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文献名1霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻
文献名2第3篇 黄金化神よみ(新仮名遣い)おうごんけしん
文献名3第9章 清泉〔701〕よみ(新仮名遣い)きよいずみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ金公(金助) データ凡例 データ最終更新日2020-05-09 20:39:30
あらすじ高姫は相変わらず玉を取ったのは曲津神の仕業だと思い込んでいた。そして夜に出立すると、鷹鳥山に小さな庵を結んで二三の供人と共に潜んで時を待っていた。高姫は鷹鳥山の庵で三五教を楯に教えを説いていたが、それを聞きに近隣の老若男女が集まってきて、栄えていた。バラモン教のカナンボールとスマートボールは、鷹鳥山に現れて鷹鳥姫と名乗るこの婆が、如意宝珠の玉と紫の玉を飲み込んでいると噂に聞いた。そこで二人は、蜈蚣姫に献上するために鷹鳥姫を襲って玉を奪おうと画策した。二人は鷹鳥姫の侍女・玉能姫が清泉に水を汲みに来るところを狙うが、逆に白狐につままれて気絶してしまう。スマートとカナンは気が付くが、お互いを化け物と勘違いして喧嘩を始め、清泉に落ちてしまう。泉は真っ黒になってしまった。スマートとカナンの首尾を確かめに来た部下たちは、清泉に人が落ちた音を聞いて、てっきり玉能姫と思い込み、蜈蚣姫のところへ連れて行こうとして泉にやってきた。泉ではスマートとカナンが取っ組み合いの喧嘩をしている。薄暗がりの中、バラモン教の部下の金助、銀公、鉄はスマートとカナンを水に落ちた玉能姫ら鷹鳥山の侍女だと思って助けようと、水に飛びこんだ。しかしスマートとカナンの喧嘩に巻き込まれてますます混乱してしまう。そこへ先ほどの三人の女神が現れて、金助、銀公、鉄を恩人だと言って真っ白な肌に変えてしまった。また美しい着物を着せられて三人は喜び、女神たちと手を取って踊っている。スマートとカナンはそれを羨ましそうに眺めている。また残りの二人のバラモン教の部下、熊と蜂も三人を呼び止めるが、金、銀、鉄の三人は、鷹鳥姫のお目にかかってくる、と言い残して、女神たちと山を登って行ってしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月26日(旧04月30日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月30日 愛善世界社版115頁 八幡書店版第4輯 422頁 修補版 校定版119頁 普及版53頁 初版 ページ備考
OBC rm2209
本文の文字数8126
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本文  天津御神の賜ひてし  生言霊の一二三
 四尾の峰の山麓に  厳の御霊と現はれて
 五六七の神世を造らむと  神素盞嗚の大神が
 生の御子と現れませる  八人乙女の其中に
 秀でて貴き英子姫  悦子の姫と諸共に
 錦の宮の九十  百千万の神策を
 幾億年の末までも  堅磐常磐に固めむと
 天津御神の神言もて  金剛不壊の如意宝珠
 黄金の玉や紫の  貴の宝を永久に
 秘め隠したる桶伏の  山の岩戸を何時しかに
 開きて茲に黒姫や  胸の動悸も高姫が
 玉失ひし苦しさに  天地の神に言解の
 言葉もなくなく高姫は  千々に心を砕きつつ
