かれうか  助けやらんと足跡を
 探りて谷間に下り往く  萱茫々と生ひ茂り
 人跡絶えし谷の底  血糊を標べに来て見れば
 自然に穿てる岩の洞  其傍に横はる
 猪の屍を愍れみて  天津祝詞を奏上し
 蘇らせて助けんと  思ふ折しも岩窟の
 中より出づる鬼娘  忽ち猪にかぶりつき
 血汐を吸ひ込む嫌らしさ  はて訝かしとよく見れば
 高城山の近村に  お竜が娘と生れたる
 お光の顔によく似たり  お光は血汐を吸ひ終り
 我顔じつと打ち眺め  お前は隣の小父さまか
 お前はお光か何として  この山奥に忍び住む
 早く帰れと促せば  お光は首をふりながら
 猪の血糊は吸ひ飽いた  美味い香のするお前
 喰はしておくれと強要よる  これや大変と驚いて
 なだめ慊しついろいろと  義理人情を教ふれば
 お光はフンと鼻の先  馬耳東風と聞き流し
 義理人情を弁へて  如何して鬼になれますか
 お前の生血を唯一度  飲ましてくれいと云ひながら
 手頃の石を手に持つて  忽ち砕く我が額
 血潮は川と迸る  我は脆くも気絶して
 前後も知らずなりけるが  俄に吹き来る寒風に
 眼覚ませばこは如何に  額は少し痛けれど
 霊肉共に清々と  洗つたやうな心地して
 鬼の娘と誓約しつ  やつと虎口を逃れ出で
 崎嶇たる山路辿りつつ  漸く此処につきにけり
 月は御空に輝けど  木立の茂み深くして
 我影だにも見えかぬる  椿の森の宮の下
 明日はいよいよ大谷の  山を踏み越え高春山の
 曲の砦に向ふなり  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましまして  三五教の宣伝使
 高姫黒姫両人を  救ひ出させ給へかし
 野立の彦や野立姫  神素盞嗚大御神
 木花姫の御前に  竜国別の神司
 遥に祈り奉る』
と歌ひ終つて古社の床下に横はり居る。
 夜は深々と更け渡り、寂然として木の葉のそよぎもピタリと止まつた丑満の頃、猿を責めるやうな女の泣き声、刻々に近づき来る。竜国別は目を醒まし耳を傾けて、何者なるかと息を凝らして考へて居る。バタバタと数人の足音、女を一人此場に連れ来り、
『サア、もう斯うなつた上は、じたばたしても駄目だ。体よくカーリンスの宣伝使の奥さまになつて、左団扇で数多の乾児を頤で使ふ身分となるのが、却つてお前の身に取つて幸福だらう。土臭い田舎者に心中立てをしたつて何になるか、サア早うウンと云へ』
『お前は立派な男の癖に、私のやうな繊弱き一人の女を寄つて集つて、無理往生をさせようとは些と卑怯ではありませぬか。カーリンスとか云ふ人に、それだけの徳望があれば、天下の女は何程袖で蜂を掃ふやうにして居つても、獅噛みついてゆきます。世間から高春山のカーリンスの鬼と噂され、蚰蜒か蛇のやうに嫌はれて居るお方に、誰が靡くものが有りませう。お前等はその蚰蜒に頤で使はれて居る人間だから、なほ更鼻持のならぬ男だ。エヽ汚らはしい、もう触つて下さるな』
『此奴中々剛情な女だ、よしよし貴様がさう出れば此方にも覚悟がある』
『其覚悟を聞かして貰ひませう』
『そんな事は俺達の秘密だ、貴様に聞かす必要が何処にあるか』
『ありますとも、私は貴方等の目的物、云はば当局者である。秘密を知らずにどうして一日だつて治まつて行きますか』
『エヽ、女の癖に何をツベコベと吐くのだ、引き裂いてやらうか』
『口を引き裂きなさつても宜しい。併し乍ら万々一私がカーリンスの女房になると定つたら、お前は私の家来ぢやないか。さうすれば主人の口を引き裂き、折角綺麗な女を傷者にしたと云ふ罪を、何うしてカーリンスにお詫をなさるか、お詫の仕方がありますまい』
