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文献名1霊界物語 第23巻 如意宝珠 戌の巻
文献名2第3篇 有耶無耶よみ(新仮名遣い)うやむや
文献名3第14章 籠抜〔726〕よみ(新仮名遣い)かごぬけ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-10-15 01:56:22
あらすじ東助が留守の間、洲本の東助館は妻のお百合が守っていた。お百合は東助が何日も帰って来ないことを心配していたが、そこへ門口に宣伝使が尋ねてくる。宣伝使は、バラモン教の友彦であった。友彦は東助が何日も海へ出たきり帰ってこないことを近所で聞きつけると、それをネタにお百合に取り入って東助の財産を自分のものにしてしまおうと企んでいた。しかしお百合は、友彦が去年浪速の姉のところで、病気に付け込んで詐欺を働こうとした男であることに気づき、友彦を怒鳴りつけて気を失わせ、縛ってしまった。そこへ東助が帰還してくる。事の次第を聞いた東助は、友彦に改心を薦め、村人の前で改心の説法をするようにと諭す。しかし友彦は便所に行く振りをして、便壺の穴から逃げてしまった。東助の部下となった鶴公、清公、武公は、東助に感化されて改心し、言依別命の教えを奉じることになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年06月12日(旧05月17日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年4月19日 愛善世界社版226頁 八幡書店版第4輯 577頁 修補版 校定版230頁 普及版106頁 初版 ページ備考
OBC rm2314
本文のヒット件数全 1 件/言依別命=1
本文の文字数5416
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本文  洲本の里に名も高き、人子の司東助が留守の門前に佇み、宣伝歌を声低に歌ふ一人の宣伝使があつた。下女のお冊は台所より此声を聞きつけ、門の戸を開いて眺むれば、蓑笠、草鞋脚絆の扮装したる、四十恰好の男盛りの宣伝使であつた。宣伝使はお冊に向ひ、
宣伝使『我れは日頃の経験上、此館の前を通り見れば、何とはなしに此家には変事の突発せし如く覚ゆる。汝が家に何事もなきや』
と言葉淑やかに問ひかけた。お冊は少し首を傾け乍ら、
お冊『一寸お待ちを願ひます。奥へ云つて奥様に伺つて参りますから……』
と言ひ残し、其儘姿を隠した。奥の一間には女房のお百合、火鉢の前にもたれかかり、何事か思案の態であつた。お冊は襖をソツと引あけ、
お冊『奥様々々』
と呼んだ。お百合は何事にか気を取られしものの如く、お冊の声が耳に入らなかつた。お冊は恐る恐るお百合の前ににじり寄り、
お冊『モウシ奥様、門口に不思議な宣伝使が立つて居られます。如何いたしませうかなア』
と云ふ声に、お百合は顔をあげ、
お百合『ナニ、宣伝使が門にお立ちとな。それは都合の好い事だ。一つ伺つて頂きたい事があるから……どうぞ此方へ通つて貰うて下さい』
お冊『ハイ畏まりました』
と足早に表へ出で、
お冊『モシモシ宣伝使様、奥様が何か御願なされたい事があるさうですから、どうぞ奥へ御通り下さいませ』
 宣伝使は打ち頷きお冊の後に従ひ、草鞋を脱ぎ足を洗ひ、お百合の居間に通された。お百合は座を下がり、宣伝使を上座に請じ、丁寧に頭を下げ、
お百合『宣伝使様、よくこそ御立寄り下さいました。先づ御ゆるりと御休息下さいませ』
宣伝使『私はバラモン教の友彦と申す宣伝使で御座る。当家の門前を通過致さむとする時、何となく気懸りが致しましてなりませぬので、お宅には思ひも寄らぬ事件が突発致して居る様に考へましたから、一寸御尋ね致しました』