 夜に紛れて四尾の  山の麓を出立し
 六甲山の峰続き  蜈蚣の姫の一族が
 立籠りたる魔谷ケ岳  玉の行方は分らねど
 執念深き曲神の  八岐大蛇の計画と
 早合点の高姫は  鷹鳥山に小やけき
 庵を結び夜も昼も  鷹鳥ならぬ隼や
 鵜の目に隙を窺ひつ  水も洩らさぬ三五の
 教をここに経となし  緯さしならぬ身の破目を
 押開かむと村肝の  心に包み岩が根に
 二三の信徒伴ひて  時を待つこそ忌々しけれ。
 春の陽気も漂うて、山桜の此処彼処、お多福面ではなけれども、花より葉が前に出る、谷路伝うてスタスタと登り来る二人の男、山桜の古木の根元に腰打ち掛け、竹の子笠を大地に投げ棄てヒソビソ話に耽る。
甲『此通り四方の山々新装をこらし、春の英気を含んで、木々の木の芽は時々刻々に際限もなく新芽を吹き出し、常世の春を寿ぎ、花は笑ひ、鳥は歌ひ、実に何とも云へぬ気分になつて来た。併し乍ら吾々の奉ずるバラモン教も、一時は大江山の鬼雲彦さまが鬼ケ城山の鬼熊別と南北相呼応して、遠近を風靡さした隆盛に引き替へ、今日のバラモン教は恰度冬が来たやうなものだなア。吾々は三国ケ岳の砦を三五教の為に取り毀たれてより、一旦本国へ帰り、時を待つて捲土重来せむものと、蜈蚣姫様に幾度諫言を試みたか知れなかつたが、どうしてもお聞きなさらず、又もやアルプス教の鷹依姫と共に、大自在天様の御威徳を発揮せむと主張し、此魔谷ケ岳にお越しになつてから早三月も経つた。併し乍ら高春山の没落以来影響を受け、折角集まつて来た信者も、日向の氷の如く、日に日に消滅の運命を繰返し、吾々の知つた事か何ぞの様に蜈蚣姫の御大将の不機嫌、日夜の八当り、実に困つたものぢやないか。今日は何とか一つお土産を持つて帰らねば、あの難かしい顔が元の鞘に納まらない、何とか良い名案はあるまいかなア』
乙『名案と云つて、吾々の智嚢の底を搾り切つた上の事だから、モウ此上逆様に振つても虱一匹産出……否落ちて来る気遣ひがない。要するに非常手段を用ゐるより方法はあるまいよ。鷹鳥山の鷹鳥姫は相当な年増で、蜈蚣姫と同じ様な年輩だが、まだ此方へ現はれてから幾らにもならぬのに大変な勢だ。何時も四つ時からかけて鷹鳥山の岩の根に道を説く鷹鳥姫の庵に通ふ老若男女は非常なものだ。何でも鷹鳥姫は紫の玉、金剛不壊の宝珠を腹に呑み込んで居ると云ふ事だから、一つ彼奴を直接行動で何々して了へば、後はバラモン教の天下だ。それに就て、彼が股肱と頼む玉能姫と云ふ頗る美人が居る。先づ其女から巧妙く説きつけて、此方のものにしさへすれば、鷹鳥姫に接近の機会を得ると云ふものだ。大樹を伐る者は先ず其枝を伐る……』
『将を射むとする者は先づ其馬を射ると云ふ筆法だな。併しさうウマく計画通りに行くだらうか。当事と牛のおもがひは向ふから外れると云つて、実に不安心なものだ』
『その玉能姫は何時も谷川に水を汲みにやつて来るさうだ。表口へ廻れば沢山の参詣者だから、到底目的は達し得なからうが、玉能姫は裏坂の椿谷の清泉に何時も下り立ち、霊泉を汲みに来ると云ふ事を探知して居るのだ。あの水は何でも非常な薬品を含んで居る。それを御神水だと云つて、鷹鳥姫が数多の者に与へるので、凡ての病気は奇妙に全快するさうだ。之を鷹鳥姫の奴、御神力だと称し、股肱の臣たる玉能姫にソツと汲ませ、神前に供へさせて置くさうだ。第一玉能姫を巧妙く此方の手に入れて、其上で本城へ駆け向へば、成功疑なしだよ。サア清泉まで僅か二三丁だ。早く行かう』
とカナンボール、スマートボールの両人は、崎嶇たる谷道を笠を手にしながら、チクチクと登り行く。