『たつて引き裂かうとは申しませぬ。併し乍ら我々の要求を容れて、奥さまになつて下さいますか』
『ホヽヽヽヽ、好かんたらしい、カーリンスの嫁になる位なら烏の嫁に行きますワ』
『七尺の男子を貴様は翻弄するのか』
『定つた事ですよ。女と云ふものは強いものです。女の髪の毛一条あれば大象も繋ぐと云ふ魔力をもつて居る。ヒヨツトコ野郎の五人や六人、束になつて来た所が到底駄目ですワ、そんな謀反は大抵にしてお止めなさい。山も田も家も倉も、舌の先や目の先で一遍に消滅させたり、顛覆させたりするのは女の力です。お前達は男に生れたと言つてエラさうにして居るが、多寡の知れた青瓢箪のお化見た様なカーリンスに、口汚なく酷き使はれて、満足をして居るやうな腰抜けだから、思へば思へば気の毒なものだよ』
『これや女、そんな劫託を並べる癖に、何故キヤツキヤツと悲鳴を挙げたのだ。そんな空威張りをしたつて駄目だぞ』
『ホヽヽヽヽ、キヤアキヤアと云ふ声は泣き声ですか。お前こそ女の腐つたやうな猿とも人間とも弁別のつかぬ代物は、キヤアキヤアと云うて泣くだらうが、私はお前等のする事が余り可笑しいので、キヤツキヤツと云つて笑つたのですよ』
『何とマア強太い女もあればあるものだなア。俺は生れてからこんな女に出遇つた事がないワ』
『出遇つた事がない筈、世界の女はお前の姿を見ても、お前の方から風が吹いても、嫌がつて皆逃げて仕舞ふ。それもお前が強いとか、怖いとか云うて逃げるのではない。汚らはしくつて、怪体な臭がして鼻持ちがならないから、化物だと思つて逃げるのですよ』
『仕方のない女だなア。こんな女を連れて帰つて、カーリンスの奥さまにでもしようものなら、俺達の却つて迷惑になるかも知れやしないぞ』
『ナニ決して迷惑にやなりませぬ。キヨロキヨロ間誤ついて居ると、ちよいちよい長煙管がお前等のお頭にお見舞申す位なものだよ。けれども生命には別条はないから安心なさい、ホヽヽヽヽ』
『女子と小人は養ひ難し、到底弁舌では俺達は敗軍だ。不言実行に限る。サア各自に手足を取り、高春山に帰つてゆかう。これや女、何んぼ頤が達者でも直接行動には叶ふまい、男は口は下手だが実地の力は強いぞ』
『ホヽヽヽヽ、たつた一人の繊弱い女に対し見つともない、五人も六人も一丈の褌をかいた荒男が、蚯蚓を蟻が寄つて集つて巣へ引き込むやうにせねば、一人の女を引捉へて、その目的を達する事が出来ないとは、何と男程困つたものはないものだなア』
『偉さうに云ふない、男は裸百貫と云つて、体が一つあれば世の中に立派な一人前の大丈夫として通用するのだ。女は蔭ものだ。もつと女らしく淑やかにしたら如何だい。女の徳は柔順にあるのだぞ』
『私は柔順なんか大の嫌ひだ。私の女としての徳は柔術だ。一つ見本にお前達六人を、お月さまの世界迄も放りあげて見ようか』
『オイ皆の奴、如何しようかなア。こんな女を迂濶連れて帰らうものなら、何んな大騒動が勃発するか知れたものぢやないぞ』
『それだと云つて、連れて帰らねばカーリンスの親方に合す顔がなし、困つた事になつたものだなア』
『一つ柔術をお目にかけませうかな、オホヽヽヽ』
『エヽ、この上は直接行動だ。乙、丙、丁、戊、己、一度にかかれ』
『ヨシ、合点だ』
と六人の男は手取り足取り無理に女を担ぎ行かむとする。女は又もやキヤツ キヤツと頻りに叫ぶ。祠の後より、
『暫く待てツ、大自在天大国別命これにあり、申し渡す仔細がある』
と雷の如く呶鳴りつけた。六人は女を其場に投げ捨て雲を霞と逃げ散つた。女は静々と神前に詣で、拍手しながら何事か暗祈黙祷をして居る。
(大正一一・五・二〇 旧四・二四 加藤明子録)
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