お百合『それはそれは御親切に有難う御座ります。実の所は妾の主人東助と申す者、二三日以前より何処へ参りましたか、皆目行方は分らず、大方此間の颶風に、船自慢の主人の事とて船を操り、荒波に呑まれたのではあるまいかと、上を下への大騒動、村中の者が夫れ夫れ手分けを致しまして、山林原野は申すに及ばず、近海を隈なく探し廻れども皆目行方が知れず、生て居るのか死んで居りますのか、それさへも分りませぬ。どうぞ神様に一応御伺ひ下さいますまいか』
 友彦は近辺の者の騒ぎを見て、遠近の人々に東助の紛失せし事を、前以て聞き知り、ワザと立寄つたのである、されど素知らぬ風を装ひ乍ら、
友彦『それはそれは御心配で御座いませう。一つ私が伺つて見ませう』
と手を洗ひ口を嗽ぎ、あたりに人無きを見てニタリと笑ひ、舌を出し、
友彦『村人の話に依れば、あれ丈探したのだから、最早生きて居る気遣ひはない。ウマくチヨロまかせば、淡路一の財産家、友彦が亭主となり、バラモン教を淡路一円に此富力を以て拡張すれば何でもない事だ。あゝ結構な風が吹いて来たものだ。併し乍ら万々一主人が生きて帰つて来たら大変だが、併し滅多にそんな事はあるまい。一つ度胸を出してやつて見よう』
と小声に呟いて居る。そこへ女房のお百合は新しき手拭を持ち、
お百合『宣伝使様、どうぞ此れでお手を御拭き下さいませ』
とつき出す。其横顔を見て、
友彦『アヽ何と綺麗な女だなア。……併し今の独語を聞かれはせなかつたか』
と稍不安の念に駆られ、盗み目にお百合の顔を覗いて見ると、お百合はそんな気配も無かつた。友彦はヤツと安心の胸を撫でおろし、悠々と床の間に端坐し、バラモン教の経文を唱へ終り、偽神憑りとなつて、
友彦『ウンウンウン、此方は大自在天大国別命なるぞ』
と雷の如く呶鳴り立てた。お百合は驚いて平伏し、
お百合『ハイ有難う御座います』
と涙声になつて居る。友彦は又もや口を切り、
友彦『当家の主人東助は、何不自由なき身であり乍ら、海漁を好み或は冒険的事業を致す悪い癖がある。それが為に生命を棄てたのだ。不憫なれどモウ仕方がない。せめて三日以前に此宣伝使が当家に来て居れば、知らしてやるのであつたが、さてもさても残念な事であつたのう。モウ此上は仕方がない。霊魂の冥福を祈り、主人の天国に救はるる様、鄭重なる祭典を行ひ、且有力なる神の如き夫を持ち、東助の後継を致ささねば、当家は到底永続致すまいぞよ。又東助は睾丸病がある為、子が出来ないから、折角蓄めた財産も他人に与らねばなるまい。汝は神の申す事を、よつく肚に入れて、何事も大国別命の命令通り致すが上分別だ』
お百合『ハイハイ有難う御座います。……神様の仰せなら、どんな事でも背きは致しませぬ』
友彦『何と偉い奴だ。其方は流石東助の妻だけあつて、よく身魂が研けたものだ。神も感心致すぞよ』
お百合『何を申しても、世間知らずの卑女、神様から褒められる様な事は一つも御座いませぬ』
友彦『坊間伝ふる所に依れば、汝は実に貞淑の女と云ふ事だ。世間の噂を聞かずとも、神は心のドン底までよく見抜いて居るぞよ。一旦死んだ主人は最早呼べど答へず、叫べど帰らず、是非なしと諦め、後の家を大切に守り、子孫を生み殖やし、祖先の家を守るが、せめてもの東助への貞節、合点が行つたか』
お百合『ハイハイ畏まりまして御座います。併し乍ら妾の様な者に、如何して後添に来て呉れる者が御座いませう。何だか夫の霊に対し気が済まない様に思はれてなりませぬ。そして其夫を持つのは、せめて三年祭を終つてからにして貰ふ事は出来ますまいか』
友彦『大国別命が申す事、しつかり聞け。人間の理屈は論ずるに足らぬ。善は急げだ、一日も早く夫を迎へたがよからう。其夫は神が授けてやる程に……さうすれば子孫は天の星の数の如く殖えて、家は万代不易、世界の幸福者としてやるぞよ』