 カナン、スマートの両人は鷹鳥山の清泉に漸く辿り着いた。急坂を太き竹製の手桶を両手に提げ、背恰好、容貌、寸分違はぬ三人の女、ニコニコしながら二人の前に現はれ来り、
甲女『あなたは、バラモン教のカナンさまでせう』
カナン『御察しの通りカナンです。此奴ア、スマートと云つて、私の乾児です。どうぞ此面を能くお目に止められまして、お忘れなき様に……』
『ホツホヽヽヽ、忘れようと云つたつて、其お顔が如何して忘れられませう』
スマート『オイ、カナン、一目見てさへ、斯う云ふ美人が忘れられぬと云ふのだから、大した者だらう』
『ホヽヽヽヽ』
と腹を抱へて女は蹲む。
スマ『コレコレお女中さま、何をお笑ひなさる。どつか私の顔に特徴がありますか……どつかお気に入つた所が御座いますかなア』
カナン『オイ、スマート、貴様は余程良い馬鹿だなア。一寸水鏡に照らして見よ。随分立派な顔だぞ』
 三人の女は、一度に臍を抱へて笑ひ倒ける。
『ハテナ』
と不審そうにスマートは清泉に顔を照らし眺めようとする。見られては大変と言はぬ許りに、カナンは手頃の石を拾ふより早く泉の中へ投げ込んだ。忽ち波立ち、スマートの顔は細く長く横に平たく、前後左右に随意活動、伸縮自在、真黒けの姿が映る。
スマート『何だかチツとも見えないワ。此泉には黒ん坊の霊が浮いて居るぢやないか』
カナン『アハヽヽヽ、俺も可笑しうてカナンワイ、のうスマート』
と又笑ふ。三人の女は益々笑ひ倒ける。スマートは合点行かず、波の静まつたのを見定め、又もや覗きかける。カナンは石を投げ込む。スマートは、
『馬鹿にするない。何故水鏡を見ようと思ふのに、邪魔をするのだ』
『貴様の顔を貴様が見ると、俺も一寸カナン事があるのだよ。アハヽヽヽ、随分黒う人だなア』
『何だか俺の顔は今朝から鬱陶敷て仕方がない。スマートな気がせないよ。実際は如何なつたのか』
『お目出度い奴だ。蜈蚣姫さまが何方へ向いとるか分らぬ様にと、墨を塗つて置かしやつたのだ。貴様の顔一面墨だらけだよ。俺は面黒くてカナンボールだ』
『そりや大変だ。スマートも一つ此処で手水を使はうかなア』
『イヤイヤそんな事しようものなら大変だぞ。貴様は注意が足らぬので、三国ケ岳で玉の在処をお玉の方に知らした奴だと蜈蚣姫さまに睨まれて居るのだ。大変な恥辱を与へよつた……蜈蚣姫の顔に墨を塗りやがつたから、あの玉を奪り返す迄はスマートの顔に墨を塗つて置くのだから……と云つてな、貴様が酒に喰ひ酔うて寝てる間に、ペツタリコと左官屋を遊ばしたのだ』
『そりや余り殺生ぢやないか。斯う云ふナイスにそんな面を見られては堪らない。スマートはあんな黒い奴だと、三人女の印象に何時までも残つちや堪らない。一つ墨を洗ひ落して、好男子振りを認めて置いて貰はぬと詮らぬからなア』
と無理矢理に水を掬ひ、顔の垢を落す。如何したものか、さしもに清冽なる泉は墨を流した如く真黒になつて了つた。三人の女は、
『あれ、マア何うしませう』
と顔をかくす。スマートはスツカリと墨を落した。生れ付きの好男子である。
スマート『オイ、カナン、俺の顔を塗りよつたのは、蜈蚣姫さまぢやなからう。貴様は怪体な御面相だから、俺と一緒に歩くと目立つと思つて悪戯をしたのだらう』
カナン『マア何うでも好いワ。すべて神の道に在る者は、犠牲的精神が肝腎だから、誰がしたにもせよ、俺がした事にして置けば良いのだよ』
『兎も角、三人のお方、貴女は玉能姫さまとか云ふ方ぢやありませぬか。どうぞスマートを鷹鳥山へ連れて往つて下さいますまいかな』
甲女『ホヽヽヽヽ、あなたの様な瓜実顔を連れて帰らうものなら、青物屋と間違へられますわ。カナンさまの南瓜顔、どうぞそれ計りは勘忍へて頂戴な』
カナン『オイ女、南瓜とは何だ。瓜実顔とは何ぢや。馬鹿にするない。八百屋ぢやあるまいし、サアもう斯うなつた以上は、否でも応でも、魔谷ケ岳へ担げて帰る。覚悟をせい』
乙女『誰が汚らはしい。お前の様なヒヨツトコに担がれて行く者がありますかい』
スマート『ますます貴様は七尺の男子を、馬鹿にするのだな。こりや、俺を誰様と心得て居る。バラモン教の蜈蚣姫が左守の神と聞えたる、スマートさまぢやぞ。斯う見えても何から何まで、知らぬ事のないチヤアチヤアだ。玉能姫、覚悟をせい』
甲女『本当の玉能姫が……それ丈能く分るお前さまなら……何れだか当てて御覧……』
スマート『一人は玉能姫、二人はお化けだよ』
甲女『どれがお化けで、どれが本物ですか』
『オイ、カナン、此奴三人共引括つて伴れて帰らう。何れがどうだか余り能う化けて居よつて、見当が取れぬぢやないか』
『さうだなア。併し斯う云ふ美人を担いで帰ぬと、途中で又魔がさし、中途でボツたくられると困るから、幸ひ此泉の水を塗り付け、真黒けにして帰らうかい。宅へ帰つて軽石や曹達で擦れば、現在の様な綺麗な面になるのだからのう……オイ女、此処へ来い。一つお黒いを塗つてやらう』
 三人の女一度に、
『ホツホヽヽヽ』
と笑ひこける途端に、シユウシユウと立ち昇る白煙、忽ち四辺を包んで了つた。二人は息も詰るやうな苦しさに其場にパタリと倒れた。三人の女は真黒の水を手桶に掬ひ、二人の顔から手足一面に注いだ。両人は焼木杭の様な色になつて、其側に倒れた儘気絶して居る。三人の女は、
『旭さま……月日さま……ヤア高倉さま……さア帰りませう』
と互に白狐と還元し、魔谷ケ岳の蜈蚣姫が館を指して進み行く。
 此処へ上つて来たバラモン教の部下四五人、
甲『オイ、スマートにカナンの大将は、此鷹鳥山の庵へ進むべく、教主の命を奉じて登つた筈だが、どうなつただらう。最早日も暮れかかつて居る。何とか便りがありさうなものだなア』
乙『折角働いて、是から休まして貰はうと思つて居るのに、大将が帰りが遅いものだから、こんな危険区域へ派遣されて、堪つたものぢやない。此山は随分恐ろしい化物の出る所ぢやから、迂濶して居ると、又此間の様に真黒黒助の怪物が出て、目玉を剔り抜かれるか知れやしないぞ。転公は目玉を抜かれたきり、たうとうあの通り不自由な盲目となつて了つた』
甲『なアに、あれは黒ン坊の化もんぢやない。此森林を暗がり紛れに歩きやがつて、松の枯枝に目玉を突当て飛び出たのだ。目を突くが最後其辺が見えなくなつたものだから、黒ン坊の化物が目を剔つたなどと云つてるのだ。用心せないと、どんな目に遇ふかも知れないぞ』
乙『イヤイヤ、松の木ぢやない。本当に黒ン坊が出たさうだ。用心せよ。そろそろ暮れかかつたからなア』
と云ひながら登つて来る。カナンはフト気が付き見れば、赤裸にしられた真黒の男が傍に横たはつて居る。
『オイ、スマート、何処へ往つた。早く来て呉れ。此間転公の目を抜きよつた黒ン坊の化物が、茲に一匹横たはつて居よるワイ。オーイ、早よ来ぬかい』
 スマートは此声にムクムクと動き出した。
『ヤア、お前の声はカナンぢやないか』
『オウさうだ。貴様は化物だらう。又目をとらうと思つて出よつたのだらう。其手は喰はぬぞ』
『貴様こそカナンに化けた黒ン坊だ。俺が了簡せぬのだ。覚悟せい』
と足許のガラガラした石を拾つて投げつける。カナンも亦石を拾つて投げつける。双方より石合戦の真最中、
『アイタヽヽ』
『アイタヽヽ』