お百合『ハイハイ有難う御座います。どうぞ宜しう御願申上げます。そして其夫と申すのは、何処から貰ひましたら宜しう御座いますか、これも一つ御伺ひ致したう御座います』
友彦『別に何処へも探しに行くに及ばぬ。灯台下は真暗がり、今汝が目の前に三国一の花婿が来て居るぞよ。これも神が媒介を致さむと、遥々連れて来たのだから、喜び勇んで命令に服従するがよからう』
お百合『神様、根つから其処らに誰も見えませぬ』
友彦『ハテ察しの悪い。今汝の目の前に於て神の託宣を伝へて居る、大国別命の生宮の宣伝使であるぞよ』
 お百合はハツと驚き、友彦の顔をつくづく看守り、
お百合『あなたは何時やら、浪速の里でお目にかかつた事のある様な方ですなア』
友彦『馬鹿を申せ。他人の空似と申して、世界に同じ顔をした者は、二人づつ天から拵へてあるのだ。此肉体は神の直々の生宮であるぞよ。よく調べたがよからう』
お百合『鼻の先の一寸赤い所から、目の窪んだ所、口の大きさ、出つ歯の先の欠けた所、似たりや似たり、よくマア似た方も有るものですなア。妾の姉は浪速の里に嫁入つて居りますが、去年の冬、急飛脚が来ましたので、行て見れば姉の大病、そこへ宣伝使がお見えになり、イロイロと仰有つて……姉の病気を直してやらう、それに就てはコレコレの薬が要るから、薬代を出せ……と仰せられ、大枚三百両を懐にし門口を出た限り、今に顔を見せないさうです。妾は其時に見た顔と貴方のお顔と、余りよく似て居りますので、一寸御伺ひ致しました』
友彦『神と詐偽師と一つに見られては、神も迷惑致すぞよ』
お百合『さう仰有るお声は、あの詐偽師とそつくりですワ。声までそれ程よく似た人が有るものですかなア』
友彦『つい話が横道へ這入つた。其方の覚悟は如何ぢや』
お百合『どうぞ二三日お待ち下さいませ。其上でトツクリと考へ、親類にも相談致し、浪速の姉も招んで来て、其上に御厄介に預りませう。どうぞ神さま一先づ御引取り下さいませ』
 ポンポンと手を拍つた。友彦は顔色を真赤に染め、冷汗を体一面ヅクヅクにかいて、湯気をポーツポーツと立て乍ら、
友彦『あゝ失礼致しました。つい眠つたと見えて、結構な風呂に入れて貰うたと思へば、アヽ夢でしたか。体中此通り、守護神が入浴したと見えまして、湯気が立つて居りまする』
お百合『イエイエ決して夢では御座いませぬ。お神懸りで御座いました。それはそれは妙な事を仰有いました。妾は少し許り腑に落ちぬ事が御座いますので、二三日猶予を願つて置きました』
友彦『あゝさうでしたか。何分知覚精神を失つて了ふ神感法の神懸ですから、チツトも分りませぬ。神懸も却て自分に取つては不便なもので御座います。アハヽヽヽ』
と笑ひに紛らす。
お百合『それ丈立派な神懸が出来ましたら結構です。仮令人間憑りに致しましても、あれ丈巧妙に託宣が出来ますれば、大抵の者は皆降参つて了ひます。妾でさへも一旦は、あの何々でした位ですもの。オホヽヽヽ』
友彦『何と、合点の行かぬ貴女の御言葉尻、何ぞ怪しい事が御座いましたか』
お百合『イエイエ別に怪しい事は御座いませぬ。神様の御引合せ、姉の内へ去年参りました泥棒の模型か実物か、それは後で分りますが、……野太い奴が瞞しに来ました』
と後の一二句に力を籠めて、優しき女に似ず呶鳴りつけた。友彦は此声に打たれ、思はず尻餅を搗いて、口を開けた儘、火鉢の横にバタリと倒れた。お百合は独語、
お百合『オホヽヽヽ、何と悪魔と云ふものは、どこまでも抜目のないものだ。的きり此奴は姉さんの宅で三百両騙り取つた奴に間違ない。まだ主人の生死さへも分らない内から其処ら近所で噂を聞いて来よつて、良い加減な事を言ひ、若後家を誑らかさうと思うてやつて来よつたのだなア。どうやら目を眩かして居るらしい。今の間に細帯で手足を括り、庭先へ引摺り出し、水でもかけて気を付けてやりませう。……アーアそれにしても東助さまは如何なつたのかいな。村の衆は、未だに誰も報告に来て下さらず、イヨイヨ妾も未亡人になれば、今迄とは層一層腹帯を締めねばなるまい。あゝ困つた事が出来て来た』