と云ひながら大格闘を始め、真黒けに濁つた清泉の中へ組んづ組まれつ、ドブンと落込んだ。薄暗がりに上つて来た五人の男、
甲『オイ、何だか妙な音がしたぢやないか』
乙『さうだなア。一つ調べて見ようか。何でも此辺には鷹鳥姫の庵に仕へて居る、玉能姫と云ふ美人が、チヨコチヨコ現はれるさうだから、ヒヨツとしたら、水汲みに来やがつて薄暗がりに過つて、ドンブリコとやつたのかも知れないぞ。蜈蚣姫さまが彼奴さへ手に入れば、後はどうでもなると仰有つて、カナン、スマートの大将に言ひつけて御座る位だから、俺達が手柄をして彼奴等の上役にならうぢやないか。此清泉へ今頃に水汲みに来る奴は、玉能姫より外にありやせぬぞ』
丙『オイ、愚図々々云つて居ると、水を呑んで死んで了つたら何にもならぬぢやないか。サア早く助けてやらう』
と清泉の傍に五人は探り探り立ち寄つた。余り深くない泉の中、二人の黒ン坊は組んづ組まれつ無言の儘掴み合うて居る。黒さは益々黒く、腸まで浸み込んで了つた。
甲『コレコレ、玉能姫さま、お危ないこつて御座いました。サア私が助けてあげませう。余り暗くつて一寸も分らぬ。それにお前さま黒い着物を着て居るものだからサツパリ見当が付かぬ。私の声のする方へお出でなさい』
 横幅三間縦五六間の泉の中で、バサバサと一生懸命に格闘して居る。黒い水は両人の耳の穴に吸収され、知らぬ間に聾になつて居る。目玉まで真黒け、一寸先も見えなくなつて了つた。
乙『オイ、玉能姫にしてはチツと様子が違ふぢやないか』
甲『何、何時も三人同じ様な別嬪が此泉へ現はれると云ふ事だ。大方一人陥つたので二人が助ける積りで飛び込んで居るのだらう。同じ人を助けるのにも、あゝ云ふ美人を助けるのは気分が良い。……「どこのお方か知りませぬが、大切な生命をお拾ひ下さいまして、此御恩は忘れませぬ」……とかなんとか言つて、俺達に秋波を送るのは請合だ。三人の女を三人寄つて助ける事にしよう。皆同じ別嬪だから、甲乙がなくて後の争論も起らず、大変都合が好い。……オイ、熊、蜂、貴様は其処に番ついて居れ。吾々三人が功名手柄をするのだから……』
と囁いて居る。黒い影はビシヤン、バシヤンと相変らず向ふの方で水煙を立てながら格闘を続けて居る。清泉の真黒けになつた事は、薄暗がりで少しも五人には気が付かなかつた。甲は真裸となつて救い出さむと飛び込んだ。乙丙も吾劣らじと飛び込み、
『コレコレお女中、玉能姫さま、私が助けてあげませう』
と進み行く。此奴も真黒けになり、三人共盲聾の真黒けの体に変じ、五人は互に同志打を始めて居る。夜は追々と暗の帳が深く下りて来た。熊公は、
『オイ蜂、コラ一体どうなるのだらうなア。オイ、金公、銀公、鉄、何してるのだ。玉能姫は如何なつたのだ。良い加減に上つて来ぬか。温泉か何ぞへ這入つたやうに気楽さうに泉の中で意茶付いとるのだな。……オイ早くあがらぬかい』
と呼べど叫べど、盲聾の真黒黒助には少しも分らず、遂には甲乙丙の区別を取違へ、一生懸命に格闘して居る。此時以前の女神又もやパツと此場に現はれた。さうしてアークライトの様な光は頭上に輝いて来た。五人の目は、始めてボーツと明りが見えて来出した。
カナン『ヤア此奴あ失策つた。何時の間にか美人が又やつて来よつた。オイ、スマート、斯んな所で喧嘩をして居る時ぢやない。何だ、貴様の姿は真黒けぢやないか。矢張りスマートぢやなからう。化衆ぢやなア』
スマート『貴様はカナンの声を使つて、馬鹿にするな。……コリヤ女、俺達をこんな所へ落しよつて、高所で見物すると云ふ事があるかい』
 金、銀、鉄の三人も女神の姿に驚いて俄に這ひあがつた。
甲女『危い所をお助け下さいまして、お蔭で助かりました。此御恩は決して忘れませぬ』
金『ハイハイ、滅相もない。併し何時お上りになりました。私は貴女をお助けしたいと思うて、此通り飛び込み大活動を致して居りました。……それはまア結構でした。併し御礼を言はれるのはチツと不思議だ。救ひ上げた覚えがないのだから』
乙女『銀さまとやら、あなたは妾を救うて下さつた御恩人ですよ』
丙女『鉄さま、能う助けて下さつた』
鉄『へー、有難う……ナニ、滅相な、何方を言つて良いか訳が分らぬやうになつて来たワイ、助けてあげたやうにも思ふし、助けてあげない様にも思ふし、……こりやマア、如何なつたのだらう』
甲女『金さま、お前さまは、何とした黒い姿にならしやつたのだ。妾、残念で御座います』
 金公始めて気が付き体を見れば、空地なきまで墨の化物の様になつて居る。銀、鉄はと見れば、これも真黒黒助。
金『ヤア、此光に照らし見れば、誰も彼も何故斯う黒くなつたのだらう』
甲女『妾の生命の御恩人、金さま、銀さま、鉄さま、どうぞ此方へ来て下さい。妾が拭き取つてあげませう』
と雪の様な手を延べ、四辺の草をむしつて牛馬の行水でもさせる様に、カサカサと擦り始めた。金、銀、鉄の三人は、元の黒ン坊が黄疸を病んだ様な肌、忽ち純白色となつて了つた。
乙女『ホツホヽヽヽ、綺麗だこと。三人さま、一寸御覧なさいませ。玉子の様な綺麗な肌付におなりなさいました』
 三人はフト自分の体を見て、純白色に変じて居るのに且驚き且喜び、天にも昇る心地して、思はず手を拍ち飛び上つた。三人の女は美はしき衣を各々取り出し、金、銀、鉄の三人に着せた。何とも云へぬ立派な好男子になつて了つた。カナン、スマートは真黒けに染つた儘恨めしさうに眺めて居る。
甲女『スマートさま、カナンさま、随分お黒うおなりやしたネー。妾は斯うして三人の美しき殿御を持ちました。羨りい事は御座いませぬか』
と嬉しさうに手を取つて、
『サア、金さま、銀さま、鉄さま、斯う舞ふのだよ。妾とダンスを致しませう』
と三男三女は手を握つてキリキリと舞うて見せる。二人は這ひあがり、指を啣へて、
カナン『アーア、夢かいな。夢なれば結構だが、斯んな真黒けになつて了つては、宅へ帰つて嬶アにだつて追払はれて了ふワ』
熊、蜂『オイ金、銀、鉄、貴様等は三人の美人を助けて、そんな陽気な事をしやがつて俺達を馬鹿にするのか。チツと俺にも分配したらどうだ』
金『生憎三人の美人だから、パンか何かの様に割つて与へる訳にも行かず、まあ時節を待つのだなア。カナンにスマートの御大将でさへも、あの通り黒ン坊になつて了つたのだから、其事を思へば貴様はまだ元の生地の儘保留されて居るのだから、せめてもの喜悦として、グヅグヅ言はぬが得だらう。俺はこれから此ナイスと共に鷹鳥山に立向ひ、鷹鳥姫様にお目にかかつて、御馳走に預かつて来る。まアゆつくり黒い水でも飲んで、俺達の凱旋祝の準備でもして居て呉れ。カナン、スマートの御大将、アリヨース。サアサア三人の御姫さま、こんな所で黒ン坊を眺めてゐても殺風景です。どつかへ転地療養と出かけませうか』
甲女『新婚旅行と洒落て、これから鷹鳥山、再度山、魔谷ケ岳、六甲山と、天然都会を漫遊致しませう』
カナン『オイ、金公、待たぬかい』
と呶鳴つて居る。忽ちアーク灯の様な光はブスツと消えた。六つの白い姿は闇に浮いた様に山上目蒐けて薄れ行く。
(大正一一・五・二六 旧四・三〇 松村真澄録)
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