と自語する折しも、お冊は慌しく此場に駆来り、
お冊『奥様、お喜び下さりませ。旦那様が只今御機嫌よう御帰りになりました』
 お百合は飛び立つ許り喜び、
お百合『ナニ、旦那様がお帰りとな。あゝ斯うしては居られまい。ドレドレお迎へを申さねばなるまい』
と襟を正し居る所へ、早くも東助は三人の男を引連れ、廊下の縁板を威喝させ乍ら現はれ来り、
東助『アヽお百合、余り帰るのが遅かつたので、心配しただらうなア。村人にも大変な厄介をかけたさうだ。俺も到頭風に吹き流されたと云ふ訳でもないが、家島まで往つて来たのだ。マア安心して呉れ』
お百合『それはそれは何よりも嬉しい事で御座います。つきましては貴方のお不在中に、四足が一匹這ひ込んで来ましたので、今生捕にして置きました。どうぞトツクリ御覧下さいませ』
と友彦を指ざす。
東助『何、これは人間だないか。厳しく縛されて居るではないか』
お百合『ハイ、一寸妾が縛しておきました。此奴は去年の冬、姉さまの内で三百両騙り取つた泥棒ですよ。あなたが行方が知れないと云ふ噂を聞いて、ウマく妾を誑らかし、此家を横領しようと思うて出て来た図太い代物です』
東助『それは怪しからぬ奴だ。併し乍ら斯うしてはおかれまい。助けてやらねばならぬから……コレコレ鶴公、清公、武公、お前達御苦労だが、縛を解き水でも与へて、気を付けてやつて下さい』
 三人は命の儘に縛を解き水を吹き注けた。漸くの事で友彦は正気に復し起きあがり、東助其他の姿を見て大に驚き、畳に頭を摺りつけ、涙と共に詫入る。東助は友彦に向ひ、
『お前は立派な宣伝使の風をして居るが、今聞く所に依れば、大変な悪党らしい。此世の中は何処までも悪では通れませぬぞ』
友彦『ハイ誠に悪う御座いました。面目次第も御座いませぬ。どうぞ生命計りはお助け下さいませ。これつきりモウ宣伝使は廃めまする』
東助『結構な宣伝使の役をやめとは申さぬ。ますます魂を研いて立派な宣伝使にお成りなさい。そして世界の人民を善道に導きなさるのが貴方の天職だ。今迄の様な神様を松魚節にして女を籠絡したり、病人の在る家を探して、弱身に付け込み詐欺をしたりする様な事は、これ限りお廃めなさるがよからう』
友彦『ハイ有難う御座います。どうぞお助け下さいませ。これ限り悪は改めまする』
 斯かる所へ門口に大勢の声にて、
『東助さまが生きてござつた。無事に帰られた、ウローウロー』
と山岳も揺ぐ計り歓呼の声聞え来る。
東助『お前、イヨイヨ改心を志たのならば、あの通り今門口に沢山の村人が来て居るから、一つ懺悔演説でもして下され。一伍一什包み隠さず、旧悪をさらけ出して改心の状をお示しなされ。それが出来ねば大泥棒として、此東助が酋長の職権を以て成敗を致す』
 友彦小さい声で、
『ハイ致しまする』
東助『サア早く門口へ出て、懺悔演説を始めたが宜しからう』
 友彦は、
『ハイ直に参ります。俄に大便が催して来ました。どうぞ便所へ往く間御猶予を願ひます』
東助『便所ならば其処にある。サア早く行つて来たがよからう』
 友彦は、
『ハイ有難う御座います』
と直様雪隠に入り、跨げ穴から潜つて外に這ひ出し、折柄日の暮れかかつたのを幸ひ、裏山の密林指して一生懸命に隠れたりける。
 鶴公、清公、武公の三人は暫く東助の家に厄介となり、遂に東助に感化されて前非を悔い、心の底より言依別命の教を奉ずる事となりにける。
(大正一一・六・一二 旧五・一七 松村真澄録)
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